1. サイトTOP>
  2. モンスターたちの{起源/オリジン}第9回:天狗は流星?それとも狸?え、まさかの野菜???

モンスターたちの{起源/オリジン}第9回:天狗は流星?それとも狸?え、まさかの野菜???

2018-07-26 18:00 投稿

TRPGデザイナーにして作家、朱鷺田祐介氏による連載作品集! クトゥルフやファンタジー作品について深い造詣を持つ氏ならではの視点で、ゲーム業界に深く関わる、クトゥルフ神話要素やファンタジー要素を掘り下げて紹介していく。

天狗は、本来、流星だった!

日本を代表するモンスターと言えば、鬼、天狗、河童などの妖怪であるが、この中でも、天狗はかなり独自性を持ったモンスターと言われている。

たとえば、鬼は仏教の影響を強く受けており、河童も大陸の水虎が起源と言われているのだが……。翼を持ち、山を支配する飛行種族の天狗は直接の祖先がなかなか見つからないのだ。

ただ、言葉としての“天狗”の起源はおおよそわかっており、インド起源とも、中国起源とも言われている。

ちなみに言葉としての“天狗”の意味は、明治時代の妖怪研究家・井上円了が記した『天狗論』によると、流星の一種で、大気圏上層部で燃え尽きることなく、地上近くまで燃えながら落下したものを指すという。

これの出展は仏教の経文。その中に天狗星という表記があり(天狗土后大歳神ともいう)、それは天空に強く輝く星を指すというのだ。ちなみにもとの言語は古代インドの言葉“Ulka(憂流迦(うるか))”であり、天狗とはそれを中国語訳したものだそうだ。ちなみに憂流迦はインドの魔神とも、竜王の一柱とも言われている。

日本で初めて“天狗”という言葉が出てきたのは、あの『日本書紀』。大陸から渡ってきた僧侶が流星を見て「天狗」と言葉を発したという内容である。しかし、この当時はまだ“天狗=てんぐ”ではなく、“アマツキツネ”と呼ばれていたようである。

その後、これの読みが変わり、いまのように“てんぐ”となったのだろう。

天狗は狸?

“天狗=流星”という説のほかに、“天狗=ある種の獣だ”という説もある。これは中国での話。

中国の怪獣図鑑というべき書物『山海経』に、「陰山に獣あり。その状、狸のごとくして、白首なり。名付けて天狗という」という文がある。これが、“天狗=獣”説の根幹となっているのだが……。

いや、それ、ただの白いタヌキじゃないですか? 白いたぬき。どこかのカップ麺みたいだな。きっと餅と天かすが入っているうどんに違いない。

いやちょっと待て、天狗を白いタヌキと結論付けるのはまだ早い。同じく中国の書物『博文録』では「かたちは狸のごとし、首白くして蛇を喰らう」と記されている。タヌキに似ているということは、つまりタヌキではないのだろう。で、蛇を食べると……。こやつ、もしやマングースだな?

いやいや待て待て。まだまだ早い。さらに別の本を調べて見れば小鳥であるとも書かれている。そしてさらに調べてみたら、なんと「天狗は人参なり」と……。え? 人参? 獣どころか野菜になってしまった。どういうことだ。

そんなこんなあるせいだろう。江戸時代の戯作者で『南総里見八犬伝』の作者である滝沢馬琴は、中国でいう天狗と日本の天狗はまったく違うものであり、いっしょに論じることは意味がないとしている。

そりゃね。流星かと思ったら獣とも言われ、しまいには野菜ときたもんだ。そりゃさじも投げる。

なぜ天狗は山伏の格好に?

では、昨今のゲームに登場する天狗のイメージはどこから来たかという話に戻っていこう。現代日本にイメージされる天狗は、その服装が山伏のもとであることから、仏教および修験道の影響を受けていることが明らかである。なので、この山伏や修験道といったキーワードを紐解いていくと天狗のイメージにたどり着けるだろう。

修験道とは、歴史に名を残す僧、空海や円珍などの手で密教が上陸し、各地で山岳仏教と合体して生まれたもの。そして山伏という存在も、この修験道に合わせて誕生した存在だ。

この山伏という存在と天狗には、この時点でのつながりが確認できる部分がある。それは、中世の山伏たちのあいだでは、山伏が死ぬと天狗道と呼ばれる無限地獄のような場所に落ちていくと言われていたのだ。さらに、もともと日本の山野には、平地で農業をする人々とは別に、山人と呼ばれる山野を移動しながら暮らす漂泊の民がいた。

そう! つまりは修験道、山伏、山人というそれぞれが持つイメージが合体し、山を縄張りとする強力な存在としての天狗が生まれたのだ!

これで天狗が山伏の格好をしていることは説明できる。では、あの赤ら顔と長い鼻はどこから来ているのか?

その答えは伎楽にある。伎楽とは、日本伝統演劇のひとつ。面をかぶって音楽に合わせて舞を舞うというものだ。この演目の中で天狗が登場することがあるのだが、これは最初期ではただの山伏姿の存在だった。しかし、次第に赤ら顔で鼻が突き出たお面での演劇が浸透していき、大天狗のイメージがこれで固まったというのだ。

こうして振り返ってみると、本当に天狗という存在、名前は、起源から本当に複雑な道程を辿っていることがわかる。もはや書いていても何がなんだかわからないといった状態だが、なんとなくイメージとして覚えておいてもらえると、今後ゲーム内で天狗を見たときに、何かを感じられるようになるかもしれない。

「あぁ、こいつはいまモンスターとして勇者の前に立ちはだかってはいるものの、複雑な成長過程を経た苦労人なんだなぁ」、「イキってるけど、本当は白いタヌキだろ? カップ麺でもなっとけ!」。

どう思うかは人それぞれ。

おまけの4コマ

m09

(C) 海野なまこ All Rights Reserved.

4コマ作:海野なまこ

前へ

文:朱鷺田祐介

【朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)】

TRPGデザイナー。代表作『深淵第二版』、『クトゥルフ神話TRPG比叡山炎上』。翻訳に『エクリプス・フェイズ』、『シャドウラン20th AnniversaryEdition』。2004年『クトゥルフ神話ガイドブック』より『クトゥルフ神話』の紹介を始め、『クトゥルフ神話超入門』などを担当し、ここ数年は毎年、ラヴクラフト聖誕祭(8月20日)および邪神忌(3月15日)に合わせたイベントを森瀬繚氏と共同開催している。

書影

ピックアップ 一覧を見る

最新記事

この記事と同じカテゴリの最新記事一覧