【ひらブラ vol.9】目にみえないデータの恐怖と魅力(Unityオーディオの独自強化)

2014-03-14 12:00 投稿

“公開”して“後悔”しないために、知っておきたいこと

「スマホで撮った写真をウェブに公開したら自宅がバレた
「写真の撮影日時がブログ記事に書いてある内容と違う!と指摘された」
「写真にモザイクをかけて公開したのにモザイクのない画像が流出している」
「写真をUPしただけなのに、なぜか本名がバレた

上記は、いずれも実際に発生した事象です。

▲「ああ、やっちゃった・・・!?」一度はそんな経験をしたことがありませんか?

なにげなく撮影した写真には、画像データだけではなく、実はいろいろな情報が保存されている。このことを意外と知らない人が多いようです。知人や友人にも聞いてみたところ、ご存知でない方がけっこう多かったことに驚きました。年配の方や、最近スマホに乗り換えたばかりの方に多いようです。

これは、ブラックボックスな予感・・・

というわけで今回は、写真に保存されているメタデータについて触れてみたいと思います。「そんなことは知ってるから、UnityとCRIWAREの話をハヤク!」という方は、ここからジャンプしちゃってください(笑)。

デジタルカメラのファイルシステムであるEXIFDCFといった名前は、スマホが普及する以前から存在するものなので、聞いたことにある方はきっと多いと思います。どちらもJEITA(電子情報技術産業協会)が制定した規格で、ひろく世界中のカメラメーカーで採用されています。

下記は、ボクが自分のiPhone5Sで撮影したある写真のEXIFデータを、専用のビューアソフトで抽出したものです(一部抜粋)。

Equipment Make: Apple ←カメラのメーカー名
Camera Model: iPhone 5s ←機種名
Image Orientation: Right-Hand, Top ←画像の向き
Image Created: 2014:02:17 14:14:56 ←撮影日時
Exposure Time: 1/120 sec ←露出時間
ISO Speed Rating: 64 ←ISO感度
Lens Aperture: f/2.2 ←レンズF値
Flash: No Flash, Compulsory ←フラッシュ
Latitude: N 35° 39’ 43.17 ←位置情報(緯度)
Longitude: E 139° 42’ 21.80 ←位置情報(経度)
Altitude: 57.32 m ←高度

このように、写真にはいろいろな情報が保存されているのがお分かり頂けるかと思います。

かくいうボクも、実は、EXIFデータでは何度か大きな失敗をしたことがあります。

まだtwitterに画像Upload機能がない頃、twitterクライアントアプリを経由して外部の写真Uploadサービスを利用したことがあります。このサービスでは位置情報を添付するかどうかをUP時に設定できるので安心して利用していたのですが、写真ではなく動画をUPした際に事件は起きました。

ボクの飼っている小鳥の動画を観た、とあるフォロワーの方から「幅さん、◯◯に住んでいるんですね〜」とDMが!!どうやら動画の位置情報が削除されず、しかもご丁寧にもマップ上にマーカーが付いた状態で公開されていたようです。

さらに、こんなこともありました。日光に紅葉狩りに行った際に紅葉をバックに愛車の写真を撮影し、とあるアプリでナンバープレート部分を白く塗りつぶしてblogにUPしたのですが、知人から「ナンバーが見えてるよ」という指摘が…。これは、おそらくEXIF内に保存されているサムネイル画像が更新されていなかったのだと思います。

著名なSNSやブログサービスの多くは、画像や動画などのアップロード時に余計なEXIFデータを削除する仕組みを備えていますので、安心して利用できます。

撮影地の情報についても、EXIFデータの情報ではなく、画像Upload時の端末側の情報を使用するので、写真そのものには位置情報が保存されずに公開されるサービスが大半です。

念のため、FacebookとTwitterで試してみましたが、どちらもUPした写真のEXIF情報は削除されていました。

なお、電子メールへの写真添付や、ダイレクト型のメッセージングサービスでは、EXIF情報を含んだ状態で写真が送信される場合があります。相手との信頼関係があれば問題ありませんが、そうでない場合はEXIF情報を削除してから送信する等の防衛策をしたほうが良いかもしれません。

