【企画連載】教えてponta先生!「『三国志』ってなぁに?」―第5回:ゲームシーンにおける三国志

2021-09-24 18:00 投稿

ゲームシーンにおける三国志

名前は知っているけれど、中身までを知っている人は意外と少ない(!?)『三国志』を学ぶ企画連載。第5回のトークテーマは“ゲームシーンにおける三国志”。

『三国志』を題材としたゲームは無数にある。とくに日本向けには一般的な題材となっているようで、さまざまなプラットフォームで軽く調べてみてもその数は膨大だということがわかる。

では、なぜ日本では『三国志』というテーマがここまで一般的になったのだろうか?

【話者】

pontasmileponta
生粋の三国志好きであり、コーエーテクモゲームスのゲームシリーズ『三國志』の大ファン。

横浜中華街に行くと、必ず三国志グッズを買って帰る。

Twitterアカウント

icon_hasebeヒゲメガネ長谷部
担当編集。

『三国志』をテーマにしたゲームはどれくらい世に出ているのかと思い、AppStoreで検索をかけてみたところ、あまりに膨大な数が出てきたので数えるのをやめた。

pontaさん!
今回、締切かなり超えちゃいましたよ!
大丈夫ですか!?

icon_hasebe

pontasmile

すみません…。
じつは『三國志』をやりこんでいて…。

『三國志』ですか!?
ちょうど今日はゲームシーンにおける三国志についての話を伺おうと思ってました!
で、なにをやってたんですか?

スマホゲームの『三國志 覇道』ですか?『三國志 真戦』ですか?
それともシミュレーションゲームの『三國志14』ですか?

icon_hasebe

pontasmile

そりゃもちろん…。
『三國志』(初代)です!
1985年に発売された、日本初の『三国志』ゲームにして、シミュレーションゲームの金字塔です!
この連載のために復刻版を久しぶりにやってみたら面白くて手が止まりませんでした!

昨日も寝てないんだ!

sangokusi1

ええ!?
いやそりゃすごい作品なのかもしれませんが。
いまこの2021年に、『三國志』(初代)で徹夜までしてる人は珍しいですよ!

icon_hasebe

pontasmile

えっ!”かもしれない”って…。
ハセベさん、『三國志』(初代)をやったことないんですか!

なぜキレられるのか…。

まぁでも、やったことはないですね……。

icon_hasebe

pontasmile

いやいや。いやいやいやいや。
いま流行っている『三國志 覇道』や『三國志 真戦』、さらには現代まで14作続くシミュレーションゲーム『三國志』シリーズの原点はすべて初代にあるんです!

初代『三國志』を分解すれば、日本のゲームシーンにおける『三国志』はすべて解説できるといっても過言ではありません!

また大きく出ましたね。
『三國志』(初代)ってどんな作品なんですか?

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pontasmile

まず、武将が255人も登場しました。
これはすごいことなんですよ!
同時期に発売された『信長の野望 全国版』で操作できるのは大名だけだったのですが、『三國志』は武将まで操作できるのです!

しかもその全員に詳細な能力値がついていたんです。

諸葛孔明(知力100)と司馬懿仲達(知力98)と周瑜公瑾(知力97)の脳みその序列がきちんとついて見える化したことに、当時のプレイヤーたちは感動したんですよ。

確かに小説では各人の能力値は数値化されてませんからね。
じゃあ、知力だけじゃなくて腕っぷしの強さも数値化されたんですね。

icon_hasebe

pontasmile

そうですね。
呂布が武力100で、関羽と張飛が99でした。最強・呂布の存在は別格のものとしてこのときからキャラが立っていたんですよ。
ただこの武力システムには大きなびっくり要素がありまして…。

びっくり要素?
なんですか?

