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ファミ通App編集部

モンスターたちの{起源/オリジン}第8回:狼男の起源を辿ったらバーサーカーに行き着いた!

2018-07-19 18:00 投稿

TRPGデザイナーにして作家、朱鷺田祐介氏による連載作品集! クトゥルフやファンタジー作品について深い造詣を持つ氏ならではの視点で、ゲーム業界に深く関わる、クトゥルフ神話要素やファンタジー要素を掘り下げて紹介していく。

世界中にある獣人伝説

吸血鬼ドラキュラと来たら、つぎは狼男というのが定番だが、狼男の起源を真面目に語るのはたいへんだ。何しろ、狼男のように、人が獣に変わるという伝説は世界中にあるのだ。

たとえば、狼男の伝説と言えば東欧が有名だが、ギリシアやローマといったヨーロッパ南部にも古くからそういった伝説は言い伝えられている。また狼がいない地域でも、人が肉食の獣人(虎や熊)に変身するという伝説は数えきれないほど存在するのだ。

さらに、狼を人類の祖先神とする地域もあり、モンゴルやトルコ、北米先住民などの狼神話などは非常に有名だ。ローマ帝国も、最初の王は狼に育てられたという伝説が残ってる。

さらにさらに、日本に至っては狼は“おおかみ”、つまり、偉大な山の神として信仰の対象にすらなっていた。ま、恐れられた挙げ句の果てに、滅びてしまったが……。

ちなみに、ヒットラーの名前として知られる“アドルフ”は、ドイツ語で“高貴な狼”という意味を持ち、第二次大戦以前は、よく使われる名前だったが、ヒットラーを連想するために、現在ではほとんど使われなくなったそうだ。

はてさて、こうして挙げてみるだけでポコポコ出てくる、乱立していると言ってもいいほどたくさんある狼男伝説だが、果たしてその起源とはどこにあるのだろう?

教会に逆らった者は狼男!

現在の狼男のイメージを作ったのは、1935年の映画『倫敦の狼男』から始まる、狼男映画とされている。“狼男は銀の弾丸に弱い”というアレである。

が、しかしこれも狼男そのものの起源にはなりえない。それもそうだ。この映画は当時すでに存在していた狼男伝説をもとに作られた映画なのだから。

では、当時どのような形で狼男伝説は存在していたのだろうか? そのイメージは、中世の魔女狩り伝説のようなものであった。

もともと、牧畜が盛んに行われていたヨーロッパには、人狼伝説があったのであるが、そこにキリスト教が入り込んでいく際に、地元の恐怖伝説を利用したのである。「キリスト教を信じないものは、狼男になる」と。

この宣伝はうまく行き、不信心者が狼男に仕立てられることが多々あったようだ。そして、何度も教会に逆らった者には“狼男の刑”として、街から追い出され、狼の毛皮をつけて暮らさなくてはならないという刑が執り行われたという。

狼男と疑われたら、狼男のフリをして生きていかねばならないとは、何やらモヤッとした矛盾に近しいものを感じてしまうが、まぁ当時はそうだったらしい。

ともかく、狼は当時教会の敵とされており、14世紀から17世紀の魔女裁判全盛期には、魔女とする代わりに、人狼とすることで、処刑された人々がいたという。

こうして、キリスト教の手によって狼と狼男には悪のレッテルを貼られ、吸血鬼やフランケンシュタインの怪物と並んで、ホラー映画の主人公になっていったのである。

悲しくもレッテル貼りで悪にされた狼

では、なぜ狼男はキリスト教によって悪というレッテルを貼られるに至ったのだろう? その答えは簡単。当時、狼は恐怖の対象だったのである。

狼というと、ちょっと凶暴な野生の犬みたいなものと思っている人もいるかもしれないが、それは大きな誤りである。いや、ニホンオオカミのイメージとしてはあながち間違っていないのかもしれないが……。

実際、ニホンオオカミは少し大きい犬程度のサイズであり、どちらかと言えば人を襲うようなことは少なく、逆に、田畑を荒らすウサギやシカ、イノシシを食べてくれるため、よい獣、田畑の守護者と見られていた。

それに対してヨーロッパの狼は、かなりデカい! しかもただデカイだけでなく、彼らは群れで行動し、統率の取れた狩りをして、おもにシカやウサギを食べていた。が、深い森に入った人間を襲うこともあり、ヨーロッパでは恐怖の対象とされていたのである。

そんな恐ろしさを残る逸話として、“ジェヴォーダンの獣”というものがある。これは18世紀、フランス南部のジェヴォーダンで100人以上を食い殺した“獣”が出現したという話である。この獣が何であったかはいまでも議論の対象となっているが、巨大な狼であったという話が現実的で有力のようだ。

また15世紀のパリには、血に飢えた狼の群れ街中に入り込み、人々を襲ったという話も残っている。そこで人という獲物の味を覚えた狼の群れは、述べ40人もの人を食い殺したという。この群れの恐ろしいところは、ただ人に害を成したというだけでなく、賢いボスの存在であったそうだ。

尾が短いため、クルートーと呼ばれた群れのボスは、狡猾で効率的に人を狩っていったのだそうだ。ちなみに“パリの狼王クルートー”とも呼ばれるこの存在の最期は、勇猛な騎士が狼王と一騎打ちして退治したとも、寄せ餌でおびき出されて閉じ込められ、市民たちによる投石で群れ全体が皆殺しにされたとも言われている。

つまりはそういうことである。当時、ヨーロッパにおいて狼は恐怖の対象であり、そのため悪というレッテルを貼られたのだ。

狼男の名前の由来とは?

