『#ライアリ』生みの親に直撃取材!
2022年7月22日にNHN PlayArtとドワンゴよりリリースされたスマホ向け新作リズムゲーム『#コンパス ライブアリーナ』(以下、『#ライアリ』)。
『#コンパス』でおなじみのヒーローや楽曲が多数登場する本作では、新たにストーリーモードが実装。さらに人気VTuberとのコラボをリリース前から発表するなど、これまでにない展開で『#コンパス』ファンからの注目を集めている。
今回はそんな『#ライアリ』について、『#コンパス』の顔としておなじみのはやしPと、本作のディレクターを務める佐藤Dのおふたりにインタビューを実施。『#ライアリ』リリースまでの経緯や、今後の展開について詳しくお話を伺った。
『#ライアリ』はどのように生まれたか
――本作の企画はいつごろ、どのような経緯で生まれたのでしょうか。きっかけについて教えてください。
はやしP 3年ほど前に『#コンパス』の新しい遊びかたの提案として企画を考えはじめました。プレイヤーの皆さんと話をする中で、対戦が得意じゃない方もたくさん遊んでいるのを感じていたんです。ニコニコ内のいろいろなクリエイターさんに作ってもらった世界観がひろく受け入れられたことで、そういう状況も生まれていたようなんですね。『#コンパス』のバトル自体はもちろん自信を持って作っているんですけど、それとは別に『#コンパス』のテーマで新しい遊びかたのゲームをもうひとつ作れないかな、と思ったのがきっかけになります。
『#コンパス』を俯瞰して見ると、バトルゲームであるんですがゲームの世界観を表すのに音楽が重要な要素となっています。じゃあ音楽をテーマにゲームを作っていけばいいんじゃないか、ということでリズムゲームの企画がスタートしました。
――『#コンパス ライブアリーナ』というタイトルですが、過去には同名のライブイベントが開催されています。なぜこのタイトルを選んだのか、理由についてお聞かせください。
はやしP イベントとしての“#コンパスライブアリーナ”は2018年に1回目が開催されましたが、ゲームとしての『#ライアリ』はこれより後に企画されたものです。この時点では繋がりはなかったのですが、ヒーローたちが一同に介する場として“バトルアリーナ”と“ライブアリーナ”の2カ所が存在するんだ、という考えかたが私の中で腑に落ちたんです。それでゲームに『#コンパス ライブアリーナ』という名前をつけました。
こうした『#コンパス』の音楽性をより盛り上げるために、2021年に“コンパス ライブアリーナ 2021”を開催しました。この2回目のライブアリーナの時点ではすでにゲームが動き出していたわけですね。
――2021年のイベント開催に関しては“ライブアリーナ”の立ち位置を確立させる目的もあったのでしょうか。
はやしP そうですね。その時点ではまだ『#ライアリ』の存在はプレイヤーの皆さんには伏せていたのですが、音楽を軸とした『#コンパス』のブランドとしての“ライブアリーナ”という存在は意識していました。
――本作の位置付けについてお聞きします。本作は『#コンパス』の後継タイトルにあたるものでしょうか。それとも、並列して進めていく外伝的なタイトルでしょうか。
はやしP 後継タイトルではなく、『#コンパス』と並列して進めていくタイトルとなっています。でも決して外伝作品というわけではありません。『#コンパス』という世界の中にバトルで遊ぶものもあれば、音楽で遊ぶものもある。どちらかがメインというわけではなく、それぞれが独立して存在しているイメージです。
――ひとつの世界を、それぞれ別々の切り口から見せているわけですね。『#ライアリ』ではストーリーも実装されていますが、ここで描かれる世界観は『#コンパス』と地続きのものと見てよろしいでしょうか。
はやしP はい、そこも共通の世界観になっています。
――本作の想定しているターゲット層について教えてください。
はやしP もちろん前提として、メインは『#コンパス』の世界観が好きで遊んでくれているプレイヤーの皆さんとなります。ほかにも『#コンパス』の雰囲気を知っている方々で、「世界観は気になるけどバトルゲームはやりづらいな」と考えていた人にはぜひ遊んでもらいたいですね。
また『#コンパス』の楽曲以外にもボカロ曲なども入ってきますので、ボカロ曲が好きな人や、気軽に音楽ゲームを遊びたい人にも遊んでいただきたいです。『#コンパス』の輪をより広げていきたいですね。
――本作を作るうえで、『#コンパス』のブランドイメージを守るために心がけていることがあれば教えてください。
はやしP 『#ライアリ』に限ったことではなく『#コンパス』全体の話になってくるのですが、僕の作り手としてのイメージでは、ゲームってリリースまでは開発者のものなんですが、世に出た瞬間にプレイヤーのものに変わるんです。そこからはプレイヤーの考える『#コンパス』が第一なんですね。
