“HTML5で生まれる新たな遊びとは”ガンホー・森下社長やソニックの生みの親・中裕司氏も参加した“黒川塾 51”をリポート

2017-07-21 20:39 投稿

プラットフォームに囚われないゲーム作りを

2017年7月18日、“黒川塾 (五十一) エンタテインメントの未来を考える会”が恵比寿ガーデンルームで開催された。

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黒川塾は、メディアコンテンツ研究家である黒川文雄氏がゲストを招いてゲームやエンタテインメントの現状や今後の可能性を議論するトークイベント。

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▲メディアコンテンツ研究家 黒川文雄氏

今回のテーマは、“HTML5ゲームとクラウドゲーム市場の未来を語る”というもので、ヤフーの“Yahoo!ゲーム ゲームプラス”(以下、ゲームプラス)をはじめとするHTML5を活用したアプリ・ゲームコンテンツ市場の新たな取り組み、クラウド技術の進化によって、新たな可能性を示すクラウドゲームに注目。

ゲームクリエイターの中裕司氏や、ガンホー・オンライン・エンターテイメント社長 森下一喜氏など、時代を築いたトップクリエイターたちによって執り行われたトークセッションの模様をお届けしていく。

 ◆黒川塾(五十一)ゲスト
森下一喜氏:ガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長 CEO
中裕司氏:ゲームクリエイター
藤田一巳氏:コーエーテクモゲームス 執行役員
手塚晃司氏:バンダイナムコエンターテインメント NE事業部 第2プロダクション ゼネラルマネージャー
脇康平氏:ヤフー ゲームプラス事業部 ビジネスプロデューサー
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▲左から、黒川文雄氏、脇康平氏、森下一喜氏、中裕司氏、藤田一巳氏、手塚晃司氏。

ゲームプラス誕生の経緯

最初の話題は、同日、同会場にて発表会が行われたばかりということもあり、ゲームプラスについて触れられ、脇氏からゲームプラスの構想や、サービス誕生の経緯が語られた。

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▲ヤフー ゲームプラス事業部 ビジネスプロデューサー 脇康平氏

脇氏によると、ゲームプラスは4年ほど前からHTML5ゲームの可能性を感じており、当初はカジュアルなブラウザゲームを展開して多くのユーザーがプレイしていたが、もっとリッチなゲームを提供するためにHTML5とクラウドゲームを混ぜた取り組みを行ったという。

スローガンとしても掲げている「すべてのゲームはWebでやれ!」というコンセプトのもとに、満を持してサービスを開始し、発表会の直後から利用可能ということもあって、大きな反響を得ているとコメント。

ゲームプラスの大きなポイントは、Webブラウザが動作する環境であればいつでもどこでもダウンロードすることなくゲームが遊べること、LINEやFacebookといったSNSでURLを貼るだけで共有可能で、送られた側はURLを押すだけですぐにゲームが始められることにあると語る。

また、ヤフーが展開しているほかのサービスとゲームプラスを連携させることで、集客を含めた新たな遊びかたが生まれることに期待しているとのこと。

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黒川氏からは、「いままでのYahoo!ゲームとはどう変わるのか?」との問いを投げかけられ、これに脇氏は、まだゲームそのものに触れたことがない人たちが数多くいるとし、たとえば年配のユーザーなどが、ゲームに初めて触れたときに起こる化学反応に期待したいとも語った。

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新会社BXD設立のきっかけは、制約に縛られずにゲームを作るため

独自のプラットフォームに取り組むのはゲームプラスのみではない。2018年春よりHTML5技術を活用したゲームサービスを提供するバンダイナムコグループの新会社、BXDの代表取締役社長に就任予定の手塚氏も、これまでは実現できなかった新しい遊びを作り出したいという。

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▲BXD代表取締役社長に就任予定の手塚晃司氏

バンダイナムコエンターテインメントでは、スマホ向けのネイティブアプリを中心にゲームを展開しているが、その中でさまざまな制約や制限があるのが現状で、自分たちの実現したいことをやるため、というのが設立のきっかけだと話した。

