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『シャドウバース』開発者が語るTCGにおけるAI構築の秘訣とは?【CEDEC 2016】

2016-08-24 23:50 投稿

AIのノウハウ共有に意味が生まれ始めた

2016年8月24日~26日にかけてパシフィコ横浜で開催されている、国内最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス”CEDEC 2016″。

同カンファレンスの初日、サイゲームス『シャドウバース』に関するセッション“ShadowverseのゲームデザインにおけるAIの活用事例、及び、モバイルTCGのための高速柔軟な思考エンジンについて”が行われた。

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セッションを行ったのは、サイゲームスでリサーチャー、およびゲームAI開発を行っている佐藤勝彦氏。

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氏は「ゲームのAIというのはタイトルの個性が出やすいものなので、あまりノウハウが共有されず、属人化しやすい傾向にある」と考え、コンテンツが多様化、複雑化しているいまこそ、ゲームAIに関するノウハウ共有に意味があるのだと語る。

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TCGにおけるAIの存在意義

まずこのセッションタイトルを見て、「対人戦が主眼に置かれているTCGにおいて、AIはそこまで重要な要素ではないのでは?」と思う人もいることだろう。

しかし、その意見は正しいわけではないようだ。

佐藤氏は「TCGにおいてのAIは、初心者へデッキ編成の例示を教唆してくれたり、ユーザーが作ったオリジナルデッキの練習台ともなるので、重要な存在です」と、その重要性を説いている。

たしかに言われてみればその通り。TCGでも、AIにできることがしっかり存在しているのだ。

佐藤氏は続けて語る。

「しかし、TCGというゲームジャンルは、カードの追加や流行の変化による環境の変化がつきものなので、AIもこれに対応しなくてはなりません」

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『シャドウバース』のリリースは今年の6月。まだカードパックの追加もされていないのに、流行の戦術は何度も変化している。

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▲2016年9月末には、新カードパックも追加。ここでも環境追従性が重要になってくる。

なぜ『シャドウバース』のAIは、新しい戦術を正しく評価して感情演出や対策とも思える動きをしてこられるのだろうか?

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本作のAIには、カードのポテンシャルを状況別に捉えて盤面をスコアリングし、戦略のプロットを組み立てるというシステムが備わっているという。

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これを利用することで、AIが盤面の状況を人間らしく補足することができるのだそうだ。また、このシステムを利用すれば、AIがCPUにかける負荷も減ることも加えて語られた。

たとえば、お互いが盤面にフォロワーを5体ずつ展開させていた場合、どのカードをどういう順番で攻撃するかという組み合わせは、90万通りを超える。

これを順繰りに計算していくと、非常に大きなリソースを割かれることになるが、プロット(行動計画)を組むような作りにしておけば、そこまでリソースを割かずに済むようになるという。

しかし、TCGにはカードのドローという大きな不確定要素が紛れ込んでいる。『シャドウバース』は、e-Sportsを意識しており、カードのドロー操作やデッキの積み込みを設計時点から禁止している。これでは、不確定要素にプロットが崩され、AIがAIとして働けなくなってしまう恐れがある。

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佐藤氏はこれを回避するために、プロットだけでなく、サブプロットも戦略として保持するようにプログラム。これにより、AIでも状況に合わせたフレキシブルな動きをさせているそうだ。

合理的に、かつ自然なコントロールを

これだけではなく、『シャドウバース』には限定合理性という思考を用いて、自然な動きを演出するようプログラムされているとも語られた。

限定合理性というのは、本来経済学で用いられる用語で“人間は、効用を最大化するために合理的な行動を取ろうとするが、人間の認識能力には限界があるため、人間は限られた範囲での合理性しか持ち得ず、人間の意思決定はその限定的な合理性に基づいて行われる”という考えのこと。

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『シャドウバース』のAIは、プレイヤー視点から見たときに、システムならではの不自然な行動を取ることを避けるための処理として、この限定合理性の構築を行ったという。

たとえば、手元に通常のカードと、カードを強化する能力を持ったカードがあった場合、普通ならば通常のカードを出した後に特殊能力を持ったカードを場に出す。

AIにそういった選択をさせること自体は難しくないが、AIが合理的に淡々と手順を進めていった場合、当たり前だがかなりの強者となる。

そして、TCGにおけるAIに“初心者への教唆”という役割が持たされている以上、あまりに強すぎるAIはその役割を果たせなくなってしまうことは、自明だろう。だからといって、不自然な、あからさまな手加減はプレイヤーの気持ちを萎えさせる要因になってしまう。

これから逃れるために、『シャドウバース』のAIは限定合理性を用いて、プレイヤーに違和感を持たせることなく遊べるような作りにし、さらに難易度のコントロールをも達成しているのだという。

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高度なAIというと、ついついアクションゲームやRPGの敵キャラクターを想像してしまいがちだが、TCGのAI、そして『シャドウバース』のAIは想像以上に高度な進化を遂げていることが本セッションで確認できた。

「VRで大事なのは自然な動きをするAIだ」とも語られ始めている昨今、こういったAIのノウハウ共有は業界に大きな影響をもたらすことだろう。サイゲームスの今後の動向にも注目したい。

⇒『シャドウバース』攻略まとめページ

シャドウバース

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
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ジャンルカードゲーム
メーカーサイゲームス
公式サイトhttps://shadowverse.jp/
配信日配信中
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