出会いから6年『Ingress』を通じて広がった世界と地域の魅力を振り返る【前編】

2020-03-28 23:11 投稿

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Ingress Prime(イングレス プライム)

当たり前の日常が激変した男の備忘録

Nianticが開発提供する位置情報アプリ『Ingress』のAndroid版が2013年、iOS版は1年遅れの2014年に正式サービスを開始。

文化的、芸術的、宗教的に重要な場所をプレイヤーであるエージェントたちが発見。申請したものがポータルと呼ばれるゲームの要を生み、そのデータが『ポケモンGO』のポケストップやジム、『ハリー・ポッター:魔法同盟』の砦などに活かされ、いまなおNianticにおける重要な役割を果たしている。

そうして迎えた2020年3月26日現在、位置情報を使ってプレイする3タイトルは世界に拡散する新型コロナウイルスの影響で活動自粛を余儀なくされている。

そこで、本記事ではiOS版のリリースに合わせてエージェントになったフリーライターの深津庵がこれまでの6年間を前中後3本の記事で振り返り、いま改めて感じる位置情報ゲームの存在意義と地域の魅力を考える。

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気兼ねなく旅する日々が戻るそのときに向けて

今回のコラムを書くことになったきっかけは、『Ingress』の公式Twitterが2020年3月26日に発信したツイートだ。

お気に入りのポータルは数知れず厳選するのは困難。そこで、これまでに訪れた地域ので体験と魅力を自分なりの目線で振り返る。

各イベント記事のリンクも掲載していくので、詳しい内容についてはそちらをチェック。

とても長い備忘録です。

いっきに読むには面倒かもしれませんが、不要不急の外出を控えるいま、空いた時間に少しずつ読み進めてもらい、願わくば、本記事がエージェントたちの思い出を呼び起こすきっかけになることを願う。

外の世界を旅する大きな第1歩

筆者が『Ingress』の記事を書くことになったきっかけは2014年12月13日、東京で開催されたXMアノマリー:ダルサナだ。

「プレイしてたよね、生みの親が来るけど取材しない?」とオファーが来たのがその数日前だったを記憶している。

当時はジョン・ハンケ氏のことも知らず、後日、他メディアが経済的な観点からの記事を公開する中、筆者はただ純粋に『Ingress』の疑問をぶつけるシンプルなインタビューを公開。アプローチ間違えちゃったかとドキドキしたのをよく覚えている。

その中でも、ストーリー上でローランド・ジャービスというキャラクターが1時的に13のパーツに分散、スキンヘッドになったのは“頭髪というパーツを回収し損ねたからか”という質問にジョン氏は大爆笑

いま考えれば貴重な時間を使って何を聞いているんだと恥ずかしくなるが、このインパクトがその後の取材につながっていくのだから当時の自分を褒めてやりたい。

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筆者は当時、2002年から正式サービスを開始した某MMORPGの記事を担当。

仕事を理由に引きこもり状態となり、“引退なんてありえない”と言い切るほど夢中になっていたのだが、記事の方向性に対して不満が多くなっていたこともあり、『Ingress』をきっかけに何の迷いもなく約15年続けてきた担当から身を引くことになる。

架空の世界に魅了され15年旅してきた筆者だが、地元を中心にポータルをめぐることで現実世界でも冒険ができるのだと気づいたのだ。

そんな中、2015年3月28日に京都でXMアノマリー:証人が開催。

しかし、当時は引きこもり癖が抜けきらず迷いながらも不参加。おそらく『Ingress』ライフの中でもっとも後悔している事案である。

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被災地を訪れ現状を知るということ

2015年6月20日に宮城県仙台市を舞台にXMアノマリー:ペルセポリス。さらに東日本大震災から5年、2016年4月24日に福島県の相馬市といわき市、宮城県の女川町、岩手県の陸前高田市、4つのエリアで復興イベント“Initio Tohoku Mission”が開催された。

