【ひらブラ vol.41】『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』ボルテージ開発秘話(その2)
2014-10-31 12:00 投稿
今回の「ひらブラ」も、前号に引き続き、特別号でお届けします。
女性向けの恋愛ドラマアプリで有名なボルテージが満を持して贈る「サスペンスアプリ」最新作、『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』。配信されたばかりの本作を開発したクリエーター陣へのインタビュー記事をお届けします。
インタビューの前半を未読の方は、こちらの記事をご覧下さい。
ボルテージ『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』開発陣インタビュー
https://app.famitsu.com/20141024_457960/
マルチOS開発での工夫
―本作はiOSとAndroid(近日リリース予定)に対応していますが、マルチOSでの開発について聞かせて下さい。
玉井謙介氏(以下、玉井) iOSとAndroidではテクスチャの見え方がけっこう違うので、なるべく元素材の美しさが忠実に再現されるようにOSごとのチューニングを行いました。画像素材のグラデーションの有無などに応じて、最も適した圧縮フォーマットを使い分けるといった工夫をしています。
また、端末に応じて最適な環境でゲームを楽しんで頂きたかったので、ゲームデータは標準画像と高精細画像とを用意しておき、端末によって対応しているデータがダウンロードされるような仕組みにしています。
―現状のユーザ比率としては、どちらのOSが多いのでしょうか?
加藤慶太氏(以下、加藤) だいたい半々ですが、若干iOSのユーザが多いようです。プロモーションの施策としてiOSユーザのほうが集まりやすい状況だったことも理由かもしれません。
―CRIWAREはマルチOSでの開発という点ではいかがでしたか?
玉井 両OSに対応しているということは前提条件でしたが、いちばん大きかったのはUnity対応のミドルウェアであるという点です。本作はUnityで開発しているのですが、ネイティブプラグインとしてCRIWAREを使えたことで、結果的にマルチOSの対応もスムーズにできました。
土屋昇平氏(以下、土屋) 音に関して言うと、特にAndroidに関しては、CRI以外の選択肢はありえなかったですね。OS標準のメディアプレイヤーを使うといろいろと制約が多いので…。
当然サウンドファイルは圧縮することになりますが、MP3などの一般的な圧縮フォーマットだと、ループ再生がかなり困難です。相当手練れたプログラマさんでないと圧縮音声でループを実現するのは無理ですからね。
さらに、セキュリティ面も大きいです。アプリの楽曲データってけっこう簡単にぶっこ抜かれてしまったりするのですが、ADX2の暗号化機能はクリエイターにとって非常に嬉しい機能です。
幅 ボクもファミ通Appのブログにもたびたび関連記事を書いていますが、Androidというと音声のレイテンシ(遅延)が気になると思いますが…
土屋 その通りです。もともとADX2は標準再生と比較してもレイテンシが少なかったですが、ここ最近、またさらにレイテンシが改善されてきましたよね!
あと、Androidって端末の種類も莫大でそれぞれのサポートがとっても大変なんですが、ADX2を使うことで、ある意味で、その端末差対応の部分を代わりにやってもらえていることになるので、すごく助かっています。
開発体制とCRIWAREの役割
―ゲーム全体容量のなかでサウンドデータの占める割合は?
加藤 ADX2のHCAコーデックのおかげで圧縮がききましたので、すごく少ないですよ。
玉井 おそらく10分の1か、それ以下に収まっていると思います。
土屋 さきほどファイルマジックProの話がありましたが、音についても、このミドルウェアを使うことでメリットが出てきます。
幅 といいますと?
土屋 アプリのリリース後に追加でストーリーやシナリオを配信することって多いですが、音も追加するのって、これまではけっこう難しかったんですよね。それがファイルマジックProをつかうことで、テキストや画像と同じような感覚で「音」についても追加配信ができるというのは、大きな利点です。
Androidでは比較的やりやすいですが、iOSの場合はうまくやらないとアプリの全データを差し替えなきゃいけなくなったりしてしまいます。それが、ファイルマジックProを使えば、どんなデータでも差し替えが利くようになりますからね。
―本作の開発は何名で行われたのですか?
加藤 企画やディレクション系は当初2名でスタートし、最終的には4名で回しています。開発全体としては、社内外を含め、だいたい10名前後で行っています。
玉井 開発フェーズによって出入りもあるので、正確な人数が把握しにくいのですが…
加藤 実はまだプロジェクトの「打ち上げ」をやっていないので、正確な関係者の人数は打ち上げのときに判明すると思います(笑)。
―CRIWAREを初めて使ってみた感想はいかがでしたか?
玉井 何よりもサポート対応の速さが嬉しかったですね。質問や要望にも丁寧に対応して頂けて、初めての導入でしたが、スムーズに行うことができました。機能や性能面も申し分なく、満足しています。
幅 なにか、リクエストなどはありますか?
