LEVEL UP TOKYOで明かされた”gumiが世界で成功したワケ”

2014-09-06 00:00 投稿

世界を念頭に置いた施策の数々

2014年9月5日(金)に東京ミッドタウンで開催された、Facebook主催のカンファレンス”LEVEL UP TOKYO”。

同カンファレンスレポートの後編となる本記事では、Facebook広告を活用したことで世界的に成功を収めた、gumiのPhillip Liu氏とChristian Argones氏の講演の模様をお届けする。

世界で成功するためにgumiはどのような施策を打ったのか? その秘密が明かされている。

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▲Phillip Liu氏(写真左)とChristian Aragones氏(写真右)。

まずはじめにPhillip氏からgumiのこれまでの歴史を振り返りつつ、世界的にも大ヒットを記録している『ブレイブ フロンティア』(以下、『ブレフロ』)に関して言及。

現在『ブレフロ』は12言語に対応しており、世界55ヶ国で配信中。全世界でユーザー数が1000万人も突破している。

Phillip氏は続けて、『ブレフロ』の世界的成功の背景にある、gumiならではのゲーム開発からグローバル化へのフローについて説明を行った。

まず最初に驚かされたのが、gumiではどのタイトルでもグローバル化を視野に入れており、企画立ち上げの時点からマーケティング、パブリッシング、ローカライズ担当が参入して、ゲーム作りを行っていること。

そうしてローンチ前から、ローカライズに向けたUI設計、翻訳、ゲームバランスなどについて検討を進めていくようだ。

企画段階かマーケティングチームが参画する理由をPhillip氏は、「ボタンひとつとっても、地域によって感覚の違いがあるから」とコメント。また、「コンテンツの消費の仕方も地域によって異なるため、そうした地域ごとの対策を念入りに行うことが成功への鍵」とも述べている。

地域別対策の重要性を述べるにあたり、Phillip氏は通信環境についても言及している。日本では4G回線が広く普及しつつあるが、世界、とくに中国をはじめたアジア諸国における通信環境は発展が遅れているのが現状だ。そのためゲームそのものの容量はもちろん、「ゲームプレイ中のファイルサイズにも気を使う必要がある」のだという。

そうしたグローバル配信の下地を作ったあとに、地域別に蓄積した情報を一度統合してゲームの開発を本格的に始動。

その後、テストとバグフィックスを経て、いよいよゲームのローンチとなるのだが、ここでも世界市場を視野に入れているgumiならではの取り組みが垣間見えた。それが”ソフトローンチ”という手法だ。

このソフトローンチとは、収益が低い思われるサブマーケットでゲームをテスト配信し、そこで得られたデータをもとにアメリカなどのメインマーケットで配信を行うこと。

世界的にトップクラスのモバイルゲームメーカーもこの手法を採り入れており、その中には『クラッシュオブクラン』のSUPERCELLの名もあった。

 

このソフトローンチを行う理由についてPhillip氏は「ゲームをよりよくするためには、デバッグチームからの意見だけでなく、実際のユーザーからの意見が必要」とコメント。加えて、「事前にKPIの測定が行えたり、マーケティングチームがユーザーの求めるポイントを理解できたりする」ことが挙げられている。また、正式配信時大きなリスクを回避できるのも重要なポイントなのだとか。

さらにソフトローンチの時点で『Facebook』を活用して広告を行い、正式配信時に向けた口コミの基盤作りなども行っているのだという。

このソフトローンチを行う地域の選定についても、「言語やユーザーの動向、そして通信環境が似た地域に対して行う」とPhillip氏。その例として挙げられたのが下記の国々。言語が異なるサブマーケットでも配信されているが、ユーザーの動きが近い国が選ばれているのだという。

[ソフトローンチ国]→[正式配信国]

カナダ→アメリカ
オーストラリア/ニュージーランド→イギリス→アメリカ
ベルリン/スイス→フランス
台湾→韓国or日本

また、地理的に分割できないエリアに関しては、iOS/Android、タブレット/ケータイ電話などのOSやデバイスで判断してソフトローンチを行っているとのこと。

サブマーケットでテストの重ねた後の正式配信時には、高収入をもたらすエリアに対してゲームを投下。配信直後はゲームの広告などに力を入れることで、配信された国でコミュニティーができるよう促すようだ。

