【プロセカ】"プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 3rd - Evolve -"の進化の秘密を深掘り! バーチャルステージ、目まぐるしい衣装変更、驚異のAR/VRシステムはどうやって作られたのか?【インタビュー】

by大塚角満

【プロセカ】"プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 3rd - Evolve -"の進化の秘密を深掘り! バーチャルステージ、目まぐるしい衣装変更、驚異のAR/VRシステムはどうやって作られたのか?【インタビュー】
プロジェクトセカイカラフルステージ! feat. 初音ミク
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プロジェクトセカイカラフルステージ! feat. 初音ミク

 2020年9月30日にサービスインしたセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下『プロセカ』)。ゲーム本編だけでなく、さまざまな形のライブも愛されている超人気コンテンツだが、なかでもステージ上で『プロセカ』の登場キャラクターたちが歌って踊るCGライブ“プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE”(通称・セカライ)の存在感は際立っている。
 セカライは2022年に第1回、2023年に第2回、2024年も“セカライ3rd”として、1月、2月に東京、大阪の2会場で開催。そのサブタイトルに“Evolve(進化)”を掲げ、過去2回を大きく上回る驚きと感動をファンに届けたのである。

そこで今回は、セカライ3rdの中枢メンバーであるお三方にご登場願った。

じつは昨年の同時期にも“セカライ2ndを振り返る”をテーマにした座談会を実施したのだが、
その流れを汲みつつ、さらに突き詰められた“Evolve(進化)”な部分を大いに語ってもらったのである。

集まってもらったのは、Colorful Paletteのライブプロデューサーである塚田陸さん(文中:塚田)、そして同社から2024年6月に設立されたColorful Palette ENCOREより、アシスタントプロデューサーとして現場で奔走されていた渡辺沙織さん(文中:渡辺)、リードグラフィックスエンジニアとしてセカライ3rdを技術面で支えた江口大喜さん(文中:江口)である。格段に進化したあのライブは、どうやって作られたのか? 大いに語ってもらったぞ。(取材・文:大塚角満)
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今回は、江口さん(左)、渡辺さん(中央)、塚田さん(右)のお三方にご登場いただいた。

塚田 陸さんRiku Tsukada

株式会社Colorful Palette 取締役 プロデューサー

渡辺 沙織さんSaori Watanabe

株式会社Colorful Palette ENCORE アシスタントプロデューサー

江口 大喜さんDaiki Eguchi

株式会社Colorful Palette ENCORE 取締役 リードグラフィックスエンジニア

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◆進化を感じてもらうために

――ちょうど1年前に“セカライ2ndを振り返る”という切り口で、塚田さんを始めとする中心メンバーにインタビューをさせていただきました。そしてそのときまさに、「じつはいまから、セカライ3rdについての会議なんです」と塚田さんがおっしゃって……!

塚田
 あ、そうでしたっけ!?

――はい、はっきりと覚えています(笑)。

塚田
 言われてみると確かに、その段階だとセカライ3rdを正式発表していなかったので、いろいろと濁しながらお話した記憶があります。

――そうなんです! ……で、今回はその流れを汲むインタビューになるのですが、ぜひそのセカライ3rdを振り返っていただきたいと思っております。

塚田
 わかりました! よろしくお願いいたします。

――では改めまして、セカライ3rdにおけるそれぞれの立場、役割を教えてください。

塚田
 1年前にインタビューしていただいたときは、確かColorful Palette側のライブ責任者……という言いかたをしていたのではないかと思います。

――はい、そうでしたね。

塚田
 セカライに関しては引き続き、ライブの責任者及びプロデューサーという役割で仕事をしています。ステージ演出は雷音の関本亮二さん、楽曲周りをセガの瀬上純さんが見てくださっているので、Colorful Palette側はキャラクターまわり全般のプロデュース、ディレクションを行っています。

――はい。

塚田
 前回お話したときと大きく変わったこととして、本日同席させてもらっている渡辺が現場でのディレクションを担うようになりました。ですので僕は、もっと根幹に関わるライブのコンセプト、テーマなどを決めつつ、要所要所で細かなところを、渡辺や江口とともにチェックする立場となりました。
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――わかりました。ではその渡辺さんにお聞きしますが、セカライ3rdでは具体的にどんな業務を担われたのでしょうか?
渡辺
 いま塚田が申した通り、根幹の設計を塚田が行ったあとに、細かな部分の調整を担当しました。たとえばステージ上の構成……MCやモーションをどうするのかといった、“中身”のディレクションを行っています。

――ありがとうございます。では江口さん、お願いいたします。

江口
 肩書的には“リードグラフィックスエンジニア”となります。このセカライ3rdの大きな特徴のひとつに、ステージ上の照明やカメラワークがリアルタイムに変わっていく……というものがあったので、それに対応するために、キャラクターの見た目をリアルタイムに予測交換するエンジンをイチから開発しました。そして、キャラルック(見た目)のブラッシュアップを中心に実装面の監修とか、開発プロジェクト自体を立ち上げてAR/VRカメラの積み込みまで、システム全般を担当しています。

――いまの江口さんの自己紹介に、セカライ3rdの凄かったところが集約されていた気がします。

江口
 ありがとうございます(笑)。よろしくお願いいたします!

