【ひらブラ vol.15】未来から来た行商人からモノを買ってみた
2014-04-25 12:00 投稿
Windowsが無償提供、の衝撃
いきなりですが、これ(下の写真)、なんだか分かりますか?
…答えは後ほど(すでにご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが)。
さて、ちまたでは「Windows XPのサポートが終わるぞ!」という件がずいぶん話題になりましたが、同じマイクロソフトさん関連のニュースでは、個人的に下記のニュースがとても印象的でした。
マイクロソフト「Windows無償提供」の理由とは?(ASCII.jp)
マイクロソフトが、ハードウェアパートナーに対してWindowsの無償提供を開始すると発表した。
対象となるのは、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)向けのWindowsと、9型未満のディスプレーを搭載したデバイスだ。
Windowsの無償提供!ちょっとセンセーショナルな発表ですよね。
無償提供の対象は「Windows for IoT」と「Phones and tablets with screens less than 9”」、つまり、IoTデバイスと9インチ未満の画面搭載のスマホとタブレットだそうです。
「IoT」ってご存じですか?
ゲーム業界ではまだあまり馴染みのある言葉ではないかもしれませんが、「IoT」とは「Internet of Things」の略で、ボクとしてはあまり良訳とは思わないのですが、よく「モノのインターネット」と説明されます。…そのまんまですね(笑)。
かんたんに言うと「いままではネットに繋がらなかったものが繋がるようになること」です。家とか車とか身に付けるものとか、すでに実際に商品やサービスが発売され始めているものもあります。インフラ面の整備やスマホの普及、機械と機械のあいだを取り持つためのM2M系技術の充実により、今後IoTはますます本格化すると言われています。
2020年には、ネットに接続されるモノの数は現在の25億個から300億個以上に増え、その大半をIoTが占めるという予測があり(出典:ガートナー)、IoTがあらゆる産業にたいしてもたらす付加価値の総額は195兆円にものぼるというのです(出典:同)。
このように、今後のすごい伸びが予測される市場において、当然発生するのがOSの覇権争いです。各デバイスの上で、どんなOSがトップシェアを獲得するのか。気になりますよね。
ご存知のとおり、スマホの世界では、現時点でAppleのiOSとGoogleのAndroidが大きな市場シェアを握っています。垂直統合モデルの象徴でもあるiOS、無償OSとしてほぼ全ハードメーカーの端末に導入されるに至ったAndroid。ここに改めて、PCの世界でトップシェアを誇ったWindowsが「無償」で提供されることで、どのような変化が生まれるかは要注目です。
サービスや製品の提供者側(企業側)にとっては、ソフトもハードもひっくるめた形でのビジネスモデルとなります。開発のしやすさやコスト面からも、OSの選択がより重要になってくることは間違いないでしょう。
さらに、IoTとゲームの関係も気になります。
一見関係の無さそうなこの2つですが、おそらく「ゲーム」自体の概念を拡大していくような形で密接に関わりあっていくような予感がしています。この点については、以前ウェアラブルデバイスについてご紹介したときも触れましたので、詳しくはそちらをお読みください。
「さぁこれから2時間ゲームをするぞ!」というような能動的なゲームプレイだけでなく、「いつの間にかゲームに参加している」あるいは「ライフスタイルそのものがゲームと直結している」という受動的なゲームプレイを、IoTは実現してくれるんじゃないかなぁ、と。(すでにもう仕込みに入っている段階かもしれませんが…笑)
この件については、また回を改めてお話したいと思っています。
「劣化なき小型化」がおりなす未来感
サイズが小さいものってワクワクします。スパイ映画に出てくるようなメガネ型のカメラや(もう実現されていますねw)レーザー照射型のポータブルキーボードなど、誰しも、小さくてハイテクなものに胸がときめいた経験があるかと思います。
技術革新は、コストダウンや性能向上だけでなく、ダウンサイジング(小型化)をもたらしてくれます。
肩掛型の携帯電話がいまや手のひらに収まるサイズに、、、なんて話をすると完全にオッサン扱いされてしまいそうですが(苦笑)、小型化によって普及にはずみがついた製品は数多くあります。
今や日本でもすっかり有名になった掃除機メーカーのダイソンも、日本市場向けにホースが収納しやすい小型のモデルを独自に開発したことで成功したと、TVの番組かなにかで観たことがあります。
ゲーム機の小型化という点では、全世界で普及している歴代の携帯ゲーム機のほぼ全てが「日本製」である点も忘れてはいけません。日本人って、ひょっとしたら小さいものが好きな国民なのかもしれません(島国であったり居住環境が比較的狭かったりすることもあるのかもしれませんが…)。
「IoT」も、小型化というキーワードがきっと重要になってくると思います。先に触れたWindowsの無償提供も「サイズ」が条件となっていることがポイントです。小型であることで、ユーザが持ち歩くための負荷も減り、いろいろなモノに搭載できる可能性が広がります。
でも、単に小型化されるだけでは意味がありません。小さくするために大事な機能が削ぎ落とされてしまっていたり、使い勝手が著しく悪くなってしまったりと、商品の魅力そのものの部分が劣化してしまっているような小型化ではダメです。
昨日、ボクがモバイル事業を手がけていた頃からのお友達(後ほど詳しくご紹介します)に薦められて、とある「ガジェット」を購入しました。
それが、冒頭でご紹介した写真の商品です。では答え合わせ!
