
モンスターたちの{起源/オリジン}第1回:本当は怖いスライムの恐怖
2018-05-24 18:00 投稿
モンスターの{起源/オリジン}を探れ!
RPGなどに多々登場するモンスターたち。彼らはどこから生まれたのか? 本連載はその{起源/オリジン}を辿る物語である。
RPGなどのゲームに登場するモンスターたちの多くは、ゲームデザイナーの手で調整されていることがほとんどだが、多くは、その{起源/オリジン}を辿ることが出来る。{起源/オリジン}はおおよそ以下のように分けることが出来る。
1:神話伝承
2:実在(した)の生き物
3:小説や詩、演劇、映画、ゲームなどの創作物
1のパターンであることは非常に多い。たとえば『真・女神転生』シリーズは、基本、神話伝承から引用した神々や悪魔、怪物、妖怪、妖魔の類を一括して“悪魔”と呼び、特徴的であるダークな世界観を構築している。
2は、そのまま熊や野犬など、野生生物がそのままモンスターのようなポジションで登場する場合。『ディノクライシス』のように、恐竜が復元されるケースもこれに分類される。
3に分類されるパターンも意外と多い。たとえば怪異としての吸血鬼は東欧の民間伝承を引き継いでいることが多いが、これがキャラクター“吸血鬼ドラキュラ”となると、19世紀末の劇作家ブラム・ストーカーの創作に基づいているものがほとんど。
また小柄な亜人種族のひとつとして知名度が高いホビットも、20世紀中葉の小説家J・R・R・トールキンが同名のファンタジー小説『ホビット』および『指輪物語』で生み出した種族であり、現在でも『ホビット』の登録商標はトールキン財団が保持している。
また、最初のRPGである『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下D&D)は、その展開の中で多くのオリジナル・モンスターを生み出しており、“ビホルダー”など多くのモンスターがこの流れにある。
スライムの始まりはアメーバ?
さてそんなモンスターたちの起源を辿っていく本連載の第1回のテーマはスライム。
そう、『ドラゴンクエスト』の雑魚キャラで、そのぷよぷよした外見で愛されているスライム(Slime)だ。ほかのゲームでも雑魚キャラとして登場することの多いこのスライムが、じつは非常に恐ろしい怪物であることを、ご存知だろうか?
怪物としてのスライムは、イメージのようなプルプルした姿とは無縁の、不定形の流動体的な生物で、物理的な攻撃が効きにくい上、被害者にべっとりと貼り付いて、体から分泌した消化液でその肉体を溶かしてしまう特性を持つ。
たとえば、『D&D』に登場するグリーン・スライムは、待ち伏せ型の不定形生命体で、ダンジョンを探索する冒険者の頭上から降ってきて体に張り付いてくる。
『D&D』の場合、この系統をウーズ系と呼び、その上級種に、グレイ・ウーズ(灰色のドロドロ)、オーカー・ジェリー(真紅のゼリー)、ブラック・プディング(黒いプリン)、そしてダンジョンの通路すべてを満たすゼラチナス・キューブ(ゼラチン質の立方体)などがおり、冒険者たちの難敵となっている。
『ウィザードリィ』の序盤、毒や酸を吐くスライムに苦戦した人も多いだろう。ともあれ、元来このように恐ろしいスライムだが、その{起源/オリジン}は、アメーバや粘菌の発見がきっかけになっている。
18世紀、単細胞生物の中でも鞭毛ではなく、仮足を作り出して這いまわるユニークな微小生物が発見され、19世紀に生物学者ボリ・ド・セントヴィンセントによって、ギリシャ語で“変容”を意味するアメーバと名付けられたそれは、当時はほとんどの人に見向きもされない存在だった。
それもそのはず。アメーバの大きさは最大でも1ミリメートル、通常では10~100ミクロンという微生物で、一般の人々なら一生目にすることも気付くこともない存在である。
科学知識の普及とともに、その存在の認知は広がりはしたが、当時はただ“アメーバという奇妙な微生物がいるらしい”という程度の認識でしかなかった。
そんな、誰も気にもとめなかった生物を、恐ろしい怪物として初めて取り扱ったのは、これまでの連載でも語ってきたクトゥルフ神話の生みの親H・P・ラヴクラフトであるとされている。
スライムの原型となった怪異“ショゴス”
