【東京サンドボックス】VRゲーム開発者が語る日本のインディーVRゲームを世界に広める方法とは?
2017-05-12 01:48 投稿
インディーVRゲームを手掛けるゲスト3名がVRトークをくり広げる
2017年5月10日~14日にかけて開催されている、インディーゲームの複合イベント“TOKYO SANDBOX 2017(東京サンドボックス 2017)”。
ゲーム会社やゲーム新興企業と国際的な投資家やパブリッシャ―を結びつける同イベントでは、東京インディーフェスを始めとした複数のゲームイベントが行われる。
本記事では、5月11日にTKPガーデンシティ渋谷で実施された、インディーゲーム開発者向けの講演“PUSH(プッシュ)”の中から、“ユニークであれ ― 日本のインディーVRゲームを世界に広める方法”の模様をお届けする。
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同カンファレンスの登壇者は、WANDVの近藤善洋氏(VR事業部責任者)、桜花一門の高橋建滋氏(代表取締役)、そしてサークルハイドレンジャの野生の男氏の3名。
講演では、会場にいる受講者からの質問にゲスト3名が答えていく形式で進行。最初にあがったのは、“VRコンテンツを作るための研究と開発にはどれくらいの時間が必要か?”という質問だ。
高橋氏曰く「研究のためには半年~1年は必要です」とのことで、そこから製品にするためには「さらに1年は欲しい」と加えた。VRコンテンツン研究・開発には、最低でもおよそ1年半は時間が必要だとした。
一方、野生の男氏は、「この会場にいる方たちは3~4年はVRをやっている人だと思いますが」と切り出し、「これはほかの分野でも変わらないと思うのですが、1年、2年で商業向けのVRコンテンツが作れるほどノウハウが貯まるかと言うと、能力が高い人じゃないと難しい」(野生の男)と回答。VRコンテンツを作るためにはノウハウの蓄積が重要だとした。
両氏の回答を聞いて「僕もほぼ同感です」と近藤氏。「いまは皆さんもVRの知見がたまっていたり、ゲームエンジンもVRに最適化されていますが、それでも1年、2年は時間が必要だと思う」と答えた。
続いての質問は、“いまインディーのデベロッパーとして、取り組んでみたいテーマは?”。
「ひとつ考えているのは、いまゲームセンターに置かれるようなVRソフトとはちょっと違うんですが、やり込み要素のあるゲームセンターのVRソフト」と答えたのは高橋氏。
以前、同氏が中国から来た人と話をしたときに、「中国でもVRゲームセンターのようなものがあるけれど、一度体験したら2回目以降やらないコンテンツしかない。タイムアタックやスコアアタックなど、何度もやってみたいゲームがあればいい」という意見を耳にした。それを聞いた高橋氏は、「たとえば昔日本のゲームセンターにあった『ドルアーガの塔』や『スペースハリアー』、『スペースインベーダー』のように、コンテンツ自体短くても、何度も挑戦したくなるVRゲームというものを置けないか」という考えを持つようになったと明かした。
逆に野生の男氏は「いまあるものや、これから出るVRデバイスで作りたいと思っているものが現状は思いつかない」そうだ。「基本的には自分のやりたいと思うテーマをゲームにする」のがスタンスだという同氏。「つぎに作るゲームは、VRじゃないものを考えています」としながらも「VRの次回作についてはやりたいテーマが思いついたら作ると思う」とした。
自身が手掛けるVRゲーム『SEIYA』で取り組んでみたいことがあるという近藤氏。「『SEIYA』はVRリズムアクションゲームでして、手を使って歌詞や星をキャッチして音楽を奏でる作品です。ただ、結局ヘッドマウントディスプレイなので全年齢対応じゃない。そこをちょっと、あるものを使っておもしろいことをやろうかなといま考えています」と、内容はまだ秘密ながらもアイデアを持っている様子だった。
日本のインディーVRゲームを世界に広める方法は?
さて、ここで講演のタイトルにもなっている“日本のインディーVRゲームを世界に広める方法”について質問が。
日本のインディーVRゲームを世界に広める方法について、インディーゲームはそもそも見てもらう、発見してもらうことが重要。そもそも日本のVRゲームを世界に見てもらための方法とは何なのか?
「ロサンゼルスVRに出展したり、OculusのAlpha版チャンネルで体験版を出したり、ホームページを作るなどしているが、爆発的に拡散しているかと言えばそうではない」(高橋)、「いろいろなイベントに出展して、いろいろなメディアで記事にしてもらっているけど、それだけだと広がらない。逆にイベントに出したり、メディアに取り上げられても一般層にまで届かない」(野生の男)、「正解ってたぶんないと思うんです。98%は運」(近藤)と、3者ともに日本のインディーを世界に広めるのは難しいという。
それでも高橋氏は「もし、つぎに打てる手があるとすれば、護送船団方式のような方法。ロサンゼルスVRのとき、Mogura VRというところが日本ハウスを取りまとめて出展したみたいに、全員で固まって行ってみるのはどうか」とひとつの可能性を提案。
「一般層に広がらない」と語った野生の男氏は、一般層がどこを見ているのかという点に注目し、「インフルエンサー(世間に対して影響力が大きい人物)を見ていることが多い」と説明。続けて、「例えば人気の高い海外ユーチューバーにゲーム動画を上げてもらうと、再生数が100万単位になったりする。そういったクラスの人たちに取り上げてもらうって大事なことかなと思います」と述べ、ゲームをおもしろくするなどの地道な活動は当たり前だが、爆発的に広めるには運が大事だと語った。
その“運の要素”については近藤氏も同様の考えのようで、「ピコ太郎がジャスティン・ビーバーにリツイートされていなかったら、彼は世界に知られていなかったかもしれない。野生の男氏が言ったとおり、有名な人にリーチするような、あるいはたまたま拾ってくれて大ヒットする。運と言ってしまえばそれまでですが、やはりそこの部分はすごく重要だと思う」とした。
最後に、世界に拡散されたり、取り上げられるための仕組みについて、3者は何か考えがあるのだろうか?
近藤氏は「あえて取り上げられやすいようにしようとは考えていないです。まずは自分がやりたいゲームを作るのを第一に考えている」とのことだが、野生の男氏、高橋氏はそれぞれつぎのような方法を語っていた。
「展示する作品のバージョンを、とりあえず短い時間の中で最大限に楽しめるようにすることをコンセプトに置いています。その結果、コンテンスなどで受賞しやすくなるかなと思っています」(野生の男)
「拡散しやすいという意味で、ひとつ入れているものがあります。それがローカルマルチプレイモード。これはヘッドマウントディスプレイを被っている人と、モニターを見ている人が同じゲームで遊べるというモードです。これによって、友だちが家に遊びに来たときに選ばれやすいVRゲームというものを目指しています。そうすることで、遊びに来た友だちが楽しいと思って買いたくなる、という連鎖を狙っています」(高橋)
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