――さて、まずは皆さんにセカライ3rd全体を振り返っていただきたいと思います。声出しOKのライブになったことで、会場の雰囲気も最高だったと思いますが。

塚田
 まず声出しに関してはおっしゃる通り、これまでのセカライでは聞いたことがないくらい会場に轟いていたので、非常にうれしかったです。そしてセカライ3rdはサブタイトルに“Evolve(進化)”と付けて、それを前面に押し出していましたが、セカライの進化にファンの皆さんがかなり興奮してくれていると会場で見ていて思いました。またライブ後も、SNSやネットの書き込みでたくさんの人が喜んでくれたことを感じられたので、とてもうれしかったです。

渡辺
 実際に進化をテーマにしてセカライ2ndからガラリと見た目も変えたので、我々としても、(受け入れてもらえるだろうか……? ちゃんといいものをお見せできるだろうか……!?)と、ちょっとドキドキしながらさまざまなことを打ち出していきました。でも蓋を開けてみたら、ファンの皆さんが「こんなに変わったんだ!」とポジティブに受け止めてくれていたので、心から感激して……。それと、進化の要素とは繋がらない話なんですけど、客席がパンパンに埋まってくれたことが、本当にうれしかったんです!

――あーーー、確かに! それも、コロナの扱いが変わったことが大きいかもしれませんね。皆、安心して遊びに来られるようになりましたし。

渡辺
 そうですね! セカライ2ndのときよりもたくさんの方に来てもらえたので、本当によかったなと思いました。

――では江口さん、いかがでしょうか。

江口
 やっぱり、ファンの方々の声を肌で感じられたのがよかったです。……とはいえ始まるまでは、セカライ3rdのテーマであるEvolve(進化)の部分を来てくださった方がどう受け止めてくれるのかわからなかったので、本当にドキドキしていました……! でも、始まってみたらすぐに会場中に歓声が響いて、皆さんの喜んでいる顔が見えたので、ホッと胸をなでおろせたんですけど(笑)。
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“Evolve”が意味すること


――そのEvolveについて詳しく掘り下げていきたいんですけど、塚田さん、このテーマになった経緯をぜひ教えてください。

塚田
 わかりました。ご存じの通り、セカライ3rdからかなり見た目も、中身のシステムも変えました。結果、ライブイベントとしても1段階レベルアップできたのではと思っています。

――はい。

塚田
 まず準備段階の経緯をお話しすると、毎年同じような形でライブをしているとマンネリを感じてしまいますし、なによりファンの皆さんも前回よりもいいものを期待してくださっていると思います。ですので、その気持ちには絶対に応えなきゃいけないと思って、日々動いてきたわけです。そこで振り返ってみると、セカライ1stから2ndになったときもさまざまなチャレンジと工夫を盛り込んだんですけど、“進化幅”で言うとマイナーアップデートだったかな……と感じていたんですね。ですのでつぎは、大きな変化を加えないといけないと、使命感にも似た気持ちを抱いていたわけです。

――はい、とてもよくわかります。

塚田
 たとえば、ユニットごとの、ユニットらしいステージでパフォーマンスをできないか……と考えたわけです。2ndまでだと背景が黒1色で暗いので、キャラクターがそこに立っているのはわかるんですけど、寂しい感じがしたんですよね。ですので、ここは第一の進化ポイントだと思っていました。もうひとつ、これはのちほど詳しく解説させてもらうと思いますけど、ファンの皆さんから「いろいろな衣装で歌っている姿が見たい」という声を、本当にたくさんいただいていたんですね。これも進化ポイントのひとつだと考えていたのと同時に、お客様たちが熱望されていることだったので、「どうにかしたい!」と強く意識しました。これらのアイデアについて最初に話したのって……確か、渡辺とふたりで会議をしていたときだったと記憶しています。

渡辺
 はい、そうでした。

塚田
 できるかできないかは別にして、とにかくアイデアを出し合ったんですよね。たとえば……プロジェクションマッピングで会場に何かを投影しながらの演出はできないかな? とか(笑)。脳ミソを徹底的に柔らかくして、やりたいことを言い合いました。その流れで雷音の関本さんに、「そろそろ新しいことをやりたいですね」と相談したんです。

――へーーー!!

塚田
 その結果、「こういうのができるかもよ」とお話がきまして……! そこで、さまざまな演出のひな形を見せてもらって、「これならいけそうですね!」と。

――ほうほう……!

塚田
 同時に、ここまでいろいろとやれるんだったら、しっかりとファンの皆さんにアピールして現地に来てもらわないといけないよな……と思ったんです。絶対に多くの人に来てほしい……でもどうすればいいんだろう……と考えに考えた結果、「とにかく素直に、セカライが進化することを伝えよう!」と結論付けて、サブタイトルを“Evolve(進化)”に決めたんです。

――そんな経緯だったんですねーーー!!

塚田
 はい。わかりやすく、進化したことを知ってもらおう……ということで、本当に素直に決めた感じです(笑)。

――渡辺さん、当時を振り返っていかがですか?

渡辺
 私が覚えているのは、プロジェクションマッピングもそうなんですけど……! 「客席を揺らしちゃう!?」なんてアイデアも出ていたことです(笑)。

一同 (爆笑)

塚田
 え!? そんなこと言ったっけ!? ぜんぜん覚えてないんだけど(笑)。

――4Dってヤツですね……! ゴクリ……!

塚田
 ですね……。いやでも、突拍子もないなあ(苦笑)。

渡辺
 最終的には、LEDを使って背景を作って……というバーチャルステージに着地するんですけど、1年前に塚田がインタビューを受けたときは、まだ完成形にはなっていませんでした。

――あ、そうなんですか!

