【ひらブラ vol.5】ギョーカイ用語は「言葉」のブラックボックス
2014-02-14 12:00 投稿
ARPPU、CPA、TRC、SAP、ローンチ、RC、メタクリティック、円盤、ピヨる、ロケテ、、、
これらの言葉がわかる方は、ゲーム業界人か、ゲームに造詣の深い方でしょう。逆に、ゲームとは縁遠い人にとっては、まるで暗号か呪文のように感じるかもしれません。
このように、普段なにげなく使っている言葉や表現が、他人にとっては新鮮に聞こえたりすることがあります。
本人にとっては「あたりまえ」の言葉でも、業界や文化のちがう世界に身をおく人にとっては新しく感じたり、また、場合によっては別の意味になったりもします。
前回の記事でも、ドラクエのアプリについて触れた際に「アドバタイズループ」をご紹介しましたが、この単語もCS系ゲーム開発業界にいないと聞き馴染みのない言葉だと思います。…あっ「CS」ってのもそうかもしれませんね(笑)。これらの言葉の解説は、すべて前回の記事に書いてありますので、気になる方はぜひどうぞ。
知らず知らずのうちに使っている表現が、実は話し相手や読み手にとっては未知のものだったりすることがあるので、コミュニケーションの際は注意が必要です。
そんなとき、たとえ悪気は無くても言葉は暴力になってしまいますから。ボクも、このブログを書くときはなるべく専門用語や業界用語は使わないいように心がけています。どうしても使う場合は、必ず注釈や説明を付記するようにしています。
上記のように、意識せずに業界特有の言葉になっていくものもありますが、世の中には「隠語」や「ギョーカイ用語」とよばれる、まさに通じる人にだけ通じればいい!と初めから割り切った言葉も存在します。
4番にいる太郎と花子をわらってください!?
たとえば、飲食業を営む友だちから聞いた話ですが、レストランや喫茶店でのスタッフどうしの業務連絡のひとつに「4番はいります」という表現があるそうです。これは、実は「トイレのために持ち場を離れる」ための宣言。数字が4である理由は、飲食店では縁起をかついで4や9といった番号のテーブルを作らないことから来ているという説もあります。なお、そのお店では、「1番=食事休憩」「2番=休憩」だそうです。
ちなみに、飲食店などで、ボクも大嫌いな例の黒い色の生物が出没してしまったときは、「太郎」とか「花子」といった名称で呼ぶ場合が多いとか…。むむむ、これは知らなくて良かったことかも!?
さらに、その人からは、品切れのことを「山」と表現することも教えてもらいました。飲食店で何かを注文したときに「◯◯いっちょう!これで山になりま〜す!」って言われたときは、最後の1つをゲットできたことを喜んでいいかもしれませんよ。
もちろん、これらの番号や表現には全国統一のルールがあるわけではないので、地域やお店によって異なるのでご注意を。
業界用語のなかでも、カタカナで「ギョーカイ」と書く場合はマスコミ業界を指す場合がほとんどです。実は昔、少しだけマスコミ業界(TVCM撮影)にいたことがありますが、数あるギョーカイ用語のなかでも印象的だったのが「せっしゅう」と「わらう」でした。
「せっしゅう」は、役者さんや被写体を”台”に乗せて、カメラからみて現状よりも高い位置にあるように見せることです。「その◯◯、10センチくらい”せっしゅう”してください」というように使います。台そのものを「せっしゅう」と呼ぶ場合もあります。
映画「戦場にかける橋(1958年)」などに出演していた早川雪舟(はやかわ・せっしゅう)という俳優が、米国人女優との共演時に身長バランスをとるための専用の台が用意されたことから生まれた表現だと言われています(ボクが東北新社系の映像専門学校に通っていたときも、授業でこのように習いました)。
「わらう」は、カメラに映らないように何かを「どける(片付ける)」ことです。「その◯◯、見切れてるから”わら”っといて!」のように使います。言葉のルーツは諸説あるようですが、「取っ払う」から変化したと言われています。「わらっといて〜」と言われると、思わずゲラゲラと笑いたくなっちゃうのは、ボクだけじゃないと思います。
うーん、まさしく、言葉の「ブラックボックス」って感じですね(笑)。
ゲーム業界にも、いろいろな言葉のブラックボックスが潜んでいます。他業界の人やゲームに詳しくない人にとっては「???」な単語。たとえば・・・
◆初級編:
