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スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第二十二回 「実録、スマゲの創り方。~企画立案編~」

2012-05-23 22:32 投稿

●第二十二回 「実録、スマゲの創り方。~企画立案編~」


みなさん、金環日食ご覧になれましたか? 金環日食といえば『ケイオスリングス』。冒頭、これからスタートします。

月曜日の日食も、これと同じくらい見事な金環でしたね。特モ二部的には『拡散性ミリオンアーサー』で、こんなイベントもやりました。

日食記念でガチャチケットを3枚配らせていただきました。日食と『ミリオンアーサー』に特別な相関関係はないのですが、お祭り感やリアルイベントと連動した楽しさが出ればと思い企画しました。『拡散性ミリオンアーサー』Android版ですが、今週。もっとぶっちゃけちゃうと5月24日(木)サービスイン予定です。明日ですね。

さて、今回はファミ通App編集部のリクエストを受けまして、“ゲームって、どうやって創るのか?”というテーマに深く切り込んでいきたいと思います。タイトルにスマゲの創り方とありますが、ゲーム全般にも適応した話になろうかと思います。古今見渡しても、ゲームの作り方を明快に記した著作はあまり見受けられません。個人的には宮本茂さんと堀井雄二さんに是非とも著していただきたいのですが、彼らの本を読むより新作ゲームを遊びたいので、やっぱり書いていただかなくていいですね。ゲームが雄弁に語っています。

映画の創り方や漫画の描き方の本は数多ありますが、ゲームにそれがないのは、著名クリエイターが未だに取り組んだことがないというのもありますが、ゲームの創り方は、他のものづくりに比べてプロセスが千差万別で、かつ移り変わりが速いというのも考えられると思います。今回、私が書くものもあくまで現時点で思っていることにすぎません。HOW TO GAMEというよりも、いちプロデューサーが15年ゲームを創ってきて感じていることを述べた、いわば“戦記”とでもいいましょうか。もしくは簡単な“歴史書”的な感じで楽しんでいただければと思います。言うても、それほどゲームを売っていなければ、経歴も浅い青二才のコラムですからね。何を偉そうに書いとんねん! な話ですし、ほんとに書いてええんかな? とも思っていますが、チャレンジしてみましょう!

ちなみに、ゲームの創り方に類する名著に『ポケモンストーリー』と『横井軍平ゲーム館』があります。ゲーム創りに携わる方であれば、大変面白い本ですので読むことをおすすめします。

それでは始めましょう。今回は、ゲーム創りの初歩の初歩。企画立案のやり方のお話です。まず、ゲームを創る際にそもそも“そのゲームはおもしろいか?”という大前提があります。おもしろくなければゲームは創らないほうがよいですし、おもしろくなってからでないと世に出してはいけません。至極当たり前のことですが、シンプルな本質ゆえに達成するのが難しいため、あえて絶対条件として書きます。いかに他の要素が整っていようが、理屈抜きで本能を揺さぶる“ワクワクするようなおもしろさ”が立案時点でないものは立ち上げるべきではありません

更にプロデューサー目線としては“そのおもしろさは、果たして売れるのか?”というポイントが重要になります。おもしろいものが必ず売れるとは限りませんし、売れているゲームは巷間いろいろ言われようが必ず“おもしろいもの”なのです。立案された企画がおもしろく、かつ売れるかどうかは“おもしろさ担当”のディレクターと“売る担当”のプロデューサーで十分吟味しなければなりません。吟味するというのはお互いで話し合う事。コミュニケーションの余地を持ち続けるということです。盲目的に“おもしろさ”の比重が強まってしまえば、おもしろいけれど誰も望んでいない、単純にクリエイターが創りたかっただけのものになりますし、逆に“売ること”の比重が強まれば、お金のことばっかりを考えたKPI至上主義の搾取コンテンツになってしまいます。この二つは原則、両輪であるべきです。

おもしろさ担当のディレクター。売る担当のプロデューサー。この領分は、はっきりとさせなくてはならないと考えています。私がディレクターにリテイクをお願いしたり、新規で仕様を依頼するときに「これはおもしろくない」、「もっと、おもしろくしてください」とは決して言ったりしません。おもしろさの責任はディレクターが負っているからです。私は、こういった場合「このままだと売りにくいです」、「お客様は買いにくいです」、「こうすればもっと売れるようになります」、「こうしていただければ、もっと売ってきます」と伝えます。プロデューサーは売る責任を負っているからです。どうしてもプロデューサーはディレクションの領域に入りがちですが、そもそも、おもしろいことを考える人を探して呼んでくるのがプロデューサーの仕事なわけですから、あとから「おもしろくして」、「なんでもっとおもしろくならないの?」と言うのは、プロデューサーの人選ミスであり、プロデューサーが仕事をしていないことになります。逆に、おもしろいときは素直に「おもしろい!」と伝えるべきだと思います。

