有料ゲームにも注力!スクウェア·エニックス松田社長に聞くこれからのスマホアプリ市場

2016-07-21 18:15 投稿

既存のスマホアプリ市場が“変化する”とき

E3 2016では、『ファイナルファンタジーXV』の発売日を控えたこともあり、そのさらなる情報を求める人々からの注目を一心に浴びることとなったスクウェア・エニックス。同作のPS VR対応を発表するなど、相変わらず革新的な動きを見せた同社だが、一方で、スマホアプリタイトル『KINGDOM HEARTS Unchained χ』、『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』、『メビウス ファイナルファンタジー』の海外進出など、スマホアプリに関しても大きな動きを見せている。

そこで今回は、同社の社長、松田洋祐氏にスマホアプリ市場に対する見解や、戦略をうかがった。また、今回のインタビューを踏まえ、ファミ通Appではユーザーからのアンケートを募集することになった。

本記事の文末にアンケートフォームを設置しているので、ぜひ応募してみてほしい。スクウェア・エニックスもアンケート結果を楽しみにしているようなので、ドシドシ応募しよう!

(聞き手:カドカワ 取締役 ファミ通グループ代表 浜村弘一)

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SQEX_松田社長全身

▲スクウェア・エニックス
代表取締役社長
松田洋祐氏
(文中は松田)

スマホ有料アプリのメリット

――さっそくですが、最近の御社のスマホアプリのタイトル、非常に好調ですよね。

松田 開発・運営のノウハウが蓄積され、大きな成果が出始めました。よりいいものを作ろうと各チームが頑張ってくれています。

――E3もターニングポイントが来ていると話しましたが(※1)スマホアプリの市場もターニングポイントが来ているような気がしますが……。
(※1スクウェア・エニックス 『FFXV』発売後のつぎなる戦略は!?――松田社長に訊く

松田 そう思います。当社では、それで、落とし切り型の有料アプリに力を入れていこうとしています。

――本日はその話をおうかがいしたくて。基本無料型のアプリの市場は、トップセールスの上位が固まってきて、そこを狙うのはリスクが高いという話も聞きますが、有料アプリは、どうなのでしょうか。

松田 あまり目立たないですけど、じつは意外とうまくいっているのです。ストアのセールスランキングでは、基本無料のタイトルが大きく取り上げられますから、有料アプリは目立たないのですが、コツコツと積み重なって、会社ベースで見ると売上規模もそれなりになっているのです。

ストアのセールスランキングは個別タイトルごとのランキングですから、基本無料アプリの場合はランキングに乗れば目立って売れていきます。一方、有料アプリは、一瞬一瞬で見ると上位にはいかないですよね。ところが、時間で積分していくと、わりといい売上になっている。だから、有料アプリは目立って売れているようには見えないのですが、会社規模でみると利益に貢献しているのです。

――新作が出たら、過去作も一気に売れるという強みもありますよね。

松田 そうですね。たとえば、『スターウォーズ』なども、最新作が出ると過去作も買おうという流れがありますよね。同じように、コンテンツは、IPの強みが生きるものだと思います。

『ドラゴンクエスト』とか『ファイナルファンタジー』の最新作が話題になったときは、そのシリーズの過去のタイトルが動きます。今回も『ロマンシング サガ2』がスマホタイトルで発売されましたが、コンシューマー含め、過去の『サガ』シリーズも動いています。

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――スマホだと、有料アプリは商売にならないと言われていますが、そうでもないみたいですね。

松田 数年前とはだいぶ違うのではないでしょうか。いまのユーザーの皆さんは、画面をタッチするインターフェースに慣れているので、スマホを小型ゲーム機として見ても違和感がないのではないかと思います。とくにスマホは、ターン制RPGとかシミュレーションと相性がいいと思うんですよね。

『ドラゴンクエスト』とか『ファイナルファンタジー』の中でも昔のタイトルが、スマホで売れているというのは、スマホでプレイするのに違和感がないからでしょうしね。今後は新しいものも乗せていければと思います。

――“新しいものを乗っける”というのは、これから家庭用ゲーム機で出すものも、スマホでプレイできるかもしれないということでしょうか?

松田 そうですね。もしくはスマホ専用の新作RPGを有料アプリとして出して、追加で移植も出していくなど、やりかたはいろいろとあると思いますね。

――新作! スマホの基本無料型ゲームでも『メビウス ファイナルファンタジー』のように、ハイエンドに限りなく近づいているタイトルがありますよね。ああいったタイトルの、有料アプリ版みたいなのを売り出していくイメージでしょうか?

