【企画連載】教えてponta先生!「『三国志』ってなぁに?」―最終回:あの戦いを詳しく知ろう

2021-11-17 18:00 投稿

あの戦いを詳しく知ろう

名前は知っているけれど、中身までを知っている人は意外と少ない(!?)『三国志』を学ぶ企画連載。

最終回となる今回は、『三国志』の物語の華である”戦争”について語ってもらうぞ。

【話者】

pontasmileponta
生粋の三国志好きであり、コーエーテクモゲームスのゲームシリーズ『三國志』の大ファン。

最近また『三國志 覇道』にハマりだした。お気に入りは呂布だが、ベタすぎて他人に言うのが悔しい。

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icon_hasebeヒゲメガネ長谷部
担当編集。

この連載の影響を受けてSteam版『三國志14』を購入してプレイしてみたところ、マップの広さにビビる。
自動車もなかった時代にこの広大な範囲を平定したのかと、ゲームを通じてその凄さを認識した。

pontaさん!
今回最終回です!
思い残したこと、言い残したことはないですか!?

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pontasmile

まるで死ぬみたいに……。
これまでさんざん、好き勝手書かせてもらってきたのでとくにないです!
ただ、これまで”ヒト”を中心に語ってきたので、最後はぜひコト、つまり”戦争”について語ってみたいと思います!

戦争!いいですね。『三国志』の華といってもいいんじゃないでしょうか。
といっても僕は”赤壁の戦い”くらいしか知りませんし、“赤壁の戦い”がどんな戦いなのかもわかってないのですが……。

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pontasmile

そんなあなたにうってつけ!
今日は『三国志』の代表的な戦い、”虎牢関の戦い”、”官渡の戦い”、”赤壁の戦い”の3つについて語ってみたいと思います!

おお!
どれから話してくれるんですか?

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pontasmile

時代順に話していきましょう。
まずは”虎牢関の戦い”ですね。

最後はグダグダだけど物語的にはめちゃくちゃ大事!
開幕早々のオールスター戦 “虎牢関の戦い”

おお!”虎牢関の戦い”。
あー、第2回でちょっとだけ出てきた戦いですね!
関羽、張飛、劉備の3人に対して、呂布がたったひとりで互角に戦った戦いでしたっけ!

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pontasmile

そーですそーです。
そんな華々しい一騎打ちが繰り広げられた”虎牢関の戦い”は序盤の華舞台で、悪逆を尽くしていた董卓軍と、それを討つべく集まった反董卓軍との戦いです。

『三国志』の絶対悪こと、ツラも悪いが性格も悪いエロデブの董卓と、腕っぷしは強いがケーキがうまく切れなそうな武力突破型フォワード・呂布のコンビのキャラ立ちが光ります。

対する反董卓連合軍も、曹操、袁紹、孫堅、劉備ら若き英雄たちがそろい踏み。まあ若い、といっても30代中盤とかっすけど。
イメージだけはまだ若いかんじのおっさん連中が鼻息荒く集合します。

天下の悪役対、英雄連合軍!いやがおうにも盛り上がるじゃないですか。さぁ、舞台は整った!

虎牢関の戦い

おおお!
曹操や孫堅や劉備といった、カードでいえばSSR級の君主が集まったんですね?
それじゃ、董卓もおしまいですね!

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pontasmile

だと思うでしょう!
でも董卓は違います。

……逃げました。

は?

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pontasmile

董卓は…ちょーっと戦況不利になった時点で、火を放って逃げました。

董卓お前には失望した。竜頭蛇尾もいいところだよ。
正直、”虎牢関の戦い”の終わりかたはグダグダっすよ…。

しかもその裏では、もう少しで董卓軍に迫ろうかという孫堅(通称:パパ)に袁術(通称:ハチミツおじさん)が嫉妬して兵糧を送らないとか、妙に生々しいドラマもあるんですよね。
怖いのは敵よりむしろ、味方の嫉妬だったというこの寓話的なラスト。現代日本でもよくありそうな悲しい風景がひとごとじゃねー。

なるほど…。けっきょく董卓はどうなったんです?

