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【東京サンドボックス】モバイルからVR開発に転身した『キャンディークラッシュ』の生みの親が自身の経験を語る

2017-05-12 00:35 投稿

モバイルの経験を活かして

2017年5月10日~14日に都内各所で開催されているインディーゲームの複合イベント“TOKYO SANDBOX 2017(東京サンドボックス 2017)”。5月10日からはゲストスピーカーが登壇し、さまざまな講演が聴ける“プッシュ”が開催されている。

開催2日目となる11日は、この“プッシュ”にトミー・パーム氏が登壇し、VRゲームを開発してきたこの2年間を振り返った。パーム氏は『キャンディークラッシュ』の生みの親であり、現在はVRコンテンツを開発するスウェーデンのクリエイター集団、レゾリューションゲームスのCEOを務めている。

同社はOculus StoreのGear VR向けフィッシングゲーム『Bait!』や、GoogleのVRプラットフォーム“Daydream”向けに、VRミニゲームコレクション『Wonderglade』などをリリースしている。

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いまはまさにコミュニケーションの革命期

トミー・パーム氏は、もともと“人間のコミュニケーション”というものに強く興味を持っていたと言う。

文字の起源と言われる1万年前や、活版技術が生まれた1400年代、いまから30年ほど前から出たインターネット、そしてスマホ……そういった各時代におこったコミュニケーションの革命と比べても、VRとARの出現は、そのすべてを覆すような大きなものになるだろうと語った。

初めて自身がVRを体験したときから、そう確信しているのだと彼は言う。

パーム氏が思うゲーム開発のおもしろいところは、人間みなひとりひとりにそれぞれ専門分野があり、他者を補いながら、ひとつの目的に向かうことで、自分ひとりでは成し遂げられない大きなものを作っていけるとことだと言う。

「人間として、ゲームの開発は複雑で、おもしろい」と氏は語った。

もともとゲームが好きだったパーム氏。当時の携帯電話(いわゆる“ガラケー”)のカジュアルゲームを見て、「ゲームをポケットの中に入れて持ち遊べる時代がくる」と悟り、当時通っていた学校を辞めてゲームを作ると決めたという。

「そのときは知りませんでしたが、モバイルがお金になるまで時間がかかった」

iPhoneが台頭するまで、モバイルゲームはお金にならなかったという。その時点でパーム氏は10年間、お金にならないゲームを作ってきたのだ、と語った。

しかし、その10年間でさまざまなことを勉強し、学ぶことができたことで、スマホの時代になって『キャンディークラッシュ』というヒットタイトルを作ることができたのだと言う。そして15年間モバイルで培った経験を活かし、VRの開発に参入したのだ。そんなモバイルとVRを経験した氏が、両者の違いを語った。

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▲モバイルの経験を活かし、同社がリリースしたVRミニゲーム『Wonderglade』

≪モバイルの特徴≫

1、アクセスのよさ
2、理解しやすい
3、基本無料で多くの人に広がっていく

パーム氏は、自分の作ったゲームを親などに見せていたが、その中で『キャンディークラッシュ』だけは、親もプレイしたという。それを見て「ゲームは世代を問わず愛されるものだ」と確信したのだとか。また、モバイルを語るうえでソーシャルの要素も欠かせない。

人間は基本的には社交的な生き物なので、他の人と遊ぶことは楽しいと感じる。従って、ゲームはほかのひとと遊ぶともっと楽しい、という考えがが根本にある。

そう言った特徴を述べたうえで、「だが、現在のモバイルは競争は激しい。インディーでも出せないことはないが、大手パブリッシャーのゲームが増えてきたので、埋もれてしまう可能性がある」というマイナスの側面にも触れた。

≪VRの特徴≫

・五感を生かす
・2回目の体験からが勝負

スマホが指先の直感的な操作が求められたのに対し、VRは視覚、聴覚などの五感を楽しませるものが求められるという。

ただ、初めてVRを経験した人間はみな感動し、興奮するのだが、2回目に経験した人は、もう1回目の体験で得た感動は薄れてしまう。さらに、そこでVR酔いなどをおこしてしまうと、人間の脳は、一度気持ちが悪いと感じたものは避けようとする傾向にあるため、深刻な“VR離れ”を起こす可能性も。