「DLC」「CP」「SAP」「ガンシュー」「ガチャプレイ」「ピヨる」「フラグ」「アーケード」「タイムリリース」「ロケテ」「クロレビ」「MAU」「神運営」
◆中級編:
「筐体」「RC版」「AAAタイトル」「ローンチ」「足譜」「当たり判定」「セカンドパーティ」「スタンドアローン」「オペレータ」「メタクリティック」「CPA」「LTV」「ARPPU」
◆上級編:
「お皿(円盤)」「コリ抜け」「初出」「ダミーインレイ」「TRC」「アダプティブミュージック」
…いくつ解りましたか?ファミ通をいつもご覧の方なら、けっこうご存知の単語も多いかもしれません。それぞれの言葉の意味は、ひらブラ公式Facebookページに掲載する予定なので、気になる方は要チェック(笑)。
ブログタイトルが決まるまで
このファミ通Appでのブログの話が決まってから、いちばん悩んだのが、ブログタイトルをどうしよう?という点でした。
社命を背負って書いていますから自社の技術や製品も紹介していかなければいけない。だからといって、それだけでは企業サイトのブログと変わらなくなってしまう。
いっそ、想定する読者層を、完全にプロのゲーム開発者に限定して、ディープすぎるネタを書こうかと思ったことも。でも、それではファミ通でやる意味がなくなってしまう…。
まさに、タイトルを決めるということは、ブログのコンセプトを決めることと同じでした。
ひらめきは、お友達とSkypeで長電話していたときに訪れました。そのお友達に、自分の仕事やうちの技術とサービスについて説明しているときのことです。
お友達:「幅さん、今、何ておっしゃいました?」
ボ ク:「えっ?」
お友達:「今、おっしゃった言葉ですよ!」
ボ ク:「・・・ブラックボックス、、、ですか?」
お友達:「そうです、それですよ!」
ミドルウェアやゲーム開発ツールの説明をするとき、ボクらは「ブラックボックス」という言葉をわりと頻繁に使います。この日も、このお友達との会話のなかで、ブラックボックスという言葉を(自分では意識せずに)使っていたのでした。
なるほど・・・確かに、ミドルウェアはブラックボックス。ブラックボックスという言葉は謎めいているし、奥が深い。しかも、いろんなところでボクらはブラックボックスに支えられている。普段なにげなく使っていた(ボクらにとっては)当たり前になっていた言葉、ブラックボックス。
…まるで「幸せの青い鳥は、実は我が家に居ました」的な展開(笑)。
人間って、自分の足元は、意外と見えなかったりするんですよね。だから、信頼できる第三者からの意見や分析がとても役立つことがあります。
まさに、このブログの名付け親といっても過言ではない、ボクのお友達。それは、クロースアップ・マジシャンの前田知洋さんです。
前田知洋さん
プライムタイム(=TV視聴者が最も多い夜間帯、各局とも看板番組を用意している時間帯のこと)の特別番組をはじめ100以上のテレビ番組やCMに出演されているので、ボクが改めてご紹介するまでもなく、すでに前田知洋さんのことをご存知の方も多いと思います。
ゲーム業界との接点も実は多くて、ソニーPSPのTVCMにも出演されています( 当時の写真 : http://crimw.me/1ftPHdi )。
プロフィール欄にも書いていますが、ボクの趣味はクロースアップマジックなんです。観るほうが好きですが、ちょっとだけ演じるほうも…。
そんなボクも、前田さんのことは、TV画面越しに尊敬の熱い眼差しを送るだけだったのですが(笑)、いろいろな偶然と情熱が奇跡的にブレンドされて(このへんはブラックボックスですw)今に至ります。
前田さんはエッセイや執筆も多く、(ファミ通と同じ)KADOKAWAグループであるASCII.jp上で、大人気のコラムも連載されています。とっても面白いので、ぜひ読んでみてください!
◆前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック”
http://ascii.jp/elem/000/000/734/734770/
執筆という点でも大先輩である前田さんから直々に「ブラックボックス」という”気付き”を頂き、イメージがどんどん広がっていきました。
・わかりにくいものをわかりやすく
・なるべく多くのひとを対象にする
・タネあかしをせず魅力をつたえる
という『ひらブラ』のテーマは、こんなふうに決まっていきました。
前田知洋さんについて、もっと詳しく知りたい方は、公式サイトをチェック!
