【プロセカ】“プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE”(セカライ)はどう作られているのか? セトリの選定や細かい演出など運営の中枢がそのすべてを語る。( 1 / 3 )

2023-06-21 18:00 投稿

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プロジェクトセカイカラフルステージ! feat. 初音ミク

制限がある中やりきったリアルライブ

2020年9月30日にサービスインしたセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下『プロセカ』)。いまや押しも押されぬ音楽ゲームアプリのトップランナーだが、その人気はゲーム内だけにとどまらず、リアルライブにも波及していることはファンならば“常識”と言っていい事実である。

なかでも、2022年1月に第1回目が実施され、続く2023年1月、3月に東京、大阪の2会場で行われた“プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE”(通称・セカライ)は、ファンのみならず、ゲーム業界や音楽業界でも非常に高く評価されているCGライブイベントである。

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そんなセカライの成り立ちと“これから”を語るべく、イベントの中枢メンバーの3人に集まってもらった。

Colorful Paletteのライブイベント責任者である塚田陸氏(文中:塚田)、ステージ演出を取りまとめている雷音の関本亮二氏(文中:関本)、そしてセガのサウンドプロデューサーである瀬上純氏(文中:瀬上)。それぞれの立場からセカライ1stと2ndを総括してもらうとともに、今後のCGライブについて語ってもらった。

また文末で、今回の座談会に急遽参加できなくなってしまったプロセカの3DMVチームの新井氏(文中:新井)からのコメントも載せさせてもらっているぞ。

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▲左からセガのサウンドプロデューサー瀬上氏、Colorful Paletteのイベント責任者の塚田氏、ステージ演出を取りまとめている雷音の関本氏。

記事の見どころ
・ご時世柄不完全燃焼だった“セカライ1st”
・“ライブならではの掛け合い”を導入することでリアルさを追求した“セカライ2nd”
・運営陣も頭を悩ませる“セットリスト”の選出
・随所に施されたキャラクターに“息吹を吹き込む”演出
・狙った盛り上がりと『プロセカ』ならではの“狙っていない”盛り上がり
・新たな挑戦も?次回があればさらなる進化に期待!
・3DMVチームからの一問一答!

▼セカライ2nd東京最終公演の模様を収録したBlu-rayが6月21日より発売中!

ご時世柄不完全燃焼だった“セカライ1st”

--まずは、セカライにおける皆さんの役割を教えてください。

塚田 私はこのライブの、Colorful Palette側の責任者となります。細かいところでは、キャラクターディレクションやセットリストの決定、さらに台本、MC内容など、セカライを形作る中身のコンテンツを統括する立場になりますね。

--総合監督、ということになるのでしょうか?

塚田 舞台や演出のことは関本さんにやってもらえているので、私は“キャラクターまわり”の監督ということになるでしょうか。

関本 でも我々からしてみれば、やっぱり塚田さんはボスに近いと思います。演出も、まずは塚田さんの意向に沿って考えていきますからね。

--では関本さん、よろしくお願いいたします。

関本 僕は現在も“初音ミク”の版元であるクリプトン・フューチャー・メディアに在籍していて、そこでかれこれ10年以上、ライブの演出を担当しているんです。その流れで『プロセカ』にも協力することになったわけですけど、いきなり幕張メッセだったんですよね。

--第1回目のセカライ……いわゆる“セカライ1st”ですね。

関本 そうです。こういった大規模会場の初音ミクのライブに“マジカルミライ”があるんですが、その演出も僕が任されていて、幕張メッセやインテックス大阪を会場にずっとやってきました。そして去年の9月にステージ演出に特化した“雷音”という会社を立ち上げて、セカライはもちろんなんですけど、いろいろなアーティストやバーチャル・シンガーの演出をやらせてもらっています。

