【ひらブラ vol.22】CRIロードマップを「ファミ通」読者さま向けに読み解いてみた
2014-06-13 12:00 投稿
梅雨ですねぇ。毎年のこととはいえ、毎日続く降雨と高湿度にはちょっとウンザリ…。我慢できず、帰宅後はドライ運転でエアコンをONにしています。そういえば、一時期エアコンの冷房とドライではどっちが電力が多いかが話題になりましたね。
気になって、改めて調べてみました。
結論は、ドライモードの種類によるみたいです。除湿した空気を冷えたまま部屋に戻す「弱冷房除湿」と少し加熱してから戻す「再熱除湿」の2つ。冷房も含めて消費電力を比較すると「弱冷房除湿<冷房<再熱除湿」となるそうです。より詳しく知りたい方は、ぴちょんくんによる分かりやすい解説をどうぞ(自分のエアコンがダイキンさんだったので)。
さて、今回の「ひらブラ」は、先週CRIが発表したばかりのロードマップについてです。
IT系企業が今後リリースを予定している製品や技術、機能や性能の向上や拡張のスケジュールをまとめたものを「ロードマップ」と呼びます。いわばテクノロジーの利用者やステークホルダーの皆さまに対しての所信表明のようなもの。
CRIはここ数年、ロードマップを毎年必ず発表しています。そして今年も、先週、2014年のロードマップを発表しました。
CRI・ミドルウェアがゲーム開発向けCRIWARE 2014のロードマップを発表
2014年のCRIWAREは、スマートフォンとゲーム機のマルチプラットフォーム開発環境を強化し、より多くのプラットフォームへのゲームタイトル展開を支援。ゲームエンジンへの対応を拡充するとともに、開発工数を短縮する各種機能の強化を行う。
ゲーム開発者の方ならともかく、「なんのことやら・・・???」と、まるで暗号か呪文のような感じかもしれません。
そこで、今回はこのロードマップを読み解き、ゲームプレイヤーを含むファミ通読者の皆さまにも解りやすくご理解頂けるように、幅的に「翻訳」してお届けいたします。
今週もお付き合い下さい〜。
(1)本文から読み解く
ロードマップ2014は、CRIのウェブで現物をチェックできますが、ここからは、その発表内容に即して、順番に説明していきます。
まずは、オーディオ系技術「CRI ADX2」から。
■新機能概要
CRI ADX2
● スマートフォン向けプレビュー機能(実機プレビュー/インゲームプレビュー)
実機プレビューは、作成中のサウンドを、ゲームに組み込まなくてもスマートフォン実機上で再生できる機能です。実際のスマートフォンでの聞こえ方を確認しながら、音の作り込みが可能になります。
インゲームプレビューは、開発中のゲームプログラムのサウンドを、ゲームを動作させながら調整することができる機能です。音量やパン、エフェクトなどのパラメータ設定をADX2 のオーサリングツールから直接操作でき、サウンド調整を大幅に効率化します。
(ニュースリリース原文より)
実機プレビューとか、インゲームプレビューって、あまり聴き慣れない言葉かも知れません。簡単に言うと、ゲームサウンドに手を加えたときに、いちいち「ビルド」を繰り返さなくても、スマホ実機上でその音が再生できる機能です。
CRIWAREでは、これまで家庭用ゲーム機向けに提供されていた機能で、ゲーム開発者の皆さんにも好評を頂いていた人気の機能のひとつ。今回、スマホにも対応する方針となりました。
ビルドは結構時間がかかるプロセスなので、これを行わずに音が気軽に再生できるのは、大幅は時間の短縮になります。気軽に実機で再生してみることができるので、細やかな調整ができるようになります。
まとめると・・・
【開発者にとってのメリット】
・スマホ実機上ですぐに音声再生が可能
・納得いくまで実機上でサウンド調整を手軽に行える
【プレイヤーにとってのメリット】
・サウンド表現がリッチなゲームが遊べる
・自分の持っているスマホにベストな音でゲームが遊べる
となります。
■新機能概要
CRI ADX2
● プロファイラ機能
発音数が多くなり複雑化するサウンド演出について、ゲームプレイ中のサウンド情報の可視化を行い、デバッグの飛躍的な効率化を実現します。サウンドの再生ログ(音数、CPU 負荷など)を数値やグラフに置き換えることで、視覚的な解析を可能にし、調整やデバッグにかかる時間を大幅に短縮します。
以下は解析情報例(予定)です。
・サウンドやボイスの再生開始/停止タイミングのタイムライン表示
・パフォーマンス状態変化のグラフ表示
・時刻、項目名、動作内容などのログのテキストデータ表示
・3D で配置したボイスにおける時刻に対する位置情報表示
(ニュースリリース原文より)
