この記事に関連するゲームファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争
2019年11月14日にサービスを開始したスマホ向けタクティクスRPG 『WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争』(以下、『幻影戦争』)。2024年に入り、本作はついに5周年という大きな節目を迎えた。
そこで今回は、『幻影戦争』の原点である『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』(以下、『FFBE』)も含めたシリーズプロデューサーを務める広野啓氏に加えて、『幻影戦争』開発ディレクターの藤田泰正氏にインタビューを実施。
5年間の振り返りはもちろん、サービス開始前後の制作秘話も聞くことができたので、本記事でお届けしよう。
広野啓(ヒロノケイ)
株式会社スクウェア・エニックス『FFBE幻影戦争』プロデューサー。
『FFBE』シリーズプロデューサー。
藤田泰正(フジタタイセイ)
株式会社gumi『FFBE幻影戦争』開発ディレクター。
『FFBE』と『幻影戦争』の両タイトルで長期継続を実現
──5周年を迎えた現在の心境についてお聞かせください。
藤田
5周年という数字を見て、時間の経過に驚き、あっという間の5年間だったと感じています。gumiのスタッフとして、『FINAL FANTASY』(以下、『FF』)シリーズの名を冠した作品に携わり、結果的にここまで走り続けることができたうえに、アプリの実績においてセールス1位を取ることもできたので、非常に光栄なことだと思っています。本作を支えてくれたユーザーの皆さんには、深く感謝しています。
──昨今のスマホゲーム市場では短期間でサービスが終了してしまうタイトルも少なくない中、『幻影戦争』は5年、そして『FFBE』は9年続いているのは類まれな事例だと感じています。
広野
市場も変化する中で、私がプロデュースした作品はどれもなんだかんだで長く続いてくれています。シリーズ作がどれも長期継続中という稀有な体験をさせてもらえたのは、ひとえにユーザーの皆さんのおかげだと思っています。
当然、お叱りいただくこともありましたが、応援してくれている方々も多いと感じているので、つねに感謝の念が絶えません。今後も応援してもらえたらうれしいです。
──広野さんは『幻影戦争』のどのような部分が評価されていると思いますか。
広野
ゲームのおもしろさが根底になければ、ここまで続かなかったと考えています。その点に関しては、gumiさんがこれまでに培ってきたゲームデザインが我々といっしょに生み出すコンテンツとうまくマッチしたからこそ、ゲーム性のおもしろさに限らず、物語の深みや広がりにもつながったのだと思います。
──ファミ通Appでは2周年でもインタビューを実施しているのですが、そのときからおふたりの関わりかたに変化はありましたか。
※FFBE幻影戦争』2周年記念インタビュー!『FFVI』コラボの注目ポイントや今後の展望を広野P・中井P・小倉D・藤田Dが語る
広野
前回のインタビューから環境が変化しているのは事実です。また、スクエニ側のスタッフも補強してチームでしっかり見てもらう体制に移行しており、チーム自体も世代交代を含めて何度か刷新をくり返して現在にいたっています。
私の感覚としては、もっともゲームに近い人間がゲーム運用の最前線を走っていくべきだと思うので、私個人が出すぎるのもよくないと思っています。だからこそ、チームでカバーできる体制に切り換えているような状況です。
──藤田さんの携わりかたはいかがでしょうか。
藤田
基本的には、開発初期と同じ形で携わっています。gumi側で制作するコンテンツですし、日々の企画を含めた全体統括の基本は変わっていません。
一方、2年前に比べて少し変わったと思うのは、自分がやっていたところを徐々に部下たちに担当してもらうようになった点ですね。とはいえ基本的にメインは『幻影戦争』に携わっているので、担当箇所が極端に増えたり、減ったりということはありません。
──サービス開始時を振り返って、いまとの違いを感じる瞬間はありますか。
広野
運営におけるマネタイズのチャレンジや売り物の構成の変化など、ユーザーの動向に合わせて変えていく必要があるな、と感じることが多くなりました。また、世界設定、物語、キャラクターなどの観点だと、『FFBE』も『幻影戦争』もストーリーを更新しているので、ユーザーの反応を見て展開を決めることが多いですね。