玉井 そうですね…CRIWARE全体としてはかなり高機能なので、なかなか全ての機能を使いこなせないかなぁ、と。ミドルウェアを最大限に使いこなすための勉強をしなければと思っています。
幅 以前も実施したような、御社内でのセミナーも引き続き実施していけるよう、当社としても協力したいと思います。当ひらブラblogの特別企画として実施した「ひらブラ★アカデミア」というセミナーで「アルファムービーの作り方」というグラフィッカー向けのTIPSをご紹介したことがあるのですが、そのセミナーにもボルテージさんはご参加頂いていたので、とても勉強熱心な企業風土だなぁ、と感じておりました。
玉井 そうだったんですね!そうそう「アルファムービー」は当社としても今後、演出面でぜひ使ってみたい機能のひとつです。あと、複数の動画を同時に重ねあわせたような演出にも興味があります。
幅 今後のタイトルでの実現を楽しみにしています!
土屋 あと、Mac版のツールをなるべくはやく出して欲しいです。現状はWin版だけなので、Macの場合はVM環境などでツールを動かさないといけないので…。
リアルタイムのリップシンク系ミドルウェアもぜひ作って欲しいですね。アドベンチャーゲーム向けに、セリフを音声認識しながらグラフィックに反映されるような。
幅 ミドルウェアの開発チームにしっかりと伝えておきます!
読者や開発者に向けたメッセージ
―最後に、読者やプレイヤー、他のアプリ開発者に向けてメッセージをお願いします。
土屋 ボク自身も本当に楽しくプロジェクトに関わらせて頂けたので、ぜひお客様にも楽しんで頂きたいです。やり残した部分のないゲームになっているので、仕上がりにも大満足しています。
ボルテージさんとのコラボで良かったのは、変わりやすいユーザの好みに合わせてコロコロ方針を切り替えるのではなく、ストーリーを魅せる!というこの点に集中特化してこだわられているところです。ブレがなくて安心して作ることができました。だからこそ、ゲームをプレイして頂ければすぐに、ボルテージさんがお客様に伝えたい思いというのがお分かり頂けると思っています。
サウンドクリエイターとしては、あまり世の中のムーブメントに反応しすぎないほうが良いと思います。勉強して得たものが製品作りに反映できる頃には世の中のムーブメントはすでに更に先に行ってしまったりしますからね。自分が得意なものややりたいことを軸足にして、作品作りに臨むことを強くオススメします!
玉井 サスペンスというと、ちょっと重いイメージがあるのではないかと思いますが、本作は「気軽に遊べる」ことを重視して作っているので、ぜひ幅広い方々に遊んでもらいたいと思っています。
また、本作は、CRIさんのミドルウェアを初めて使ってみたり、男性向けのコンテンツ作りに挑戦してみたりと、新しいことに積極的に挑戦したプロジェクトでもあります。
本作をプレイしてみて、既存のボルテージという会社のイメージとはちょっと違うなぁと思って頂いたり、興味を持って頂いたエンジニアの方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に仕事をしてみたいですね(笑)。
加藤 スマホでゲームをされる方にとって、とても遊びやすいゲームに仕上がったと思っています。少しでも興味を持って頂けたら、ぜひ構えずに、まずはダウンロードして試しに遊んでいただけたらと思います。
本作を開発していて特に痛感したのは、日々、スマホでできることが進化しているんだなぁという点です。この「進化」に自分たちだけの力で付いていくのはとても難しいことだと思います。
今回の場合だと、ZUNTATAさんやCRIさんのように、せっかく周りには凄いスキルやノウハウを持った人たちがいるのですから、最先端のものを作ろうとするときには自分だけでやろうとせずに、そうした協力者の方々と力をあわせて実現していくべきだと思っていますし、オススメです。
―加藤さん、玉井さん、土屋さん、本当にありがとうございました!
ゴシップライター ~消えたアイドルを救え!~
- メーカー
- ボルテージ
- 配信日
- iOS版は配信中 Android版も配信予定
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iOS 6.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。
- コピーライト
- (C)VOLTAGE Inc.
…というわけで、今週のひらブラはここまで。
それでは、また次回の更新でお会いしましょう!
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※【ひらブラ vol.40】『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』ボルテージ開発秘話(その1)
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※vol.1-4:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは
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幅朝徳(はば とものり) 株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。GREE社やnhn社といった企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュースも行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。現在、さらなる新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当する傍ら、ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。
趣味は、映画鑑賞とドライブ、クロースアップマジック、デジスコによる野鳥撮影、コンパニオンバードの飼育、そしてもちろん、ゲーム。
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