【逆鱗日和ワールド】第28回:古龍の約束

2018-04-04 17:39 投稿

それは効かない

ここまで相手をしてきた古龍を、“手こずった順”にランキングにすると以下のようになる。

1位 ヴァルハザク
2位 クシャルダオラ
3位 ネルギガンテ
4位 ゼノ・ジーヴァ
5位 テオ・テスカトル
6位 キリン(歴戦含む)

こんな感じだろうか。

でもこれだと強さの尺度がわからないので、もうちょっとわかりやすく表示すると……!

ヴァルハザク>>クシャルダオラ>>越えられない壁>>ネルギガンテ≒ゼノ・ジーヴァ≒テオ・テスカトル≒キリン

このようになる。要するに対角満的には、ヴァルハザククシャルダオラが抜きん出ていて、ほかの古龍はドングリの背比べ……というポジションなんですねえ。

これを見てもわかる通り、ガンキン装備にガンランスを背負った俺から見たら、あのネルギガンテもそれほど怖いモンスターではなかった(まあ、慣れるまではそれなりに苦労はしたけどな)。なので、いよいよ古龍との激突が始まろうとしていた同僚のたっちーに、俺はつぎのように言ったのである。

「古龍たちは、確かに手強い。でも、やっているうちに急に、“あれ? なんか対抗できてる?”と思う瞬間が来る! そう、マラソンでいうところのセカンドウインドみたいなもんや。そうなったら、こっちのもんだ! いくらでも狩って、素材を集められるで!」

たっちーは興味なさそうに「フーン」と鼻で返事をしてから、つぎのように返してきた。

「わしいま、苦労して作ったパピメル装備やねん。でもさすがにこの装備だと、今後の狩猟に不安がある。そこで、キサマの言う古龍とやらの素材を集めようと思ってるんや」

そして、こう結んだ。「ネルなんちゃらの装備が野性的でかっこよかったので、こいつにしようと思う!」

デタ!! パワー系アマゾネスとも言える、ネルギガンテの女性装備!! 俺はパチパチパチと、諸手を上げて拍手をした。

「いいね!!! スキル的にも、おめーの双剣にピッタリだと思うぞ!!」

ネルギガンテの素材から作るオーグ系の防具は、かなりステキなスキルを帯びている。オーグαシリーズで全身を覆うと、

攻撃:Lv4
挑戦者:Lv4
スタミナ急速回復:Lv3
渾身:Lv3
滅尽龍の飢餓(加速再生)

が発動。手数武器である双剣の攻撃力をプラスしつつ、体力やスタミナにも気を配ってくれているスキル構成である。パピメルに比べたら防御力も圧倒的なので、もしもオーグシリーズを揃えられたらそのまま終盤まで突き進めるに違いない。

「問題は、そのネルなんちゃらにわしが対抗できるかどうかなんだが……」

一瞬、不安げなことをいうたっちーに、俺は“自分の尺度から”助言を行って、彼女を送り出した。

「へーきへーき!! ネルギガンテは、速くてパワフルで多彩で、時に堅いくらいのモンスターや! 攻撃を喰らわなけりゃ無問題!!!」

そして、10分後。

「あ、あの……。まったく歯が立たたず、一瞬で3オチさせられたんですけど……………」

俺は、「うんうん」と頷いた。

「そりゃそうだろww 最初からサクサク狩れるわけがないwww まずは、ヤツの動きに慣れることだよ。それまで、くり返しやるしかない!!」

たっちーは「なるほど、そうだな!!」と言って、再び龍結晶の地へ旅立っていった。

そして、15分後。

「あ、あ、あの…………。ど、どうしても攻撃を喰らってしまうのですが…………。しかも怒り状態で殴られると、ほぼ1発で昇天を…………」

俺は眉間に皺を寄せた。

「甘い!!! 甘すぎる!!! バニラアイスに練乳とハチミツと黒蜜をかけて、あんこで包んで食べるほど甘すぎや!! まだまだこれからだ!! 何度でも挑め!!」

叱咤されたたっちーは、「おっしゃ!! もう1回や!!」と言って、再びネルギガンテの元に向かっていった。

こんなやり取りを何度かくり返しているうちに、たっちーがクエストから戻るまでの時間が長くなっていった。報告も、

「やられた……けど、初めて尻尾が斬れた!」

「やられた……けど、今度は角を折れた!」

なんてものになり、ついには、

「3オチしたが……ついに脚を引きずっているのを見た!!」

「寝るところまで追い詰めたで!!!!」

と、革新的なことに……! 俺は驚きながらも深く感動し、

「よし!! つぎだ!! あらゆるアイテムを総動員して、ネルギガンテを狩ってくるんだ!!」

そう発破をかけて、たっちーを送り出したのであった。

そして、15分後……!

「お、おい。まだ1回もやられてないのに……もうネルギガンテが寝てるよ!!!!」

つ、ついにこのときが……! 俺は自分のことのように、たっちーの快挙を喜んだ。そして、言う。

「爆弾でもなんでも使って、狩ってやりな!!」

「おっしゃ!! まかせろ!!!!」

そう気合を入れて、たっちーはネルギガンテの元に走ったのだが……。

「あ、あれ……? 1オチしてもうた」

とたっちー。俺は「ありゃw」と軽く笑いながら、「まだ大丈夫や! 余裕余裕!」と檄を飛ばした。

しかし……。

「え……。な、なんでや……。2オチしてもうた……」

一気に、雲行きが怪しくなってきた。さすがに心配になり、「だ、大丈夫?」と声を掛けると、たっちーは気丈にも、

「いや、平気や! まだアイテムを残してある!! つぎで終わらせてくる!!」

こんなことを言って飛び出していったが……!

「えええええええ!!? な、なんで!!!? や、やられてもうた!!! どうなってんねん!!!>< 確実に捕まえたと思ったのにいいいいい!!!!><」

俺は聞き逃さなかった。

な、なんだよ、“捕まえる”って……。

俺は(ま、まさかな)と震えながら、たっちーに尋ねる。

「い、いま“捕まえた”って聞こえたんだが……おめー、ネルギガンテに何をしようとしたの……?」

するとたっちー、怒りと悲しみに打ちひしがれながら、つぎのように答えたではないか!

「何って……シビレ罠と落とし穴に決まってるやろ! 1オチしたあと、“あかん。もう捕まえちゃお”と思ってシビレ罠を使ったんだけど、なんかうまくいかなくて2オチ。後がなくなったので、“もう落とし穴に落として捕まえるしかない!”って、ヤツの足元に落とし穴を作ったのに、それでもダメで……! どうなってんねん!! 確実に罠に乗っかってたのに!! バグか!? バグなのか!!?」

俺はしばしのあいだハニワのような顔になり、口から魂が抜けかけたが、それでもどうにか声を絞り出した。

「な、なに言ってんだ!! ネルギガンテ、古龍だから捕まえられねーんだよ!!www もったいねええええ!!www」

するとたっちー、ここぞとばかりにネルギガンテ化。

「はぁぁぁぁああああ!!!? そんなん知らんわ!!! き、キサマ、なんで教えなかった!!! ぜんぜんいけたのに!!! キサマのせいや!!!>< 代わりに狩って来いやぁぁあああ!!!><」

……なんてむなしい狩猟もいい練習になったのか、ついにたっちーにセカンドウインドが吹いた。以降、すっかりネルギガンテをカモにするようになり、ソロ双剣で狩りまくって、晴れてオーグα装備を完成させたのでしたw

おしまい。

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