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スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第二十八回 「星葬ドラグニルという戦い~その2~」

2012-08-23 20:38 投稿

●第二十八回 「星葬ドラグニルという戦い~その2~」


今回も前回に引き続き『星葬ドラグニル』のお話です。

前回はおもにアプリ容量に関して話しましたが、今回は商品販売のしかた“マネタイズ”について書きたいと思います。『星葬ドラグニル』は運営を行わない、落とし切りのスマホRPGとしては初めての“序章無料+章配信販売+ブーストアイテム販売”の課金形態をとっています。いわばこれもF2P(フリートゥプレイ)のコンテンツになります。これまでは、この規模の内容とクオリティーの作品をリリースする場合『ケイオスリングス』のように、1500円や2000円というアプリの中でも最高額で買い切っていただく形式をとっていました。つまり本作で「最高額から0円」へと一気呵成にパワーシフトを起こしたというわけです。

この作品は序章だけ無料なのですが、プレイ時間にして平均2時間は遊べる構造になっています。『ケイオスリングス』の場合は、未来のおもしろさをお客様が予測して購入というスタイル。一方『星葬ドラグニル』は冒頭部分で2時間、おもしろさを体験していただき、気に入ったら続きを購入するというスタイルです。「“おもしろいだろう”から買う」から「“おもしろいから”買う」へ。こうして考えるとパッケージに代表される売り切りのスタイルは、お客様にとてもリスクを強いているようにも見えますね。ロジックでいくと後者のほうが絶対良いように見えます。

でどうだったか?

結論から言えば、売り上げのみを“短期的”に見ると『ケイオスリングス』のように買いきり型のほうが売れたと思います。正直、現時点では『ケイオスリングス』や『拡散性ミリオンアーサー』や『ガーディアン・クルス』の売り上げには及びません。作品の出来栄えは、本当に遊ばないと損。何回も言うけど「先いくねっ!」オフ開きますからね、一人でも。

開発会社のウィッチクラフトさんにはスマホでしか体験できない(ここ重要)RPGの名作を創っていただいたと思っています。プロデューサーは“売る”ことに関する責任者ですので、“おもしろさ”の責任を果たしてくれた開発会社さんには本当に申し訳ない気持ちがいっぱいです。この子はこんなもんじゃないです。ようするに、“星葬ドラグニルという戦い”はプロデューサーの失敗談でもあるのです。ですが中長期的に見ればスマゲ革命、つまりスマホにおける未来ゲーム像(おもしろくて売れる新しいゲームの形)につながるノウハウが凝縮されているのです。『ドラグニル』をより多くの人に伝えて、つぎに用意する仕掛けをキチンと爆発させるためにも、とくに失敗は書くべきだと思っています。でないと自分に刷り込まれないですからね。今回は私が今後スマゲを売るために、自戒を込めて書いたエゴイスティックな原稿です。

「なぜ短期的には、こうなったか?」をおさらいします。まず単純に容量が大きいことがあげられます。これは前回書きました。F2Pのビジネス、とくに「なぜ無料で展開するのか?」。それは、「不特定多数の方々にまず手に取ってもらいたいから」です。その中には「そもそも買う予定なんてなかったけど、手に取ったらよかったから」という方も含まれますし、展開する側もそれを期待します。F2Pにおけるフリーとは、「そもそも買う予定なんてなかったけど、CMを見たらグッときたから」と同じ“広告の手法のひとつ”と言うことになります。容量が大きすぎたということは例えると、TVCMがきちんと流されていない、もしくは見たくても見られないのと同義になります。

こうなってしまうとビジネス的な影響は大きくなりますよね。無論、今回は「1.7GBでもいけるだろう!」という見込みでもって納得ずくのチャレンジをしていますが、ここの見極めは大変難しい。これを緩和する施策としてのランチャーは必須だと言うことです。これらがわかったのは大きい。いま色々検証をしていて、ランチャーをつかったり色々施策を打つと、1.7GBのものを1GBくらいにはできそうです。