筆者はこの両イベントを含め、震災後の東北に3度訪れている。

連日報道されたあの映像はいまも胸が苦しくなるが、実際にこの目で見た被災地の光景はそれ以上のインパクトだった。

ホテルまでの送迎を担当してくれた方が時間の許す限り被災現場を案内。見上げるほど大きな建物の外壁にある汚れが津波によるものだというのだ。

それを地元の光景を重ねると間違いなくすべてが飲み込まれてしまう

そう理解した瞬間に血の気が引き、絶句したことをよく覚えている。

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復興イベントの目的は現地を探索して1つでも多くのポータルを増やすこと。

多くのエージェントが4つのエリアに分散する中、筆者は20メートルを超える津波に襲われ駅や町が流失した女川を訪問。駅とそれを結ぶ“シーパルピア女川”という施設を中心に、少しずつではあるが女川が復興が進んでいること、地元のかたがたの温かい歓迎と力強さにこちらが勇気づけられた。

ちなみに、この女川で毎日ハックすることで得る実績メダルSojournerが最上位のブラック(360日目)に昇格。2020年3月27日現在、1794日目と更新を続けているいまも毎日1度、必ず女川のことを思い出している。

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さて、この復興イベント終了後、現場を訪れていたジョン氏にインタビューを実施。

その最後にリリース前だった『ポケモンGO』にちなんで、好きなポケモンを描いてほしいと提案。スタッフを巻き込み大爆笑の中、ゼニガメを書いてくれたこと、女川から出る電車を逃し、仙台駅まで須賀健人氏の車に乗せてもらったことは最高の思い出。

車内での会話はきっと墓まで持っていくことになるだろう。

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トラウマを乗り越え大空へ

東北の復興イベントよりさかのぼること約4ヶ月。2015年12月12日、国内では沖縄を舞台にXMアノマリー:アバドンが開催された。

某航空機事故に関連する手記がきっかけで飛行機へのトラウマが強くなり、それ以降25年近く避けてきた空の旅。そんな筆者の背中を押してくれたのがこのイベントだった。

みんなに言えば笑われてしまいそうだが、“乗る”と想像するだけで過呼吸になるほど辛く、那覇空港に到着するまでのあいだ、1枚も写真を撮る余裕はなし

よりによって乱気流にもまれて飛行機は大揺れ、必死の思いでシャッターを切ったのがこれである。

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XMアノマリー当日は、元グリーンベレー隊員が退役後に自社ブランドを創設、その経験を活かした過酷なチャレンジを行う“ゴーラック”というイベントも開催。

両陣営のエージェントはもちろん、スポンサー企業のみなさんを巻き込み、起点となった新都心公園多目的広場に鳴り響く勇ましい掛け声は、状況が把握できない市民にとって異様な光景だったに違いない。

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この頃になるとXMアノマリーの取材は開発陣のインタビューを中心にしたものが多くなり、戦いに参加できることは限りなくゼロになっていく。

遊びと仕事をいっしょにすると後悔するなんていう人からすればこれはまさにその典型だろう。

しかし、みんなが戦っているあいだに開発陣を捕まえてアレコレ聞けるのは筆者にしかできない重要な役割り。自分にとってのXMアノマリーはこれでいいのだと感じている。

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また、XMアノマリーといえば翌日のミッションディも忘れてはいけない。

筆者にとって沖縄で印象的だったのは夜の公園で丘から滑落。スマホとモバイルバッテリー両方の充電が尽きて大慌ての相棒

具体的な内容は当日の記事を見てほしいのだが、人生初の沖縄がそれはもう険悪な空気漂う結果になったのはいうまでもない。

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浜松や瀬戸内など取材続きの2016年

2016年は『Ingress』にとってさまざまな動きのあった年だ。

まずは2月27日、XMアノマリー:オブシディアンが浜松で開催。その前日、地元エージェントたちと車で向かう予定だったのだが朝まで仕事だったため筆者だけ新幹線で現地入り。

