『Ingress』4年間の歩み(前編):2012~2014年「日本ではユーザー数が伸び悩んでいた」
2016-08-01 15:00 投稿
日本ではユーザー数が伸び悩んでいた
『Ingress』の成長を支え続けてきたナイアンティック社(NIA)のアジア特活本部長 川島優志氏、アジア統括マーケティングマネージャー 須賀健人氏、さらにこれまで『Ingress』を追いかけてきたライター深津庵の3人が、これまで4年間の歩みを振り返る企画記事。
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2012~2013年
おもな動き
2012年──
11月 βテスト開始
2013年──
1~7月 海外各地でイベント
8月 XMアノマリー“カサンドラ”
10月 オープンβ開始
12月 Androidサービス開始
川島 2012年11月にβテストが始まり、翌2013年には10月にオープンβを開始。このあいだにも“カサンドラ”を代表するいろいろなイベントにチャレンジしましたが手探りなところも多く、フラットなテンションでしたね。そうして迎えた12月、ついにAndroid版のリリースってわけです。
──平均するとテンションは50%、それと比べると須賀さんはβテスト開始時はMAXなのにAndroid版のリリースまで急激に下がっていますね。
須賀 2012年当時、Googleがゲームを出したぞ! って『Ingress』の登場に盛り上がりましたね。このころは、ひとりのユーザー、エージェントだったんですよ。
川島 そうだよ、麻布十番のガーディアンだったんだよね(笑)
──4年前からたくましいキャッチフレーズがっ。
須賀 そうそう、守ってましたね!
川島 あ、この年の8月の“カサンドラ”には、NIAが独立したとき加わった河合敬一(現NIA製品本部長を担当)が代表として参加していたんですよ。
──ん、えっ!?
川島 このころ、ジョン・ハンケ(NIA最高経営責任者)と河合はGoogleマップの事業チームで働いていて、日本出張の予定と重なっていたんです。それで、頼むよって。また、『Ingress』のストーリーを英語で作成、それを日本語化する作業があるんですが、当時、河合も担当していたんですよ。
──それは知りませんでした。河合さんとはXMアノマリー“イージスノヴァ”終了直後ステージ裏で、エージェントの皆さんへの感謝、『Ingress』に対する想いをたくさん語り合ったのですが、そうした経緯もあってのことだったんですね。
川島 とても長い関係ですし、河合には本当に感謝しています。
──年表を見るとおふたりとも、その“カサンドラ”ではおなじ50%のテンション、高すぎず低すぎずな状態ですね。
須賀 その後、Android版リリースまでは川島も言っていた通り、手探りな面が強くて気持ちが落ち着いていた時期ですね。
──ひとりのエージェントとして『Ingress』への熱が冷めていた?
川島 日本ではとくにiOSユーザーが多く、Android版しかなかった当時は認知度が低かったんです。それでも日本の順位は都市でいうと60位くらい、世界で見るとAndroid版だけで10位くらいだった。自分の中ではそれでも驚きだったんですが、のちにiOS版がリリースされて爆発的に上がっていったときは、さらに驚かされましたね。
2014年
おもな動き
2014年──
2月 XMアノマリー“リカージョン”
6月 XMアノマリー“インテリタス”
7月 iOSサービス開始、XMアノマリー“ヘリオス”
9月 岩手県が観光復興に活用
11月 LAWSONと提携
12月 Mアノマリー“ダルサナ”、横須賀も観光復興に活用、フランスの保険金融グループと提携
──Android版がリリースされて世界中にエージェントが増えていった2014年。この年はiOS版のリリース、年末にはXMアノマリー“ダルサナ”の開催と、『Ingress』がさらに飛躍した1年でもありますよね。
須賀 2014年といえばもうひとつ、Googleマップを活用した『ポケモンチャレンジ』もこの年でしたよね。
川島 あぁ、この時期だったよね!