ショゴスは、ラヴクラフトの小説『狂気の山脈にて』(1936)に登場する超古代種族“古のもの(エルダー・シングス)”が生み出した不定形生物で、必要に応じて肉体を変化させ、触手や道具を作り出して主人に命じられた労働を行なうことができる存在だ。
その姿は、球状にまとまった状態で直径5メートル超。転がって移動する際に発せられる音は、まるで急行列車が進むような音をかき鳴らすという。
そんなショゴスは、普段はテレパシーで主人と交信をするが、口や発声器官を作り出して歌うように発声することもでき、しばしば「テケリ・リ、テケリ・リ」と鳥のようにも鳴く。
閑話休題。スライムの打撃に強いという設定も、このショゴスに由来するものと思われる。不定形な身体を持つショゴスは、その構造上弱点となる部位が少なく、それでいて非常に強靭であったため、物理的な攻撃ではほとんどダメージを受けなかったのだ。
そうして彼らは後に、自我を持つようになり、その後、主人の“古のもの”に反乱を起こすことになるのだが、話の筋については、ここでは置いておこう。
ショゴスは、この変化する姿や、古代種族の生み出した人造生物という立ち位置が人気となり、クトゥルフ神話のモンスターとして定着していった。
基本的には、邪神を信仰する邪教徒や魔術師、あるいは、異形の存在によって召喚される不定形の怪物として恐れられたのだ。
森瀬繚&静川龍宗のライトノベル『うちのメイドは不定形』(スマッシュ文庫)のように、南極に眠っていたショゴスが日本人高校生のもとに送られてメイド、テケリさんとしてお世話をするというイレギュラーもあるが。
スライムの原典『沼の怪』
不定形の怪物を正面から扱い、スライムの名前で呼んだ小説の代表作は、J・P・ブレナンの『沼の怪』(1952年『千の脚を持つ男』掲載、Slime)である。
本作に登場するスライムは、海底で生まれた濃灰色の頭巾(フード)のような存在で、軟体の怪物がウォートン沼沢地に入り込み、周辺住民を襲った。
沼に潜み、近づく生き物を食らう際には盛り上がり、移動する際には液状になって流れ行く。その不定形の姿ゆえ物理的な打撃、たとえば銃器ではほとんどダメージを与えられない、強い光を嫌う傾向がある。スライム系の特徴や弱点は、本作によって描き出されたと言ってよい。
映画でも大暴れ
スライム系モンスターが注目された第2のポイントは、名優スティーブ・マックイーンが初主演したSF映画『巨大アメーバの恐怖』(『マックイーンの絶対の危機』(1958、The Blob))である。
謎の隕石から出現した不定形生物が、増大しながら周辺のものを食べ尽くしていくというストーリーで、巨大な不定形生物の恐怖を見事に表現したものだった。以降、このタイプの怪物を原題に従い、ブロブと呼ぶようになった。
こうしてスライムの原型となる特性が形作られていったのだが、どうだろう。いまでこそ愛らしい姿が真っ先に思い浮かべられるスライムが、このような恐ろしい存在であったことや、またクトゥルフ神話が起源とされているという話をご存知だっただろうか?
この連載では引き続き、ゲームの世界でメジャーとなっているモンスターたちの起源を辿っていく予定だ。
ふだん何気なく目にし、ゲーム世界での存在イメージが固まっているモンスターたちの中には、意外な起源を持っているものもいるので、ぜひ楽しみにしていてほしい。
※記事の一部に誤りがあったため修正を行いました。大変失礼致しました。(5/24 19:00)
おまけの4コマ
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4コマ作:海野なまこ
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文:朱鷺田祐介
【朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)】
TRPGデザイナー。代表作『深淵第二版』、『クトゥルフ神話TRPG比叡山炎上』。翻訳に『エクリプス・フェイズ』、『シャドウラン20th AnniversaryEdition』。2004年『クトゥルフ神話ガイドブック』より『クトゥルフ神話』の紹介を始め、『クトゥルフ神話超入門』などを担当し、ここ数年は毎年、ラヴクラフト聖誕祭(8月20日)および邪神忌(3月15日)に合わせたイベントを森瀬繚氏と共同開催している。
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