--ありがとうございます! そして、瀬上さんは。

瀬上 僕は長くセガに在籍して音楽を作ってきた人間ですけど、じつは初音ミクのコンテンツには関わっておらず、立ち上げのときから参画した『プロセカ』が初めてのことになります。『プロセカ』ではセガ側がゲーム中の楽曲制作をしているんですけど、その楽曲のデータを関本さんに渡して演出を考えてもらったり、さらにセットリストの要望が上がってきた曲を取りまとめてライブで使えるようにしています。もちろん、ゲーム内の楽曲制作をしていますから、ライブでもプラスになるように……逆に言えば差異が出ないように“ゲーム視点”での提案や要望を上げさせてもらっています。

--瀬上さんは、90年代初頭からセガが誇る『ソニック』シリーズとかスポーツゲームの音楽も担当されていましたよね。

瀬上 そうです。ソニック、レース、スポーツ……などの分野で27年ほど働いてきたんですけど、2年前にいきなり『プロセカ』がやってきました(笑)。自分がこれまでまったく関わってこなかったジャンルだったので、すごく新鮮で楽しいです。

--ではここから改めて、2022年1月に行われたセカライを振り返ってもらいたいと思います。参加したファンからの反響や、逆に課題なども見えてきたんじゃないかと思うのですが、まずは塚田さん、“セカライ1st”を振り返ってみて、いかがですか?

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塚田 思えば当時はコロナ禍の真っただ中で、チケットの返金対応はもとより、お客さんの入りも想像以上に鈍くて、忸怩(じくじ)たる思いをしたことは事実です。それでも内容に関しては、1回目ということもあって、いろいろなことに挑戦できたという手応えもありました。

たとえば、ゲーム内のセリフのやり取りってどうしても、誰かが言葉を発したのを待ってからつぎの人がしゃべり出す……という流れになりますけど、ライブはコレではなく、もっと“生身の人間感”というか、そこにいる雰囲気を出したいと思いました。そこはかとないリアルさを表現するために台本を作ったんですけど、いま思えばもっとやれることもあったなと気付きました。このときの動画を見ると、MCはもっと自然な掛け合いができたな……と強く思うので、そういう意味ではまだまだ良くすることができるライブだと思いました。

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--とはいえ、会場で見たファンからの反応はすごくポジティブだったと思います。

塚田 そうですね! 1回目ということもあってか、来てくださった方は喜んでくれていたようで、嬉しかったです。

--私も会場で見させてもらいましたけど、やっぱりコロナ禍での開催だったので、声が出せず、コールができない……といった、見る側にもいろいろな制約が設けられていました。でもそんな中で、身振り手振りや拍手で喜びを表現しようとしていた子がたくさんいて、改めて『プロセカ』っていいファンがたくさん付いたゲームなんだなぁ……と実感したことを覚えています。

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塚田 ありがとうございます。『プロセカ』はファンの中心年齢層がかなり若いので、「セカライが人生で初めて参加するリアルライブです」という人も多かったみたいなんです。その感動や興奮を、必死に表現しようとしてくれていましたね。

--あー……! そうか、初めて参加するリアルライブとなったら、そりゃあうれしいですよね……!!

塚田 はい。そういった方には格別の体験を提供して、今後も『プロセカ』ないしはライブ体験を生涯の趣味にしたくなるような思い出にしてあげたい……と考えていました。そんな中で、『プロセカ』でのリアルライブは初めてだったのに加え、規模も大きかったので不安だったんですけど、楽曲もステージ演出もクオリティ高く仕上がったので、本当によかったなと思います。

--うんうん……!

塚田 ライブの前日に、会場でゲネプロ(通しで行うリハーサルのこと)を見たんですけどね。Colorful Palette側は基本的にはほぼ僕ひとりの作業だったので、どういったものに仕上がるのか不安ばかりが募っていたんですけど、しっかりと形になったのを見て思わず……ちょっとウルウルとしてしまいました。「おお……! まじでみんなそこにいてパフォーマンスしてる……!!」って、ひとりで感動して(笑)。先ほど言った課題はありながらも、制作側の人間も感動してしまうステージをお客さんにお見せすることができて、本当によかったと思います。

--そんなステージの演出を担当された関本さん、セカライ1stを振り返ってみていかがですか?

