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【個人開発ゲームを斬る】『からっぽのいえ』作者ところにょり氏が語るアプリ制作秘話と反省点

2017-03-28 14:54 投稿

『ひとりぼっち惑星』作者の新作

世の中には“泣き活”なるものがあり、悲しい・切ない物語を読んだり聞いたりして、思いっきり泣き、ストレスを発散する人々がいらっしゃるそうです。

というわけで今回は、そんな人々にピッタリの“泣きアプリ”『からっぽのいえ』を紹介させていただきます。

『ひとりぼっち惑星』のところにょり氏新作『あめのふるほし』配信前に過去作品に触れてみよう
image1▲設定がすでに切ない

『からっぽのいえ』は、2016年大ヒットした『ひとりぼっち惑星』の開発者“ところにょり”さんの新作。

【個人開発ゲームを斬る】話題沸騰中の『ひとりぼっち惑星』作者にいろいろ聞いてみた

前作はネットワークを使った“誰かの手紙を受け取って笑ったり泣いたりする”システムでしたが、今作はところにょりさんのオリジナルストーリーをじっくり読み進める、“放置ゲーム”となっております。

「人がもういない家を、機械がいつまでも守り続ける」

起動して直ぐに、切ないオープニングメッセージが。ドット文字+ひらがなの組み合わせが、温かいような、機械的で冷たいような、なんとも言えないスパイスとなっております。

タップやなぞりでミサイル発射

image2▲機械は家をひたすら守り続ける

“人がもういない家”を、“敵”が攻撃してきます。

なぜ攻撃するのか? そもそも敵はいったい何者なのか? そんなことは重要ではありません。

“家を守ること”

それが残された機械にとって、重要なのですから。時間経過で現れる敵をタップやなぞりでミサイルを発射し、撃退しまくりましょう。

物語が少しずつ進行

image3▲“RJ6388265”が起動した

敵を一定数倒すと、“とある物語”が少しずつ公開されていきます。物語の内容は、

「この家に住んでいた“家族”と、この家に残された機械“通称RJ”の物語」

家族とRJの出会いから始まり、交流、成長、そして……。全10章の物語がRJの中に記録されており、ゲームを進めながら、“RJの思い出話”を1章ずつ聞かせてもらうといった感じでしょうか。

RJは優秀なので、アプリを閉じているあいだも、ある程度は敵を自動で迎撃し、ポイントを稼いでくれます。

また、敵を大量に呼び寄せる“電波”を10分間隔で発生させることができるので、空いた時間に起動し、まずは画面に溜まった敵を一掃。そして電波を使って大量に敵を呼び出し撃退し、一気にポイントを稼いで新たな物語を解放。というのが、基本的な遊びかた。

ひとつの章を読み終えると

image4▲アップデートすると記憶が消去

ひとつの章を読み終えると、RJをアップデートするか否かの確認を迫られます。アップデートすると、大切な家がパワーアップし、よりたくさんの敵が倒せるようになり、つぎの物語が解放。

いいことずくめなのですが、先ほど読み終えた物語、つまり“RJの記録”が消去されてしまいます。物語の続きを楽しむためには、RJが大切にしている“家族との記録”を消去しないといけない。ああ、なんと残酷な設定なのでしょうか。

しかし〆切が迫っているので、ココロを鬼にしてアップデート。

BGMと合わせて

image5▲BGMが切ない

アプリを閉じると、当たり前ですがゲームのBGMが聞けません。

ところにょりさんの独特なタッチのデザインと、恐ろしいぐらいリンクしたBGM。大量の敵に飛んでいく大量のミサイルを眺めながら、そのBGMを聞いていると、“切なさ”や“悲しみ”もアップデート。

アプリを起動したままスマホを机の上に置いておくのが、『からっぽのいえ』の最高の楽しみかたではないでしょうか。

image6▲すべての記録が消えるときには……

ゲームを進めていくにつれ、明かされていく物語と、消去されていくRJの記録。

素敵な映画を見終えた後、ほかの誰かとこの思いを共有したくなることってありませんか? いまちょうど、そんな気分です。

このままでは、物語の結末をうっかり書いてしまいそうなので、“ところにょり”さんにいろいろ聞いて、〆させていただきます。

Q1.リリースしてから少し経ってますが、いまの心境はいかがでしょうか?