渡辺
 本当にプロトタイプと言いますか、LEDシステムを使うとこういう見た目になるよ……という実験をしていた時期ですね。スタッフも探り探りの状態で、当時のものはセカライ3rd本番のものとはかけ離れていました。ですので我々も、「こっちに舵を切ってしまって大丈夫だろうか……?」という、非常に怖い判断を迫られているところだったと記憶しています。でも、「進化をさせて、新しいライブを作るぞ!」とスタッフ一同気合が入っていましたし、「やれることがあるなら、それを最大化できるようにがんばっていこう!」と団結して、この方向に進むことにしたんです。


――その1年前のインタビュー終わりに演出の関本さんが、「セカライ3rdは、2ndとは比べ物にならないですよ」ということをおっしゃっていたので、我々もワクワクしながら家路に付いたんですよね。でも……そのときはまだ、プロトタイプだったんですね。

塚田
 「こういう感じに着地するだろうな」という構想はあったんです。でも当時はプロトタイプすぎて、そこまで持っていけるのかどうかが、まだわかりませんでした。でも、時期的に判断を下して舵を切らなければいけない……という瀬戸際だったので、いま渡辺が言ったように、「やり切れるかわからないけど、がんばろう!」となっていたんです。
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――じゃあ1年前のインタビューのときって……けっこう心穏やかじゃない感じでした?
塚田
 お腹痛かったですよ!(苦笑) ……あ、思い出したんですが、ちょうどそのころにセガさんの本社に行って、プロトタイプの第1段階くらいの映像を投影してもらったんですよ。受付のところにある、大きなLEDモニターに。

――ありますね! 読者の皆さんはわからないかと思いますが、セガのエントランスにいつもゲーム映像とかが流れている巨大LEDモニターがあるんですよね。

塚田
 でも実験的な映像だったので、やっぱり本番とはかけ離れているわけです。なのでそれを脳内補完しながら(ここからがんばれば、いいものに仕上げられるかな……? もう迷ってられないな。決めるしかないよな……?)と考えに考えて、「これでいきましょう!」とゴーサインを出すんです。……でもセガさんからの帰り道、渡辺とふたりで、「お腹痛いけど、がんばるしかないよね」って話したことを鮮明に覚えています(笑)。

――そんな流れだったんですね……。当たり前ですけど、初めて知りました。

塚田
 とはいえ、プロトタイプの映像は本当に荒くてヤバかったんですけど、それを仕上げてくれたのがここにいる江口です。その後にジョインして、やりきってくれました。

――その後にジョイン!? 江口さん、壮大な話が進んでいるところに加わった、当時の心境は?

江口
 正直、僕が加わったときにイメージしていたのって、セカライ2ndだったんです。で、ジョインしてから詳しい話を聞いていくと……なんか想像していたヤツとちゃうぞ、と(苦笑)。

一同 (笑)

江口
 僕はもともと違うチームで3Dとかを作っていて、セカライチームにジョインするまでは、AR/VRカメラについても考えたことがないわけです。さっき言ったように、セカライ2ndのようなライブの手伝いだと思って話し合いに加わったら、……LED? AR/VRカメラ……!? みたいな感じで(笑)。しかも、プロトタイプという言葉が出ていますけど、僕が入った段階ではほぼほぼまっさらな状態でした。ですので、加わったのが2023年の5月末だったんですけど、最初にやった作業はプロジェクトのフォルダを作ること(笑)。

――あははは!! 本当に、何もできていなかったんですね!

江口
 そうなんです。でも、気合は入りましたよ。Evolveを謳っている以上、見た目が1stや2ndよりも劣ってしまったらその時点でおしまいじゃないですか。Evolveを体験するには、絶対に“見た目のハードル”を越える必要があったんです。本番に向かって、「Evolveを完成させよう!」という決意で作業に従事しようと思いました。

――しかし2023年5月末にジョインされて、本番は……! 2024年1月でしたから、半年後くらいですよね!? 相当タイトなスケジュールだったのでは?

江口
 はい、それはもう……。僕はもともとゲームを作っていたんですけど、ゲームの開発期間とライブの開発期間って、そもそもまったく違うんです。ゲームはいまや数年単位ですけど、セカライは入って半年後に本番でしたから。

進化その1 バーチャルステージ

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――そのEvolve……進化の具体的な施策ですけど、大きく3つあったと思います。まずは、すでにお話に出ていますけど“ステージの進化”ですよね。僕は正直、セカライ2ndでも十分すぎるほど驚いたんですが、3rdはそれに輪をかけてすさまじくて……。この、新しいステージに懸けた想いからお聞かせ願えますか?

塚田
 ライブイベントって、総合的な体験によってお客様の満足度が変わるものだと考えています。映像だけが良くてもダメですし、音だけ際立っているのも良くない。たとえば情報出しのタイミングやその後の続報の出しかたとかでも期待度は変わっていって、それが当日の満足度にも反映されるんじゃないかな、と。

――わかります!

塚田
 そういう意味では、第一報を出したときから始まっているんですよね。そこから、ライブが終了するまでの全体の体験をどうするか……ってことを考えなければいけないわけです。

――はい。

塚田
 それを構成する要素のひとつであるステージに関してですが、まず“キャラクターのモデル”をイチから作り直しました。でもここも難しくて、人によっては以前のモデルのほうが好きだった……という可能性もあるわけです。とはいえシステム変更に伴ってどうしても作り直さなければいけなかったので、まずはそこで決断を迫られました。

――なるほどなーーー。

塚田
 そこで考えたんです。『プロセカ』が好きな皆さんは、たとえモデルの好みがあったとしても、キャラクターの個性が活き、ユニット感のある演出ができる空間でパフォーマンスをしてくれたほうが絶対にうれしいだろうな、と。ここで先ほどの“総合的な体験”が出てくるのですが、システムとモデルの変更をしたうえでのステージづくりのほうが圧倒的にメリットが大きいと確信できたので、刷新することに決めました。

――おっしゃる通り、ステージの背景も含めた総合力が凄いなと感じました。

塚田
 ありがとうございます。パッと見たときの印象がぜんぜん違いますもんね。ライブビューイングや配信でも楽しめていただけたと思いますけど、会場に来られてアレを見たお客様から……ちょっとザワ付きが起こったのを肌で感じたんです。あのときは、うれしかったなぁ。

――きょとんとしている人がたくさんいましたもん(笑)。

塚田
 ですよね(笑)。「なんかすげえ!」って思ってくれているのが、ヒシヒシと伝わってきました。

――では渡辺さん、このステージまわりについてはいかがですか?