関本 もう1年以上も前なので忘れていることもあるんですけど、コロナ禍の真っ最中に、初ライブでここまで大規模なものを企画したという事実に驚いたことを覚えています。しかも僕、じつは『プロセカ』ってまったく遊んだことがなくて。

--あ、そうなんですね。

関本 はい。僕は『プロセカ』に限らず、いろいろなゲームのライブ演出もやらせてもらっていますけど、その際に参考にするのっていちファンのつぶやきとか発言ではなく、実際にゲーム制作や舞台に携わっている版元の人たちの意見なんですね。というのも、彼らは俯瞰で物事を見ていて客観的なので、ステージ演出を作るときに参考にしやすいんです。ですので、まずは版元の人たちの意見を吸い上げてから座組を組んでいくんですけど、いきなり幕張メッセが会場で、まだ客層も見えていない段階での開催だったので、すべてが手探り状態でした。

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関本 それは演出に限らず、イベントを作るプロデュースの部分……たとえば会場の押さえから予算組み、さらに制作進行などもそうなんですけど、あれこれとトライ&エラーをくり返しながらも形にしていって、「やっと見えてきたな!」と思ったころに、今度は緊急事態宣言……!

--2021年半ばから2022年初頭にかけては、新型コロナ関連のニュースで持ち切りでしたからね……。

関本 そうなんです。そこからチケットのキャンセル対応が始まったわけですけど、これが聞いたことがないくらいの数に上りまして。

--ああ……。やっぱりそうだったのですか。

塚田 これ、言っちゃってもいいんですかね? じつはセカライ1st、大阪会場でも行う予定だったんです。ただ、緊急事態宣言などもあって、急遽取りやめになりましたが。

--あ!! そうだったんですね!

関本 そう、じつは大阪会場のことも考えて作業をしていたんですけど、最終的には幕張メッセだけに絞ることになって……。もう長いことライブのシステムを作ってきた人間なので、構想を練った段階でだいたいの完成形は見えるんですね。とくに『プロセカ』はキャラが個性的で、ユニットもしっかりと特徴が際立っているので、ライブになったらとことん盛り上がるのが見えていたんです。それゆえに、大阪でできなかったことと、キャンセルが多く出てしまったことが残念というか、不完全燃焼でして。やっぱりライブって、会場で見るのと配信で視聴するのとはぜんぜん違うので、「生で見てもらいたかった!」というのが正直な気持ちでした。

--なんとも歯がゆいところですね、それは……!

関本 そうなんですよー。本当は、セカライ1stを完全な状態で成功させてお客さんの感触をつかみ、その結果を第2回に反映させようと考えていたわけです。でも、それが叶わなかったことが悔しくてねぇ……。

--不完全燃焼とおっしゃいましたけど、それでも得られたことが、今年の1月に開催された第2回目のセカライ……いわゆるセカライ2ndに活かされたわけですよね?

関本 はい、それはもちろん。セカライ1stもステージ演出は完璧にできたと思うんですけど、先の理由もあってお客さんとのコミュニケーションの部分をやりきることができませんでした。ですので、会場に来てくれたファンはどう感じているのか……ということを、セカライ2ndでようやく汲み取ることができた感じです。

--関本さんのようなベテランでも、コロナに振り回されて予定通りにはいかない状態だったんですね。

関本 とはいえ、コロナ禍においても僕らは、緊急事態宣言に引っかからないタイミングでライブを行ったり、ミュージックビデオを作ったりはしていたわけです。そこでは、通常のライブにはある拍手や歓声といった観客からのレスポンスが一切ないから、曲間を詰め詰めの進行にしてやっていたんですね。拍手の間ってそんなに長く続かないので、コロナ前の感覚で進行させようとするとお客さんのテンションが上がりきらないまま終わってしまうので……。ですので、コロナ期間中のライブはめちゃくちゃ詰めの進行で……という、今後は使わないであろう無駄な技術の蓄積が成されました(苦笑)。

--なるほど! コロナ前後で、ライブの進行は微妙な調整が入っていたんですね!