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pontasmile

逃げたあともやりたい放題やってたので、身内の手によって討たれました。

それはともかく、”虎牢関の戦い”は物語上の意味のほうが大きいんですけど、その”物語上の意味”ってのがめっちゃデカいんすよ!
劉備とか曹操とか孫堅が共闘する意味っていうか……。

そもそも『三国志』がエモイのって、主要人物全員が顔見知りって部分が大きいんですよね。
だって、縁もゆかりもない連中が血で血を洗う戦いを繰り広げたって、そこにあるのは、ただの血なまぐさく汗臭い非エモの世界じゃないすか。

でも「昔、若いころ俺っちたち、肩を並べて戦ったよねー。いっしょに仕事したよね~」という連中が、のちにバキバキの戦争にて剣を交えるのが『三国志』の面白味なんだと思うんですよね。

なんていうか、同じ中学校で同じ部活でした〜っていう人と生涯のライバルになったらアツいじゃないですか。

そういう意味で”虎牢関の戦い”は英雄たちの最初の顔見せの場であるのと同時に『三国志』のエモさの土壌を作った、すごく大事な戦いだと思います。

ちょっと地味で、雰囲気悪いけど、じつは学べることが多い!
天下分け目”官渡の戦い”

“虎牢関の戦い”についてはわかりました!”官渡の戦い”については、どうですか?

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pontasmile

官渡の戦いについて説明する前に、中国の地理というか地形についてまず知っておいてほしいことがあって。
中国の地理ってどんなイメージがあります?

え、考えたこともなかったけど……。
なんかだだっ広い平野があるイメージですね。
で、地方にはなんかとんがった山があったりとか。

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pontasmile

なるほど。たしかに広い平野はあるにはあるのですが、中国大陸の平野部って北東に固まってるんですよね。当然の話、山には人が住みづらいので、『三国志』の時代の人口はこの北東部に集中していたと言われています。

「人口こそパワーだよ兄貴!」ってなわけで、このあたりを抑えたらもうあれですわ、『三国志』最強勢力まったなしですわ。

んで、”官渡の戦い”のころの曹操はこの豊かな大平野部の南の方を抑えていて、袁紹は北の方を抑えていたという状況ですから、もう何が起こるかはわかりますよね。そうです、大戦争ですね。

これが“官渡の戦い”です。

この戦いに勝ったほうが平野部を両取りできちゃうってことになるわけで、“官渡の戦い”は実質、天下分け目の大決戦とも言えるでしょう。

ゲームでいえばいちばんおもしろいところ。勝ったあとは消化試合になるくらいの山場。それくらい大事な大事な戦い。

ただこの戦い、ひとつだけ欠点があって…。

欠点?なんですか?
たくさん人が死んだとかですか?

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pontasmile

地味なんです…。物語的に…。
曹操ファン、袁紹ファンから怒られそうですけど。
『三国志』の主人公格であり狂言回しでもある劉備のかかわりが少ないので、どーしても地味になっちゃうんですよね……。

『三国志演義』の作者さんもがんばって関羽を出したりはしてるのですが……いかんせん地味で……。

いやいや。
劉備がいなくても曹操がいるなら華があるでしょう!

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pontasmile

そうですね、曹操とか、軍師の荀彧(じゅん いく)の優秀さは目立ちます。
ただ……それ以上に目立つのは袁紹軍のダメさなんですよね。それも、君主が優柔不断とか、参謀同士の仲がクソ悪いとか、後継者同士が争っているとか、腐った組織にありがちな、リアルな、イヤーなダメさなんです。

べつに袁紹軍を応援はしてはいないんですよ?でもね。

作戦は当たるけど言い方のキツい軍師・田豊(でん ほう)
言うことなすことすべて外して味方に罪をなすりつける逆神・郭図(かく と)“我意が強く無策”だけど最後だけ忠臣ぽい感じで死んだからいい感じになった・審配(しん ぱい)
そして悪口めっちゃ言う男・逢紀(ほう き)

このメンバーがそろいもそろって仲が悪くて、もしこの人たちの会議があったらリモートですら出たくないと心から思えるほど。彼らによって引き起こされた袁紹軍の雰囲気の悪さは歴史に残るくらいです。この戦いから受けるイヤーな感じは、きっと彼らの存在も大きかったのかなと思います。

聞くだけで胃もたれしそうなチームですね…。

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曹操軍と袁紹軍、どっちが強いかというより”オウンゴールの多さで決まった天下分け目の決戦”といった風情があり、横山光輝氏のマンガでもこの”官渡の戦い”はまるまる飛ばされていました。

天下分け目の決戦にふさわしく、滅びる側の袁紹にもう少し余韻というか判官びいきを誘う要素があれば、この”官渡の戦い”もいい物語になったんじゃないかなと思ったりもします、ハイ。

ただまあ、曹操の天才っぷりは到底マネできないまでも、袁紹軍のダメさだけはマネしないようにしたいなぁと、凡才の私に教訓を植え付けるくらいのインパクトはある戦いです。

なので、一般人にとっていちばん反面教師としての学びが多いのは、じつは”官渡の戦い”だと思っています。

孔明の性格悪いスゴ腕交渉術が光る!”赤壁の戦い”

学びが多いですね…。
つぎに”赤壁の戦い”について教えてください!