写真からEXIF情報を削除する方法はネットで検索すればすぐに調べられますし、便利な無料ツールなども配布されています。

ステキな写真を撮影したら、やっぱり、知人や多くの人に共有したいですよね。

スマホのおかげで高解像度の本格的な写真が手軽に撮れるようになりましたし、写真のレタッチや加工も専門的な知識や技術がなくてもアプリでカンタンに出来るようになりました。その上、インターネットへの公開もワンタップ!…いやはや、ほんとうに凄い時代になりました。

でも、カンタンだからこそ、そのワンタップの「公開」「後悔」しないように、いつも一定の緊張感をもって接するくらいが丁度良いのかもしれません。

過度な心配は不要ですが、写真そのものには実はいろいろな情報が併せて保存されているという事実を意識しておくのが良いでしょう。

もちろん、気をつけなければいけないのはEXIFデータだけではありません。被写体そのものとその公開・共有にも気を配ることが大事です。

▲「公開」ボタンの押下は慎重に・・・

通称「バイトテロ」のような炎上騒動や悲劇は、本来、リアルグラフ間でのみ許されること(倫理上許されないものも数多くありますが・・・)を、ソーシャルメディア上で「公開」してしまうことによって起きているケースがほとんどです。知人同士の「共有・共感」と不特定多数への「公開」との違いを少しでも想像できれば、その行為の危なさに気付けるはずなのですが…。

バイトテロは極端な例だとしても、SNSではついやってしまう、いわゆる「リア充自慢」。これも、やり過ぎると嫌われるのでご注意を(汗)。自分ではそのつもりはなくても、タイムラインに美味しそうな料理やドヤ顔の写真ばかりが並んでいると・・・なんとなく嫌味な感じになりますよね。ネオ◯ルズ族と呼ばれているような方なら、むしろそれがキャラクターになっている気もしますが…。SNS上の投稿やアクティビティは、原則として「多くの人間の目に晒されている」のです。

つい忘れがちですが、こうしたライフログというのは、私蔵することと公開することには大きな違いがあることを覚えておく必要があります。

ライフログとしての写真メタデータ

ボクは、海外出張に行くと必ず、自分のクルマをiPhoneで撮影するようにしています。海外、とくにアメリカのショッピングモールやオフィスビルの駐車場はとても広大で、どこにクルマを停めたか分からなくなって迷子になることが多いんです。

立ち去り際に写真を1枚撮影しておくことで、写真のEXIF情報としてGPSの位置情報を保存することができます。ただシャッターを押すだけなので、メモをとるよりもはるかにカンタンです。

最近は、日本でも大型のショッピングモールが増えているので、この方法が役に立ちます。ただ、GPSの精度にも限界があるので、クルマの写真とともに、近くのエリア番号表示や階数表示を撮影するようにしています。

駐車場でよく迷ってしまう、という方は、とてもカンタンにできる方法なのでぜひ試してみてください。

余談ですが、アメリカのクルマの多くは、キーリモコンの「ロック」ボタンを押すと「プッ」とクラクションが短く鳴るようになっています。リモコンの電波が届く範囲であれば、この音を頼りに探すこともできます。でも、日本仕様のクルマは控えめで、ウインカーが点滅する程度なのでちょっと難しいかも…。

冒頭では、写真のメタデータの怖い側面ばかり書いてきましたが、このように写真を「ライフログ」として活用すると、本当に便利なものになります。

つい先日、上司からこんな相談を受けました。

「こんど、カナダにオーロラを観に行くことになったのだけれど、オーロラの撮影方法についてアドバイスが欲しい。たしか幅くん、昔、オーロラの写真を見せてくれたよね?」

ボクがオーロラを撮影したのは9年も前のこと。記憶もあまりアテになりません。でも、デジカメで撮影したことは覚えていたので、当時撮影したオーロラの写真を調べてみることにしました。そして、バッチリ、写真に保存されたEXIFデータが当時の撮影環境を保存してくれていました。

▲9年前にアラスカで撮影したオーロラ写真(とボク)
Camera: Canon PowerShot S30
Exposure: 15
Aperture: f/2.8
Focal Length: 7.1 mm
Exposure Bias: 0 EV
Flash: Off, Did not fire
ISO Speed: 800
Date and Time (Original): 2005:01:16 23:29:04
Metering Mode: Multi-segment
Exposure Mode: Manual
Self Timer: 10 s
Target Exposure Time: 15
Compression: JPEG (old-style)

EXIFデータを見ると、

 ・フラッシュは使っていない

 ・ISO800、露出モードはマニュアル

 ・セルフタイマーを使っている(つまり三脚自撮り)

 ・シャッター開放時間は15秒(!!)

