『カオスセンチュリオン』日本語版配信、苦難の3年をオリフラム代表池田氏に訊く
2017-04-18 17:00 投稿
オリフラムの3年を振り返る
『カオスセンチュリオン』、オリフラム、池田隆児、これらのキーワードに覚えがある読者はいるのではないだろうか。
2014年2月、元スクウェア・エニックスやカプコンのメンバーたちが集まり新設したひとつの開発会社。それがオリフラムであり、その代表人物がこれまで数々の名作に携わってきた池田氏。そして、彼らが手掛けた1作目となるスマホ向けアプリが『カオスセンチュリオン』である。
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元スクエニやカプコンのメンバーが新設した気鋭の開発集団オリフラムを直撃 |
多くの業界人、ファンたちが密かに注目し続けてきた作品が、北米、欧州、アジアなどで配信スタート。そして、いよいよこの4月に日本語版の配信が決定した。
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会社設立から約3年。本リリースにいたるまで決して短くはない月日のあいだ、いったいどのような苦難があったのだろうか。代表の池田氏に話を訊いた。
profile オリフラム代表・池田隆児氏(文中は池田)。スクウェア・エニックスで『キングダム ハーツ』シリーズや『ディシディア ファイナルファンタジー』シリーズにプログラマーとして参加。その後、ディー・エヌ・エーに移籍。世界的ヒットとなった『Blood Brothers』(ブラッドブラザーズ)やその続編の立ち上げの中心人物。 |
起業からリリースまでの苦難
──もう2年以上前ですよね、『カオスセンチュリオン』が発表されたのって。
池田 本当に長らくお待たせしてしまって申し訳ない気持ちです。期待してくれていた皆さまも忘れてしまったくらいだと思いますが、そのあいだに本当にさまざまなことがあって。
──そうですよね。まずはそのあたりをお聞かせいただけますか?
池田 どこからどこまでお話ししていいのかわからないくらいですが(笑)──。
と、話を始めた池田氏。記事にできないようなことまで赤裸々に語ってくれたその話の始まりは2013年の暮。「自分が作りたいゲームを個人で作る」ためディー・エヌ・エーを辞める決意をした池田氏は、このときある人物に出会ったという。そこで「君は絶対に会社をやったほうがいい。よかったら手伝う」という話に、もともと個人でやっていくつもりだった池田氏の起業熱が一気に高まることに。
池田 それで人を集めたんですよ。僕がスクウェア・エニックスでやっていたときのチームメンバーとか、いままでいっしょにやってきて散り散りになった人たちですよね。みんなやっぱり、大きい企業で同じシリーズをずっと作り続けることに悶々としていて。それで僕が代表取締役を勤めて、ほかにクライアントプログラマー、サーバーエンジニア、3Dグラフィッカー、イラストレーターと十分ゲームを作れる役者が集まったんです。
人材を集め、機材を揃え、荻窪の閑静な住宅街に一軒家のオフィスも借りた。準備は整った、かに思えた。しかし、ここにきて資本政策で折り合いがつかず、オリフラムはいきなりの危機を迎えてしまう。
池田 みんなの給料も払えない。でも、みんなは「給料なんていいよ」って。「お金を引っ張ってくるのがお前の仕事だからがんばってくれよ」と言うんですよ。
それから、2013年から2014年の年末年始にかけて、池田氏は資金調達のために奔走。投資家やベンチャーキャピタルを相手に、とにかく会いまくる。自身で勉強もしながら交渉を続け、なんとか話をまとめたと言う。
池田 それでも、最初に受けた投資だけではゲームを完成させることが絶対的に不可能で。それからもいろいろな会社とヒリヒリするような交渉を続けていくことになりました。
そんなオリフラムに対して、コロプラが出資を行ったとのニュースが報じられたのは2015年2月のこと。
元スクエニやカプコンメンバー新設のオリフラムに、コロプラが出資 |
これでようやく開発に注力できる環境が整ったかと思われたが……。
池田 コロプラさんから出資を受ける前後あたりで、開発者どうし、クリエイターならではの衝突があって。原因は本当に些細なことで。一軒家という閉鎖された空間でゲームを作ることだったり、共同生活というものに疲弊してしまったところもあったのだと思います。いまのオフィスに引っ越すまでに創業メンバーも何人かオリフラムを去ってしまいました。
──チームづくりは難しい問題ですよね。
池田 そうですね。そこでいろいろ学びましたね。でも本当に難しいのってチームづくりではなく、ゲームづくりだと実感しています。ゲーム開発、チームビルディング、ファイナンスに関わってきて、ゲーム開発がやっぱりいちばん難しい。いまだに思った通りに作れないですよ。会社を出たとしても、自分の本当にやりたいことはそんな簡単にはできないなと。
──いまは何人くらいの従業員がいるのですか?