もともと月刊誌の連載のようなイメージで更新しているので大筋はあるのですが、当然シナリオの流行りもありますから、その都度エッセンスを入れて変えていっています。ただ“自分たちが考えるFF像”、“自分たちが考えるFFらしさ”といったものはズレないように意識しています。
──“FFらしさ”とは広野さんの中でどのようなものをイメージされていますか。
広野
なかなか言語化するのが難しいのですが、いろいろなことを許容できるのも“FFらしさ”だと思います。だからこそ自分たちでしっかりと「これはやっちゃだめだよね」「こういう風にやりたいよね」「こういう風に表現するのがFFらしいよね」といったところは、信念を持って制作しているつもりですし、そこは変わっていません。
──言語化が難しい中でも、チーム内の皆さんの中で「これはFFらしい」「そうじゃない」の感覚は共有できているのでしょうか。
広野
はい。もともとは『FFBE』に携わっていた『幻影戦争』の現スタッフもいますし、彼らはそのときからずっと“FFらしさ”を追究するためのやり取りを見ていましたし、私もシナリオや世界設定などについては口を出し続けているので、結果的に明文化しなくてもチーム内で“FFらしさ”が浸透していると思います。
『幻影戦争』は『FFBE』とは異なり、国家間の戦争を背景にシリアスな物語が描かれ、『タクティクスオウガ』や『FFT』ファンからの注目も大いに集めた。
──藤田さんは5年間の中でどういう変化を感じていますか。
藤田
ソーシャルゲームのような運営タイトルは、昔に比べてさらにカジュアルなタイトルが求められる市場になってきたと感じています。
リリースしたての『幻影戦争』はユーザーの占有時間がかなり長くて、毎日欠かさずログインし続けないと最効率にならないような仕様でしたので、市場に合わせて変えていきました。単純にプレイ時間の占有率を下げるだけではなく、細かいUIや操作の変更も含めて、より遊びやすくなるようバージョンアップをくり返してきたつもりです。
──逆に「ここだけは変えないようにしよう」と決めていることはありますか。
藤田
やはり評価いただいている対人戦も含めたバトルの戦略性です。そこまでライトにしてしまうと、『幻影戦争』のいいところ自体がスポイルされてしまうので、それ以外の部分を遊びやすく、時代に沿った形で、何を変えていくべきかと日々考えています。
マップには高低差もあり、コンシューマーゲームさながらのタクティカルRPGが楽しめるの本作の特徴はブレない。
成功を確信しつつ新たな挑戦でもあった『FFBE幻影戦争』
──5年のあいだで印象に残っていることがあれば教えてください。
広野
印象に残っているというとやはりリリース当初のことですかね。『幻影戦争』は、開発スケジュールも伸びていたので、いつ出せるのか、開発進捗は大丈夫なのか、といった状況でした。そんな中でもなんとかお披露目することができ、注目を浴びてたくさんの方に遊んでいただけたので、その瞬間がもっとも印象に残っています。
──広野さん個人としては、サービス開始前から手応えを感じていましたか?
広野
身も蓋もないことを言ってしまうと、失敗しそうなことはそもそもやりたくないんですよ(笑)。最初から『幻影戦争』は絶対にうまくいくと思っていましたし、うまくいかせる自信を持って進めていました。
──開発段階のゲームをプレイしたときから、すでに成功の確信を得ていたということでしょうか。
広野
そうですね。当然最後まで完成させてみないとわからない部分はあるものの、企画を立ち上げた時点できっと大丈夫だろうと思っていましたし、上がってきたものを触っても「これなら大丈夫だろう」という範疇に収まっていました。
──スマホ向けゲームアプリだと、成功をしたタイトルでも続編や外伝になると振るわないケースも多いのですが、『幻影戦争』を『FFBE』のシリーズ作として制作するにあたり先行きが見えない部分もありましたか。
広野
私の中では成功例が少ないところにチャレンジしたほうがやりがいがあるので、不安よりも「もっと楽しい仕掛けをしよう」「もっとおもしろいことをしてやろう」といった気持ちのほうが勝っていました。
『FF』シリーズ全体の中に『ファイナルファンタジータクティクス』という異なるジャンルも認められた歴史があります。『FFBE』はナンバリングこそありませんでしたが、『FF』シリーズのひとつとして捉えると、『幻影戦争』というタクティクスジャンルの作品を出しても許容してもらえる土壌はあるのではないかと思いました。
──藤田さんは5年のあいだで何がもっとも印象に残っていますか?