◆前田知洋さん 公式サイト
http://www.eva.hi-ho.ne.jp/tomo-maeda/
ちなみに「ひらブラ」のキャッチコピー、
『ギークなオトナの新常識』
も、前田さんから頂いたものです。
前田さんといえば、「大切なお客様には、新しいトランプを開封してマジックを見せることにしています」のセリフが有名です。新品のカードの封を切ることから前田さんのマジックは始まります。カードに仕掛けがないことを伝えるだけでなく、「あなたのために用意しました」という気持ちを伝える意味があるからだそうです。
ミドルウェアも、SDKという形があるから、つい「パッケージ製品」だと思われがちです。事実そういうミドルウェアも世の中にはありますし、それは製品や企業の性質の違いなので、良し悪しではないと思います。ただ、CRIはつねに開発者にとっての助け舟であり、頼りとなる存在であり続けたいからこそ、いつも「CRIWAREはパッケージ製品ではありません」とお伝えしています。時代の変化や技術の進化につねにキャッチアップしながらも、普遍的な価値を提供し続けるために、毎日のように開発者のみなさんとの対話をし続けています。
前田さんがいうところの「あなたのために用意しました」という気持ちは、ボクらの開発者に対する思いと、とても似ているような気がしてなりません。
「マジックはお客様との”対話“である」というのも前田さんの言葉ですが、ゲーム開発者とミドルウェアの関係にも、素晴らしいゲームという”マジック”を実現するために、”対話”が不可欠なのだと思います。
電話はほとんど鳴りませんが(笑)、今日も、全国のゲーム開発者のみなさんとのあいだで大量のメールが行き来しています。ちょっと静かな”対話”かもしれませんが、とても情熱的な対話が毎日のように繰り広げられています。
マジックとミドルウェアとの不思議な関係、解って頂けましたでしょうか?今回のコラムはここまで。ここからは、ゲームやアプリの「プロデューサー」的な立場の方にむけて、一歩進んだミドルウェアの魅力をお伝えしてみたいと思います。
プロデューサーの方へのメッセージ
ミドルウェアが高度に技術的な製品である関係上、ボクらの製品を説明するためのメッセージの対象となる方は、実際にゲームを開発されているエンジニアやプログラマの方であることがほとんどです。
実際、プログラマ向けの勉強会やイベントなどで当社技術に興味を持って頂いたことがきっかけで導入が進むことが多かったりします。
でも、当然のことですが、ミドルウェアの導入には費用がかかります。
シンプルには、導入費用を上回る「付加価値」を感じて頂けて、初めてそのミドルウェアを導入して頂けるわけです。その付加価値は、企業によってさまざまで、コストや工数の削減だったり、品質保持や品質向上だったりします。
自社で同じような技術を開発できるかもしれないが、実際にやろうとするとたいへんな日数がかかるし、新機種や最新OSへの対応を継続的に続けるのも大変だから、ここは「餅はモチ屋」で、ミドルウェアを使おう!というケースが実際にも多いようです。
この「導入による付加価値の判断」を最終的になされる方は、プロデューサーと呼ばれる立場の方であったり、会社によっては、テクニカルリサーチ部門や購買部だったり、事業部長や社長だったりします。
開発現場でミドルウェアを気に入って頂いた場合、お客様の社内では「上司やプロデューサーの説得」というプロセスが動きます。
エンジニアやプログラマの経歴を持つ方がプロデューサーや経営職に就かれるケースも最近は増えてきているので、技術的な導入メリットをすべて理解できる方もいらっしゃいます。でも、そうした方ばかりではないですし、技術面の評価は現場のプロに一任されているケースがほとんどです。
そこで、今回は、日々の事業判断や経営判断に多忙な「プロデューサー」の方々にとって、ご理解頂けやすいCRIWAREの魅力、すなわち「導入による付加価値」をお届けします。…別の言い方をすれば、「上司や社内のプロデューサーの説得」のために役立つ情報をお届けしちゃいます(笑)。
…と、思ったら、今回も字数の限界が・・・(汗)。
この話題は、次号でも引き続きお届けしたいと思います。それまでに、ぜひ、こちらのパンフレットをご一読頂けると嬉しいです。
↑画像クリックで、プロデューサー向けパンフレット(PDF)が見られます。
このパンフレットは、ボクが少し前に「プロデューサー向けのCRIWAREのパンフレットを作りたい!」と思って独自に作ったものです。技術的に難しいことはまったく書いてありません(笑)。でも、プロデューサーの方によく聞かれる情報を「凝縮」して、まとめてあります。
…ちょっと営業っぽくなりましたが、でも、これを読むと世の中のゲームアプリのプロデューサーが今、どのようなことを気にしているかが分かっちゃいますので、ぜひ。
また、プロデューサーの方からのご質問や、このブログ上で扱って欲しいトピックもぜひお寄せ下さい。次号以降のブログ上で、できるかぎりお応えしていきたいと思っています。下記のお問い合わせフォームからどうぞ。
というわけで、次回は引き続き、プロデューサーの方向けの情報をお届けしたいと思います。どうぞ、お楽しみに。
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【バックナンバー】
※vol.0:創刊準備号ということでジコショーカイ【CRI幅朝徳のひらけ!ブラックボックス】
※vol.1-1:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは【ひらけ!ブラックボックス】
※vol.1-2:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは【ひらけ!ブラックボックス】
※vol.1-3:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは【ひらけ!ブラックボックス】
※vol.1-4:福袋も飛行機もゲームも?ゲーム開発を支える”黒い箱”とは【ひらけ!ブラックボックス】
※【ひらブラ vol.2】 LEDで無重力をつくる話
※【ひらブラ vol.3】ドラクエの起動画面のひみつ(続・Cocos2d-xとCRIWAREの話)
※【ひらブラ vol.4】gumi田村さんに訊く「ズバリ!Cocos2d-xのココが魅力」
読者の方からのご意見ご感想やご質問なども大歓迎です。以下のコンタクトフォームからどうぞ。なるべく多くの方のご意見に誠意をもってお返事したいと思っております。
幅朝徳(はば とものり) 株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。GREE社やnhn社といった企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュースも行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。現在、さらなる新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当する傍ら、ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。
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趣味は、映画鑑賞とドライブ、クロースアップマジック、デジスコによる野鳥撮影、コンパニオンバードの飼育、そしてもちろん、ゲーム。
CRI・ミドルウェア ウェブサイト
http://www.cri-mw.co.jp/
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