池田 社員が13人ほどですね。開発の人数としては10人以下です。だいたい平均して6人か7人くらいで作っています。みんなベテランばかりですよ(笑)。
オリフラム設立の中心メンバーで、元カプコン、スクウェア・エニックス、ディー・エヌ・エーで数々の作品を手掛けてきた岩尾賢一氏は、残念ながらすでにオリフラムを退社。ただ、「彼にしかできない独特の部分は色濃く残っている」と池田氏は言う。
──振り返ると、勉強の3年間だったと。
池田 結果的に、すごく時間とお金をかけてしまいました。だからこそ、『カオスセンチュリオン』で成功して、しっかりと恩に報いなければいけません。2016年6月のテストリリースや11月の全世界リリースでの反応を受けて、いま大きな改善も進めているところです。
感情をえぐる作品づくりへ
──海外で配信されて、反響ってどうですか?
池田 とくにApp Storeでフィーチャーされたときはすごかったですね。びっくりするくらいユーザー数が増えて、アツい意見も多数いただきました。それから長く続けてくれている人もいて、継続率もユーザー数も悪くないんです。しかし、課金率が低い。
──僕らにとってはいいゲームですけどね(笑)。
池田 われわれはまずガチャはやらないと決めていたんですよ。そのロックな決断を下したがゆえに、そうした数字に関しては随分悩んだりしました。僕もガチャはすごくするし、ガチャのあるゲームも作っていたし、ガチャに対しては肯定も否定もしないのですが、世界でもガチャが標準装備の中、それなしで結果を出すのはなかなか難しいですね。
──それで何か考えの変化って生まれましたか?
池田 もっと感情をえぐる設計に変えていくべきだと感じていますね。たとえば、ゲームを通じて誹謗、中傷、暴力とか、そういうものが起こってしまうのがMAXなエグさだとすると、ゲーセンの格ゲーで対戦に負けて台を殴ってしまうくらいな、そのくらいのエグさは必要なのかもしれないと。
──そういう感情が起こらないとダメだと。
池田 そうですね。「グラフィックすごくいい」、「遊べるよね」、「いいゲームだよね」って言っても、みんなさらりとヤメてしまう時代なんですよ。そうではなくて、「このゲームムカつく」、「ホントクソゲー」、「なんでこんなゲームやってんだ」と、それでもアイツには負けたくないっていうゲームを作るべきなのかなといまは思っていますね。
──確かに、僕らも長く続けているゲームには何かしら文句言ってますね。
池田 僕が思うゲームとのいちばんいい距離感というのは、そのゲームを罵っているんだけど、すごくプレイしてしまっている状態で。かつ、それをほかのプレイヤーたちと共有できているのがベストじゃないかなと。以前、ディー・エヌ・エーに入るときによく自分で言っていた「ゲームはつまみ」なんだって、それを取り巻く人たちがちゃんとつまみで酒を飲めるようにならないといけないと、あらためてそう思っています。
──では最後に、何かメッセージがあれば!
池田 ありきたりのことではなく本音を言うと、僕はスマートフォン向けゲームのいまの流れはちょっとよくないと思っていて。スマートフォン、コンソールを含めた日本のゲーム産業の生態系がくるってしまっているような、そんな肌感でいます。ゲームの歴史の中で特異な時代というか、この異様な状態は楽しいし、楽しむべきだとも思いますが、一方で、僕は自分なりにどうにか変えていきたいとも思っています。賛同してくれる人はぜひ声をかけてください。……て、これ誰に対して言っているんだろう(笑)。
──業界に対するメッセージとしてとらえておきましょうか(笑)。ありがとうございました!
【新作】注目のストラテジーゲーム『カオスセンチュリオン』iOS版が登場! 兵器VS兵器のアツい戦いを見届けよ 注目のストラテジーゲーム『カオスセンチュリオン』iOS版がついに登場! |
▼『カオスセンチュリオン』については動画で紹介
オリフラム新作の話
『カオスセンチュリオン』日本語版の配信の傍ら、池田氏はすでに新作への着手も始めていると言う。
池田 焦らして話したいところなんですけど、ロケーションゲームですね。
ロケーションゲーム。いわゆる位置ゲーと呼ばれるようなジャンルのゲームのようだ。スマホ向けタイトルでは『Ingress』や『ポケモンGO』が代表格。かく言う池田氏も両タイトルとも超絶コアプレイヤー級にやり込んでいるという話も聞かせてくれた。
さらに、その場で新作のイメージ画像まで見せてくれた。それがこちら!
あわせて、以下にいくつか要点をまとめておこう。
・実際の地図上(3Dマップ)でゲームをする
・建物や道の情報も使う
・地図上にレイドボスやNPCも出現
・地形を利用してリアルタイムで戦う
・家にいながらプレイ可能
・現地でしかできない行動もある
少し聞いた限りでは、自分の拠点を中心に防壁やトラップを作り、隣町に攻め込んだり、ときには協力したり、といったゲームである印象。こちらの続報にも期待したい。
元スクエニやカプコンメンバー新設のオリフラムに、コロプラが出資 元スクエニやカプコンのメンバーが新設した気鋭の開発集団オリフラムを直撃 |
カオスセンチュリオン
- ジャンル
- リアルタイムストラテジー
- メーカー
- オリフラム
- 公式サイト
- http://oriflamme.co.jp/?lang=ja
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料
- 対応機種
- iOS
- コピーライト
- (C) 2016 ORIFLAMME Inc.
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