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▲だいたい初めて体験した時、人間は大きく口を開け「ワーオ!」と叫び、近くに見えるものに手を伸ばそうとするのだという。確かにそうだと筆者も納得した。

実際、VRのコンテンツを市場に出すためには、VR酔いなどが起こらないかなど、一定のクオリティ基準に達しているかの確認が行われる。

パーム氏は、品質にこだわる必要があることを述べるとともに「インディーが開発するうえで、モバイル開発者のように誰でもゲームを作ることができるといい」との思いを語った。

その後、パーム氏自身がVRに携わったこの2年間で、VRの品質を保つためのテクニックもいくつか紹介された。

VRの品質を保つために

 

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・視界は360度よりも120度のもののほうがいい
VRは現状、人に対して新たな習慣を根付かせたというよりは、いままでテレビを見ていたり、コンシューマーゲームをプレイしていた時間に、VRもそれらの選択肢に入るようになった、という捉えかたが正しい。

プレイヤーはテレビを見るようにしてVRをプレイするため、家でソファなどに座ってプレイする際、視界を360度にしても、背後まで確認しながら遊ぶことがあまり想定されないからだ。

・暗く映るほうが綺麗に見える
人の脳は暗い部屋にいるときのほうが、見たものを素直に認識する。よって、重要なシチュエーションなどは暗くするといいのだという。

・視点は1人称の視点より3人称の視点のほうがいい
これは、VR酔いを避けるための方法だと言う。

パーム氏個人的には1人称視点のほうが、“自分がその世界に入り込んでいる感覚”を味わうことができるので好ましいと述べたが、現状はVR酔いを起こしにくい3人称の目線からの視点がいいのだという。

氏は、「モバイルとVRは完全に別物」と結論付け、現状のハードに関しても、「まだ1世代目のハードのため、改善の余地がある」と語った。

ハード・ソフトともに改善の余地あり

たとえば、ヘッドギアの重みや、肌に触れる装着部分などの問題で、現状は、長時間VRで遊んでいると疲れてしまう。そのため、開発しているコンテンツも1プレイ20分~30分を目安にしているのだとか。

もちろん、1プレイが長いゲームのほうが世界観を楽しめるため、プレイ時間が長いゲームも開発したいところだが、それはまだ先のことだとパーム氏はいう。

そういった問題から、“買ったけど押し入れにいれたまま”という可能性もあるのでは、とパーム氏はコメントした。

もちろんハードにも改善の余地があるが、いまのところVRを手に入れなければならない必要がない、というもの普及を遅らせている原因となっている。「私たちディベロッパーは、VRを使いたいという気持ちを沸かせるようなゲームを作らないといけない」のだと言う。

また、マネタイズの面に関しても、いまはまだそういう理由でユーザー数が少ないため、広告を入れるといったマネタイズは期待できないだろうと語った。

しかし、モバイルとVRは別物ではあるものの、ゲーム作りでいえば根本は同じで、いちばんいいゲームデザインというのは、いかによく見せるために要素を足すのではなく、“これ以上減らすものがない”状態のものだという。

たとえば、『スーパーマリオブラザーズ』を作るのであれば、まずマリオが“走る”、“ジャンプする”ことがおもしろくなければならない。また、「Aボタンが~で」など、説明なしでもプレイできるような、直感的に操作できるデザインであることが問われる。

VRが普及するキラーコンテンツとなるゲームのヒントは、ここにあるかもしれない。

VRはまだまだ発展途上

ハードの問題に関しては「どんなコンソールでも、何年か経ってからのほうが評価される」と、好意的にとらえるパーム氏。

VRに対しては「ニンテンドースイッチのように、どんな年齢の方でも遊べるような時代がくるはず」と語り、VRの開発を検討しているインディークリエイターへのコメントを求められると、「VRはモバイルに比べて競争は低いものの、お金にはならない。新しいものへの情熱があるかどうかですね」と述べた。

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▲いまのVRというのは、携帯電話の歴史で言うとこのあたり。まだまだ発展途上と言える。モバイルも進化したように、VRも進化をするという意味では、共通するところがあるのかもしれない。

 

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