渡辺
 どういうステージがいいんだろう……というところから考え始めていくわけですけど、キーワードとして“そのユニットらしいステージ”という言葉が必ず出てくるんです。でもそれを煮詰めていくとだんだん、「3DMVがそうなのでは……?」と思ってきて……。

――あーーー! 確かに! 『プロセカ』の3DMVって、めちゃくちゃ完成度が高くてステキですもんね!

渡辺
 はい。案を練っても、「こういうの、MVで見たことあるかも」というものばかり出てきてしまって……。既視感を感じるステージを見てもお客様は感動できないと思ったので、“ライブならでは”、“ユニットらしく”、“初めて見るもの”を総合して考えるのに、すごく苦労した記憶があります。

――ライバルが『プロセカ』のMVになるわけか……。それを超えた新しいモノを見せなきゃなんですもんね。

渡辺
 そうなんです。会場に来て、ライブを現場で見てもらうからには……そこだけの体験をなるべくたくさん盛り込みたい! という気持ちでいっぱいでした。

塚田
 投影テストを事前に行うんですよ。バーチャルステージとキャラクターを出して、うまく映るか……という実験ですね。プロトタイプから本番用のものに進む途中の話なんですが、大きな倉庫を借りて、本番と同様のLEDを設置して行うんです。そこで僕らも初めて、形になったバーチャルステージを見たわけですね。

――はい。

塚田
 そのときはLeo/need(レオニ)だったんですけど、遠くからレオニのみんながステージにいるのを見たとき……本当にそこにいるのでは!? という錯覚を覚えました。「これならいける!!」って確信した瞬間ですね。

――うお、鳥肌立った。

塚田
 あれは、感動しましたね。「うわ、やば!!」って(笑)。

――そのときのこと、おふたりも覚えてらっしゃいます?

渡辺
 私も感動しました! そのときのステージの映像、トラスが立っているデザインだったんですけど、実際に映像の中からトラスが飛び出てリアルに立っているのでは!? って錯覚して、ビックリしましたし。

江口
 キャラクターとバーチャルステージが合わさったときのパワーのすごさを、まざまざと見せつけられた気がしました。倉庫に入ってステージを見た瞬間、リアルと見間違えましたし。セカライ2ndと比べても、存在感が圧倒的だと思いました。

――僕なんてセカライ2ndのときから、「ちょ、なにこれ、キャラクターがホントにいるじゃん!!」って、いっしょにいた記者にわめいていましたからね。3rdなんて、夢の世界の話かと思いました。

塚田
 ありがとうございます(笑)。細かいことを言うと、リアルさを少しでも出すためにさまざまな工夫をしているんです。たとえばリアルなライブって、ステージで演技をしている人とサイドモニターに映し出される映像って、若干のラグがあるじゃないですか。

――ああ、ありますね。口元がズレているというか。

塚田
 じつはそのラグも、セカライは反映させているんです。デジタルですからピタッと合わせることもできるんですけど、臨場感を出すために、あえてラグを残しているんです。

――なるほどーーー!

塚田
 おそらく、ピタッとさせると逆に違和感を感じてしまう部分かなとも思うんですね。

――いやあ、おもしろい! そんなステージまわりは、江口さんの活躍の場だったと思いますが、振り返ってみていかがですか?

江口
 ポイントは、ふたつありました。ひとつは、セカライ2ndの透過スクリーンを使ったステージとの見え方の違い。もうひとつは、先ほど渡辺も言った、『プロセカ』プレイヤーがいつも見ている3DMVとの比較になる……というところ。このふたつに関しては、徹底的にがんばらないとマズいなと思っていました。これを乗り越えるために何をすればいいのか……と日々模索する中で、まずはキャラクターの見た目の仕様を詰めていくことにしました。

――はい。

江口
 スマホでプレイする『プロセカ』は、当然ながら機器のスペックを考慮した上でキャラモデルを作る必要があります。でもライブステージの場合はそれを考えなくてもいいので、余裕ができた分、どのようにブラッシュアップをしていくかを徹底的に考えていきました。ちなみに『プロセカ』もセカライもUnityで作っているのは同じなんですが、AR/VRを組み合わせる関係でそのまま移植することができないんです。ですので本当に、イチから作ることになりました。そのうえで、環境が違う中でどうやって見栄えを作れば3DMVに近づき、そして越えられるのか……といったところを煮詰めていった感じですね。

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――……もう、聞いているだけでたいへんそうなんですけど。イチから作っていくとか……!
江口
 でも、僕は楽しかったですよ! ライブってやっぱり、ゲームを作っているのとぜんぜん違いますし。ライブは、どのカメラ割りで、どういう照明が来るのかわからないという状況の中で、キャラクターに現実感を持たせなければいけません。いまそこに一歌たちがいるんだ……という感覚をお客様に持ってもらうための模索は、ゲーム作りとはまったく違ったので楽しかったですね。

――加えて、セカライ3rdはAR/VRカメラを使った演出が加わったじゃないですか。僕はこれにいちばん驚いたんですけど、導入されたきっかけと、どんな苦労があったのかをお聞かせください。

