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ぼっち時代の出来事
その日もビーチェは、孤独な戦いを続ける盟主に激しくプレッシャーをかけてきていた。
華々しく同盟を立ち上げ、メディアの力を使って情報を拡散するという卑怯な手段を使ったところまではよかったものの、2日経っても“同盟員1名”(つまり俺だけ)を貫く盟主に対し、再三にわたって……!
「たいへんたいへん!! 泉の争奪戦が始まるよ! 同盟の出番ね!」
「ちょっとちょっと! フィールドに『冒涜の女神』の強化個体が出たって! Lv.2の集結魔獣なんて絶対手強いよ、同盟の仲間といっしょに戦うしかないっ!!」
このような、心無い発言をくり返すのである。
オメーに言われなくてもなぁ……!!!
誰よりも俺自身が、同盟の仲間といっしょ争奪戦やら集結魔獣狩りに出撃したいんだよぉぉぉおおお!!!>< なんでいいトシこいて、こんな寂寥感を感じなきゃいけないんだ……>< この寂しさって、
「今日は久しぶりに、昔の仕事仲間が集まっての飲み会だ^^ いつ以来だろう^^ よ~し、今夜は飲むじょ~~~!!」
なんて、子どものようにハシャギながら出向いた居酒屋には誰もおらず、
「あれ^^; ちょっと早く着いちゃったかなwww」
戸惑いを隠すためにヘラヘラと笑って待ち続けるも一向に仲間は現れなくて、1時間が過ぎたころになってようやく、
「……あ。日にちが違うやん……。飲み会、今日じゃなくて来週だ…………」
と気づくことに似ている。……いや、そんな経験はほとんどないんだけど(あるんかい)、きっとそれと同レベルの孤独であろう。
しかもだなぁ……!
同盟を作ったときから拠点で何かを建築しようとするたびに、
↑このような、誰かと誰かが握手をしているところを切り抜いたような、意味深な黄色いアイコンが出るようになったのよ。
これは何かというと、建築も強化もリアル時間を消費する街作りを少しでも楽にするために、“同盟仲間に建築のお手伝いを求める”ことができる画期的なアイコンなのである。コレをタップした瞬間、同盟仲間には“支援要請”が発せられ、それを見た仲間が“支援”を選ぶと建築・強化の手助けになる……と。同盟での遊びを重視した、じつにエバストらしいシステムになっているのだ。
でもくり返し申している通り、このときの我が同盟は、世にも恐ろしい“単独同盟”であった。
同盟って、いくつもの人や組織が集まって形成される“複数形が前提”の団体のはずなので、単独同盟なんて矛盾もいいところなんだけど、そうなっちまっていたんだから仕方がない。よって、いくら俺が支援要請を発したところで誰にも届かない(泣ける)のだが……。
寂しさに身を貫かれていた俺はこのとき、ほぼ無意識に、幾度となく……。
「同盟員に支援要請しました」
アイコンをタップし続けていた……w
「まだ見ぬ仲間たちに、届いてくれ……!!!(涙)」
血を纏ったかのような、赤い声で叫びながら、な……。
……というのが、いまから3日ほど前の出来事だ。
このとき、俺の拠点レベルは10を超えていて、外見だけは立派な盟主になっていたと思う。
そう、足らないのは“仲間”だけだった。
どなたでもいい……!! 俺の孤独を癒し、いっしょに戦いにくり出してくれる同盟員よ、集まってくれえええええ!!!
師走の空に轟く、初老盟主の慟哭--。嗚呼、このまま俺は単独同盟という矛盾を抱えたまま、2025年を迎えることになるのだろうか……。
そんな、あきらめにも似た気持ちに飲み込まれそうになった……そのとき!! ついに初老盟主の咆哮を聞きつけた“仲間たち”が集まってくれるのである!!
角満同盟が動き始める感動の序章は……次回の更新で!!ww
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