リリース直後は抜け殻のような状態だったのですが、一週間ほどでその状態からも脱出でき、いまではすごく晴れ晴れとした気持ちです。前作のときは抜け殻状態からなかなか抜けられず数ヵ月精神的に死んでいたのですが、それを踏まえたことで創作する者としての面の皮がいい感じに厚くなれた気がします。

Q2.リリースの告知ツイート(@tokoronyori)が10000RT越え。これは恐ろしい数字だと思うのですが、RT数が伸びていくときの心境をお聞かせください。

告知ツイートの2週間前に『からっぽのいえ』の動画を初めてツイートしたのですが、これが9000RTくらいまで伸びていました。概要を公開したのが初だったので初登場の驚きと、ちょうどその日にテレビで『ひとりぼっち惑星』が紹介されたことも含めたRT数と踏んでいたんです。なので告知ツイートはこの半分くらい行けばいいなと思っていたのですが、実際には10000RTまで伸びていて驚きました。
ただ、正直なところ伸びていくときの心境は“無”という感じです。数字が増えていくのをたまに死んだ目で確認して、何も思うことなくそっと閉じていました。

Q3.『ひとりぼっち惑星』が空前絶後の大ヒットでしたので、新作へのプレッシャーみたいなものはありましたか?

『ひとりぼっち惑星』をリリースして間もないころはプレッシャーに震えていました。メッセージの一方的な送受信という目新しい感のある機能におもしろみを感じて作品に触れてくれた人たちの期待を、裏切ってしまう予感しかしなかったからです。
けれど僕がつくる作品の雰囲気や物語が好きな人たちの期待には応えられる自信があったし、僕が大事にしたいのはそういう人たちだけだったので、「新作はその人たちのためだけに作ろう。あとのものは知らん」と決めました。そうすると気持ちも楽になって、プレッシャーなんてこれっぽっちもない心境で新作に挑めました。

Q4.そして新作、『からっぽのいえ』を作ろうと思ったキッカケは?

いろいろありますが、やっぱり本音を言えばそろそろ新作出さないと完全に忘れられるな……という焦りからでした。前作を出してから半年ほどのあいだ、『ひとりぼっち文通』という『ひとりぼっち惑星』を現実に行う企画を行なったり、アイデアをとにかくたくさんストックしたりしていたのですが、新作は出せないでいました。
このままじゃだめだ……と長野の山奥にある温泉地に泊まって“締切に追われた昭和初期の作家ごっこ”をしながらストックしてあるアイデアのひとつを膨らまして構想を行い、2日ほどで構想ができあがったのでそそくさと家に帰り、そこから1ヵ月ほど家に引きこもって『からっぽのいえ』を完成させました。

Q5.新作は、『ひとりぼっち惑星』で使ったネットワークの知識をさらによくしたものと勝手に思い込んでいたのですが、あえてそうしなかったのでしょうか? もともと考えになかったのでしょうか?

そこに関してはかなり直前まで(長野の山奥で)悩んでいました。『ひとりぼっち惑星』ではその部分こそがあの拡散力を生み出したと思っていますし、ストックしてあるアイデアの中に“ユーザー参加型”のものもいくつかあったからです。
ただ同時にそういった要素のない(もしくは要素を入れることでテーマが崩れる)作品のアイデアもたくさんあります。僕が『ひとりぼっち惑星』の後に同じ要素を持った作品を出すことで、“この人はそういうものを作る人”と思われてしまう可能性がありました。そうなることで、“そういうもの”じゃない作品が出しづらくなることが嫌だったんです。
なので『ひとりぼっち惑星』の後に「僕はこういうものも作りたいんだぞ」と提示しておきたいという思いも込めて、『からっぽのいえ』を作りました。

Q6.ご自身では『からっぽのいえ』をあえて“ジャンル分け”すると、どこに当てはまるとお考えですか?

正直、自分でも自分の作品のジャンルがわからないのですが、少なくとも“小説でもなくゲームでもない何か”だとは思います。便宜上いまはゲームということにしてますが、ジャンル定義にきびしい方の「これはゲームじゃない」という声にそろそろ虚しさを感じるので、どこかよい着地点はないかなと模索中です。いまはとりあえず「ゲームっぽいものをつくってます」とTwitterのプロフィールには書いています。

Q7.リリース後のユーザーの反応はいかがでしょうか? 何かおもしろい反応などありましたか?