もちろん、与えられた制限の中でポテンシャルを発揮しなければならない状況も、ままあると思いますから、消去法的に「代打、オレ。」という事で、プロデューサーが仕様を切ったりすることもあります。しかし、ナンバーワンを取るのであれば、よほどのマルチプレイヤーでもないかぎり、兼任よりも専任の方が良いに決まっています。これは理想的でないでしょう。仕上がったものに後から、こうして欲しいと細かく指示を出すのは簡単に“創っている感”を得られますし、物事が進んでいるような気もあります。ですが、おもしろさの絶対領域に入ってこられたディレクターは、「そんなに言うなら、お前が創ったら?」と思うはずです。クリエイターの方にプロジェクトに参画していただき、プロデューサーがコンセプトと目標を明快に示したら、その後ゲームの内容に関しては任せきるというのが“究極のプロデュース“ではないかと思います。その間、プロデューサーは何をしたらいいのか? 売れるための仕掛けを徹底的に考えたら良いのです。売るためにゲーム内容に追加変更がある場合にのみ、お願いをするようなイメージでプロジェクトを進めます。

企画立案から少し話がずれましたので閑話休題。おもしろさと売れるバランスが無事両輪ととのった状態で、いよいよ具体的にプロジェクトの企画が、会社にプレゼンテーションできる段となります。最近は、私自身が若いプロデューサーの企画を審査することも多いのですが、このステップになって私が最も大事にしていることがあります。それは、担当者がその企画に“世界で一番熱狂”しているかどうか? これにつきます。この要素がなければ、どれだけ隙が無くロジカルに提案が組み立てられていても、よっぽどの作業プロジェクトでもないかぎり、私は審査を通しません。

大きなインパクトを与える作品を世界で初めてお客様に問う場合、企画立案から作品が売れるまでは、ほとんどの要素がその作品を売ることにとっての“ノイズ”になることが多いです。お客様をビックリさせてナンボなのがエンターテインメントな訳ですから、立案時点で多くの人に、心底理解をされているのは予定調和すぎてあまり良い状態ではないわけですね。むしろ「本当にそれで大丈夫なの?」、「難しいんじゃないか」と言われるのが普通の状態です。チャレンジはリスクを取ってこそですから、周囲がそれを指摘するのは当然のことです。しかし、当の本人がその企画に対して、そこそこの思い入れしか持っていない場合、こういった反対意見にいとも簡単に流されてしまいます。結果、決断が遅れ、コンセプトが逸れ、当初のおもしろさが失われ、売れなくなってしまうというパターンになります。これは実際によくある話だと思います。

徹底的に考え抜いて、企画が立ち上がったその後。人に何を言われようが、担当が“たった一人”であっても、その企画を狂おしいほど一番に愛し、どれだけ逆風にさらされても、「これは必ずおもしろい」、「必ず売れる」と言い切る事ができれば、なんとかなると言っても大げさではないでしょう。チームや会社に対して、「今からナンバーワンになります」と本心から口に出して言うのは、簡単なようで非常に難しいことです。ですが、言い切らないとなれません。私が『ケイオスリングス』を15ヵ国で売上ナンバーワンにしたときは、企画立案時にチーム全体に対して「これから、世界でナンバーワンになります。力を貸してください」と言い切りました。徹底的に考えたコンセプトと、最強のスタッフだったので躊躇なく、スッと言葉が出てきたことを思い出します。何かが甘いと、どこかで“わだかまり”や“しこり”が出て、きっと言い切れないはずです。その企画はおもしろくて売れるのか? を測るものさしとして、特にプロデューサーの方はやってみるのをおすすめします。振り返るとスムーズに言い切れたものしか、売れていないですね。

特に国内のケータイソーシャルゲームに関しては、売れたもの、ウケたシステムを右にならえでバンバン出す傾向があります。例えば、いくつ戦国モノが出ても野球モノが出てきても良いとは思いますが、上辺だけをなぞって、仕掛ける側にアツさがないものは、どんなコンセプトであってもお客様に見抜かれて、届かないものになります。企画立案時に道・天・地・将・法を揃えるのは最低条件ですが、最終的には担当が一人ぼっちで熱狂できる気持ちが、ものづくりを大きく左右すると考えています。これも反KPIな要素ですね。だいぶ根性論的な話になりましたが、僕は本気でそう思っていますよ。それではまた来週。

つづく

 

安藤武博
スクウェア・エニックスのゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。

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