【ひらブラ vol.40】『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』ボルテージ開発秘話(その1)

2014-10-24 12:00 投稿

今回の「ひらブラ」は、特別号でお届けします!

女性向けの恋愛ドラマアプリで有名なボルテージが満を持して贈る“サスペンスアプリ”最新作、『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』。配信されたばかりの本作を開発したクリエーター陣へのインタビュー記事をお届けします。

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インタビューの前半を未読の方は、こちらの記事をご覧下さい。

ボルテージ『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』開発陣インタビュー

https://app.famitsu.com/20141024_457960/

今回のインタビューに登場するのは、『ゴシップライター〜消えたアイドルを救え!〜』プロデューサー兼ディレクターの加藤慶太氏(株式会社ボルテージ執行役員 サスペンスBusiness Unit長)と、同作のシステム面の開発を担当する玉井謙介氏(同 執行役員 システム本部)、さらに、本作の楽曲を担当したZUNTATA土屋昇平氏のお三方です。

ゴシップライター ~消えたアイドルを救え!~

メーカー
ボルテージ
配信日
iOS版は配信中 Android版も配信予定
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS 6.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。

ミドルウェアを使うことになった経緯について

―本作は、やっぱりヘッドフォンでプレイしてもらいたいですか?

加藤 これだけ音にこだわった作品なので本音としてはYESですが、スマホでプレイして頂くゲームなので、いろいろな環境で遊んで頂くことを想定して作っています。

なので、たとえスピーカーがOFFであっても、ヘッドフォンがなくても、十分に楽しんで頂けるようになっています。

本作では、ゲーム画面の下に、つねに「ミュート」や「振動OFF」ができるボタンが表示されているのも、そうしたいろいろな環境下でプレイされるお客様への配慮です。

ただ、その分、ゲームからプレイヤーにたいするフィードバックが不足してしまうので、それを補う意味で、たとえば文字を震えるように表示するなどの演出面のフォローを入れています。

土屋 個人的には、スマホのスピーカーがずっとモノラルなのが不満ですね(笑)。ステレオに対応して欲しい。あと、音の鳴る場所にも配慮が必要で、スマホの持ち方によってスピーカーを塞いでしまうような配置の機種もあったりしますからね。

米国などでは、スマホのゲームに音が無いというのはすでにクレーム対象になっているんです。それだけ音の存在が大きくなってきているので、ハードウェアとしても配慮のある製品が増えていくと嬉しいですね。

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▲プロデューサー加藤氏(左)と、ZUNTATA土屋氏(右)

―ボルテージさんがCRIのミドルウェアを導入することになったきっかけは?

幅 今年の2月にモバイル系の企業の方が集う飲み会があって、それに参加したときにちょうどお隣同士になったのがボルテージさんだったんです。

ボクも偶然、ボルテージさんにはミドルウェアをご提案したいと思っていて、その機会を探していたところでした。そして嬉しいことに、ボルテージさんも「CRIWAREのことが気になっていて話をしたいと思っていた」と仰って頂けて。

その場で、ボルテージさんの開発スタッフを対象にした社内技術セミナーのご提案を差し上げたところ、すぐに快諾して頂きました。何回かに分けて社内セミナーを実施したのですが、とても大きなセミナー会場にたくさんの社員の方がさまざまな部門から参加して下さいました。

玉井 過去にも、UnityCocos2d-xといったゲームエンジンについて、ゲストを招いて社内セミナーを行ったことがありますが、CRIさんのセミナーも非常に多くの社員が参加してくれました。

参加は強制ではないので、自主的に興味のあるスタッフが集まって行う形式になっています。

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ボルテージ玉井氏

幅 実際のセミナー後の反響はいかがでしたか?

玉井 大きかったですね。とくに、ゲームの演出を「ムービー」を使って実現するという発想がボクらにはなかったので、とても参考になりました。演出のが広がるなぁ、とか、開発の工数が減らせるなぁ、といった意見も聞かれました。

デザイン部門からもシステム部門からも、ぜひ使ってみたい、やってみたい、という声が上がりましたね。

幅 それは嬉しい反応です!

玉井 ただ、どうしてもエンジニアやクリエーターは「やりたい」が先行してしまうので(汗)、いかに実タイトルでミドルウェアを活用するかという議論が必要でした。当然、どのようにマネタイズにつながるか、という視点も重要ですからね。

実は、当初は別のアプリでミドルウェアを使おうと考えていたのですが、ミドルウェアの有用性をより発揮できるコンテンツで使うべきだということで、今回の『ゴシップライター』での採用が最初になりました。

幅 そうだったんですね。

玉井 いろいろと検討している時期に、ちょうど本作でZUNTATAさんとのコラボが決まり、そのZUNTATAさんがCRIWAREの経験が豊富であるということで、導入決定の追い風になりました。それなら、きっとミドルウェアの良さを最大限に発揮できるんじゃないか、と。

動画演出やダウンロード部分にもミドルウェアを活用

ADX2以外のミドルウェアは使われましたか?