その後も、カスタマーサポートなどを念入りに行うことでユーザーからの意見を抽出。そうして集まった膨大なデータを手に、グローバル化に着手するといったフローになる。

こうしたグローバルローンチへの流れを解説後、Phillip氏はソフトローンチを行ったタイトルのインストール数の増加を示したグラフを公開した。

▲ソフトローンチ後しばらくはサーバーなどの技術面のチェックを行い、それからユーザーたちによるテストがはじまる。
▲ソフトローンチでユーザーの生の声を抽出しているため、正式配信後すぐにインストール数が急上昇していることが伺える。

正式配信直後にインストール数が急激に増加しているが、これには「ソフトローンチの効果に加えて、大掛かりなキャンペーンを行った」とPhillip氏。だが、「このようなキャンペーンは効果がないときもある」と述べ、「シンガポールで行った際は、(キャンペーンの)効果はなかった」と続けた。

また、こうしたキャンペーンは「かかる予算に対して見返りが見えづらい」ため、顧客満足度を優先して考えるのが大事なのだという。

そしてPhillip氏は最後にgumiが成功したキーとなる事柄を5つ紹介した。

gumiが成功したポイント

1、その国々に根付いた開発を行った

▲”国ごとで風習や、ユーザーの動きがまったく異なる”ことを『ブレフロ』で学んだのだとか。

2、地域を明確化してマーケティングやプロモーションを行った

3、強力なビジネスパートナーとの関係を築いた

4、国ごとで異なる法律を熟知しておいた

5、国別でFacebookページを設けるなどして、コミュニティーマネージメントに注力した

Facebookのユーザーサポートが大切

続いてChristian氏から、実際に『ブレフロ』で行ったFacebook上でのプロモーションについての話があった。

▲現在『ブレフロ』のFacebookには約80万人のファンがいる。
▲Christian氏はFacebook広告の有用性について、「現在予算の約30%をFacebook広告に割いているが、わずか30日間で150%の効果を得られている」とコメントしている。

Christian氏は『ブレフロ』の広報活動を行う際に、開発時とはうって変わって高収益を得られる国に対して、新しい広告キャンペーンを行ったのだという。

そこで得られたノウハウをほかの地域にも共有して、クリエイティブ(=広告バナー)を作成することで、もともと収益が望めなかった地域でも高いポテンシャルを発揮するのだという。

▲こちらは実際に用いられたクリエイティブ。上段右端のクリエイティブを例に挙げ、「アメリカでは忍者が非常に人気のため、”オボロ”を採用したクリエイティブを使用したところ非常に効果的だった」とChristian氏。

また、Christian氏は「ターゲッティングを行うにあたってgumiでは、2種類のターゲッティング方法を採っている」のだという。

Interest Targeting

ターゲットの興味があるものから、どんなものが好きなカテゴリを判別する手法。カテゴリの例としては、”JRPG”や”TOP25 RPGs”などがある。

▲こちらは『ブレフロ』における利益の割合。アメリカやカナダでは”JRPG”が高い人気を誇っていることが伺える。

Lookalike Audience

特定のユーザーに似た行動(ゲームのインストールや課金の行い方など)をとるユーザーを見つけること。

▲高額課金者の発見が成功の鍵を握るのだという。

custom Audiences

Facebookを用いたターゲッティング法として、”custom Audiences”という手法も紹介された。これはユーザーのFacebookアカウントを知ることで、特定のユーザーに対してアプローチをしたり、データを収集したりすること。

特別なキャンペーンをする際に使用し、そこで得られた情報を広告に反映するのだという。

▲この手法は新たなゲーム内イベントを告知する際に用いられ、その広告が好評ならば、他国でも同様のものを使用するのだという。

また、Christian氏は『ブレフロ』のFacebookページの使用法を3つ紹介。おもにキャンペーンのアナウンスや新キャラの配布などに用いられるほか、ユーザー投稿のファンアートの掲載場所としても使われているとのこと。

そうしたFacebookページの運用について、Christian氏は「コミュニティーサポートを行う人間が活発に動くことが大切」と述べ、ユーザーの疑問を解消したり、ユーザーからのフィードバックを反映させたりすることに多くの人員を割いていることを明らかにした。

設立当初から”世界”を念頭に置き、その理念をこれまで曲げることなく戦い続けてきたgumi。先日LINEとの業務提携も決まり、今後もさらなる躍進を見せてくれることだろう。

国光氏がかねてから口にしていた「世界一」は、もう目前まで迫っているようだ。

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