実はこれ、「プロジェクター」なんです。
完全に立方体になっていて、飛び出ている部分は一切ありません。だから、サイコロのように振ることもできます(やりませんけどw)。
プロジェクターが昔ほど高価なものではなくなり、ポータブル化も進んでいるとは聴いていましたが、ここまでの小型化が実現されていたとは知りませんでした。
iPadやiPhone、Android、Macなどを接続して、それらの画面を実際に照射してみましたが、「仕事にも十分に使えるクオリティ」の映像に驚きました。
もちろん本格的な据え置き型のプロジェクターとくらべてしまうと、明るさと解像度の点で劣ることは否めませんが、このサイズによる利便性と自分の用途に照らして、十分に許容できるものでした。
お客様先でうちのミドルウェアのデモをお見せする時って、複数のiPhoneやiPadを持参するのですが、当然デモにはオペレーションと解説が必要になります。自分の持っているデバイスを操作していると、そのデバイスを覗きこむためにお客様が全員席を立たなければならなくなってしまいます。かといって複数のデバイスをそれぞれに渡してしまうと、オペレーションがバラバラになってしまい収拾がつかなくなってしまいます。運良く会議室にTVがあるときは良いのですが…。
そんなときに、このモバイルプロジェクターはとても役立ちます。このサイズなので、いつでもカバンのなかに入れておいても気になりません(重さもびっくりするくらい軽いです)。
さらに、このサイズにもかかわらず、かなりの音量の出るスピーカーも内蔵されています。うちのデモは映像だけでなく音に関するものも多いので助かります。
そして、いちばんボクが気に入ったのは、電池駆動であるという点。せっかくの小型プロジェクターもとっさに活躍できなければ魅力は半減してしまいます。接続するケーブルが多かったりセットアップに時間がかかるようでは、あまりスマートではありません。その点、電源ボタンを押せば数秒で照射が始まり内蔵電源で動作するので、ちょっとした「マジック」を披露しているかのようなしなやかさで、手軽にスマホの画面をみんなで共有することができます。
あ、スマホとの接続だけはケーブルが必要です(プロジェクター側の端子はHDMI micro)。今後、ワイヤレスで接続できるようになったら、さらに素晴らしいのですが…。
ボクの仕事での活用例をご紹介しましたが、もちろん「遊び」にも使えます(笑)!スマホの画面を手軽にプロジェクションして多人数で共有しながらゲームをしたり、映画やドラマをみんなで観ることもできます。
このサイズと、キューブという形状だからこそ可能な「ちょっと面白い使い方」も、同製品をお薦めしてくれた佐藤勝彦さん(株式会社テソロ取締役 兼 企画部長)に教えてもらいました。
それは、「天井に照射する」というスタイルです。実際に試してみると、これが想像以上に有用なんです。壁面照射だとどうしても「台形型」になりがちなのですが(残念ながら同機種には台形補正機能はありません)天井照射だとアスペクトが正しく照射できる点もメリットです。会議室にいる全員がそろって天井を見つめている様子はちょっと異様ではありますけどね(笑)。
小型化というのは、いろんなトレードオフ(こっちを立てればあっちが立たないという状況)を解決しなければ実現しないものですが、ユーザが求めているものをしっかりと見極めて「劣化なき小型化」を実現した好例として、今回、このプロジェクターをご紹介しました。
ちなみに、実はミドルウェアも「小型化」って重要なんですよ!