しかし、狼=悪というところまではわかったが、これが狼男とつながる理由はいまいち不明瞭なままである。

ここはひとまずゼロベースに立ち返り、狼男の語源を辿るところから、モンスターの起源を辿る旅を再スタートしてみよう。

“狼男”という言葉のほうが耳に慣れているが、性別に限らない種族的な分類の話をすると、これらは人狼と呼ばれるものである。そして、人狼は英語でワーウルフ(ウェアウルフ)と呼ばれる。このつづりはWerewolf。このWereは人を指し、Wolfはそのまま狼を指す。

ゲームに登場する獣人系モンスターに“ワービースト”、“ワーキャット”、“ウェアボア”など、頭に“Were”が付くものが多いのは、これのせいである。

ちなみに同じく人狼という言葉を表す単語として“ライカンスロープ”というものがあるが、これはギリシア語からの造語で、狼(Lycos)と人(Anthrope)をかけ合わせたものである。このライカンスロープという言葉は、単純に人狼を指すだけでなく、病気のように狼に変身してしまう呪いなどを指すこともあるようだ。

なるほど、語源に関してはおおよそ判明したが、狼男の起源には遡れなかった。獣人という伝説は昔からそれほど珍しいものではなかったであろうことだけだ。

狼男が満月で変身するのにも理由があった!?

名前の起源を訪ねたところで、いよいよ狼男の起源そのものに迫っていこう。

狼男に関するもっとも古い記録のひとつが、ギリシアの歴史家ヘロドトスの記述である。そこには、現在のポーランドにあるスキュティアの向こう側に“ネウロイ人”という人々が住んでおり、彼らは年に1度狼に変身し、そのままの状態で数日過ごすと記されている。

おそらく、これは狼の毛皮を着て、トランス状態になっているシャーマンのことだと思われる。

というのも、場所は若干変わるが、北欧には神話にバーサーカー(狂戦士)と呼ばれるものが登場するのだが、これのもととされる存在は“ベルセルク(熊の毛皮を着る者)”と呼ばれる北欧の戦士である。

ベルセルクは毛皮を纏うことでトランス状態に入り、獣のように戦う者であり、こういった動物変身の英雄は、珍しい存在ではないのだ。ちなみにこのように、トランス状態を利用したものは共感魔術とも呼ばれており、現代では自己暗示や薬物による精神操作で身体にまで影響を与えるものだと言われている。

また別の説では、悪くなったライ麦パンに繁殖した菌が発するアルカロイドや、狂犬病の影響でおかしくなり、暴れた人々が人狼伝説の起源だとも言われているようだ。

つまりは、変なものを食っておかしくなってしまった人、ないしは狂犬病によって発作的に発狂をしてしまった人が、人狼の起源であるということだ。なるほど、なんとなく納得できる!

ちなみに狼男が満月の夜に狼へと変身するという話にも根拠となるものがあるようだ。

それはルナティック、まさしく英語で狂気という意味の言葉である。ご存知の方もいらっしゃることと思うが、人間も月の満ち欠けに思いの外影響を受ける存在である。人によっては満月の際に、常軌を逸した行動を取る者もおり、そういった点があってのせいか、英語では狂気のことを“ルナティック”という。

そう考えると、人狼もまた狂気の一種であったと考えられる。事実、精神疾患の一種で、狼化妄想症という病気があり、自分が狼男になったと思い込んで暴れ回ったという事例もあるほどだ。

なるほど、これで狼男、人狼の起源となるものがわかってきたぞ! つまり狼男、人狼とはシャーマニズムをもとにしたもの、そして病気をもとにしたものがあり、科学が発展していなかった当時、それらは怪異や宗教的な悪として扱われるようになった。

そして、時を経るごとにそれらは次第に混同され、狼男というひとつのモンスターが誕生した。そこからさらに時を経ていく中で、映画などコンテンツ化によってさらなるキャラクター付けがなされ、現代でイメージされる、狼男というモンスターが誕生したといった具合だろう。

うーむ、なかなかに奥深い! こう考えると、狼男は比較的最近に生まれたモンスターと言えるだろう。それなのに、これほどまで起源を辿るのが難しいとは……。さすがは、満月の夜にだけしか姿を表さず、通常時は見分けが付かないモンスター。

起源も同じくしっかり判別する方法がないようだ(!?)。

おまけの4コマ

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(C) 海野なまこ All Rights Reserved.

4コマ作:海野なまこ

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文:朱鷺田祐介

【朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)】

TRPGデザイナー。代表作『深淵第二版』、『クトゥルフ神話TRPG比叡山炎上』。翻訳に『エクリプス・フェイズ』、『シャドウラン20th AnniversaryEdition』。2004年『クトゥルフ神話ガイドブック』より『クトゥルフ神話』の紹介を始め、『クトゥルフ神話超入門』などを担当し、ここ数年は毎年、ラヴクラフト聖誕祭(8月20日)および邪神忌(3月15日)に合わせたイベントを森瀬繚氏と共同開催している。

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