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pontasmile

戦場で”突撃”コマンドを選ぶたびに武力が3上がるんです。
なので、武力72の諸葛亮が10回突撃すると……武力が上限に達して呂布と同じ武力になるんです…。

ええっ!?
諸葛亮の武力が呂布と同じに!?

icon_hasebe

pontasmile

さすがにアレと思ったのか、次回作以降では武力が突撃で成長するようなことはなくなりました。
そしてこの突撃コマンドの何がすごいって、敵兵を一瞬で殲滅させる攻撃力であり、失敗すると、張飛や趙雲といった一流の武将でも即死するんです…。

即死!?
英雄がそんなに軽々しく死んで、いいんですか!?

icon_hasebe

pontasmile

即死するのは突撃だけではなく、火計もです。

火に包まれてから次のターンまでその場所にとどまると、兵士が1万人いようが2万人いようが即死です。
この死亡率の高さはさすがに『三國志』(初代)だけの特徴ですが、原作の殺伐とした世界観を表現していて、わりと好きです。

あ、あと冬に移動すると兵が死にます。

え!?兵士を動かすだけで減っちゃうんですか?
戦わなくても?

icon_hasebe

pontasmile

そうなんです。
ただ、軍師がいると「寒さで多くの兵が死ぬでしょう。」と、事前にちゃんとアドバイスをくれはします。”あ~そりゃ1800年前の中国の兵士の防寒装備なんてたかがしれてるよね…”と、単なる数値にすぎない兵士へのいたわりの気持ちもうまれてくる優しい仕様でした…。

ちなみにこの『三國志』(初代)の軍師のセリフは「ああ…いなごだ…」とか「他にすることはないのですか?」とか「どんなに強いものでも病には勝てぬ……」といった、味のあるものが多くて、コーエーテクモゲームスの最新作の中でもそのオマージュが見られるほどなんですよ。”兵士の訓練”という常用コマンドを選ぶたびに「他にすることはないのですか?」と諸葛亮に煽られる、これが『三國志』(初代)のだいご味といっても過言ではありません。

ryakudatu

なるほど。初代から時代考証なども含めてしっかり作り込まれていたゲームなんですね!

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pontasmile

そうですね!
この『三國志』(初代)のヒットを受けて、ほかのゲームメーカーからも『三国志』のシミュレーションゲームが発売されました。

その中でも代表的なものが、ナムコの『三国志 中原の覇者』ですかね。

これはファミリーコンピューターという圧倒的覇権ハードで発売されたこともあり、当時の小中学生たちに三国志を知らしめるうえで少なからぬ功績がありました。

ゲーム自体もよくできていて、とくに、武将たちが喜んだり怒ったり笑ったりするコミカルな表情変化は印象ぶかかったですね。

武将の表情が変わるんですか?
小学生でも親しみを持ちそうですね。

icon_hasebe

pontasmile

はい。そのナムコの『三国志 中原の覇者』の発売が、1988年7月だったのですが、翌年の1989年にはカプコンが『三国志』ゲーム戦線に名乗りを上げてきました。

『天地を喰らう』という、マンガ原作のゲーム化です。しかも、アーケードとファミコン両方で。
それも、光栄(現・コーエーテクモゲームス)やナムコのようなシミュレーションゲームではなく、アーケードではアクションゲーム、ファミコンはロールプレイングゲームという変化球を投げてきたのです!

へー!
アクションゲームは『三國無双』シリーズで想像がつきますが、ロールプレイングゲームってどんなだろう…。

icon_hasebe

pontasmile

いやいや、これがどちらも良い出来だったんですよ!

私がとくにやりこんだのはロールプレイングゲーム(ファミコン)の方ですが、HPが兵士数という表現になっていたり、プレイヤーが歩くと兵糧が減ったり、敵の武将を仲間にできたり、『三国志』をロールプレイングゲームに落とし込むうえでの工夫が随所にこらされていましたね~。

敵の武将を仲間にできるのはアツいですね。
兵糧が減っていくゲームなんて初めて聞きました…!

