スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第二十回 「『ロード オブ ヴァーミリオン 煉』、降臨。」

2012-05-07 23:23 投稿

●第二十回 「『ロード オブ ヴァーミリオン 煉』、降臨。」


まず、おかげさまでついに累計登録者数が30万人を突破した『拡散性ミリオンアーサー』の情報からお伝えします。去る2012年5月4日からGWイベントが開催中ですが、お客様にはご存知のとおり現在、不正なプレイヤーがランキングを荒らすという展開になっております。正しく楽しく遊んでいただいているお客様の迷惑になりますので、これについては厳正に対処します。また、バランスや仕様も一部見直しをかけます。初イベントということで、てんやわんやになっており、皆様にはご心配をおかけして申し訳ありません。お詫びのアイテムも岩野が用意しているようです。彼は連休中も飛び回っていましたね。多くの方に遊んでいただき、嬉しい悲鳴です。

さて、今回は2012年4月25日にMobageでサービスを開始した『ロード オブ ヴァーミリオン 煉』について書きます。『ロード オブ ヴァーミリオン』(LOV)は、まもなく(2012年6月17日で)サービス開始丸4年。さらに5年目を迎えて関連タイトルも着々と展開されている、もはやスクエニのブランドの一角を担うと言っても過言ではないタイトルです。スクエニ初のオリジナルタイトル(相変わらず、ここ重要)でのアーケードゲームでもあります。オリジナルタイトルっていうのがいいですね。

※『ロード オブ ヴァーミリオン 煉』の詳細はこちら

同じくオリジナルタイトルを手がけてきた安藤も、「どうしたらFFでもDQでもない新しい作品や価値を多くのお客様に届けて、愛してもらえるか?」ということを日々考えています。なぜなら、オリジナルタイトルが増えればスクエニのブランドが更に強固になるからです。守ることも大事ですが、同時に攻めなければ変化が起きません。変化しないものは必ず飽きられ、澱み、消えていくのがエンターテインメントです。『LOV』のプロデューサーである柴貴正も『ドラッグオンドラグーン』をはじめ、数々のオリジナル作品を手がけてきた男です。ファンタジーとして良い意味での“けれん”の出し方やスタッフィングが大変うまいプロデューサーで、彼のプロデュースワークは僕の『ソングサマナー』以降、特に『ケイオスリングス』の仕掛け方に大きな影響を与えています。

“けれん”というのも数値化出来ない、実にアンチKPI的な概念なんですが、何て言ったらいいのかな……。そのテーマが好きな人に対して“そそる”要素をゲームシステムやビジュアル、音楽等で盛り込む事とでも言うのでしょうか。その他にも、例えば、みんなの考えている“スクエニらしさ”を、「こういうやり方もあるんじゃない?」と、ある種の予定調和もありつつ、いい意味でキチンと裏切ってくるという感覚……みたいなお話です。一方、二十代の僕は予定調和をぶっ飛ばした、予想裏切りまくりのバカゲー路線に邁進していました。この時期に創ったのが『鈴木爆発』、『疾走、ヤンキー魂。』、『ヘビーメタルサンダー』などの作品。一切予定調和ないね。

主に“ダークファンタジー”の世界観において柴は、この“けれん”を創り出すのが大変うまい。彼と初めて同じクラスになった中一の時から、すでにうまかった。いまだに彼がゲームマスターとシナリオを務める『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(※公式サイト)を超えるおもしろさのRPGは無いですね。1学期に引いた伏線を3学期に回収するとか13、4歳の頃によくやっていたと思います。逆に学生だからできたとも言えますね。彼とテーブルトークRPGを遊んだ経験が、僕自身のゲーム創りの基礎体力になっているような気がします。あとは夜通しPC9801で光栄(現 コーエーテクモゲームス)の歴史シミュレーションゲームのマルチ対戦をやったり、『アクトレイザー』で“柴:アクション担当”、“俺:街づくり担当”とかもありました。俺、楽すぎるやろ。買ったその日にクリアーしていましたから、柴は昔からアクションゲームが得意でしたね。手がけたタイトルにアクションゲームが多いのは、こういった原体験から来ているのかも。彼はなぜか『ドラクエIV』を、わざわざ僕の家に来てやっていたりもしましたが、あれはなんだったんだろう? 僕は横でずっと『美味しんぼ』を読んでいるだけという。お互いなにがしたかったのだろうか……。そういえば“究極VS至高”という『美味しんぼ』のカードゲームを創ったり、『美味しんぼーる』というグルメ野球漫画(激しく謎)を描いたりもしましたね。この謎さ加減が実に中二ですな。