この浜松イベントがいま現在、フル参加できた唯一の戦いだと記憶している。

担当した場所が駅周辺や市街地だったので観光スポットに触れることはなかったが、バスを貸し切り移動する敵陣営、ニコニコの生放送に映ってみたりと不思議な体験の連続だった。

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炭火焼きのハンバーグで有名はレストランさわやかには行けなかったのは残念だったが、翌日の帰り道、東名高速道路の浜松西I.Cから約10キロの場所にあるうなぎパイファクトリーを訪問

さらに、沼津港で海鮮丼を食べるなど、いつもの単独取材では叶わなかった体験を、同行するメンバーたちのおかげで満喫することができた。

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余談だが、浜松は映画『アイアムアヒーロー』のロケ地にもなっている。

それを知らず劇場に足を運び、スクリーンに何度も歩いた場所が映し出されたときの感動はいまも忘れない。

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その後、4月には日本科学未来館で開催された企画展GAME ONで特別イベント、ニコニコ超会議にジョン氏が登壇。

5月に入ると飲料の出ない伊藤園の“XM-Profiler”1号機がお台場に設営され、その勢いに乗せて7月16日に開催されたのが、当時過去最大規模の大バトルとなったXMアノマリー:イージスノヴァだ。

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現地には高速バスでおなじみWILLER TRAVELとのコラボ企画で誕生した『Ingress』専用バス“NL-PRIME”も登場。

数々のアーティストが出演するだけでなく、エージェントでもある声優の緒方恵美さんが本作の重要キャラクター“ADA”のゲーム内ボイスを担当することが明かされ、仕事を忘れて歓喜したのは当然のことである。

ちなみにいまだ、1度も直接会ったことがありません!!

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そして2016年9月24日、ついに念願のうどん県こと香川県に初上陸。もちろんこれは岡山県を含む広域で開催されたXMアノマリー:ヴィアラックスを取材するためである。

3日間の滞在中、大半の食事はうどんという荒々しいプランを決行。筆者とってうどんとは長崎県五島列島の五島うどんが絶対であり、申し訳ないがそれはいまも変わっていない(異論は認める)。

このXMアノマリーでは毎回インタビューに追われて参戦できない筆者を気遣い、須賀健人氏がスケジュールを調整。広報的な役割りを担う男と相談して小豆島行きフェリーに乗り込んだのだが、行きの船上で第2計測が終了

到着した船でそのまま戻るも第3計測に間に合わないという失態をやらかす。

結局、船上でノートパソコンを開きニコニコ生放送で観戦することになる。

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須賀さん、マジでごめんなさい。

ある意味で最高の撮れ高だったので許して!!

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翌日、倉敷で開催されたミッションディはそれ以降のものを含め、筆者が体験したものではTOP3に入るルート構成

自然なカタチでミッションを引き継ぎ、現地のグルメや観光スポットを楽しみながら気づけば再びスタート地点の駅まで帰ってこれた。

ちなみに、当時の記事にも書いたのだが、阿智神社拝殿の帰り道、天狗のお面が落ちていたことはいまでも謎。

この正体、もしくはその後の行方を知っているエージェントがいるなら教えてほしい。

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『Ingress』に出会った筆者にとって最大の変化は15年続けてきたMMORPGから身を引いたことだ。

外の世界に興味なし、外出する時間があるならレアモンスターを狙えよという人生が、こうも一変するとは想像もできなかった。

さて、これにて前編が終了。

中編では2016年11月3日に神奈川県大和市で開催されたミッションディから、訳あり案件となった2018年7月28日のXMアノマリー:カサンドラプライムまでを振り返る。

とても長い記事ではあるが、不要不急の外出を控えて時間を持て余しているときにでも、当時の記事リンクをたどりつつのんびり楽しんでもらえたらうれしい。

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P.N.深津庵(撮影協力:あしたづひむ)
※深津庵のTwitterはこちら

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対応機種iOS/Android
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