また、大変勉強になったのが“ブーストアイテム課金”について。『星葬ドラグニル』には15~60戦闘分の経験値アップなどのドーピング的な商品が7種類あります。これらのアイテムは「時間をかけずにプレイをしたい」「手早く完全クリアまで行きたい」という最近のモバイルゲームに対してのニーズに応えるべく用意した言わば“時短アイテム”です。

制作側は、よっぽどのことが無い限り、これらのアイテムが無くてもクリアできるよう、ゲームバランスの調整を行っています。ですが、こういった商品があるとどうしてもブースト前提、課金前提でバランスを取っているのではないかとお客様に不安を与える事があることがわかりました。ようするに「ここのボス戦がクリアできないのはブーストアイテムを買わせるためにそうしているんじゃないのか?」と感じるお客様が出てきてしまう。理由はどうあれこれは真摯に受け止めたいと思います。

重ねて言いますが、このゲームはそんなことは無いです。また、そうした「直接、強さを売る。」形の課金バランスは今後も禁じ手だと思っています。敵が強い場合は通常の売り切りRPGのようにレベル上げをしたり、スキルツリーを育てて強力な技を手に入れれば快適に遊べるようになっています。ですので、前述の場合に必要な特殊アイテムと考えていただければと思います。ちなみにブ-ストアイテムの売り上げは好調で、一方で時短をしたいというニーズはあるんだということもわかりました。ネットワークゲームのように、強さが青天井で、さらにその強さを使って他プレイヤー相手に勝ったり、仲間を助太刀するような場合、ブーストアイテムは上記のようなストレスにはなりませんが、売り切り型のように“すべてのプレイヤーのゴール地点が決まっている場合”はこういう反響がある。というのは本当に勉強になりました。

また、なにより一番衝撃だったのは「このゲーム、お金とるのかよ!」という意見が増えてきたことです。「お金を支払ってゲームを遊ぶなんて考えられない」というお客様の登場は、時代の気分を象徴しているといえます。多くのF2Pタイトルが無課金でも時間さえかければ、課金者と遜色が無く遊べるように創られていて、無料で遊びつづけるお客様が全体の8割~9割を占めていることを考えると、こういった考え方もショッキングではありますが納得できます。F2Pの販売形態はあくまで、選択肢のひとつであって、お客様のニーズに応じてパッケージゲームのような料金体系も都度考えていく必要がありそうです。極端な話、不特定多数のお客様ではなくターゲットが明快な作品の場合は料金が10万円であってもいいわけです。ブランド品のビジネスですね。ただし、そういったやり方がゲームで通用しにくくなってきているというのがこの連載の第一回で書いたことです。現在、特モバイル二部で製作中のタイトルはすべて基本無料のものですが、なにもかもが無料である必要はないんじゃないかとも思います。F2Pを万能と思わずにお客様にとって、どういう形態がベストなのかは都度検証したいですね。

ほかにも色々なノウハウが得られた『星葬ドラグニル』。なにより一番のノウハウは、こういったことをプロデューサー陣と開発会社の両方が体験して自分のものにしたという事実です。コンシューマーゲーム出身のクリエイターが、スマートフォンで、基本無料のビジネスに、そのおもしろさを損なうことなく、オリジナルタイトルで勝負に出る。まだまだスマゲやF2Pのビジネスに抵抗感を示す製作者が多い中で、こういった体制が築けたのは来年以降に間違いなく効いてきます。『ケイオスリングス』のメディアビジョン。そしてこの『星葬ドラグニル』のウィッチクラフト。奇しくも、もともと同じ制作会社だったこの2社はスマゲの最前線にいます。現在制作をしているタイトルで来るべき2013年にスマゲ☆革命を起こしますよ! きっとスマゲだけでなくゲーム全体の最前線になるはずです。それではまた。

つづく

安藤武博
スクウェア・エニックスのゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。

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