【ひらブラ vol.29】ありえないほど近い!のススメ(オトナ向けシルクを観てきた話)
2014-08-01 12:00 投稿
シルク・ドゥ・ソレイユといえば、もはや日本でも知らない人はいないと言っても過言ではない世界的にも有名なサーカス集団です。
ボクの場合、オーランドで観た「La Nouba」が同集団との初めての出会いで、”常設演目”というもののケタ違いの迫力に圧倒されました。日本初の常設「Zed」も公演がはじまって直後に行きました(終わってしまって残念です‥)。いつかラスベガスで、多くの方が最高傑作と口を揃えておっしゃる「O」を観るのが夢です。
シルク・ドゥ・ソレイユは、それまでの「サーカス」に対するイメージを完全に塗り替えてしまったと言っても良いでしょう。
同団体の名称にも含まれている「シルク(Cirque)」という言葉、既にご存知の方も多いとは思いますが、「サーカス」を意味するフランス語です。
何でも略して呼称するのが大好きな日本人(笑)。便利ではあるのですが、ときどき混乱を招くことも。「シルクを観たよ!」と言った場合、「シルク・ドゥ・ソレイユを観たよ!」という意味になるケースがまだ多いでしょう。
…でも、これからは違うかもしれませんよ?
その名も”ダークシルク“という、ちょっぴりオトナ向けの「シルク」がいよいよ日本にも上陸したからです。
今回は、そんなお話。今週もお付き合い下さい。
オトナ向けの「シルク」を観た!
どちらかといえば映画派なので、演劇系の舞台芸術やライブエンタテインメントはあまり経験したことのないボクです(あ、マジックは別ですよw)。そんなボクが、今回の”ダークシルク”を観劇することになったきっかけは、3つありました。
1.シルクであること
2.ありえないほど近い!というキャッチコピー
3.信頼できる方からのオススメ
幼少期にみた昔ながらのサーカスも好きですが、先述のシルク・ドゥ・ソレイユによって革新的な再定義がなされたいわば「ヌーベル・シルク」にすっかり魅了されていたボク。今回の演目がシルク(=サーカス)であるというだけでワクワクしてしまいました。
さらに「ありえないほど近い!」という素敵なキャッチコピー。
以前のエントリにも書いたとおり、ボクはマジックを観るのも演るのも好きなのですが、とくにお気に入りなのがクロースアップマジック、つまり目の前で演じるマジックです。空気感を共有しながら至近距離で経験するミラクルにすっかり魅了されてしまったわけです。
シルク・ドゥ・ソレイユも開演前や幕間などに観客とのインタラクティブでユニークなやりとりがあるのですが、基本的にはわりと遠くの舞台上で起こる出来事を鑑賞するスタイルです。もちろん、公演あたりの総コストやチケット単価、常設施設の建築コストなど、ビジネス的な観点からもある程度の集客キャパシティが必要になるのは当然のことですし、そのような観賞スタイルに最適化された壮大なスケールの演目を楽しむことが出来るというわけです。
その点、単に「近い」ではなく「ありえないほど近い!」というキャッチコピーには、まるでシルク・ドゥ・ソレイユに宣戦布告(?)しているかのような、刺激的な響きがあります。
そして、今回のシルクが、当社のビジネスパートナーのDXL CREATION社の方からのオススメであり、同社が製作委員会に参加しているという点も大きな要素でした。イマドキ、SNSやウェブにはたくさんの情報が溢れていますが、究極の口コミはやっぱり「信頼できる知人からのオススメ」ですからね!(結構ボクって保守的なタイプなのかな?w)
そんなわけで、ずいぶんと「もったいぶって」しまいましたが、今回ボクが観てきたのは、『EMPIRE(エンパイア)』というダークシルクです。
EMPIREの詳細については公式サイトをご覧いただければと思いますが、とにかく「艶美な雰囲気」が最大の特長です。ライティングも紫が基調となっており、開演前からミステリアスな雰囲気がプンプンしてきます。
衣装や演目、演出や世界観に至るまで、「ダーク」でセクシーなムードの漂うEMPIRE。たった直径4メートルの丸型ステージを全方位的にぐるっと囲むように用意された客席。「ありえないほど近い!」というキャッチコピーは、確かに看板に偽りなし、という感じでした。
そうした世界観のなかで繰り広げられる各演目は、観客を飽きさせることなく実にテンポよく進んでいきます。まさに、あっという間の90分。人間というのは生身でこんなことまで出来てしまうのか!と不思議な感動を覚えます。
あまり詳しく語ってしまうと「ネタバレ」になってしまうので控えますが、シルク・ドゥ・ソレイユでも「見たことのない」ような超絶ワザをたった数メートル先で目の当たりにできる興奮は、小キャパシティで空気感を共有できる規模のライブイベントならではと言えるでしょう。
「近さ」は、単にステージと観客のあいだの距離だけではありません。
ハイライトとなる演目のあいだごとに挟まれる、観客とのインタラクティブなやりとり。無作為に選ばれた観客が、EMPIREのメンバと「とあるコミュニケーション」を行うのですが、、、その内容は、とてもここでは書けません(汗)。
個人的には「選ばれなくて良かった…」と思わず安堵してしまったのですが(笑)、そんなスリル感もダークシルクたるEMPIREならではの個性的な要素のひとつなのでしょう。
ある意味で、EMPIREの最大の見せ場と言っても良いのかもしれません!?