思い出話はこの辺にして、閑話休題。豪華作家陣を大集合させて創った『LOV』は、『拡散性ミリオンアーサー』のやりかたに影響を与えているのも間違いないですね。そんなこんなで、いまや四半世紀に渡る付き合いになる柴から、はじめてのコラボ話が持ち上がったのが去年の今頃。僕がちょうどモバイル部門に移籍をした直後に、『LOV』の世界をさらに広げたいというオファーがありました。彼の言うとおり、これほどまでの世界観や豪華なカードイラストを持った作品が、日本国内のゲーセンだけでしか遊べないのは勿体無いと感じ(だからこそ良いというのもあるのですが)、『ロード オブ ヴァーミリオン 煉』プロジェクトがはじまりました。丁寧に手がけられた作品ですから、自分で思う存分ブン回せるオリジナルと違って、原作者へ対しても、これまでのお客様に対しても、違った気の張り方をしないといけない。ですので、最初は受けるのが嫌だったのですが、付き合いが長い分遠慮もないので、やりにくさを通り越して思い切ってできるなと考えられたのも大きかったです。実際、柴は大半の部分を僕たちに任せてくれました。

プロジェクトでとにかく意識したのは、いかに『LOV』愛を大事にするかということ。そもそもアーケードと携帯のゲームとでは遊びが完全に違いますし、再現することは不可能。ですので、いかに知らない方にも、知っている方にも、より魅力的に、『LOV』の世界観を届けることができるかにフォーカスしました。これを実現するために、柴からもプロジェクト開始時点で提案がありました。それは、アーケード版『LOV』の世界観&ビジュアルを手がけているスタッフに、『ロード オブ ヴァーミリオン 煉』でも世界観&ビジュアルを見てもらうこと。結果的には、この座組みが非常に有効だったと思います。そもそもの作品の血と肉と骨を創った人たちが納得するようなものができれば、それは間違いなくひとつの『LOV』愛になります。原作スタッフの大きな協力と監修によって『LOV煉』は出来上がっています。もうひとつの愛。“柴貴正”愛に関しては、僕が前述の話も含めて、彼のダークファンタジー論とは何かということをスタッフにずいぶん話しました。柴の話を沢山して気持ち悪かったです。

その他、前回に書いたように筐体を制作会社に搬入したりして、勇躍サービスを開始した『LOV煉』。今後もまだまだパワーアップしていく予定です。まず現在、カードイラストは初代『LOV』のプレイヤーには懐かしのラインナップ+描き下ろしのイラストになっています。これもアーケード版『LOV』の歴史を追っていくかのように順次追加されていきます。加えて『LOV煉』用のイラストも多数書き下ろしてもらっています。書き下ろす際のコンセプトは“アーケードに逆輸入されても遜色の無いクオリティー”であること。もしかしたら実際、そういうこともあるかもしれません。アーケードと同じようにプロデュース&ディレクションをしています。

また、『LOV』といえば他タイトルとのタイアップカードも話題になりましたが、『LOV煉』でも是非やっていきたいと思っています。『拡散性ミリオンアーサー』と『LOV』には、共通するイラストレーターの方が多いですから、コラボできたらおもしろそうですね。