そのため喜ばれることであればやるべきなんですが、プレイヤーが求めているものを直接的に作ってしまうと、それが結果的にプレイヤーが望まないものに変わってしまう可能性もあるんですよ。たとえば世界観を多くは語らないことが『#コンパス』の魅力のひとつになっていると思うんですが、求められるがままに事細かに設定を語りだすと、謎に満ちていた部分がなくなって神秘性が消えていくと思うんです。
なのでプレイヤーが望むものを作るんだけど、ちゃんと長い時間『#コンパス』を楽しんでもらえるよう、出しかたを考えながらコンテンツを提供していくつもりです。ただ自由な世界観も『#コンパス』の良さなので、あまり制限をかけすぎるよりも、世界観を壊さない範囲でなるべく自由でありたいですね。
――求められているものをそのまま出すことが最良の結果ではない、と。
はやしP 僕ら開発者は言われた通りにそのまま作る仕事ではなく、プレイヤーのイメージを超えるものを出さないといけないと思っています。
――『#コンパス』のような自由度の高い世界観だとどのようなキャラが受けるかの判断も難しい部分があるかと思うのですが、キャラクター作成時には明確な勝算を持ってお出しされているのでしょうか。
はやしP あるようなないような、というのが正解かもしれません。たとえば初期実装キャラクターは原案やセリフを自分で考えていたのですが、僕の頭の中にあるイメージをそのまま作ってもらっても、ひとりで考えたものだと大した広がりがないんですよ。なので「この部分さえ守ってくれれば後は自由に」と、各々で実力を発揮してもらえるような作りかたをしています。
よく絵師さんが番組に出た際に「ざっくりとしたオーダーしかなかった」と話すことがあると思うんですけど、守ってほしいところだけ伝えて後はおまかせしています。だから芯は守られたうえで僕の想像を超えるキャラクター性が生まれてくるし、それがプレイヤーの皆さんに受け入れられているのだと思います。
――絵師さんに限らず、ヒーロー制作にかかわる担当者はモチベーションが高い人が多い印象があります。
はやしP 自由度が高いぶん、自分が作ったという意識を強く抱いてもらえるんだと思います。これは結果的にそうなっただけで、狙ったわけではないのですが。
僕も若いころは理想通りにゲームを作りたくて、ひとりで何でもかんでもやっていたんですけど、それだとぜんぜん完成しないんですよ。やっぱりいろんな才能を持って会社に入ってきている人たちがいるわけだし、みんなの才能を合わせたほうが絶対にいいものができるんです。20年ゲームを作ってきて数々の失敗を経験したからこそ、いまの『#コンパス』があるんだと思います。
――開発時の出来事について、苦労した点や印象に残っている出来事があれば教えてください。
はやしP ゲームの核となる音楽部分を何度も作り直したことですね。最初『#コンパス』の音楽ゲームを作ります、と会社に説明した段階では、みんな既存の音楽ゲームに『#コンパス』の皮をかぶせただけのものを想像したと思うんですよ。でも我々はゲーム開発者なので、何か新しい遊びを提案しない限りは職業としての価値がないと思ったんです。
既存の音楽ゲームとは違う体験を探っていくうえで、ノーツが上から降ってくることもあれば、縦画面だった時期もありました。いろいろ試行錯誤していまのステージと譜面が融合した形を作っていったんですが、まあ苦労はしていますね(笑)。
――体格の異なるキャラクターたちがいっしょに踊る楽曲が多数ありますが、それぞれ専用の振り付けで踊っているように見受けられます。ダンス部分を作る上での苦労はありましたか。
はやしP そこもめちゃくちゃ苦労したところのひとつですね。ヒーローたちがそれぞれ個性を持っているので、同じ踊りかたをしてはダメだろう、というのがあったんです。ただ振り付けを変えてしまうとキャラクターの入れ換えができなくなってしまう。キャラクター性とカスタマイズ性のどちらを重視するか考えた結果、「いくら自由度が高くてもグスタフがリリカのモーションをしちゃダメでしょう」と(笑)。結果今回はキャラクターを大事にする方向で振り切りましたが、その選択までにだいぶ苦労がありましたね。
逆によい方向に印象に残っているのが、ヒーローたちのダンスです。踊り手さんに振り付けをお願いしているのですが、『#コンパス』に関わっている踊り手さんたちってヒーローをみんな把握しているんですよ。この子ならこう踊るだろう、というのがほとんど頭に入っているので、進行がスムーズなんです。おかげで、よりクリエイティブな方に時間を割くことができました。
リリース後の展開について
――ストーリーやヒーロー同士の掛け合いは、分量としてはどの程度用意されているのでしょうか。
佐藤D ストーリーは2種類あって、ストーリーイベントで展開されるものとヒーローごとに用意された個別ストーリーがあります。