塚田
 わかりました。これも、雷音の関本さんに「新しいことを盛り込みたい」という相談をしたときに出てきた提案のひとつでした。確か関本さんが演出された別案件で、ステージ後方からカメラで映す……という、似た技術を使われていたんですね。ですので関本さんにはもともとAR/VRの知見があって、「こんなのどう?」という感じで候補に挙げてくれたんです。我々としては、とにかくキャラクターの実在性を追求したかったので、実際にその場にいる雰囲気を演出できるAR/VRの技術は、すごく相性がいいなと思いました。

――うんうん。

塚田
 でも、セカライで採用してみると、バーチャルステージの形とか演出によって、真ん中のモニターと左右のAR/VR用モニターの映像に、ちょっとした差異……そうはならないでしょって感じの見え方になっちゃったりしていたので、そこはもう実際の現場に入って、仕込みの段階でなんとかするしかないなと。具体的には、カメラさんとか照明さんとか、各チームからフィードバックをもらって、それを細かなところから大きなところまで、違和感を全部潰していきました。……まあ、僕の口からは簡単そうに言っていますけど、技術担当はかな~り苦労したと思います。

――お話を聞いていると、すごい技術の陰に隠れて、意外なほど泥臭いことをされていたんだなという印象です。

塚田
 おっしゃる通りで、AR/VRカメラで引きすぎてしまうと、バーチャルステージの全容が見えすぎて合成感が強くなってしまう……とかとか、細かい問題がいろいろと出てきたんです。これ……カメラマンがどの人でどう動くのか……ということは、現地に入ってみないとわからないので、リハーサル、ゲネプロは血眼です。「ひとつも見逃せない!」って感じで凝視していました。

――え……? リハーサルって……ライブ当日のリハーサルを見てから調整を!?

塚田
 リハーサルを見て……からの、調整です!

――!?!?! そうなんですか!? それは恐ろしいですね!!

一同 (笑)

塚田
 カメラマンさんも、現地に入って照明の具合とか演出を見てからじゃないと、どんなカットで抜いていくかとか、決められないじゃないですか。ですのでその後にカメラマンさんと打ち合わせをして、ギリギリまで調整を入れていた、と……! ですのでもう……泥臭いなんてモンじゃなかったです(笑)。

――渡辺さんも、その場に立ち会って。

渡辺
 はい。塚田といっしょに、本当に細かなところまでディレクションを行っていました。

――当時を思い出して、いかがですか?

渡辺
 当日は当然バタバタだったんですけど、その日を迎えるまでにもかなり細部にわたる調整というか……戦いがあったなと。たとえばキャラクターの動きとか表情の細かな部分が、2ndまでは正面から見て100点だったら完成なんですけど、セカライ3rdはAR/VRカメラがあるので横からも後ろからも見られるようになるじゃないですか。でも、ライブ当日にどの方向から映されるのかわからないので、すべての角度からキャラモデルを確認して、「ここから見てもかわいいね♪」、「あ、こっちからも大丈夫!」なんて言いながら、慎重に修正を重ねていきました(笑)。

一同 (笑)

渡辺
 これを、何度も何度もくり返していたので、おそらくセカライ3rdの本番までに……20回以上は通しで映像を見ていると思います。

――!!!? いやでも、確かにそうですよね……。どんな角度から撮影されても成立するようにしなきゃいけないわけですから。では江口さん、まさにそのへんの技術まわりを担当されたわけですが。

江口
 ふたりが話した通り、問題はライブ当日のカメラマンさんが映した信号からデータを読み取って、カメラワークを作るというところです。カメラマンさんが撮影している映像は作り置きの動画じゃなく、すべてリアルタイムで左右のモニターに映し出されるので、“カット割り”(※演出に沿って、アングルや構図などを撮影前に決めること)という概念がないんです。通常のミュージックビデオだとカット割りがあって、そこにどう色を塗ってルック(見た目)を良くしていくか……と考えることができるんですが、ライブだと事前にわかるものが何もありません。これは照明にも言えて、ライブ中はリアルタイムに照明卓からバーチャルに反映されているんです。このカメラと照明って公演ごとに違うし、リハーサルと本番でも違うので、ゲーム制作で培ったカット割りからの色塗りがまったく使えませんでした。最終的に、「事前にわからないんだったら、その信号から予測できるものを作って対応しよう」ということになって、自分でエンジンを構築することになるんです。

――……なんかもう、話が壮大すぎてよくわからなくなってきたんですが(苦笑)、要するにライブのステージはリアルタイムで刻々と状況が変わってしまうので、それに対応しないといけない……ということですよね?

江口
 そうですね。ライトをリアルタイムで当てたものをカメラで撮って……というものにふつうに色を入れると、いわゆるトゥーン(マンガのような色の塗り方のこと)の色味じゃなく、フォトリアリティー(実物っぽい色の塗り方のこと)なものになってしまうんですね。するとその瞬間に、全体の色味と比べて違和感が出てしまう、と。じゃあトゥーンで塗るにはどうすればいいかと言えば、さっきのカット割りにするのがいちばんいいんです。でもそれはできないので、じゃあライブのフォトリアルとトゥーンの間のものを吐き出せるエンジンを作ればいいんじゃないか……と考えたわけです。フォトリアルな映像を一度エンジンに噛ませることで、そのエンジンがトゥーンにしてくれれば……と。理論上はいけるなと思い、制作に取り掛かりました。

――へぇ~~~!!!