ということが分かります。

オーロラ撮影は特殊な被写体のため、銀塩写真にこだわって撮影している方も数多くいらっしゃいます。でも、写真の出来はともかくとして(汗)デジカメで撮影することによって、このように撮影当時の状況が9年の月日を経て手に取るように分かるというわけです。

…15秒間も、零下40℃を超える環境で、両手をあげて我慢していたと思うと、ちょっと可笑しいですね(笑)。現地はあまりにも低気温なので電池が満充電でも数分しかもたないことなど、もちろんEXIFデータに保存できないノウハウもいろいろあります。こうしてEXIFデータを眺めていると、当時のそんな記憶が蘇ってきます。

どうやらその上司は、素晴らしいオーロラの写真を撮影することができたようです。良かった良かった!

プロやセミプロのカメラマンのなかには、あえてEXIFデータを付けた状態で作品を公開している方も多く、そうした写真のEXIFデータを読み解きカメラの設定を知ることでプロの撮影テクニックを学ぶことは、撮影技術の向上にも役立ちます。

ちなみに、上記のオーロラ写真には位置情報が保存されていません。当時、GPSセンサーは一部のプロ用撮影機材にしか用意されておらず、コンパクトデジカメの機能としては搭載されていなかったからです。今ではコンデジの搭載機種も増え、スマホに至ってはもはや標準機能であることはご存知のとおりです。

あ、EXIFにある「Compression: JPEG (old-style)」って部分も、ちょっと時代を感じますね(笑)。

今後デバイスのウェアラブル化が進んでいくと、写真やそのメタデータの活用はより本格的に、そして、より身近になっていくと思います。

そのなかでも、ボクがいま注目しているのが、クラウドファンディングの「kickstarter」で目標額の10倍を超える調達を実現して注目を集めたNarrative(ナレイティブ)』という商品です。実物はこちら

この商品は、指先で摘めるくらい小型のクリップ型カメラを身に付けておくだけで、30秒ごとに写真が自動的に撮影されるというシンプルなものです。GPSや加速度計の情報とともに写真が保存され、それを専用のクラウドサービスにUploadすると、顔検出エンジンやシーン解析技術によって、ユーザが閲覧しやすい意味のあるグルーピングが自動的になされるそうです。

 

Google Glassと同様、このNarrativeも被写体のプライバシーは慎重に配慮される必要はありますが、写真とそのメタデータをシンプルにライフログを目的として商品化&サービス化した好例だと思います。

ハードとしてはシンプルな構成ですが、大量データの閲覧サービスそのものの質や使いやすさが重要でしょう。また、実際の生活に役立つ「具体的な」ユースケースの提案も普及のためのポイントになると思います。(実はボクも注文済みなのですが、出荷の延期が繰り返されたためにまだ手元に届いていません。日本でもすでに入手済みの方はいらっしゃるようですが…)

ライフログの古典的な手法といえば「日記帳」という文化がありました。それが、いわゆるホームページになり、ブログになり、twitterやFacebookになりました。

これらは、いずれも「言葉」という媒体が中心となっているライフログですが、今後はそれも大きく変わっていくでしょう。

画像や動画といったリッチコンテンツ(この表現そのものもいささか古臭くなってきましたが…)に比べると、テキストデータはサイズも小さく圧縮もしやすく、扱いやすいものでした。ブロードバンド化やモバイルも含めて常時ネット接続が当たり前になった今、インフラも揃い、リッチコンテンツが「リッチ」ではなく、当たり前のものになってきました。

実際、Facebookのエントリを眺めていても、テキストだけのものよりも、圧倒的に「写真付き」のものが多いことに気付きます。友だちやフォローの人数にもよりますが、たくさんのエントリがひしめき合うタイムラインのなかで、主張やメッセージ性の強い写真というのは、より多くの方の注目を集め、結果として「いいね!」も増える傾向にあります。

