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モンスターたちの{起源/オリジン}第6回:ゴーレムの起源はラノベの起源!?

2018-07-05 18:00 投稿

TRPGデザイナーにして作家、朱鷺田祐介氏による連載作品集! クトゥルフやファンタジー作品について深い造詣を持つ氏ならではの視点で、ゲーム業界に深く関わる、クトゥルフ神話要素やファンタジー要素を掘り下げて紹介していく。

ブラック企業も真っ青のゴーレム伝説

今回のテーマはゴーレム。ファンタジーRPGによく登場する、ロボットのような機械人形や、泥で出来た巨人として表現されるアレだ。場合によってはレンガ作りであったりもする。

さて答えから入ってしまうが、この{起源/オリジン}は、ユダヤ教の秘儀とされていて、製作者についても、おおよそ定められている。ゴーレムを最初に作った人、それはユダヤ教のラビと呼ばれる律法学者のひとり、レーフ・ラビであったとされる。

これは、世界にさまざまあるゴーレム伝説でももっとも有名な“プラハのゴーレム伝説”という話に基づく起源説である。

この伝説の中で、レーフ・ラビはその博識を活かして河の泥を練り、その口の中にシェームという護符を入れて、人造人間であるゴーレムを作ったのだ。

泥を練って護符を入れるだけで人造人間を作るとは、コヤツ本当に学者なのか? 魔術師とかではないのだろうか……。

ともあれそうして生まれたゴーレムは、たいへんな力持ちで、疲れも知らずに働く便利な存在であったという。ただ、そこはユダヤ教の律法学者。ユダヤ教の教えにある労働を禁じられる聖安息日の前日には、護符を抜いてゴーレムの働きを止めていたそうだ。

律儀!

しかしそんなラビも、あるときシェームを抜き忘れてしまったことがあったらしい。護符を入れられたままになったゴーレムは、なんと暴れだしてしまい、それはそれは大事になってしまったそうな。

それもそうだ。休みも与えられず働き続けさせられたら、いかにゴーレムと言え暴れたくもなるだろう。

ちなみに、このとき暴れたゴーレムは、その額に書いてあったヘブライ語のEmet(真理)から1文字削られてMet(死んだ)に変えられ、動かなくなってしまったという。

つまり、ザックリまとめるとこんな感じか。

決まりごととしてしっかり休みを与えないといけなかったが、ちょっとした手違いで休みを与えなかったところ、ゴーレムが大暴れ。暴れたゴーレムはその主の手によって動かなくされてしまう……。

あれ、なんだかすごい深いを感じるね……。何かこう、身近な社会とダブるような気がしないでもないが、きっと気のせいに違いない。

どうして、ラビはゴーレムを作れるのか?

ゴーレムの起源はなんとなくわかったが、ただ起源を辿るだけでは、どうにも腑に落ちない部分がある。それは「なぜラビにはゴーレムを作れたのか?」という点。

ラビはユダヤ教の律法学者。ユダヤ教の教えを研究し、人々を導く宗教的な指導者であったが、しかしそれとゴーレムという半自動人形の制作とはいささか結びつけにくい。

が、答えは非常に簡単だった。

『旧約聖書』の中で、神は泥をこねて命の息を吹き込むことで、最初の人間アダムを作り出した。そして神の言葉を学び、神の叡智を学んだラビにも、似たようなこと、ゴーレム作りができたのだというのだ……。

どうやらラビは、本物の天才だったようだ。神の所業、叡智を学ぶだけで、それを擬似的に再現とは……。おそらく現代にそれをなせる人物はひとりとていないだろう。

「光あれ」と言いながら電灯を点けて神様ごっこはできるが、それを神の所業の模倣というにはちょっと強引すぎるだろうし……。

伝説のゴーレム、無言のヨゼルは万能ロボット?

「なんていうかもう、ラビがすごいからゴーレム出来たよねって話な気がする」と思う人も多いと思われるが、その感覚は間違っていない。

今回紹介しているこのゴーレム伝説は、歴史を見てみても「万能の天才である伝説のラビと、無敵で無言の召使いゴーレム」というストーリーとして広がっていっている。そう、もはや現実離れしすぎていて、当時からラノベのような扱いになっていたのだ。

驚くべきことに、ゴーレム伝説はその時代時代のエンターテインメント小説として再生をくり返していたのである。その中には、伝説のラビが作った無敵ゴーレムが色々な事件を解決する物語として広まりを見せたものもある。

これに現代風タイトルを付けるとするならば『天才頭脳を持った僕がなんとなく泥を練ったら人造人間になっちゃった件 -人造人間のはちゃめちゃ事件簿-』といった具合だろうか。

この“ゴーレム伝説=昔のラノベ”という構図を最終的に決定づけたのは、20世紀初頭、ポーランドのラビ、ユードル・ローゼンベルグが編纂した『ゴーレムと、プラハのマハラルが行った奇跡の数々』。こちらの作品は、主人公マハラルとゴーレムの活躍をさまざまに描いた作品となっている。

ちなみにストーリーはおおよそこんな感じだ。

マハラルが生み出したゴーレム“ヨゼル”は、四大元素を注ぎ込んで作り上げた無敵の召使い。火に焼かれず、剣で切られても傷つかないゴーレム“ヨゼル”が、その主であるマハラルとともに、迫害に苦しむユダヤの民を守るヒーローとして、悪と戦う!

あるときはユダヤ人を迫害するため、冤罪をでっち上げる“血の中傷”と戦い、事件を予防し、冤罪事件を解決するヨゼル。またあるときは、貴族の青年との恋に苦しむ娘を救ったりもした。はたまたマハラルが透明になる護符をヨゼルに与え、事件の証拠を探しに行かせたことも。

こうして数々の功績を積むマハラルとヨゼルだが、あくまで作られたゴーレムに過ぎないヨゼルは、加減をしらないのが玉にキズ。

命じられたことを延々とくり返してしまう、悲しい性を背負ったヨゼルは「水をくめ」と言われたら、水の樽がいっぱいになっても井戸から水をくみつづけ、水を溢れさせてしまうし、「河で魚を取れ」と言われれば、網いっぱいになっても魚捕りをやめなかったりと、ちょっとポンコツなところも見え隠れしている。

誕生して10年、いろいろなことはあったが、ヨゼルとマハラルの働きにより、ユダヤの民には平和が訪れた。そして役目を終えたヨゼルはマハラルによって塵へと帰っていくのである。

笑いあり涙ありラブロマンスありサスペンスあり。ここからも、この波乱万丈な物語は、まさしくライトノベルのような立ち位置であったことが伺えることだろう。

モンスターとしてのゴーレムは、ユダヤの秘儀であることは冒頭にも記したことだが、こうして見てみると、その起源たる“ゴーレム伝説”は、ブラック企業への風刺と、そしてライトノベルの起源でもあったのかもしれない!?

おまけの4コマ

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(C) 海野なまこ All Rights Reserved.

4コマ作:海野なまこ

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文:朱鷺田祐介

【朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)】

TRPGデザイナー。代表作『深淵第二版』、『クトゥルフ神話TRPG比叡山炎上』。翻訳に『エクリプス・フェイズ』、『シャドウラン20th AnniversaryEdition』。2004年『クトゥルフ神話ガイドブック』より『クトゥルフ神話』の紹介を始め、『クトゥルフ神話超入門』などを担当し、ここ数年は毎年、ラヴクラフト聖誕祭(8月20日)および邪神忌(3月15日)に合わせたイベントを森瀬繚氏と共同開催している。

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