反応としてはやっぱり「進めるのがつらい、しんどい……」という声がとても多いです。その反応は予想はしていたのですが、なかには記憶を消すという選択がつらすぎて、“もうこれ以上進めない宣言”をしている人がけっこういておどろきました。
作品がつまらないからでも飽きたからでもなく、むしろ感情移入して深く入り込んでいるからこそ放棄するというのは、我ながらおもしろい体験を作り出せたのではないかなとうれしい気持ちになっています。

Q8.マネタイズが“動画広告”しかなく、素人考えでもったいない感じがするのですが、収益のメインはゲームを終えた後に表示される“投げ銭システム”が狙いなのでしょうか?(※作品のよさで課金額を決める。もちろん課金しなくてもオッケー)

どちらがメインというよりは“動画広告と投げ銭の両立”という感じでしょうか。今回のマネタイズは実験的な側面が強く、「広告をできるだけ抑え、作家性をしっかり守ったうえで収益を確保する方法として投げ銭は使えるのか?」という個人的なテーマがありました。
あと、もうひとつ重要なマネタイズの軸としてあるのは“過去作品の活性化”です。新作を出したことで『ひとりぼっち惑星』などの過去作への流入が生まれたり、既存ユーザーが復帰することで複合的な収益が生まれます。この収益の規模は作品が増えるごとに多くなりますので、場合によってはどんなマネタイズよりも価値の高いものになっていくかもしれないなと思っています。

Q9.その投げ銭システムですが、いい感じですか? 思ったほどではない感じですか?

かなり手応えはありました。ただその手応えというのは、つぎはもっとうまくできるな……という手応えです。『からっぽのいえ』での課金率は思っていたよりも悪くなかったのですが、ある反省点にあらかじめ気づき、対策を行っていれば、さらに課金率を上げられていたのではないかと思っています。
その反省点というのは、投げ銭を可能にする評価画面が最後にしか表示されないようにしていたことです。それが“進めるのをためらう”という部分と確実に喧嘩をしてしまっていました。それに、投げ銭をしたいという感情が高ぶるタイミングは人それぞれだということも反応をみて学んだのですが、最後にしか表示されないことで最後にその感情が高ぶった人しか拾えていません。
投げ銭システムを活性化させるには、投げ銭があるということをあらかじめ知らせておき、なおかつ投げ銭をしたいという感情の高ぶりにいつでも寄り添えるような形で、投げ銭ボタンを置いておくことが重要だなと思います。

Q10.気の早い話で恐縮ですが、次回作はすでに動き出してる感じですか?

もう次回作のアイデアは固まっていて、あとはそれを膨らませて構想していくという段階です。“締切に追われた昭和初期の作家ごっこ”がとても楽しかったので、今回も近いうちにやろうかなと思っています。

Q11.最後に何かひと言、よろしくお願いいたします。

この1の質問に10で返すようないびつなインタビューをここまで読んでくれたあなたや、『ひとりぼっち惑星』を踏まえ『からっぽのいえ』も楽しんでくれた人たちだけに向けて、これからもたくさんの作品を作り続けたいと思っています。いまのモチベーションはいつか死ぬかもしれないし、別のモチベーションが顔を出すかもしれませんが、何かをつくることはやめないと思うので、生暖かく応援していただけたら幸いです!

物語の部分に関しても、いろいろ質問したかったのですが、少しでもネタバレになるを避けたかったので、今回は“アプリ制作”に重点を置き、お聞きしました。

いい映画って、何度も何度も見返しますよね。私は『からっぽのいえ』、3周目に突入なうです。

世界観が好きすぎて、無理言って“ボツイラスト”を何点か頂戴しましたので、こちらもぜひご覧くださいませ。

image7▲Rjの旧デザイン
image8▲何かに使えると思ってたけど使えなかった何か
image9▲大きすぎて使えなかった家の旧デザイン
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■あぷまがどっとねっと
(あぷまが)

「すべてのアプリにチャンスを!」との思いから、藤田武男氏が個人開発者が開発したアプリを中心に紹介している情報サイト。ほかでは見つからない“お宝アプリ”が“あぷまが”なら見つかるかも! ちなみにイラストは、あぷまがのマスコットキャラ、アイロニー。


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からっぽのいえ

メーカー
ところにょり
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iPhone、iPod touch、iPad、iOS 6.0 以上、Android 2.3 以上

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