『LOV煉』に登場するカードには、アーケード版のカードに書かれているフレイバーテキストが完全に再現されています。これ、意外といままでデジタルデータとしては、WEBでもなかったことなんです。是非、新旧プレイヤー問わず『LOV煉』のフレイバーテキストを見て、ニヨニヨしていただければと思います。『LOV』のフレイバーテキストは実際、すごく読むのが楽しくて、まだ“ラノベ”という言葉がなかった時代のファンタジー小説を読んでいた、中学校の頃のことを思い出します。『アルスラーン戦記』、『創竜伝』、『ロードス島戦記』etc……大好きでしたね。そういえば、これも全部柴に教えてもらった作品だな。

カードのレアリティーもなるべく準じようと思いました。携帯市場での親しみやすさを意識してアレンジを加えている部分もあります。たとえばレアリティー“アンコモン”の概念は、携帯ゲームにあまり無い呼び方なので、“レア”に格上げしたり、可愛い女子キャラをより強くしたりといった調整を加えています。今後も『LOV』の世界観を踏襲しつつ、可愛い女子キャラは結構出てくると思います。今は初代『LOV』の時代なので、結構渋めですね。これはこれでオリジナリティーがあって好きです。現在、僕のデッキのリーダー使い魔は“とうこつ”です。

俺の、とうこつ。ワイルドだろー?

また、他作品と比べても本作は無料でかなり遊べるようになっています。無料でかなりガチャが回せます。これは『LOV煉』をきっかけに、「この世界観に興味を持っていただきたい」という気持ちの表れでもあります。携帯をきっかけにアーケードや『ロード オブ アポカリプス』といった作品を是非遊んでいただければ幸いです。ゲーセンやPS VITAでは『LOV煉』にも登場するキャラクターが、喋り、動きまくりますので、また違った楽しさがあります。一旦引退した『LOV』プレイヤーの方にも、『LOV煉』をきっかけに是非、ゲーセンに戻って欲しいですね。

いずれスマホでも縦横無尽に動く、本格アプリとしての『LOV』が登場してもいいですね。そうしたらいよいよ、“世界基準で創られているが、日本国内でのみ楽しめる”この作品が海を越える日がやってくるでしょうね。個人的に『LOV煉』を創ってよかったのは、柴をはじめとした、現在もコンシューマーないしはアーケード畑のクリエイターと改めて交流が持てたこと。これにより、僕たちはコンシューマー的なモノづくりを、あらためて携帯でも徹底的にやっていくという、よい再確認にもなりました。彼らにも携帯のゲーム、スマゲ創りの面白さや、市場のポテンシャルが十分伝わったように思います。スクエニ社内でも、いよいよ垣根が無くなってきた感じです。今後のスマゲは我々特モバイル二部、外部制作のコンシューマーを取り仕切るプロデューサー統括部、社内制作などなど、部門問わずに出てきそうな匂いがプンプンします。とにかくおもしろいスマゲが出てくることを、送り手としても1プレイヤーとしても楽しみにしたいですね。

そんな、コンシューマーとモバイルのノウハウを着実に貯めつつある、突撃部隊“特モニ部”が、実は手がけている隠し玉が更にあります。

それが、これです。元々違うチームで制作をしていたものを、僕のチームでのノウハウを活かすという意味で、恐れ多くも引き取らせていただきました。『LOV』と同様に人様の作品は引き締まります。今度は『サガ』です。河津神です。子供の頃の夢が叶うというか、目から血が出るくらい考えておもしろくしなければ、逆に悪夢に終わります。この作品も『LOV煉』を担当した、市川雅統プロデューサーが全力で『サガ』らしさとは何か? を徹底的に追求しています。発表してから、ずいぶん長い間お待たせしておりますが着実におもしろく、『サガ』になってきています。そろそろ本格的に動きつつある『エンペラーズサガ』にも、ご期待下さい。それではまた来週。

つづく

 

安藤武博
スクウェア・エニックスのゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。

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