松田 そういった路線もあるでしょうし、ターン制のRPGも考えています。ターン制のRPGってクラシックなスタイルですが、単純にハイエンドと比べて古いものだとは思っていません。あれはひとつの様式美となっているのではないでしょうか。

もちろん、基本無料で、課金をしたりしなかったりするスタイルで遊ぶのが好きな人もいると思うので、基本無料型も続けていくつもりです。

――基本無料のアプリの開発をやめるわけではないということですよね?

松田 そうです。いくつか選択肢がないといけないと思っています。お客さまの遊びかたの選択肢を増やすという意味でも、有料のシングルプレイのゲームを遊んでいただくという形があったほうがいいのではないかなと思います。

――いま、課金問題がとりあげられていますが、有料アプリに力を入れるのはそれもきっかけですか? 

松田 遊びかたの選択肢を増やしたいという考えで有料アプリのことを考え始めましたので、それがきっかけというわけではありません。

ただ、これまでは基本無料の課金型しか選択肢がないから、市場がひとつの方向に走ってしまっているというところもあるのではないかと考えています。

――定額課金サービスがゲームアプリにも入るというニュースもありましたが、どう思われますか?

松田 それもひとつの選択肢だと思います。ただ、ユーザーのみなさんがどう遊んで、ディべロッパーやパブリッシャーにどう分配されるのかなど、解決しなくてはいけない部分があるのではないかと思います。

いまは事実上、スマホゲームの市場はほとんどひとつのビジネスモデルしか存在していませんから、これに加えて有料アプリもたくさん遊べて、さらに定額制のものもあれば、ユーザーの選択肢が増えて、メーカーもそれに応えようとしますので、ゲームそのものも、市場も、豊かになっていく。このような考えかたがベースになって、今年はスマホの有料アプリに力をいれていこうと思っています。

SQEX_松田社長横2

ユーザーもゲーム会社も、選択肢が広がる

――家庭用ゲーム機用に作ってるものを、スマートフォン向けに出していくこともありますか?

松田 そういうのもアイデアとしては出てきていますね。その場合はクロスセーブが可能かどうかなど、いま、いろいろなことを議論しています。

――それはいいですね! テレビで遊んでいるものをスマホでも遊べるということですか?

松田 スマホでクロスセーブできたら、利便性が上がりますよね。そういったいろいろな可能性を探っています。

――たとえば“Tokyo RPG Factory(※2)”の『いけにえと雪のセツナ』なら、スマホでも遜色なく遊べそうですね。
(※2スクウェア・エニックスが2014年に立ちあげた、王道RPGを制作するためのスタジオ。第1作目として『いけにえと雪のセツナ』を開発。)

松田 そうですね。数年前に『ケイオスリングス』なども出していましたが、ああいうゲームをもっと進化させた形のターン制RPGを、ひとつの型として作って、勝負していけたらおもしろいと思うんですよね。

――今までの有料ゲーム市場は、パッケージで販売してそれで終わりという形でしたが、これからは、ゲームも2次販売、3次販売できそうですね。

松田 過去作だけではそういう話も広がりにくいので、やはり新作を出していかなければならないと思っています。有料アプリは開発費が高くなるから敷居が高いのではないかと思われるかもしれませんが、いまや無料アプリの開発コストと、有料アプリの開発コストは、ほとんど同じですからね。

――スマホアプリの開発費、上がっていますよね。

松田 数年前との違いはそこですね。数年前の無料アプリは開発費が安かったので、ローリスクハイリターンが狙えた。だからスマホアプリ市場へ参入する開発者やメーカーが増えたのですが、いまは開発コストが上がってきているので、有料アプリを作るのと差はなくなっています。

一方で、遊べるのが課金型の基本無料アプリしかないというのは、お客さまにとってもあまりいいことではありませんよね。有料アプリを買っていただければ、追加課金をせずにずっと遊んでいただくという選択肢ができますので。

――スマホであれば、ハードにかかわらず遊べる、まさに“ずっと”遊んでもらえますよね。

松田 昔のゲーム機だと、下位互換性の問題があって、遊べなくなってしまうという問題がありました。古いゲームを遊ぼうとすると、ハードから探しに行かなければならなかったのですが、スマホの場合はOSのアップデートに合わせて、アプリ側もアップデートをすれば、つねに遊んでいただくことができます。

――そういった新作は、具体的にいつごろ出るのでしょうか?