藤田
私もいちばん濃かったのは、リリース直前やサービス開始からの1年目ですね。仕事量も含めて濃かったと思います。
印象に残っているというのとは少しずれるのですが、いま振り返ってとても良かったなと思っている施策は、“2代目リオニス親善大使”の企画で、あさるとさんに親善大使を務めてもらえたことですね。ユーザーの皆さんとコミュニケーションを取るうえで、あさるとさんに親善大使をやってもらっている状況がゲームとして、かなりプラスになっている部分があると思います。
⇒FFBE幻影戦争 2代目リオニス親善大使選定オーディション公式サイト
それ以外では、ファンミーティングも貴重な機会でした。唯一無二の瞬間だったと思います。
──広野さんは『FFBE』のときからファンミーティングなど活発に行い、ユーザーコミュニケーションを重視されていましたよね。
広野
はい。やるのが当然だなという気持ちがありました。gumiさんも当時の開発トップが今泉潤氏で、彼もそういった施策をやっていたので、当然のことだと考えています。5年のあいだには「制作陣が前に出ないほうがいいのではないか」という風潮もありました。はたしてどっちがよいのかはわかりませんが……。基本的には直接ユーザーと向き合うべきだと私は思っています。
10月27日に行われた放送でも、広野氏、藤田氏、あさると氏はそろって出演した。
“FFらしさ”と海外展開のあいだで揺れた初期デザイン案
──5周年を迎えたいまだからこそ話せることはありますか?
広野
じつはキャラクターデザインは最初、まったく違うものでした。もともと『幻影戦争』は、グローバル向けにターゲット層を想定しているので、デザインの方向性もグローバルを意識しようと動いていたんですよね。
そのときは、頭身が低くデフォルメが強い、アメリカのキャラクターアニメのようなデザインで試行錯誤していました。当然、私たちが得意とするような方向性とは違い、新しいデザインラインを作り出す試みだったので、かなり苦心していました。
エルデとマシュリーは、そのデザインで出来上がっていましたが、モントとシュテルが悩ましく、“FFらしさ”から離れている部分もあり、余計に難しい状況でした。
──先ほどもお話にあった“FFらしさ”は、開発段階から重要な基準になっていたのですね。
広野
はい。そんなときに、たまたまCyDesignationの皆葉英夫さんたちと会食する機会があって、CyDesignation側から「『FFBE』のレインを描いてきました」という打診をもらったんです。
というのも、いちばん最初には社内デザイナーで担当するか、社外デザイナーに担当してもらうか、両軸で動いていた時期がありました。しかし、そのときにはCyDesignationの稼働ラインの都合もあり、担当が難しいという返答をもらっていたのですが、後々ご飯を食べているとき、急に打診をもらったんですよ(笑)。
それを当時のアートディレクターといっしょに見て「これはよい!」と満場一致して、現在のデザインへと舵を切ることになりました。
CyDesignationによる貴重な初期イラスト。
──現在とはまったく違う『幻影戦争』が展開されていたかもしれないと。
藤田
アルファ版くらいまでは、それ以前のデザインでマシュリーのアイコンを目にしていた記憶がありますね。
──貴重なお話をありがとうございます。本作の今後についてもお聞きしたいのですが、5周年のキービジュアルにはどのようなコンセプトが込められているのでしょうか。
広野
キービジュアルは、ジェーダンが復活して活躍するところを前面に押し出したものになっています。元来ジェーダンは、2部の主人公として設定していたくらい重要なキャラクターなので、その活躍を期待してもらえるようなデザインにしました。ジェーダンが翻弄した、あるいはジェーダンに翻弄された面々もキービジュアルに入っています。
藤田
『幻影戦争』はシナリオもとても評価いただいているので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。
メインストーリー3部11章がいよいよ開幕!