ドリコムとは5、6年のあいだパートナーシップを結んでおり、協力関係となった理由は、IPの取り扱いに長けているからだという。

HTML5に関する技術開発はすでに2年ほど進めており、発表済みの3タイトル以外にも内部では複数の開発ラインが動いているとコメントした。

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プラットフォームにはこだわらず、出せるところで出していく

ゲームプラスの発表会で、コーエーテクモゲームスはHTML5に本格対応した新作ゲーム(コードネーム『Turn』)を発表。

同作のプロデューサーを務めると明かした藤田氏は、これまでスマホ向けアプリやブラウザゲームなどを手がけた経験に鑑みて、プラットフォームに対する考えかたを改めなければ、新しい遊びは生まれないのではないかと指摘する。

 
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▲コーエーテクモゲームス執行役員 藤田一巳氏

ゲームとして表現したいものが実現できる環境が整っていれば、ゲームを提供するプラットフォームにはこだわらなくてもいいと考えるようになり、さまざまなプラットフォームで新しいものを作っていきたいと意気込みも語った。

HTML5版の『パズドラ』を検討したこともあった

プラットフォームにはこだわらないと語った藤田氏と同様に、森下氏も、ゲーム開発という観点で考えると、HTML5か、ネイティブか、プラットフォームが何であるかということはあまりこだわっていないと切り出す。

 
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▲ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長 CEO 森下一喜氏

「HTML5で新しいことができる可能性があるとするならば」、と前置きをしながら、ガンホー社内でもHTML5ゲームの研究を進めていると言及。具体例として、2011年ごろに、『パズル&ドラゴンズ』のプロジェクトが本格的に動く前にHTML5で動かしたらどうなるか検討したことがあったと明かす。

当時の技術では、HTML5で現在の『パズドラ』のような動きを実現することは不可能である判断したとのことだが、HTML5の技術が進歩することで、昔ネイティブでできていたことがいまはHTML5でも可能となり、新しい可能性が見えてくるのではないかと発言した。

HTML5ならURLを送り合うこと自体を遊びにできる

続いて、黒川氏から中氏へ、ゲームクリエイターの立場としてHTML5はどうか、と問いかけられる。

中氏は、「正直な話、過去に遊んだものは、いままでのFlashゲームと何が違うのかと思ってしまった」と鋭く斬りつつも、「HTML5のいいところは、URLひとつ送るだけで、そこにゲームが存在する。そして、URLのアドレス自体がつぎのゲームに行くというのがいちばん特徴的」と、HTML5ならではのメリットを語る。

 
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▲ゲームクリエイター 中裕司氏

さらに、中氏は、URLをどこかに送ることで、届いた先で新しいゲームが現れる、そしてまた、つぎの人へ送るような、URLを送り合うこと自体を遊びにしたゲームを作るべきだと主張。

また、HTML5の利点を活かすためには、現状よりも短縮されたわかりやすいURLなどを用意したほうがいいと脇氏へアドバイス。ゲームの内容がひと目でわかるような、短く簡潔なURLを送り合う文化が生まれることが、HTML5のゲームがブレイクするポイントだと語り、クリエイターらしい洞察力を発揮した。

この中氏の提案には、手塚氏も「まさに同じようなことを実現したくてやっている」と話し、「ネイティブのゲームでできることはネイティブでやればいい、HTML5では、SNSでURLが送られてきたり、店頭でQRコードを読み込めばその場でゲームが起動するなど、HTML5ならではのゲーム体験が提供できるはずだ」と話していた。

目指すべきは学習コストが低くて体験は濃いゲーム

URLひとつでゲームを共有できたり、より手軽に遊べるようになることで、これまでゲームとは縁がなかったユーザーにも広がっていくと予想されるHTML5ゲーム。

しかし、藤田氏は、リッチなゲームになるほど操作が複雑だったり、予備知識が必要になるといったような、“ゲームの学習コスト”について言及。「ゲーム開発者は、ユーザーに濃い体験をさせようと、学習コストを高くしがち」だと指摘し、「これからのゲームがやるべきなのは、学習コストは低く、ゲーム体験は濃いものにする必要がある。」と意見を述べた。