Facebookには、その写真に写っている全ての顔を自動認識し、それが誰であるかを推測する機能が用意されています。さらに、撮影場所や日時はもちろん、その写真を撮影したときの「気分」を付加することも可能です。

EXIFデータではありませんが、これらも、写真に付随するメタデータの一種と言って良いでしょう。ライフログとしての価値も非常に高いものだと思います。(もちろんサービス提供側の視点では、ユーザのプロファイリングにとっても非常に強力であることも事実ですが。)

本来、感光紙に光を焼き付けて化学反応を起こすことで映像を記録していた「写真」。それがデジタル化されることによって、目に見えるもの以外の情報もいっしょに保管することができるようになりました。劣化の問題も(理論的には)皆無となり、ライフログのデータは永遠の命を持つようになったとも言えます。

なにげなく撮影した写真が、未来永劫、自分の死後も永遠に残り続けるかもしれない…。ちょっと怖いけれど、ちょっとロマンチックじゃないですか?

9年前、初めて目にするオーロラを無我夢中で撮影しているときに、一緒にいた仲間から言われたセリフを思い出しました。

 「このオーロラは今ここでしか見られないんだよ!?」

どんなにデジカメの解像度や性能が向上しても、メタデータとして保存できる情報が増えたとしても、そのとき・その場での「ライブ」での感動を保存することはできません。彼は、撮影に夢中になりすぎてファインダーばかり覗いていたボクを見かねて、声を掛けてくれたのでした。

天球全体にひろがる荘厳なオーロラを、大地に仰向けに寝そべって見入ったひとときの体験は、何枚写真を撮ろうと、匹敵するものではありません。でも、そうした写真は、当時の素晴らしい体験を思い出すための最高のきっかけになっています。

スマホを使っていると、本体にどんどん大量の写真が溜まっていきますよね。ボクは、それらの写真を、撮影地情報をもとに地図にマッピングした状態で見るのが好きです。iPhoneの場合、iOS7になってから、この「撮影地マップ表示」が少し選びにくくなってしまい(iOS6まではカメラロールの標準メニューとしてボタンがありましたがiOS7で無くなってしまいました)少し残念なのですが、今でも、その写真を撮影したときの状況を思い出すのに手軽でかつ最高の「ライフログ」となっています。

iOS7にアップデートしたとき、撮影地マップ表示の方法が分からず困りました。ひらブラFacebookページの「はみだしコラム」としてその方法を掲載しておきますので、お困りのかたはぜひご参考下さい。

ゲーム起動時の「アレ」

写真のメタデータに少し似ているかもしれないのが、ゲームやアプリの起動時やタイトル画面に表示される社名や技術ロゴです。そのゲームを開発するのに使った技術をクレジット表記している、例の「アレ」です。

製品パッケージのある家庭用ゲーム機の場合は、ソフトのケースにゲームエンジンやミドルウェア技術のロゴが印刷されていました。パッケージのないスマホのアプリでは、ゲーム内そのものやAppStoreやGoogle Playといったダウンロードページのなかにその標記を見つけることができます。

一見ゲームプレイヤーにとっては不要な情報に思えるかもしれませんが、近年、こうした表示をするアプリが増えてきています。これは、もちろんゲームエンジン企業やミドルウェア企業の製品の利用規約にもよりますし、実際にそうした技術を導入するアプリの数が増えてきているのも事実ですが、実際には、そのアプリの品質や信頼性の高さを示すために積極的に表示するケースが増えてきているようです。

最近でも、UnityのロゴやCocos2d-xのロゴを積極的に表示する大作ゲームアプリがリリースされているので、実感して頂けると思います。

イメージとしては、映画館などで「うちのシアターはこんな凄い音響設備を備えています」とか「ほかのシアターでは体験できない没入感のある大画面システムを導入しています」というアピールのために、そうした技術規格のロゴを掲出しているのに似ています。最近だと、IMAXDolby Atmosの導入を“ウリ”にした映画館の新オープンやリニューアルの告知をよく目にします。