加藤 CRIWAREのなかでは、「Sofdec2」を動画の圧縮に使っています。アプリを起動したときに再生されるオープニングムービーはもちろん、ゲーム中の演出表現のシーンにも、Sofdec2のムービーを使っています。

幅 どんなシーンで使っていますか?

加藤 特定の文字を表示する際に、プログラムでは処理しきれない複雑な演出をしたいシーンに使っています。

ゲーム上でムービーを表示する際に、全画面で行うか、部分的に限定して行うか、その選択可能性を残しておきたかったので、とても助かりました。現状、ほとんどのムービーは全画面で再生されていますが、スクリプト上でちょっといじれば部分再生ができるような実装になっています。

今後のバージョンアップやコンテンツ配信のなかで、あらゆる可能性を持っておきたいという狙いもあり、プログラム的には実装されています。

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会話中に挿入されるムービー技術を使った文字エフェクトシーン

幅 今後の演出が楽しみですね!

加藤 はい!ただ、どんな演出が最も効果的かどうかはいろいろと試行錯誤している最中なので、技術の価値が発揮できるような表現を模索しています。

今後、引き続き、追加の物語を作っていきますので、そのなかで新たな表現をぜひ試していきたいですね。

―「ファイルマジックPro」はどんな部分に使いましたか?

玉井 おもに、動画ファイルのパッキングに使わせて頂きました。

加藤 今作では、ゲームデータのダウンロードのタイミングをいろいろと工夫しています。アプリをインストールした直後にすべてのファイルをダウンロードするのは時間的にも厳しいので、大きく3つにダウンロードファイルを分割しています。

その分割ファイルを作る際に、ファイルマジックProのパッキング機能を活用しました。具体的には、ストーリーが「甲斐編・久世編・遭遇編」と3つに分かれているのですが、初期段階ではこのうち「甲斐編」だけをダウンロードするようになっていて、物語が進行すると、残りを取得するような作りになっています。

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大きく3つに分かれているストーリー

―動画のエンコード作業はプログラマの方が担当されたのでしょうか?

加藤 実は私がやりました(笑)。

幅 えっ!?そうだったんですか?

加藤 はい。というのも、動画つまりムービーシーンをどれくらい圧縮しても良いかという判断は、製品のクオリティと直結する部分なので、プロデューサーである自分が行うべきだと考えました。

幅 作業はしやすかったですか?

加藤 はい。先ほどのADX2でのダッキング調整のときと同様に、納期ギリギリまで調整することができました(笑)。「まだイケる!もっとイケるかも!?」とパラメータを調整してはエンコードして、画質をチェックするという作業を繰り返して、納得できるバランスのものを採用しました。

ビットレートだけでなく、解像度の調整もいろいろと試しました。

幅 ファイルサイズと画質の関係は悩ましい部分ですよね。最終的な品質判断をされるプロデューサーの方がエンコードを行うというのは、とても理にかなっていますね。

加藤 エンコード時間もとても速いので、エンコードパラメータを追い込んでいく作業はとてもしやすかったです。

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次号につづく

というわけで、今週のひらブラはここまで。

それでは、また次回の更新でお会いしましょう!

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【バックナンバー】

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※【ひらブラ vol.35】快適な音ゲーをAndroidでも実現するための試み(シリーズ)

※【ひらブラ vol.34】スマホは人を「行商」にする

※【ひらブラ vol.33】ゲームがアツい”秋”が到来!CEDEC & 東京ゲームショウ

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※【ひらブラ vol.3】ドラクエの起動画面のひみつ(続・Cocos2d-xとCRIWAREの話)

※【ひらブラ vol.2】 LEDで無重力をつくる話

※vol.1-4:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは

※vol.1-3:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは

※vol.1-2:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは

※vol.1-1:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは

※vol.0:創刊準備号ということでジコショーカイ

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幅朝徳(はば とものり) 株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。GREE社やnhn社といった企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュースも行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。現在、さらなる新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当する傍ら、ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。

趣味は、映画鑑賞とドライブ、クロースアップマジック、デジスコによる野鳥撮影、コンパニオンバードの飼育、そしてもちろん、ゲーム。

CRI・ミドルウェア ウェブサイト

http://www.cri-mw.co.jp/

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