イベントのストーリーはイベントによって増減はありますが、だいたい1話1500字以内の5~6話構成で作成しています。
ヒーローの個別ストーリーは1話だいたい1000字~1200字で、最大5話程度を想定しています。各ヒーローの1話はリリース時点で実装済みですが、残りは追ってアップデートで追加していく予定ですね。
――これまで公式で提供されていたのはバランス調整時のフレーバーテキストだけでしたが、しっかりと読み応えのあるストーリーになりそうですね。
佐藤D あれをより濃密にしたようなものですね。第1話は生い立ちなどを話す内容ですが、2話以降はほかのヒーローとも絡みながらキャラクターを掘り下げていく内容となります。かなり見ごたえのあるものになると思いますよ。
ヒーローの掘り下げは個別ストーリーで行いつつ、イベントストーリーではイベントのテーマに沿った物語が展開されていきます。
――イベントのストーリーではどの程度の数のヒーローが登場するのでしょうか。
佐藤D イベントではメインヒーローとサブヒーローが設定されていて、そのふたりがメインで物語を進めていきます。話によってそれ以外のヒーローも登場して絡んできますが、こちらにはとくに上限は決めていません。横のつながりが見られるのが『#ライアリ』の魅力だと思うので、やりたいことを実現できるならいろいろなヒーローを出して、メインとサブの物語を盛り上げていきたいですね。
――ストーリーは今後どのようなペースで追加・更新されるか教えてください。
佐藤D ストーリーイベントは毎月開催の予定です。個別のストーリーについてはまだペースが決まっていないのですが、ヒーローのことを早めに知ってほしいですし、なるべく時間は開けずに追加していきたいですね。
追加の際はできれば偏りがないよう、その時点で登場しているヒーローのぶんはまとめて出していく形を考えています。
――本作の応援カードで登場するキャラクターの中には、『#コンパス』では名前や設定が不明だったキャラクターもいますが、これらは新たに設定を作成されたのでしょうか。
佐藤D 応援カードになっているキャラクターたちはすべて『#コンパス』にも登場しているキャラクターをピックアップしているので、プレイしている方なら見たことがあるキャラクターになると思います。
新規で1から作成したキャラクターはいないのですが、『#コンパス』では詳細な設定が決まっておらず、『#ライアリ』で新たに設定を起こしたキャラクターもいます。
設定の際は『#コンパス』チームとも連絡を取って、このキャラクターはこう設定しましょうというのを認識をすり合わせながらいっしょに考え、『#ライアリ』で発表するという形で準備しました。
――これらのキャラクターについて、今後ヒーローたちのストーリーに絡んでくることはあるのでしょうか。
佐藤D いつかできたらいいな、と考えています。ただカードイラストしかないキャラクターが3Dで動くヒーローたちとどう絡むか、という課題もあります。楽しみにされているプレイヤーの期待を裏切らないクオリティが叶えられるよう、しっかりと準備したうえでやりたいですね。
――楽曲の追加ペースについて教えてください。
佐藤D 最終的にはイベント追加曲も込みで、月に5曲~6曲の追加を目指しています。ただ現状は月に3曲ぐらいのペースですね。
――歌い手バージョンや別振り付けバージョンなど、既存楽曲のバリエーションもこの枠内で行っていくという認識でよろしいでしょうか。
佐藤D そうですね。まったく新曲のボカロ曲も、ダンス違い、アレンジ違いなどの別バージョンも同様に楽曲の追加という形で実装していきます。
――現在はヒーローのテーマ曲やボカロ曲が実装されていっていますが、今後アニメソングやゲームBGMといった別ジャンルの楽曲を追加する予定はありますか。
佐藤D ボカロ曲以外の追加については、コラボ先の相手によって個人の持ち曲や作品の主題歌などがあると思うので、そこが該当するかと思います。
『#コンパス』と同様にいろいろなジャンルと幅広くコラボしていくので、それにともなってさまざまなジャンルの楽曲が追加される形になると思います。
――コラボする対象は『#コンパス』と似たようなジャンルになるのでしょうか。
佐藤D コラボの範囲はぜんぜん違ったものになると思います。『#コンパス』はバトルに参加するのが前提のコラボ作品群でしたが、葛葉さんや不知火フレアさんは、バトルメインの作品ではなかなか出せなかったメンバーだと思うんですよね。『#ライアリ』は『#ライアリ』の良さを活かせるコラボ先がいろいろあると考えていますので、その方向でコラボの枠を広げていけたらいいですね。
――現在のデフォルト設定とは異なるダンサーの編成で踊ることができる機能の実装予定はありますか。
佐藤D 案としては出ていますが、まだ優先度は低い状態ですね。プレイヤーが楽しめるような入れ換えモードがあるといいな、とは思っています。実際にリリースしてみてどの程度要望が挙がるかでも変わってきますね。