このように、導入技術の表示は、プレイヤーがゲームを選ぶためのひとつの指標にもなりつつあります。

もちろん、プレイヤーはゲームを遊ぶためにアプリをインストールしているのですから、ユーザビリティに配慮する必要があります。

ちなみに、当社のCRIWAREも一定の商標表示規定を設定していますが、なるべくユーザビリティとの両立がなされるよう配慮しています。(例えば、起動時のロゴ表示はユーザ操作によってスキップ可能としており、そのアプリへの実装方法は一定の条件のもとゲーム開発会社さまの裁量に委ねています。)

Unityをパワーアップ:【その1】

前回の記事で、スマホ界のデファクトスタンダードとなったゲームエンジン、Unityについてご紹介しました。ゲーム開発者の方が、どのような視点でゲームエンジンやミドルウェアを選択したり、導入検討しているかについても触れました。

今回からは、Unityと当社プラグイン技術によって実現可能なリッチゲームやハイエンドアプリ向けの「表現手法」についてご紹介していきます。

Unityを独自に拡張するという意味では、大きく「音」と「動画」と「ファイルシステム」に分類できるのですが、そのなかから、今回はとくに「音」について紹介したいと思います。

おそらくこの3つのなかでは”もっとも地味”なネタかもしれませんが(汗)、Unityに関するお問い合わせのなかではいちばん件数が多いもの、すなわち、もっとも悩んでいる方が多い部分ということになります。

簡単にまとめると、以下の3点になります。

【Unityを独自拡張するCRIWARE(ADX2)の特長:その1】
〜 音(オーディオ)関連 〜

(1)Unityで扱いにくい「イントロ付きループ」BGMの再生を実現
(2)Unityオプションの「Best Latency」よりも早いオーディオ再生
(3)音声再生時のCPU負荷の高さやサイズ増の問題の解決

(1)Unityで扱いにくい「イントロ付きループ」BGMの再生を実現

Unityを採用されている開発者の方からのご相談で、もっとも多いのがこの点です。つまり、CRIWAREとUnityを同時利用して頂いている方の多くは、この「イントロ付きループ」のBGM再生を実現するためにCRIWAREを使っています。

「ループ」再生とは、その名のとおり、特定の音楽データを繰り返し再生し続けることです。映画や音楽鑑賞とは異なり、ゲームというのはプレイヤーの操作によって進行していくので、ゲームの進捗状況や展開はプレイヤーによってまちまちです。そのため、ゲームのBGMはずっと鳴り続けている必要があり、それを実現するために「ループ」再生という手法が使われます。

「イントロ付き」というのは、「ループ」再生の対象となるBGMの再生を開始するときだけ、別のフレーズを再生したい場合を指します。

CRIWAREを使うことで、この「イントロ付きループ」を、途切れることなく綺麗に繋いで実現することができます(シームレスループ再生と言ったりもします)。

ゲームプログラム側に特別な工夫をすることなく実装が可能です。さらに、このシームレスループ再生は圧縮音声に対して行うことが難しいのですが、CRIWAREは圧縮音声によるシームレスループ再生を前提に設計されているので、データサイズを抑えながらループ再生を行うことができます。

ループして戻ってくる時点のことを「ループポイント」と呼びますが、CRIWAREでは、このループポイントも任意に設定できます。ループポイントを複数設定することも可能で、ゲームに最適な音声表現を手軽に実現できます。

(2)Unityオプションの「Best Latency」よりも早いオーディオ再生

過去の記事「スマホで「音ゲー」3つの課題(ハマるな危険!アプリ開発の落とし穴)」でも書きましたが、Androidの場合は、音声再生のレイテンシ(=遅延)が問題になることが多くゲーム設計に大きく影響します。iOSのみに限定してリリースされている音ゲーなどは、これが原因であることが多いです。

CRIWAREでは、Android用に「ネイティブサウンドレンダラ」という低レイテンシ再生モードを用意しているので、再生レイテンシの問題を解決するのに役立ちます。このCRIWAREの「ネイティブサウンドレンダラ」による再生は、Unityオプションの「Best Latency」よりも早くなることが確認されています。

(3)音声再生時のCPU負荷の高さやサイズ増の問題の解決

スマホで音声再生(MP3)を行う場合、ハードウェアデコード処理による再生は、同時に1本しかできません。2本目以降の音声再生はソフトウェアデコード処理になるため、CPU負荷はどんどん高くなってしまいます。