それに対して、手塚氏は、社会現象となった『ポケモンGO』を引き合いに出して、「操作は極めてシンプルだが、ユーザーが自ら歩いて情報を集めるなど、学習コストは低くともゲームの体験として新しいアプローチだった」と、具体例を提示した。

クラウドはレトロゲーム向き?現状では技術的な課題も

イベント後半では、クラウドゲームについて話題が移った。

通信インフラの発展によって、『ファイナルファンタジーXIII』や『ファイナルファンタジーX』など、美麗な映像のタイトルを提供できるようになったクラウドゲームだが、技術的な課題は残ると藤田氏は指摘。

ゲームはインタラクティブ(双方向)なコンテンツであり、いっしょに遊ぶ人数が多いほどおもしろくなるが、同時にプレイする人数が増えるということは、その分バックボーンに大きな負担がかかる。現状では、その問題を解決するには潤沢な資本を必須であるという。

一方で、中氏からは、クラウドゲームはゲームのアーカイブに向くのではないかとの提案もあがった。

「昔の映画が手ごろなDVDで手に入るように、ミニファミコンのような、昔のゲームが簡単に遊べる手段が増えるといい」とし、これには森下氏も「アーカイブには一定の需要がある。簡単に移植できればメーカーとしても喜ばしいことだ」と賛同した。

手数料とはいわば場所代

最後は、ビジネスの話題に移る。黒川氏は、新たなプラットフォームを立ち上げるにあたって、「外資のアプリポータルに対するアンチテーゼなのではないか」と切り込んだ。

現状では、App StoreやGoogle Playを介してゲームを提供する場合は、手数料を支払う必要があったり、配信にあたって審査を通す必要がある点が、パブリッシャーやデベロッパーの負担になっているという声もある。

この問いに対して、脇氏は、ゲームプラスではシリアルコードの配布は無償のものであれば許可し、運営のテンポ感を損なわぬように審査は事後承認にするなど、なるべく制約を少なくすると答えた。

手塚氏は、ネイティブのゲームは今後も続けていき、そこでは実現できないことをBXDで取り組むと語った。そもそも、全世界にゲームを配信するための手続きや、課金決済のシステム構築、会員管理、宣伝などをすべて賄おうとすると、ストアに支払う手数料(ここでは“30%”としていた)どころではすまないと説明し、中氏も同様の見解を示した。

藤田氏は、「シンプルに考えると、手数料とは場所代。栄えた一等地でやらずに出ていくのであれば、自分たちが過疎地でも人が集められるものを作るか、一等地を作ってもらえるところにものを出すしかない。」と語り、「我々としては、金額よりも、その場所に見合ったものを出す努力と、出せそうなプラットフォームを探すだけ」とコメント。

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これらに対して、森下氏は、「日本の企業からイノベーションを起こして、新しいモデルを作っていくことができたら、それはすごく楽しいだろう。いずれにしても、手数料に関しては、ユーザーにとっては関係のないこと。我々はユーザーにとって、メリットのあること、おもしろいエンタテインメントを提供することが大事」だとまとめた。

クリエイターがおもしろいものを生み出そうと思える環境を作る

最後に、脇氏からは、ゲームプラスにかける想いと、今後の可能性について、あらためて語られた。

「クリエイターがこの業界で一旗あげてやろうと思える環境を作ることが大事。たとえば、ここにいる中さんはゲーム業界におけるレジェンドですが、こういった人たちがもっと素晴らしいものを世の中に生み出していただけたら、僕らとしても幸せです。HTML5やクラウドのような技術が、そのきっかけとなり、ゲーム市場がさらに拡大するチャンスにもなれば」と展望を語りトークセッションを締めくくった。

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