江口
 でも現場に行くと、背面からも横からも、クレーンのカメラもあるので、360度のカメラワークと色の配置を、全曲分チェックしなければいけませんでした。そのうえでエンジンの調整とカメラマンとの交渉を、ライブの直前までやっていた感じです。

――そうか……! AR/VRカメラすごいなぁ……と感心して見ていましたけど、あれって事前に作ってあったものを流していたわけじゃないんですもんね。

江口
 はい、すべてリアルタイムです。

塚田
 バーチャル空間で、リアルタイムでカメラマンさんが撮っている映像……ってことになりますね。

――整理すると、リアルタイムな上に齟齬がでないように調整して、さらにライブ感を出すために左右のモニターとほんのちょっとの時差を入れてAR/VRの映像を映し出していた……と。

塚田
 そういうことですね。

――す、すげえ……! さっきから「すげえ」しか出てこないですけど(苦笑)。

一同 (笑)

江口
 先ほど出た「泥臭い」というのは、まさにその通りでして。当日のゲネプロ、リハーサルで本番のLEDで見ると、その場の空間の色味と相俟って、調整が必要になってくるんです。たとえば、赤みが強くてキャラクターに乗りすぎちゃう……という話が出て、直前に色味の全調整をしました。リハーサルが終わり、本番が始まるまでのわずかな時間に再チューニングをしていたんです(苦笑)。

――生きた心地がしないヤツじゃないですか!

江口
 あははは! 本当にそうでしたね! でも、本番の環境で見ると実在感が圧倒的だったので、そこは妥協をするわけにいかない、って思いました。

進化その2 セトリとフィーチャーメンバー

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――なるほど……! これ、話がおもしろすぎてステージのことだけで記事が1本書けてしまうんですが(笑)。そうもいかないので、つぎはセトリ(セットリスト。ライブで歌われる楽曲のこと)についてお聞かせください。

塚田
 よろしくお願いします(笑)。

――セカライ3rdは2ndと比べて、とにかく物量からして違ったじゃないですか。しかも新たな試みとして“フィーチャーメンバー”(※各ユニットから2名を選抜して歌唱する企画)も実施されたと……。このあたり、振り返ってみていかがでしょうか?

塚田
 このセトリの部分でも、いままでとはちょっと違う体験を提供したいなと思って、(どこで工夫ができるだろう……?)と考えたわけです。熱心なファンの方って複数の公演に来てくださるので、本編の内容がすべて同じだとさすがにちょっと退屈になるのでは……と思いました。そこで、何らかの差分を作りたいと考えたときに、まず、Aセトリ、Bセトリという具合に2セット用意しました……と。フィーチャーメンバーに関しては、『プロセカ』はユニット単位で何かをすることがほとんどでしたけど、こういった場ならではの試みとして「デュオとかいいのでは?」という案が出て、2名ならではの絡みかたとかパフォーマンスを見せられるなら、ぜひやってみようか……となりました。僕も、たいへんなことはたいへんだったんですけど、もっとたいへんだったのはこっち(渡辺さんと江口さんを見て)だと思います(笑)。

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――渡辺さんはまさに、このあたりのディレクションをやられてたわけですよね。
渡辺
 そうですね。当たり前ですけど、作るものが2種類になった分、順当に作業量は倍以上になりました。

――ですよねぇ~!!

渡辺
 各公演で同じものをお見せするのも申し訳ないから、とにかく味を変えていこう……という想いのもとで作業を始めたわけですけど、その分、気を遣うことも増えたと思います。

――たとえば?

渡辺
 今回、ステージごとにフィーチャーする子を変えてデュオでパフォーマンスをする……という企画を実現したわけですけど、公演を見たファンの方から「自分が見たい子があんまり出てくれなかった」なんて声が上がったら悲しいじゃないですか。ですので、そのあたりも事前にわかるようにするなど伝えかたにも注意を払いながら、設計をしていきました。

――そこ、ぜひ突っ込みたいんですが、デュオの決めかたのポイントは?

渡辺
 (塚田さんを見ながら)どうやって決めていきましたっけ?

塚田
 これも最終的には、“バランスのパズル”でしたね。

――昨年インタビューしたときに、セトリの決めかたについて「どうバランスを取るかは、パズルでした」とおっしゃっていましたけど、それと同じと。

塚田
 はい、そうですね。各キャラクターのいろいろな要素を勘案するとともに、お客様が楽しんでくれるであろう選曲のバランスも考慮しながら組んでいった……という感じです。ひたすらアナログに、トータルのバランスを人力で見ながら決めているんです。

――でも、ファンの声も追ってみましたけど、「すごくキレイに分かれてる!」というコメントが目立っていました。そのへんのバランス感覚は、さすがだなと。

渡辺
 自分たち自身が『プロセカ』のファンでもあるので、目線が近いのかもしれません。

――すばらしい!! ……では江口さん、セトリが増えて作業量がたいへんなものになったと思いますが、いかがでしょう?

江口
 曲数が2倍になればチェックも2倍になるので、エフェクト、CG、あとこのあとに詳しく出てくる衣装などなど、調整する工数はたいへんなものになりました。……でも個人的には、セトリが増えればライブで聴ける曲が充実するので、「いっぱい聴けてうれしいな!」って感じでしたけど(笑)。

一同 (爆笑)

――完全に来場者目線じゃないですか!!(笑)

塚田
 でも、そんなものなんですよ(笑)。当日も3人で、「昼の公演のここがいいんだよねー!」とか、「夜公演のここがかっこいいんですよ!」なんて、普通に話していましたし。

江口
 ファンの方と同じですね、そこは。

――制作側の皆さんも、ライブを楽しんでいたと。

塚田
 めちゃくちゃ楽しんでいました(笑)。

進化その3 目まぐるしい衣装変更

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――その楽しみのポイントのひとつに、セカライ3rdでは目まぐるしく変わる“衣装”がありました。でも、曲ごとに衣装を変えるって、素人目にもたいへんだろうなと思ったのですが……?