この機能も要望の多かったもののひとつです。スマホの性能も向上し、映像面ばかりでなく音声面もリッチ化の一途をたどっています。
素材やパラメータの数が増えれば増えるほど、それを管理するのも大変になるのは当然のこと。そのためにはビジュアライゼーション(可視化)が大切になります。
今回対応を発表したプロファイラ機能は、人間にとってリアルタイムに情報把握のしやすい「可視化」を実現するものです。
ADX2開発チームのリーダーから、このプロファイラのプロトタイプ画面を入手したので、ひらブラ読者に独占先行にて、お見せします。もちろん、画面は開発中のものなのでその点はご了承下さい。
まとめると・・・
【開発者にとってのメリット】
・CPU負荷やボイス数や3D音響など、音にまつわるさまざまな情報を可視化して把握
・ゲーム全体のバランスをはかりながらの調整やデバッグの効率が大幅UP
【プレイヤーにとってのメリット】
・ハードの性能を最大限に発揮した高品質なゲームがプレイできる
・こまやかな調整や配慮の行き届いたゲームサウンドを楽しめる
となります。
■新機能概要
CRI ADX2
● PERFORCE 対応
多人数開発などで重要となる、サウンドやプロジェクトデータの履歴管理機能を強化します。オーサリングツールのバージョン管理ツール連携機能を、すでに対応済みの「Apache™ Subversion®」に加えて「PERFORCE」に対応します。
(ニュースリリース原文より)
スマホゲームのリッチ化については、このブログでもたびたび触れてきました。リッチ化はすなわち、大規模開発化=多人数開発やオフショア開発を加速します。1つのプロジェクトに大勢の開発者が関わるため、いわゆる「バージョン管理システム」が必要になります。
バージョン管理システムにもいろいろなものがありますが、今回、ゲーム企業での採用も多い「PERFORCE」にADX2が対応する予定です。
まとめると・・・
【開発者にとってのメリット】
・SubversionだけでなくPERFORCEにも対応し、よりバージョン管理がしやすく
・スマホ開発の大規模化にも対応しやすい
【プレイヤーにとってのメリット】
・家庭用ゲーム機に匹敵するクオリティやボリュームのゲームがプレイできる
となります。
そして、ムービー系技術「Sofdec2」にも、新しい機能が!
■新機能概要
CRI Sofdec2
● H.264 ビデオコーデック対応
従来の独自ビデオコーデックに加えてH.264 ビデオコーデックに対応し、マルチプラットフォームでのH.264 ムービー再生をサポートします。プラットフォームごとに最適化したパラメータ調整を、Sofdec2 エンコーダーが自動で行います。
対象プラットフォーム:PS4™ 、Xbox One、PS3®、PS Vita、Wii U
(ニュースリリース原文より)
今回の発表では、まずはCS機からの対応となっていますが、いよいよSofdec2がH.264コーデックに対応します。
もちろん、従来のSofdec独自コーデックも使えますが、H.264コーデックでSofdec2の先進的な機能やAPIが利用できるようになるのは、Sofdecにとっても久しぶりのビッグニュースです。
まとめると・・・
【開発者にとってのメリット】
・従来の独自コーデックに加えて、圧縮率で定評のあるH.264が選択可能に
・Sofdec2エンコーダーもH.264に対応予定なので作業フローはこれまでと変わらず
【プレイヤーにとってのメリット】
・動画を効果的に活用しつつも容量を抑えたゲームをプレイできる
となります。
(2)ロードマップ図から読み解く
ニュースリリースの本文では解説が少ないけれど、ロードマップ図のなかに記載されているポイントを、より詳しく紹介してみます。
おお、そういう意味だったのか!って思われる方も、きっと多いはず。
CRI ADX2(スマートフォン向け)
● Cocos2d-x 3.0 対応
● Unityバージョンアップ対応
CRIWAREは、はやくからスマホ向けゲームエンジン「Cocos2d-x」への対応を行い、実際のゲームにご採用頂いてきました。現在、最新版「3.0」への対応を鋭意、進めています。
また、ゲームエンジン「Unity」は最新版「Unity5」の発表がなされ、すでに予約注文がスタートしていますが、これにももちろん対応していきます。
開発者の多いゲームエンジンの最新バージョンには、なるべくタイムリーにCRIWAREを対応していく予定ですので、ご安心下さい。
CRI ADX2(ゲーム機向け)
● Unity対応 PS Vita/PS3、PS4/Xbox One
● Unreal Engine 4対応 PS4/Xbox One
● XACTプロジェクトコンバータ