ゲームには、BGMだけでなく、セリフ音声や環境音、効果音やシステムSEといったさまざまなサウンドが同時に重なって非同期に再生されます。

非圧縮のWAVファイルの再生を使えば比較的自由度は高くなりますが、ファイルサイズが非常に大きくなってしまいます。

CRIWAREには、CPU負荷の低い独自の高音質/高圧縮コーデックが用意されているので、音声のファイルサイズを小さく圧縮しつつ音質も維持することが可能です。

▲CRIWAREでは、用途に応じて最適なコーデックを選択可能です。

実際にUnityとCRIWAREを併用されたゲームアプリ(アクションゲーム)の事例ですが、効果音やボイス素材が700ファイル以上、BGMが18本もあるそのゲームでは、117MBの音声ファイル(オンメモリ再生用)を5MBに、234MBの音声ファイル(ストリーム再生用)を10MBに圧縮することができました。23分の1にまで圧縮できている計算になります。

ちなみに、CPU負荷は単に低いだけではダメで、負荷変動が少ないことも重要になります。コーデックによっては再生開始の瞬間にCPU負荷が極端に高くなるようなものや、周期的に負荷が大きく変動するものがあるので注意が必要です。

CRIWAREが用意しているコーデックは、いずれも負荷変動が少なくステイブルなので、プログラマにとっても使いやすいものになっています。

ここで触れた3点以外にも、以下に挙げたような、ゲームサウンドに特化した機能を豊富に用意しています。

【CRIWARE(ADX2):その他の特長】

・ボリューム調整機能(波形編集ソフト不要/アプリ側での動的制御)
・ダッキング機能(セリフ再生中にBGM音量を下げる等の処理)
・発音数の制御機能
・カテゴリ機能(音声ファイルのカテゴライズと一括調整機能)
・インタラクティブサウンドに対応
・プログラマとサウンドデザイナの分業を実現するツール提供
・iPod音楽検知機能(アプリ起動時のiPod音楽の扱い)
・その他のゲーム向け各種機能(ランダマイズ/エフェクト/優先度、等)

など

ここでは、上記のそれぞれについての詳しい解説は省きますが、上記の項目でビビっとくる方は、ぜひCRIWAREを触って頂ければと思います。

Unity向けのCRIWAREは、UnityのネイティブプラグインというかたちでSDKをご提供していますので、Unityをお使いの方にとって非常に使いやすくなっているのも特長のひとつです。スクリプトからの制御が可能です。

次回は、引き続き、UnityとCRIWAREによって実現可能な表現手法についてご紹介する予定です。次回は、動画を活用したゲーム演出技法をご紹介しながら、スマホとは思えないような豪華な演出を手軽に実現する方法についてお届けします。お楽しみに!

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【バックナンバー】
※【ひらブラ vol.8】CarPlayはOSか?(ゲームのリッチ化とUnityについて)
※【ひらブラ vol.7】スマホで「音ゲー」3つの課題(ハマるな危険!アプリ開発の落とし穴)
※【ひらブラ vol.6】雪を溶かすメカニズム知ってる?(プロデューサー説得トラの巻)
※【ひらブラ vol.5】ギョーカイ用語は「言葉」のブラックボックス
※【ひらブラ vol.4】gumi田村さんに訊く「ズバリ!Cocos2d-xのココが魅力」
※【ひらブラ vol.3】ドラクエの起動画面のひみつ(続・Cocos2d-xとCRIWAREの話)
※【ひらブラ vol.2】 LEDで無重力をつくる話
※vol.1-4:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは
※vol.1-3:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは
※vol.1-2:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは
※vol.1-1:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは
※vol.0:創刊準備号ということでジコショーカイ

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幅朝徳(はば とものり) 株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。GREE社やnhn社といった企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュースも行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。現在、さらなる新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当する傍ら、ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。

 

趣味は、映画鑑賞とドライブ、クロースアップマジック、デジスコによる野鳥撮影、コンパニオンバードの飼育、そしてもちろん、ゲーム。

CRI・ミドルウェア ウェブサイト
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