実際のゲームに組み込まれるミドルウェアプログラム(=ブラックボックス)のことを「ライブラリ」とか「ランタイム」と言います。長年にわたりいろいろなお客様の要望に応えたり機能を追加していくことで、どうしてもライブラリサイズって増えてしまうことがあります。
ゲームをつくる側にとっては、機能はなるべくたくさん欲しいけれど、ゲームに組み込むライブラリのサイズはできるかぎり小さい方がいい。そこで、定期的にライブラリの作り方を見なおしたり、リファクタリングという手法を行うことで、絶えずライブラリサイズを減らす努力をしています。
単にサイズを減らして本来の性能が出なくなったり必要な機能が失われてしまっては本末転倒なので、ライブラリサイズのチューニングには熟練したミドルウェアエンジニアとしてのウデとセンスが必要です。場合によっては、そのお客様が必要としている部分だけを抽出した特別バージョンを作ってご提供したり、特定のゲーム機の特定の目的に特化したミドルウェアとして切り出すこともあります(NintendoDSのときに大ヒットしたミドルウェア「救声主」など)。
決済(レジ)もダウンサイジング!
自称「フーテンのノマさん」こと、佐藤さんの営業スタイルは「ノマドな行商人」!大きなカバンの中からは、スマホのケースやアクセサリーなどが山のように出てきます(笑)。その中から欲しいものがあれば、その場で即、購入もOK!営業先では、社員が会議室に集まっての即売会なんてこともよくあるそうです。
事実、うちの会社に来てもらったときにこのプロジェクターをデモしてもらい、ボクもその場で購入したのでした。
さて、気になるのは決済手段。
もちろん「ツケ払い」や「請求書払い」なんて、原始的な方法ではなく…。
…机の上に、ズラリと並んだ「決済手段」たち。いずれもその場で即時決済を可能にするアイテムで、スマホのオーディオ端子に接続し、それぞれの対応アプリと連携して利用します(すべてクレジットカードのカードリーダー機能を備えています)。
ボクも、こうした決済手段があることは数年前から海外出張先のAppleStoreなどで実際に販売されているのを見ていたので、存在そのものは知っていたのですが、実際に体験するのは初めて。しかも、すでに日本でこんなにたくさんの決済手段がスタートしていたとは…。
「幅さん、お支払いは、どれでいきやしょう!?」
フーテンのノマさん、いきなり行商人モードに(笑)。
うーん、どうしよう・・・と悩んでいたら、「最近話題の“顔パス決済“はどうか?」とノマさん。なにそれ面白そう!・・・というわけで、Paypalの顔パス決済で購入することにしました。
まず、ノマさんもボクも、決済のためのアプリをそれぞれ立ち上げます。
以下は、そのときのボクのiPhone画面を実際にキャプチャしたものです。
GPS情報をもとに近くにある店舗リストが表示されるので、その中から決済先のお店を選びます。今回は、テソロ社が実際に戸塚で営業している「スマホアクセの森」(実際には、今回は行商モードなんですがw)を選びます。
画面下部のスイッチを「支払い」側にスライドすると、こんな画面が表示されます。このとき、店舗側(=ノマさん側)の端末には、ボクの顔がデカデカと表示されています。商品の金額(=決済金額)が正しいことを両者で確認して・・・
決済完了!
凄いです。まさに、顔パス!!
財布やクレジットカードを出すこともなく、アプリを相互に立ち上げるだけで瞬時に取引が完了してしまいました。
実際に体験してみないとなかなか感覚はご理解頂けないと思いますが、かなりのカルチャーショックでした。もちろんその場でプロジェクターの現品を納品して頂きました。
これは、まさに「レジの小型化」と言ってよいでしょう。こうした決済手段のコモディティ化はいろんなビジネスチャンスを多くの人にもたらすことは間違いありません。
…というわけで、前回&前々回とちょっとディープな「Uniteレポート」をお届けしたので、今回は、少し”箸休め”的なトピックにしてみました。
小型であることを条件にしたWindowsの無償化、IoTと小型であることの関係、驚異的なほどに小型化されたプロジェクター、そして、決済手段の小型化。今回は、いろんな「小型」について触れてみました。ぜひ、みなさんの知っている「小型」ネタについても教えて下さい!
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
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幅朝徳(はば とものり) 株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。GREE社やnhn社といった企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュースも行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。現在、さらなる新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当する傍ら、ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。
趣味は、映画鑑賞とドライブ、クロースアップマジック、デジスコによる野鳥撮影、コンパニオンバードの飼育、そしてもちろん、ゲーム。
CRI・ミドルウェア ウェブサイト
http://www.cri-mw.co.jp/
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