vol.1-1:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは【ひらけ!ブラックボックス】

2014-01-15 12:00 投稿

みなさんは「ブラックボックス」って言葉を聞いたことがありますか?

読んで字のごとく、英語で書けば “BLACK BOX”、つまり、黒い箱です。なんだか謎めいていてアヤしい言葉ですよね。

飛行機のボイスレコーダーや飛行記録といった大事な情報を保管しておく装置のことは通称「ブラックボックス」と呼ばれているので、聞いたことのある方も少なくないかもしれません。不幸にして飛行機事故が起きてしまったとき、その原因や再発防止のための大切な手がかりとして回収される「大切な箱」。高温や水圧、衝撃に耐えられるよう国際基準に基づいてスチールやチタンなどの金属で頑丈に覆われているそうです。

「ブラックボックス」という名前でありながら、実際には黒色ではなく、発見しやすいようにオレンジ色に塗装されているとのことです。オレンジなのにブラックボックス…ちょっと不思議ですよね。

 

一般的ではないかもしれませんが、日常会話のなかでも「謎めいた予測できないサービスや商品」のことについて触れる際に「ブラックボックス」という言葉を使うことがあります。

ボクが海外に出張や旅行に行くとき、いつも愛用している ”Hotwire.com” というホテル予約サイトがあります。この予約サイトが特徴的なのは予約&入金が完了するまでホテル名が「分からない」という点。たとえば、サンフランシスコのモスコーニセンターで開催されるイベントに参加するためにホテルを探すときは、モスコーニセンターと入力すると、その近くにあるホテルが覆面で複数リストアップされます。モスコーニセンターからの距離と★(星)の数と金額を頼りに予約をする仕組みになっています。

このサイトが人気な理由は、他の予約サイトやホテル自前の予約システムよりも安いという点です。ときには、普通に宿泊すると一泊500ドル以上もするような超高級ホテルに100ドルくらいで泊まれたりします。このへんの価格付けのメカニズムはまさに利用者にとっては「ブラックボックス」!実は、慣れてくると、ある程度ホテル名が予測できるようになります。でも、それも確実ではないので「うわぁ…ヤバいホテルになっちゃったなぁ」なんて失敗も、たま~に(?)あったりします。そうした経験も含めて、ホテル予約という本来は作業的な手続きにゲームの要素が付加される面白いサービスといえます。

あ、蛇足ですが、サービスのコンセプト上、キャンセルポリシーは通常の予約サイトよりもかなり厳しいものになっていますので利用する方はご注意くださいね。

 

ボクはまだ利用したことはありませんが、日本にも同種のサービスがすでにあるようです。食事付きの宿泊とリフト券がセットになった定額料金がウリで、スキー場を指定するとその近くの宿泊施設(ホテル、ロッジ、ペンション、民宿など)が決まるそうです。その名も「ブラックボックス」というサービス(!)。予約者が宿を選べないという点ではHotwireとはちょっと性質の違うサービスかもしれませんが、泊まる当日までどの宿か分からないという点では、よりゲーム性が強いサービスとも言えるでしょう。

みなさんは、今年の年始は「福袋」をゲットされましたか?この「福袋」という昔からある商品も「ブラックボックス」のひとつと言えます。説明するまでもありませんが、福袋の中に何が入っているか事前に購入者は知ることが出来ません。中に入っている商品の額面総額は必ず福袋そのものの価格よりも高価である、というコミットメントを商品化したものです。もちろん「中身」にガッカリすることも少なくありませんが(笑)、そういうゲーム的な面も、福袋という「ブラックボックス」の大事なポイントに違いないでしょう。

 

この「ブラックボックス」という言葉、ハードウェアやソフトウェアの世界では「機能が判明していても内部構造が不明である状態」や「入力と出力だけに注目しプロセスや仕組みを問題にしないこと」を指し示すために使われます。また、辞書によると「他人が簡単には真似のできない専門的な技術領域」という説明もあります(デジタル大辞泉[小学館]より)。

もう少し分かりやすく言えば、「ややこしい内部構造やメカニズムを理解する必要なく、どなたでも容易に扱える、その効果が確実で明確な装置やプログラム」のことを、ブラックボックスと呼びます。

ちょっと専門的な話題になりますが、ソフトウェアやプログラムをテスト(デバッグ)する手法のひとつに「ブラックボックス・テスト」というものがあります。その名のとおり、内部処理には注目せずに、もっぱら入力にたいする出力結果が想定仕様に適合しているかどうかを検証する手法です。構造よりも機能をより重視してテストするわけです。

<<第2回につづく>>

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※vol.0:創刊準備号ということでジコショーカイ【CRI幅朝徳のひらけ!ブラックボックス】

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幅朝徳(はば とものり) 株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。GREE社やnhn社といった企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュースも行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。現在、さらなる新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当する傍ら、ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。

 

趣味は、映画鑑賞とドライブ、クロースアップマジック、デジスコによる野鳥撮影、コンパニオンバードの飼育、そしてもちろん、ゲーム。

CRI・ミドルウェア ウェブサイト
http://www.cri-mw.co.jp/

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