──Googleマップ上に出現するポケモンを探して捕まえていくというエイプリルフール企画ですね。これが『ポケモンGO』に繋がる最初のきっかけですもんね。
川島 そうそう、このとき『ポケモンチャレンジ』に関わったメンバーに向けて、今後NIAでいろいろやりたんだけどってメールを送ったんですが、その中に、当時マーケティングをしていた須賀もいたんですよ。そのとき、「なんでも協力しますよ」って返事をくれてね。
須賀 協力どころか、気づいたらこの翌年にはナイアンティックに入ってました(笑)。
──年表をみると川島さんはつねにテンションが高いまま、須賀さんは起伏が激しいですよね。
川島 須賀はね、無茶ぶりを実現するための大切な存在で、たくさんの苦労があるからそれを終えた瞬間はどうしても下がっちゃうんだよね。
須賀 川島とは以前から知り合いで、Googleのマーケティングをしていたこの時期、“ダルサナ”開催前に日本のことをいろいろ相談され始めたんですよ。会場はどこがいいとか、予算はこれくらいなんだけどとか、それがもう、とてもじゃないけど低すぎなんですよ。
川島 あははは。そもそもNIAはイベントのプロ集団ではなく、安全に執り行うノウハウがまったくなかったので、大きなイベントを手掛けてきた須賀から桁が違うとよく言われていましたね。
須賀 「本気で言っていますか?」って(笑)。までもそうですが、毎回イベントの直前になると川島からの無茶振りが3~4個重なるんですけど、当人はいつもどんなにたいへんな局面でも動じず、それを乗り越えてくる。そうした彼のすごさを見てきているので、「できない」なんて言えないんですよ。
川島 須賀がよく、「最後になんとかしちゃう能力がすごい」って言うんですけど、それって僕の能力じゃなくてスタッフみんなのおかげなんです。須賀ならやってくれる、大丈夫だって確信がある。僕からすれば無茶は言ってないんだよ。
──できるって思う気持が大切ですよね。
川島 そうです、その甲斐もあって文化庁のメディア芸術祭のエンターテイメント部門で大賞に選ばれ、伊集院光さんのラジオで3週も取り上げてもらったりしたんですから。
──このころからエージェントに遭遇することが増えたのをよく覚えています。大きな動きといえば、6月に東北で開催された“イニシオ”もそうですよね。
川島 イベントはもちろん、東北の石巻にジョンを連れていけたことがよかったですね。『Ingress』が持つ人を動かす力、これを言葉にするのは簡単ですが、実際にジョンが訪れることでしっかり示すことができたと感じました。
──自分自身もまさか今年(2016年)、女川の地に立つとは想像もしていませんでいた。あの震災後、たくさん映像で見る機会がありましたが、5年経ったいまの現状を知ることができたのは『Ingress』のおかげですからね。
須賀 女川からの帰り道、深津さんと車内でお互いMMORPGにどっぷりハマっていたはなしをしましたよね。あの世界におけるレイドバトル(大人数が関わる戦い)もおもしろいんですが、じっさいに人間がその場に集まるXMアノマリーは格段に熱いと思うんです。
──MMO廃人だった当時の自分は地元のことをまったく知らなかった。仮想空間が楽しかったからそれでよかったんです。しかし、ポータルの存在が田舎街に隠された魅力があることを教えてくれ、いまではレイドバトルを現実世界で味わっている。外に出ることが面倒だった人間がこうも変われるってすごいことですよ。
川島 そうして迎えたのが12月、XMアノマリー“ダルサナ”ですね。あの当時は須賀もいない時期で、アメリカと日本を行き来しながら当日に向けて準備をしていました。これが本当にたいへんだったことをよく覚えています。あれから時を経て2016年、こうしてまた東京で今度は1万人を超える規模でXMアノマリーを実現できたことは本当に感慨深いですね!
▼続き
2015年
NIA独立からの大躍進
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P.N.深津庵&あしたづひむ(撮影アシスタント)
※深津庵のTwitterはこちら
Ingress(イングレス)
- ジャンル
- オンライン位置情報ゲーム
- メーカー
- Niantic, Inc.
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(ゲーム内課金あり)
- 対応機種
- iOS/Android
- コピーライト
- (C) Niantic, Inc.
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