ソーシャル世代のための新たな演劇スタイル
ニューヨークタイムス誌は、EMPIREを読者にオススメする際に「ロッキー・ホラー・ショーのキャストが演じるシルク・ドゥ・ソレイユを想像してみて」と表現したそうですが、まさにそんな感じでした。
EMPIREのもつ独特のサイケデリックでビザールな世界観は、確かに、多少、観るひとを選ぶかもしれません。
老若男女に愛されるディズニーのようなコンテンツもあれば、突出した個性やインパクトで熱狂的なファンを獲得するコンテンツもあります。そうした広い選択肢が用意されていることは、エンタテインメント・ビジネスのとても素晴らしいところだと思っています。
このことは、サーカスや演劇だけではなく、映画や古典芸能、書籍、マンガ、アニメ、そしてもちろんゲームにも当てはまるところです。
こうした個性やインパクトを重視したコンテンツにとって、マーケティング面で大切なのが「くちコミ(バズ)」による伝搬効果。スゴいことを体験したとき、その体験を他人に話したい!自慢したい!という欲望は誰にでもあるものです。
ブログ時代→SNS時代の変遷のなかで、体験の共有は、特定の発信力のある人の特権ではもはやなくなり、誰でも/いつでも/手軽に/瞬間的にできる身近なものになりました。
ボクが、この「EMPIRE」の会場に入ったときに驚いたのは、入口で渡された、このビラの内容でした。
「当公演は動画・写真の撮影が可能です。」
思わず目を疑いました。
フラッシュや赤目防止発光/全編にわたる動画撮影の禁止など一定の条件はあるものの、演技中のあらゆるシーンを撮影することが出来るというのです。
開演前も、演技者たちが自ら「どんどん撮影してシェアしてね!」と、撮影が可能であることを積極的にアピールしてくれます。
写真はもちろん、動画までもが撮影できてしまうというところに、ソーシャル世代をターゲットにしたエンタテインメント・ビジネスの新しいカタチを見出すことができます。最近では、アーティストのライブ・コンサートにも自由に撮影が許されるものが増えてきています。
タブーだったものが突然OKになると、ユーザ側の立場としてはちょっとビックリというか、躊躇するところもあるのですが(汗)。その企画の真意や狙いを理解すれば、いろいろなものが見えてきます。
観客は、その瞬間に大きな影響力を持つインフルエンサーになれる時代になったということ。エヴァンジェリストと言ってもいいかもしれません。
もちろん、コンテンツそのものに自信があることや、版権処理などの法的な事前ケアが解決されていること、撮影シャッター音や撮影行為そのものが他の観客の観賞やコンテンツそのものに悪影響を及ぼさないなど、一定の条件があてはまる場合のみ可能になるレギュレーションであるとも言えます。アクターやキャストの方たちのプレッシャーもその分大きくなるでしょうし。
シルク・ドゥ・ソレイユは、3D映画の巨匠としても名高いジェームズ・キャメロンの総指揮によって映画化がなされたことがあります(作品名「シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語」)。映画館で封切られたその日にボクも観に行きました。この映画を観たからといってコンテンツに対する満足度が満たされるわけではなく、むしろいっそう「O」(冒頭にご紹介したラスベガス公演のひとつ)が観たくなるわけです(笑)。料理でいうと、さんざん美味しそうな写真と香りだけを見せつけられた感じでしょうか?
ライブ・エンタテインメントの魅力は、まさにここにあると思います。
ライブであることのコンテンツ力に自信があるからこそ、撮影が自由という大盤振る舞い。自信の顕れとも言えるわけですね。
というわけで、「ありえないほど近い!」というキャッチコピーに含まれる「近い」という言葉の別の意味を、EMPIREというシルクのなかに発見することが出来たのでした。
それにしても、この「ありえないほど近い!」距離感、なんだか他人ごととは思えません。
というのも、実は、当社CRIのミドルウェアも、「ありえないほど近い!」をモットーに頑張ってきました。
創業以来、パッケージ・ミドルウェアに関しては、一貫して「サポート無償」「試用段階(採用決定前)でも無制限サポート」という基本スタンスを続けています。インシデント課金や別途保守契約のスタイルを採るケースが多いなか、CRIは、(ライセンス料に)オールインクルーシブという考え方で、お客様とつねに接してきました。
お客様との信頼関係を何よりも大事にし、お客様に満足して頂くことで、繰り返し当社技術を活用してもらう。そのために、技術面でもビジネス面でも、お客様の抱えている課題や実現したいお客様の願望や夢を「共有」することを最重視しています。
結果として、ライセンスビジネスを主たる事業としているにもかかわらず、それぞれのお客様との距離感は本当に密接で、まさに「ありえないほど近い!」関係になっています。
そんなCRIなので、当社ミドルウェアを検討中の企業の方や開発者の方は、どうか遠慮なくお問い合わせをいただければと思います。(躊躇してるとモッタイナイですw)
実際、当社ミドルウェアの試用SDKをダウンロードして使って頂いている方のなかにも、ちょっとした使い方や実装のコツなどをお伝えさせて頂くことで、それまで悩んでいた課題や問題が一気に解決したという事例が数多くあります。
また、当社ミドルウェアに直接関係したり起因したりしない部分であっても、ミドルウェアひとすじ&業界最老舗としての知見のなかで、役に立つアドバイスや解決方法を提供することができるかもしれません。
クリエイターの皆さんに頼って頂けるような「ありえないほど近い!」CRIを、これからも宜しくお願いします!
さて、今週のひらブラはここまで。
また来週の更新でお会いしましょう!
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幅朝徳(はば とものり) 株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。GREE社やnhn社といった企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュースも行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。現在、さらなる新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当する傍ら、ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。
趣味は、映画鑑賞とドライブ、クロースアップマジック、デジスコによる野鳥撮影、コンパニオンバードの飼育、そしてもちろん、ゲーム。
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