松田 もうちょっと、もうちょっと待ってください!(笑) ここでいろいろお話ししてしまうと、この先出す情報がなくなってしまうので(笑)。

――(笑)。それがほかの会社にも浸透して、有料アプリの市場が活発になるといいですよね。

松田 そうですよね。インディーのPCベースのゲームですと、有料のものがたくさんありますから、ああいうものが、スマホの市場でももっと広まるといいなと考えています。

――3DSやVITAの横軸にスマホがあるというお考えですよね。

松田 そうだと思います。我々にとってもディベロッパーにとっても、出口はたくさんあったほうがいいと思います。出口がひとつしかないと、供給も自然と減りますよね。

ですから、課金型の基本無料アプリもやりつつ、有料アプリも買うという習慣がお客さまに根付けば、ディベロッパーにも出口が増えて、ゲームの市場も広がると思います。

 

SQEX_松田社長笑顔

気になる価格帯や過去作の復刻について

――ちなみに価格帯はどの程度を狙っていますか?

松田 新作の場合はそれなりの価格帯になると思っています。約2000円ぐらいのイメージですかね。コンシューマーゲームと比べたら安いとは思いますけれども、2000円ぐらいいただければ開発費もまかなえるかなと。後はロングテールで見ていきますので、初期開発費を回収できるかどうかというところですね。

もちろん、ゲームの作り方や内容にもよりますが、きちんと作りこんだ有料アプリを品質に見合った金額で販売させていただく、という考え方です。

――過去のタイトルを復刻させ、有料アプリにしていくという可能性も?

松田 復刻も新作も両方やっていきます。だから、いままだ出していない過去のタイトルを含め、ライブラリーを厚くしていこうと思っています。そして新作が出たら、過去のタイトルも遊んでもらえるように対応したいですね。

映像などのほかのコンテンツは、古いものでも見ることができたり楽しめたりできるようになっているので、ゲームもそうなるべきですよね。デジタルコンテンツのメリットを活かさないといけないと思います。

―ファミ通Appやファミ通ドットコムなどでアンケートをやって、何が復刻してほしいとかを見ていただく、というのは?

松田 それはありがたいですね。他社のタイトルばかりだったらどうしよう(笑)。

一同 

松田 それはそれで、もう当社はやりきったということで(笑)。

――いやいや、まだまだいっぱいあるじゃないですか!(笑) 権利が絡むものもあって、復刻するのはたいへんなタイトルもあるかと思いますが。

松田 そうですね、難しいものもありますが、できるものは進めていきたいですね。過去のタイトルも遊びたいというお客さまもいらっしゃると思うのですが、遊んでいただく機会がないんですよ。ゲームのIPは昔のものも知名度があるので、それを活かすなら、まずは遊んでいただける状態にしないと。

そしていま、それができるようになってきたのだから、パブリッシャーとしてもお客さまがすぐ遊べますよという状態にする。そうしたところから、開発者もいいアイデアが出て新しいものが生まれる……。そういった循環が必要ですよね。

――過去作を現代風にアレンジして出す場合もありますよね。じっさいスマホリメイクの『ロマサガ2』が出てからほかの『サガ』シリーズも遊びたいという若いユーザーの声も多く聞きます。

松田 若い方だと昔のゲームを触ったことがないから、新鮮だということがありますよね。若い開発者の場合、古いものに触れることで新しいアイデアが浮かんで、新しいものが出てくることがある。そういった意味でも、復刻アプリは大事だと思います。

――今後はいろいろと新しい形のスマホアプリが出てきそうですね。本日はありがとうございました。

アンケートを実施

ファミ通Appにて、今回のインタビューを受けて、有料アプリおよびアプリゲームへの移植について緊急アンケートを実施します。回答いだだいた内容をもとに記事化して公開する予定ですので、何卒ご協力いただきますよう、よろしくお願い致します。

下記の注意事項をご確認のうえ、以下のリンクからご回答ください。

●回答しめ切り
2016年7月26日まで

●回答結果
アンケートの回答は一部編集してファミ通AppのWEB上で掲載させていただくことがあります。

【注意事項】
※必ず注意事項を確認いただき、同意のうえで回答してください。

◎アンケートの回答は、おひとりに付き1回までとさせていただきます。
◎誌面に掲載させていただく際、文字数などの都合上、お寄せいただいた文章を編集する場合があります。
◎誤入力、文字化けその他の理由で内容が判読できない場合には、無効回答とさせていただく場合があります。
◎回答欄には、個人を特定できる情報を入力しないでください。

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