塚田
 これも、お客様からの要望が多かったもののひとつです。我々としても、いろんな衣装で踊るキャラクターを見たかったので、なんとか実現できないかな……というのは、じつはセカライ2ndのときから考えていたんです。

――あ、そうだったんですか。

塚田
 でも、当時はいろいろな制限があって実現できませんでした。それでもあきらめきれない要素だったので、「なんとかしたいな……」とずっと考えた結果、これもシステムを刷新する要因のひとつとなったんです。これによりさまざまな制限を取っ払うことができたので、ようやく実現に至りました。ちなみに衣装の選定も渡辺がやっています。

――衣装は……相当悩まれたんじゃないですか? 渡辺さん。

渡辺
 もう、すっごく悩みました! MVで着ている衣装ってファンに定着しているので、急に違うものにされたらイメージが壊れちゃうよな……とか、逆にMVがない曲はまっさらの状態なので、「この曲はどんな衣装を着ていたら、みんなうれしいんだろう……?」ということを、ひたすら考え続けていたんです。でも、たいへんではあったんですけど、やっぱり衣装選びは楽しかったです。「これを着て歌ってくれたら素敵だろうな」と思ったものを着てもらって、江口とふたりで「いいね!」、「かわいい♪」なんていいながら調整したり……。

――時間はかなりかかったんじゃないですか?

渡辺
 かかりました! ただ衣装を先に決めないと、いろいろな弊害が出てしまうんですね。たとえば踊ってくださるアクターさんたちも、どんな衣装なのかがわかったほうが圧倒的にパフォーマンスをしやすいですし。

――あ、そうか!

渡辺
 ですので、踊りのモーションを収録する前に、衣装はすべて決める必要があったんです。

――おもしろいな~~~! では江口さん、衣装についてはいかがですか?

江口
 衣装はセカライ3rdに関しては……全部で200体以上になりましたよね?

――200!?!

渡辺
 はい、超えていたと思います。

江口
 その調整をすべて、僕と渡辺のふたりで行ったんですけど、この物量の多さは苦労のポイントではありました。

――ですよねーーー!

江口
 この200体の衣装を、セカライ独自にポリゴンを滑らかにする調整や、影の出方とかを1体1体すべて僕が調整しているんですね。これに加えてたとえば照明が当たったときにキラリと光ってほしいアクセサリーとかもあるので、そこもひとつひとつ、テクスチャーを描いたりしたんです。

――200体分……?

江口
 200体分です。さらにそのモデルを曲に乗せた状態でも見なきゃいけないので、とにかくひたすら時間はかかりました。

――気が遠くなる話ですな……。

江口
 でも、個人的にも衣装が変わるワクワクを感じていたので、先ほどのセトリと同様、たいへんではありましたけど楽しかったです。「この衣装、やっぱいいよねー!」とか、渡辺と言い合いながら(笑)。でも中には、本当に一瞬しか出ない衣装とかもあるんです。それも、当たり前ですけど同じように調整をして……。

――へ~~~!!

江口
 ちょっとしか映らないとしても、演出としては大事な一瞬なわけですから、手を抜かずに、ほかの衣装と同様に調整をしていきました。

渡辺
 ……私が演出で、「ほんの一瞬だけ衣装を変えたいです!」って言って、江口の仕事を増やしてしまったという(苦笑)。

――あはは! でもそれは、演出としては必要なんですもんね。その刹那が。

渡辺
 はい。なんとしてもやりたかったので。

――しかし……そのお願い、しづらいですね。

一同 (笑)

渡辺
 「彼ならきっとやってくれる!!」と信じていました(笑)。

[IMAGE]
――でもけっきょく皆さんの根本にあるのって、「楽しいから!」とか「来場者の喜ぶ顔が見たいから!」というポジティブな想いなんですね。だからこそ、その物量も乗り越えられるわけで。
塚田
 おっしゃる通りで、セカライを3回やってきましたけど、毎回ひとりずつ参加してライブを手がけるたびに感動で泣いているんです。1stのときは僕が泣いて、2ndのときは渡辺が泣いて、3rdのときは江口が泣いて(笑)。

つぎのステージに向けて


――ここまでお話を伺ってきて、やりたいことをかなり実現できたというのはよくわかったのですが、逆に皆さんだからこその課題も見えてきたんじゃないかなと思うのです。そのへん、いかがですかね?

塚田
 細かなことは、いろいろあります。ですが、ピンポイントで課題というよりは、“毎回よくしたい”という想いが強いので、Evolve(進化)を掲げたつぎのセカライがあった場合はどう進化させようかな……と、そっちで悩んでいますね。やっぱりお客様の想像を超えたいと思っているので……コンセプトで楽しんでもらうのか、それともトータルの体験を通して技術の進化を堪能してもらうのか……? いままさに頭を悩ませています。

――ではその流れでお聞きしちゃいますけど、“今後やってみたいこと”を話せる範囲でぜひとも……!

塚田
 ……実現できるかわからないんですけど、最終的にはホログラム(立体映像)で、目の前にブーンとキャラクターに現れてほしいです。

――うわーーー!! それ、いいなーーー!!

塚田
 いいですよね(笑)。これをやり切れたら、僕はもう引退してもいいです。

一同 (爆笑)

――でもそれ、いま考え得る究極のCGライブなんじゃないですか?