関本 はい。たとえば、お客さんがアンコールを訴えているあいだって、ふつうはその声だけが会場にこだましているじゃないですか? でもコロナ期間中は声を出せなかったので拍手だけで、それだと間が持たないので、アンコールのあいだも音源を流していたり。まあそういう意味では、新しい演出の手法を身に着けることができたかな……とは思います。

--こういうお話を聞いたあとに、改めてセカライの1st、2ndの映像を見てみたいですね。工夫の跡が如実に見て取れそうなので。

関本 でも、特殊な時期だったから成立したけど、いま見ると「うーん!」としかめっ面をしたくなるような演出もけっこうあるんです(苦笑)。当時は仕方のないことだったんですけどね。

--作り手からすると、そうなんですね。

関本 もしもセカライの“3rd”をやると仮定して、の話になりますけど、そのころにはすべての制限が取っ払われて、コロナ禍以前と同じような演出ができているかもしれません。ですので、過去2回のそれと見比べるとさらにおもしろいことになると思いますよ。

--では瀬上さん、セカライ1stを振り返ってみていかがですか?

瀬上 おふたりの意見を総合する形になっちゃいますけど、やっぱりライブって、会場からのレスポンスがあって初めて一体感が生まれるものだと思うんです。セカライ1stは、この重要なファクターが欠落した状態での開催となりました。実際、ライブ当日に会場を俯瞰して見たところ、客席のところどころが空いていて、隙間ができていたんですね。

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--我々マスコミ用の席は後ろのほうだったのでよく見えましたけど、確かに客席に隙間が多かった印象です。

瀬上 はい。これはもちろん、ソーシャルディスタンスを考慮した配置にしていたので致し方のないことだったんですが、たびたび、「これがすべて埋まっていたら、もっともっと盛り上がるんだろうな……!」という思いがこみ上げてきました。「来年こそは!!」という気持ちを心に秘めながら見ていたのがセカライ1stになりますでしょうか。

--運営側として、悔しさもあったのではないですか?

瀬上 そうですねー……! キャンセルがかなり発生してしまった……という話がありましたけど、キャンセルする側にもいろいろな事情があったと思うんです。ギリギリまで悩んだ上でキャンセルを決めた方はもちろん、ご家族に諭されてあきらめた人も多かったに違いありません。それを考えると……運営側も観客側も、どっちも悔しくて当たり前だと思うんです。「見せたかったけど、見せられなかった」、「見たかったけど、見られなかった」と、どちらの立場もあるわけですから。でも、ある程度の規制が緩和された状態で2回目ができたことで、ようやくセカライはスタート地点に立てたような気がしています。

--瀬上さんは長年、音楽を作る立場としてゲーム業界を見てこられたわけじゃないですか。そんなベテランの目から見ても、ここ数年の状況は特殊だったんじゃないですか?

瀬上 確かにそうですね。僕は普段、どちらかという演奏する立場なんですが、そういう機会も減ってしまいました。ただ特殊な時期である分、この『プロセカ』みたいにスマホがあれば楽しめるゲームに関してはすごく盛り上がってくれたわけで……。そういう意味で、『プロセカ』にとってはすごく成長できた期間でありつつ、ゲーム以外のところで見せるコンテンツに関しては、ことごとく苦労した数年でもありました。

プロジェクトセカイカラフルステージ! feat. 初音ミク

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
このゲームの詳細を見る
メーカーセガ
公式サイトhttps://pjsekai.sega.jp/
公式Twitterhttps://twitter.com/pj_sekai
配信日配信中
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