『FINAL FANTASY Ⅹ-2』コラボや最大500連分無料召喚なども開催中だ
──5周年にあたって実装される新コンテンツ関しても教えてください。
藤田
今回は、新たに“指揮官”と“グランドアリーナ”が実装されます。運営型タイトルのつねではありますが、ゲーム内環境が新キャラクターの追加とともに目まぐるしく変わっていくので、『幻影戦争』も5周年を迎えてキャラクター数がかなり増えました。そういった状況下で、1体のキャラクターをより長く使っていただけるようにしたいと思い、“指揮官”というシステムを制作することになりました。
“指揮官”はバトルに直接参加しない枠なのですが、これまでとは違う軸で新しい強さを付与することで、環境が変わっても違う部分で活躍できるように。活躍の幅が広がって息の長いキャラクターになってほしいという意図から実装しました。
“グランドアリーナ”は、これまでと異なる編成ルールのアリーナです。使うことがなかったキャラクターや過去に使っていたキャラクターに焦点が当たるように、既存のアリーナとはルールが違うものを追加しました。
──昔に実装された既存キャラクターに活躍の機会がほしいというユーザーからの意見があったのでしょうか。
藤田
具体的なシステムに関する要望があったわけではありませんが、これまでのキャラクターを新キャラクターといっしょに使いたいとの声が多かったので、そこを意識して新たなシステムを調整しています。
──直近で多く寄せられている意見や要望、それに対して考えている改善点はありますか?
藤田
今話したことと重複しますが、キャラクターをいろいろな使いかたで活躍させたい、という声が多く寄せられたので、今回の実装で満足いただけたらいいなと思っています。また、“マスターアビリティ3”という形の強化もありますので、つぎの周年に向けて、さらに既存キャラクターの強化をしながら、遊びかたの幅を広げていきます。5年間サービスが続いたことで、やりにくい部分も増えているので、そういった点を見直すことにも注力しています。
新たな『FFBE』シリーズ作への言及も
──『幻影戦争』のサービス開始前のインタビューで、広野さんは「『FFBE』は10年間続くIPにしたい」とおっしゃっていましたが、いまとなっては10周年が目前かつ、『幻影戦争』も5周年を迎えました。さらにその先に展望がありましたらお聞かせください。
広野
もちろん考えています。ゲーム内外の展開も含め、何かできることは無いか、お客さまにおもしろそうと思ってもらえる施策が無いか検討し続けています。
──『幻影戦争』が発表された際に『FFBE』ファミリーと表現されていましたが、そろそろ『FFBE』ファミリーの新作も期待されているのではないかと思いますが……。
広野
考えているのですが、語りにくい部分もあります。企画が動いていたけど見直したものもありますし、水面下で動き続けているものもあります。
ただ、私が携わるのであれば、何らかの形で『FFBE』にまつわるものにしたいですね。もしくは“『FFBE』の遺伝子を継ぐ作品”のようにできればと。『FFBE』と『幻影戦争』のように世界観が少しつながっているような形だといいなと思いますね。
──続報に期待しつつ、では最後にプレイヤーの皆さんへのメッセージをお願いします。
広野
私自身も引き続き、新しいものに挑戦したいと思っていますし、皆さんの応援があれば、より一層それが捗ります。
5周年という節目までついてきてくれた方々のために、ユーザーコミュニティを推進できる環境を作ったり、オフ会を後押しするキャンペーンを開催したり、皆さんへの感謝を示していきたいので、引き続きよろしくお願いいたします。
藤田
広野さんがプロデューサーとして作品に込める思いを、gumiとしても実現に向かって走り続けていきたいと思っていますし、いま応援していただいている方々をそこに連れていくのはgumiの役目でもあると考えています。これからも極力続く長寿タイトルとして、ファンについて来てもらえるゲームにしていきます。
また、5周年を機に、新規の方やしばらくプレイしていない方にもぜひ触れていただきたいと思っています。“指揮官”や“グランドアリーナ”は、既存のキャラクターにまつわる要素を伸ばして、遊びやすくなることも意識して作っています。
いつ帰ってきても遊びやすいと感じていただける環境を作りつつ、いま遊んでいただいている皆さんのためにも、よいところは減らさずに遊びかたの幅を広げていく年だと思っていますので、今後もよろしくお願いいたします。
──本日はありがとうございました。
ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争
スクウェア・エニックス
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シミュレーションRPG
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配信日
2019年11月14日
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