塚田
 できたらスゴいですよね。花道をホログラムのキャラクターが手を振りながら駆けてきて……みたいなのが作れたらすばらしいなと。でもこれは企画だけじゃなく、機材とかガジェットの進化も必要なことなので、“いつかやりたいこと”というレベルの話でしょうか。なのでどちらかと言うと、そこに向けていかに実在性を高めていけるか……ということが、今後のポイントになるかなと。可能性は、ずっと追及し続けたいですけどね。

――うんうん。

塚田
 あと、1年前のインタビューのときにも話したと思うんですけど、セカライが人生で初めてのライブ……という方が、かなり多いんですね。するとどうなるかと言うと、声出しがオッケーになってもライブの楽しみかたがよくわからなくて、戸惑っている人もかなり出てくる……と。ライブってもっと声を出したり、もっと一体感を持って盛り上がれるよな……ということをセカライの会場で伸びしろとして感じたので、みんなでライブシーンを作っていく……という体験を提供したいと思いました。

――確かに、『プロセカ』のファンって若い子が多いですもんね。

塚田
 はい。コールをどうやればいいのかとか、ここで声を出してもいいのか、とか……。わからない人、多いと思うんです。なので当日を迎えるまでの情報出しのやり方を考えたり、それ用のコンテンツを提供したりして、皆さん、準備万端でライブ当日を迎えられるようにできればな……と考えているんです。「みんなで一体になって楽しむこと」が、ライブの醍醐味ですから。

――ありがとうございます! では、渡辺さんいかがですか?

渡辺
 3rdで驚いてもらうことができましたけど、ファンの皆さんは“その先”も期待してくれているだろうなと思うんです。その気持ちにしっかりと向き合っていきたいなといまは考えています。ですのでまずは小さいことからでも、3rdにはなかったギミックとか体験を提供できるように、考えることを続けていきたいと思っています。

塚田
 会場揺らす?(笑)

――4Dライブってめっちゃ行ってみたいですけど、たいへんなことになりそうだなあ(笑)。いやでも、スゴいことを期待しております! では江口さん、いかがでしょうか?

江口
 そうですね。いまからやってみたいことって、ふたつの軸があると思っていて。ひとつは、3rdを受けてもっと何かできないかと考えることです。僕の担当範囲だと見た目の部分がメインですけど、さらに突っ込んだことができるんじゃないかと思っています。もうひとつの軸は“体験の変化”ですね。3rdでいろいろと新しいことをやってみましたけど、さらに驚く体験を提供するにはどうすればいいのか? と考えているんです。やっぱり、目の前でリアルにキャラクターが躍っている風景を味わってほしいので、僕らの持つ技術でどうアプローチすれば実現できるのか、模索を続けたいですね。

――進化すればするほど、江口さんの作業がたいへんになりますけど……!

江口
 あははは! 僕はそのへん、前向きに楽しむ派なので問題ないです!(笑)

――偉すぎますね!!

江口
 塚田がホログラムって言ってましたけど、聞きながら、(それ、いいなぁ~)って思っていました。だって、花道を走って来た推しのキャラクターが、自分の目の前で手を振ってくれたりしたら最高じゃないですか!

――リアルに、モモジャンの遥とみのりみたいな状況が生まれますもんね!!(興奮)

江口
 はい。一気に、体験のレベルが変わると思います!

――……実現してくださいよ!!

江口
 それが目標ですから、がんばります!!(笑)

[IMAGE]
――わかりました! では最後に、『プロセカ』ファンにひと言ずつお願いいたします!
塚田
 まずは「ありがとうございます!」の言葉に尽きるかなと……! 『プロセカ』はもともとゲーム発進のコンテンツですけど、いまやメディアミックスでいろいろな展開をしています。ゲームが主軸なのは変わりませんが、その中でライブというのは刹那的ではあるんですけど、日々のゲームでの体験とは違った、リアルに大きな感動を提供できるものだと思っています。なので、今後もし“セカライ4th”があったとすれば、可能でしたら現地で楽しんでほしいなと思います。

――うんうん。

塚田
 加えて、今後も定期的に行えるとしたら、みんなが集まれるお祭りのようにもしたいしですし、『プロセカ』ファンのホームじゃないですけど、拠り所のようにしていければと考えています。長く続けられるようにがんばっていきますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

――ありがとうございます! では、渡辺さん。

渡辺
 まず、『プロセカ』というコンテンツを3年以上支えてくださっているファンの皆様には、お礼の言いようもないです。本当にありがとうございます。ゲーム本編とともにセカライも進化をしてきましたが、この先もセカライを開催できるのであれば、毎回参加するのを楽しみにしていただけるよう、さらに進化した姿を見せられるようにがんばっていきたいと思っています。引き続き、何卒よろしくお願いいたします!

――ありがとうございます! では、江口さんお願いします。

江口
 まずはじめに、いつも『プロセカ』を遊んでいただきありがとうございます。セカライって、1日しかない生の体験だと思います。だからこそ、来てくださるお客様もスゴい熱量をもって臨んでくれるんだと思うんです。その熱に負けないように、我々もセカライをさらにいいコンテンツにするべく努力を続けないといけないなと感じています。これからも『プロセカ』とセカライをよろしくお願いいたします!

――わかりました!! 本日は貴重なお話、本当にありがとうございました!!

"プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 3rd - Evolve -"のBlu-rayが7月24日(水)にリリース

今回お話を伺った"プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 3rd - Evolve -"の東京公演最終日の昼公演と夜公演の映像を収録したBlu-rayが7月24日にリリース。

初回限定盤には特典として、アザー&オンリーアングル映像(定点映像)昼・夜公演を全曲収録。さらに、キャストによるオーディオコメンタリーやライブ写真フォトカード(6種 ホログラムスリーブ付)など盛りだくさん。また、Blu-rayの発売に合わせてタワーレコードやアニメイトとのコラボキャンペーンも開催されているので、気になる人は特設サイトをチェックしてみよう。

Blu-rayの詳細(特設サイト)はこちら

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      集計期間: 2024年07月25日22時〜2024年07月25日23時

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