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pontasmile

ちなみにカプコンはその3年後に『クイズ三国志 知略の覇者』というタイトルのクイズゲームも出しています。

これはタイトルからもちょっとにじみ出てますが、光栄(現・コーエーテクモゲームス)の『三國志』と、ナムコの『三国志 中原の覇者』へのオマージュが感じられるゲームでした。

カプコンは『三国志』という題材を使いながら、シミュレーションゲームではなくあえてロールプレイングゲーム、クイズゲーム、アクションゲームといったジャンルを選んだところがおもしろいですよね~。

クイズゲームまで…!
それだけ『三国志』という題材が人気だったということなんですね。

icon_hasebe

pontasmile

そうですね。
そうしたジャンルの広がりと同時並行で、光栄(現・コーエーテクモゲームス)は着々と本家『三國志』シリーズを発展させていき、人気と完成度をさらに高めていっていました。

1989年に発売された『三國志 II』では、初代にはなかった一騎打ちや、プレイヤーから見えない裏のマスクデータが初めて登場しました!
これによって関羽は裏切りづらいとか呂布は裏切りやすいといった武将の特徴がさらに表現できるようになったのです。

30年前の時点ですでにとんでもない完成度だったんですね。

icon_hasebe

pontasmile

はい。そうしたゲームのシステム面の完成度だけではなく、同時並行で武将の人数も飛躍的に増えていったんですよ。

この増えていく、で思い出したのですが、私が子どものころ、光栄(現・コーエーテクモゲームス)の『三國志』の開発者の方が新聞か何かのインタビューに答えてらして「『三國志』シリーズは、ファンからのフィードバックがものすごい来る。たとえば先日も『陳到という武将が正史にのっているけど、この人がゲームに出てないのはおかしい!』とか言ってくるんですよね。」と書いてありました。

幼少時の記憶なので間違っていたらすみません!

ただそのとき私は陳到という武将は知らなくて、そのあと『三國志 VI』だったかな? そこに初登場していたのを見て、「ああ、『三國志』シリーズは熱心なファンといっしょに作り上げていってる作品なんだな」と思った記憶があります。

KAO_S501

ユーザーの声が見てわかるレベルで反映されるゲームって、意外と少ないですよね。
基本的にどのメーカーさんもユーザーの声には真摯に対応してくださっていますけど。

icon_hasebe

pontasmile

まあ、そうしてコーエーテクモゲームスの『三國志』に登場することでその武将が一般に認知され、ほかのゲームメーカーの『三国志』ゲームに登場する、というのが日本のゲームシーンの一般的な流れでした。

アーケードで大ヒットしたSEGAのトレーディングカードゲーム『三国志大戦』も、『三國志 覇道』も、そしてスマホゲームによく登場する『三国志』の武将をモチーフにしたキャラクターたちも、そもそもの源流は『三國志』(初代)にあるといっても過言ではないのです。

なるほど~。
それにしても、どうして『三国志』がゲームシーンでこんなに拡がったんでしょうね?

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pontasmile

んー。
そもそも、『三國志』(初代)のマニュアルには『このゲームにおいては、「人」が重要な役割を果たします』と書いてあるんですよね。
つまりもともとの成り立ちが、人間メインというか”キャラが命”のゲームだったんですよ。

魅力的なキャラが最初は255人、いまは1,000人ですかね。
そのすべてに能力値やイメージがついている。

やっぱ、そういった武将の質量の豊かさが、ゲームの素材としてうってつけなんだと思います。
こんな分野、ほかにないですよ。

ん~、なるほど!
人が命のゲームで、魅力的な人が多く、ゲームにうってつけだということがわかりました。

次回はぜひ、その人たちがおりなす戦いについて教えてください!

icon_hasebe

pontasmile

わかりました!

文:ponta
企画協力・画像提供:㈱コーエーテクモゲームス

©コーエーテクモゲームス All rights reserved.

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