【逆鱗日和ワールド】第6回:地図を読めない男たち

2018-02-02 13:52 投稿

ナビに頼りすぎた結果

いままでのシリーズ作品とはガラリと変わった作りとなった『モンスターハンター:ワールド』。もっとも目立つ部分で手が加えられたのは“フィールド”ではなかろうか。

“モンハンのセオリー”でもあったエリアチェンジがなくなり、フィールドはすべて地続きに。“高さの奥行き”がめちゃめちゃ深まり、横だけでなく縦にも大きな世界が形作られた。いままでのソレが“平野での戦い”と思えるくらいに。

そこで導入されたのが、ハンターのナビ役を務めてくれる“導蟲(しるべむし)”だ。モンスターを追跡してくれるのはもちろんのこと、リアルゆえに背景に溶け込みがちな採取場所を教えてくれたり、つかまれるツタの位置も示してくれたりする。あまりにも有能なため、採取場所やモンスターの痕跡が多い場所だと、

「さあ散れ! ちりぢりになってピカピカ光って、怪しい場所を全部ハンターさんに教えてやるんだ!!」

って感じに律儀に注目ポイントを教えてくれようとする。そのアピールはまるで、いいことをして褒めてもらおうとする飼い犬のそれに通じ、結果、

「ご主人! こっちこっち!」

「いやまずは薬草を! これを先に!」

「鉱石のほうが魅力的ですよ!」

「こっち!!」

「こっち!!」

「うわああああ!!! 痕跡どれだぁぁあああ!!!」

なんてことにしょっちゅうなるので、フィールドでは努めて冷静でありたいものである。

この導蟲に、俺も目黒もβテストのときから頼りっぱなしだった。広大で奥行のあるフィールドでも、導蟲の導き通りに進めば目当てのモンスターに出会うことができ、順当に狩猟することができたから。でも次第に麻痺し、導蟲に頼っていることが頭から抜けたのだろう。くり返しくり返し古代樹の森に通ううち、βテストの期間中に、

「このフィールド、ほぼほぼ覚えたね」(俺)

「ですね。導蟲がいなくても大丈夫かと」(目黒)

なんて鼻息荒く語るようになった。結果、自信満々で本サービスのスタートを迎えることになったのである。

そして。

ソフトが発売され、目黒とふたりで古代樹の森にクエストに出掛けた。初期も初期のクエストだったが(ドスジャグラス2頭だったかな)、我々はモンスターの討伐はもとより、勝手知ったるフィールドを自由自在に駆け回って採取もガンガン行おう……なんて話し合っていたのである。

しかし5分ほどフィールドをさまよったのち、我々は妙な違和感を覚えた。その違和感を、そのまま俺は口にする。

「おっかしいな……。あれほど完璧に覚えたと思っていた古代樹の森だけど……ぜんぜん地図が頭に入っていないんですが……!w」

すると目黒が、おずおずと同調した。

「え!! じつは俺もさっきから、自分がどこにいるのかわからなくなっていたんですが……!ww ……どこだここは!!」

そうなのだ。

完全にマップを覚えたつもりになっていたが、本当に“つもり”だけで、俺たちは古代樹の森で迷子になっていたのである。深い森を彷徨いながら、目黒が震えた声を出した。

「俺、毎週のようにクルマで近所のショッピングモールに行くんです。でも……毎回ナビを見て行っているためか、いまだに道を覚えていないんです……!! もう500回くらい通っているのに……!

俺も小声で白状した。

「じ、じつは俺も……東京に出てきて25年になるけど、いまだに新宿駅がどうなってるのかわからないんだが……! ことあるごとに館内マップとかナビを見ないと、目的の場所にたどり着けない……!」

我々は同時にうなずき、つぎの結論に達した。

「俺ら……ナビ(導蟲)に頼りすぎて、地図を読めなくなってるおっさんだぁぁああ!!」

けっきょく、ドスジャグラスを見つけることにも苦労し、無駄に時間を浪費したのち、ヘトヘトになって拠点に戻ってきた。そして俺たちは口々に、

「文明の利器に頼りすぎたらアカンな……」(俺)

「はい……。ちゃんと道を覚えないとダメですね……」(目黒)

と言い合い、“フィールドを頭に入れること”を誓い合ったのだった。

……って、それ基本中の基本だろ!!w

と言わないで。

おしまい。

第5回第7回
大塚角満(おおつか・かどまん)…… 作家、ゲームエッセイスト。ゲームのプレイ日記を書くことをライフワークとしており、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど著書多数。現在、ファミ通のフェロー(特別編集員)を務める。

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