――今後本作オリジナルの要素として、本作だけの楽曲やヒーローが追加される可能性はあるのでしょうか。
佐藤D テーマ曲の『リズム』が『#コンパス』にはない楽曲なので、それに近い形ですね。『#ライアリ』だからできる表現として、オリジナル楽曲が追加される可能性は高いと思います。
ヒーローに関しては予定はないのですが、できたらいいよねという話はかなり昔から出ているので、そのうちあるかなぁ? 林さん(笑)。
はやしP まずは『#ライアリ』にはオリジナルヒーローが出切っていないので、そこを揃えるのが先かなと思います。
佐藤D 『#コンパス』側に登場しているヒーローたちはできるだけ早く出してあげたいとは思っているのですが、いろいろバランスもあるのですぐの実装は難しいですね。月に1~2体、頑張って3体ぐらいのペースで動いています。
――正直なところ、思ったよりも早いペースですね。
佐藤D やはり推しがいない環境は早く解消してあげたいというのがありますね。
『#ライアリ』ならではのVTuberコラボ
――コラボ第2弾、第3弾としてVTuberコラボが発表されました。アプリリリース直後のこのタイミングで、『にじさんじ』の葛葉さん、『ホロライブ』の不知火フレアさんをコラボ相手に選んだ理由をお聞かせください。
はやしP 先ほども話した通り、まず『#コンパス』ではできないコラボというのがありました。『#コンパス』に何らかの興味を持っていただける方に参加してもらいたいし、そして御本人に登場して踊ってもらいたい。それでVTuberさんの事務所とお話をさせていただいた結果、このお二方に決まりました。
――今回のコラボ相手はいずれも事務所所属のいわゆる企業系VTuberで、かつ個人単位でのコラボとなっています。スマホゲームのVTuberコラボとしては珍しい形式ですが、事務所単位ではなく個人単位でのコラボを選んだ理由があれば教えてください。
はやしP 『#コンパス』でもそうなんですが、キャラクターひとりひとりにフォーカスしてゲームが作られている点が大きいですね。僕らの場合はしっかり踊らせるところまでキャラクターを作り切るので、今回はその1体に全パワーを集中しますという意味でひとりずつのコラボになっています。
――VTuberの中には数名のユニットで楽曲を出している方も多くいますが、今後ユニット単位でのコラボの可能性はありますか。
はやしP そのときの状況次第ですが、可能性はあると思います。さすがに20人グループです、とか言われると困りますけど(笑)。
――コラボキャラクターやコラボ楽曲は、コラボ終了後も継続して遊ぶことができるのでしょうか。
はやしP はい、コラボ期間に手に入れていただければその後もずっとプレイすることができます。
葛葉さんやフレアさんは楽曲内でのダンスだけでなく、ヒーロー画面で年間を通して見ることもできます。コラボ期間が終わった後にしか聞けないメッセージも出てくると思うので、コラボ期間中にログインして手に入れておくことをオススメします。
――たとえばコラボで手に入れておけば、クリスマスシーズンに葛葉さんやフレアさんからの特殊メッセージがもらえる可能性も……。
はやしP あるかもしれない(笑)。
――先ほどコラボ相手の持ち歌が追加されるというお話もありましたが、このVTuberコラボではそれぞれの個人曲が追加されるのでしょうか。
佐藤D それぞれのコラボで、追加楽曲は2曲ずつになります。御本人が歌唱し、ステージ上にダンサーとしても登場する曲が2曲ずつ入ります。
またステージには登場しませんが、既存楽曲の別バージョンとして歌唱だけで参加する楽曲が2曲ずつ入ります。
――今後もVTuberコラボを継続していく場合、どのような方とコラボしてみたいですか。
はやしP せっかくなので、やっぱり『#コンパス』を知ってくださっている方を中心にお話をしていきたいと思っています。バトルアリーナ側の話になりますが、猫宮ひなたさんはご本人がめちゃくちゃ『#コンパス』が上手かったからこそ「これは登場させたい!」と思ってコラボさせていただいたという流れもありました。『#コンパス』に対して何らかの思いがある方に参加してもらえるとうれしいですね。
――先日の“ニコニコ超会議2022”では、“VTuber Fes Japan 2022”の不知火フレアさんのステージにVoidollと乃保が登場する一幕がありました。逆に『#コンパス』側のイベントにコラボしているVTuberが出てきたり、あるいは現在出演されている踊り手・歌い手さんたちのように継続して出演される可能性はありますか。
はやしP 予定は立っていないんですが、『#コンパス』の世界って自由なので、そういうめぐり合わせやチャンスがあったらきっと「やりましょう」と声をかけるかもしれないです。