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pontasmile

“赤壁の戦い”については、史実的に見れば”周瑜すごい”、”疫病怖い”って感じなんですが、物語としての”赤壁の戦い”を見てみると、”敏腕営業マン・諸葛亮”のえげつない手腕が目立つんですよね。

“敏腕営業マン・諸葛亮”ですか?

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pontasmile

ハイ。
袁紹を下して強大化した曹操が攻めてくるぞってんで孫権軍が驚いて、家臣を集めて降伏するか戦うかの会議を開いたんですね。そこに諸葛亮が乗り込んでいくんです。

孫権が曹操に降伏したら劉備はもはや味方がいなくなり詰み。ぜひとも孫権と同盟して、力を合わせて曹操と戦いたいという局面での登場ですから、その辣腕がどう振るわれるか注目されます。

胃が痛くなりそうな局面ですね……。
で、そこで諸葛亮はどうしたんですか。

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pontasmile

まず最初に、キーマンの周瑜のところに行って、煽ったんです。
「曹操は、この国(呉)に住む、小喬と大喬という美人を欲しがってるみたいだから、この二人を渡せば戦いは回避できるッスよ」って。

これだけ聞けば、何の煽りにも聞こえませんけど……小喬って周瑜の妻だったんですよね。

0568_小喬

完全にヤベーやつじゃないですか。
周瑜に向かって「あなたの奥さんを敵に渡せば大丈夫!」って言い放ったってことですよね?

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pontasmile

ええ。なので、もちろん周瑜は大激怒。
「そんなことはさせてたまるか」と、完全に”曹操絶対殺すマン”に変身します。

ちなみに諸葛亮はそこで「小喬はあなたの奥さんだったんですね、これは知らなんだ」って言って周瑜に平謝りするんですが……「うっそだー!」って感じじゃないっスか?

知らないはずはないんですよ。周瑜の奥さんが小喬だったったことを、彼のほどの人が。

すっとぼけて煽ったあげくに孫権軍のキーマン(周瑜)を炊きつけることで、決裁者(孫権)に開戦を踏み切らせました。けっきょくは感情論かよっていう。

このあたりの説得術、見事というほかはないですよね。

うーむ、すごい。

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pontasmile

諸葛亮、じつはこの周瑜との対談の前にも数十人の呉の武将たちに詰められてます。
クライアント先の重役会議で、身内が一人もいない中、20代の若僧がプレゼンするようなもんです。
しかも張昭とか陸績といったお偉方が詰めてくるんですよ?

僕だったら泣いちゃう。

でも諸葛亮はそれを全部論破してます。

最後なんか、相手社長。いや孫権に向かって、「曹操に降っちまったらどうっすかー? うちの劉備様は降らないですけどね〜ww」って煽って激怒されています。
まあそのあと、冷静になった孫権と本音で話し合うんですが……。

そこで怒らせるか? ふつう。

このギリギリの、背中が煤けるような交渉術、下手したら人死にが出るよ!

こんな危ない橋を渡って目的を成し遂げる諸葛亮の交渉手腕、子供のころはへーって読んでましたけど、大人になって改めて見返してみるとえげつねえなって思いますね…。

確かに現代社会人に置き換えてみるとすごいですね孔明…。

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pontasmile

でしょー?
そんな孔明も最後、五丈原の戦場でその命が尽きます。
その五丈原では、女装、ローソクといったいろいろな出来事がありました…。

じょ、女装!?
ローソク?
なにそれ、すごい気になる!

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pontasmile

詳しく知りたい人は、ぜひ『三国志』の沼にハマって、そのあたりを確認してもらえればと。

こうして『三国志』の壮大な物語は、この孔明の過労死ともいえる壮絶な絶命をもって実質的な終わりを迎えます。”虎牢関の戦い”の味方による妨害、”官渡の戦い”のチームワークの乱れ、”赤壁の戦い”の超絶営業、そして”五丈原の戦い”の過労死…。

『三国志』は現代サラリーマンにとって涙なくして読めない”あるある”にあふれてるんですよ!!!(力説)

五丈原の戦い

女装してローソクがあって過労死……。
展開が微塵も想像ができない……。

それと、そんなあるあるはpontaさんの人生の中だけだと思いますけど…。
とにかく現代にも通じるさまざまな教訓に溢れてるってことですね!
読んでみたいと思います!

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pontasmile

おもしろいので、絶対読んでくださいね!!!
ではみなさんさようなら!

文:ponta
企画協力・画像提供:㈱コーエーテクモゲームス

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