Unityをベースにしたスマホと家庭用ゲーム機のクロスプラットフォーム展開を検討されているゲーム企業が急増しています。それに合わせて、家庭用ゲーム機向けUnityへの対応も進めていきます。
グローバルスタンダードであるゲームエンジン「Unreal Engine 4」にも、いよいよ対応です。お待たせしました。
さらに、Xbox向けにマイクロソフト社から提供されていたオーディオシステム「XACT」用のプロジェクトやデータを、ADX2向けに変換する独自ツール「XACTプロジェクトコンバータ」をリリースします。
XACTを利用していた方々がADX2に移行するのに役立つツールとなる予定です。
CRI Sofdec2
● ムービー演出サポート:アルファムービーサンプル素材公開/マニュアル強化
● Unity/Unreal Engine 4対応
当ブログでも何度もご紹介しているアルファムービー。
このアルファムービーを導入して頂きやすいように、サンプル素材の提供(AfterEffects用の素材やプロジェクトなど)を予定しています。ひらブラ★アカデミアでデザイナー向けのセミナーを開催しているのも、その一環です。
また、ADX2だけでなく、Sofdec2も、Unityの最新版やUnreal Engine 4に随時、対応していきます。
その他(調査)
● Linux対応
● MAC版ツール
さまざまなハードやプラットフォームに対応しているCRIWARE。現在、Linux対応のための調査を進めています。Linuxでぜひ使いたい!という方は、ぜひ積極的にお問い合わせを頂ければと思います。
また、iOSの台頭により、ゲーム業界にも爆発的なスピードで普及したMAC。現状、CRIWAREのツールはWindows上で動作するものになっており、MACで使う場合はWindowsの仮想環境のインストールが必須でした。
近年のMACユーザの増加に鑑み、CRIWAREツールのMAC対応を検討しています。まだ調査段階ではありますが、開発者の声に引き続き耳を傾けてまいります。
ロードマップ2014の「まとめ」
少し専門的になってしまったかもしれませんが、CRIのロードマップ2014、ご理解いただけたでしょうか?
いろいろありますが、大局的にお伝えすると、
1.ゲームエンジン(Unity, Cocos2d-x, Unreal)をバリバリにサポートするぜ!
2.スマホとゲーム機のハードルを無くして並行開発をカンタンにするぜ!
というのが、CRIからの大事なメッセージです。
ひらブラのスタート当初、創刊号(2014年1月)でも予告したとおり、ゲームエンジンを積極的に使って、スマホ&家庭用ゲーム機の両展開をしていこうという戦略を、多くの企業が採り入れ始めています。
その流れを強力にバックアップしていこうというのが、今回のロードマップに込められた、CRIからの「熱い思い」というわけです。
今回のひらブラはここまで。
では、次回の更新でまたお会いしましょう!
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※【ひらブラ vol.2】 LEDで無重力をつくる話
※vol.1-4:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは
※vol.1-3:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは
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幅朝徳(はば とものり) 株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。GREE社やnhn社といった企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュースも行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。現在、さらなる新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当する傍ら、ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。
趣味は、映画鑑賞とドライブ、クロースアップマジック、デジスコによる野鳥撮影、コンパニオンバードの飼育、そしてもちろん、ゲーム。
CRI・ミドルウェア ウェブサイト
http://www.cri-mw.co.jp/
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