『ドラクエ』を生んだ堀井雄二氏が各シリーズを振り返る!『XI』の開発状況も明らかに【CEDEC 2016】

2016-08-27 09:30 投稿

『ドラクエ』30周年を振り返る基調講演!

CEDEC最終日の基調講演は、『ドラゴンクエスト』(以下、『ドラクエ』)生誕30周年を冠した“ドラゴンクエストの道 ~ドラゴンクエスト30周年を迎えて~”と題され、ゲーム業界レジェンド中のレジェンド、堀井雄二氏を迎えての盛大なものとなった。

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講演会場は、講演開始30分前にはすでに定員で締め切りになるほどの盛況を見せ、それだけで、影響力の大きさを痛感させられた。

本公演は、堀井雄二氏とともに『ドラクエ』シリーズに携わってきた、スクウェア・エニックスの執行役員、齊藤陽介氏をモデレーターに、堀井氏に30周年を振り返ってもらうというもの。

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ここでは、その一部を抜粋してお届けしていく。『ドラクエ』シリーズ作品は、8作目までがすべてスマートフォン向けへと移植されているので、これを機にそちらも楽しんでみてはいかがだろうか。

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『ドラゴンクエスト』シリーズ(スマホアプリ版)まとめ

ドラクエ誕生秘話をもう一度

まず語られたのが、どういった経緯で『ドラクエ』が生まれたのかという話。

こちらに関して堀井氏は、

「もういろいろなところで何回も話をしているし、ゲーム業界の人はもう聞いたことがある話かもしれないけど(笑)」

と前置きをし、幼少期からフリーライター時代の話、そしてマイコンを購入して『ポートピア連続殺人事件』(以下、『ポートピア』)を開発した話などを振り返りつつ『ドラクエ』誕生秘話を語ってくれた。

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簡単に概略を伝えると、

マイコンでベーシックというプログラミング言語を書くのが面白かったことと、ライターをやっていたこと、もともとは漫画家志望だったことが起因して、『ポートピア』を開発。

そこから当時ハードにやりこんでいたRPG『ウィザードリィ』などに影響を受けて開発した。

といった具合だ。ちなみに、『ドラゴンクエスト』というタイトルは「“ドラゴン”という聞き慣れた言葉と、“クエスト”という当時はまだ馴染みのない言葉を組み合わせたら、覚えてもらえるのではないか」との意図から付けられたものだという。

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各作品の思い出を振り返る

そこから、話は各タイトルの思い出話へ。前述の通りシリーズ8作目まではスマートフォンでも遊べるようになっているので、この話を見ながら各シリーズをもう一度噛みしめてみるのもいいだろう。

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『ドラゴンクエスト』シリーズ(スマホアプリ版)まとめ

・『ドラゴンクエスト』の思い出

前述の『ドラクエ』が生まれるまでをかいつまんで語りつつ、「初代『ドラクエ』が開発された当時は、ROMカートリッジの上限が64KBだった」と堀井氏は振り返る。

制作状況については「当時はまだRPGはメジャーではなかったので、わかりやすいシステムにするのに苦労しましたね」と、まさにJRPGの立役者と思えるコメントを披露してくれた。

・『ドラゴンクエストII』の思い出

堀井氏「『ドラクエII』が出るころには、初代のころからROMのサイズが倍になってね。これならパティープレイができるのではないか」と、いまでこそ常識となっているRPGのパーティプレイ誕生についての裏話を披露。

また、モデレーターの齊藤氏も「当時のパーティ制RPGは仲間の加入がシステマチックだったので、物語に合わせて仲間が加入していくという作りは斬新だった」と思い出を掘り起こしていた。

・『ドラゴンクエストIII』

「『ドラクエIII』ではさらにROMの容量が倍になってね、本来やりたかったパーティプレイ、たとえばルイーダの酒場で仲間を預けたりとかジョブチェンジをしたりとかができるようになった」とシステムの進化が印象的だった様子。

世界観設定に関しては意外な弁も。

「2作目が、1作目の100年後という設定だったから、IIIもその流れだったらおもしろくないなと思って、Iの前の時間軸にしたんだよね。よく「Iを作る前からIIIのストーリー構想はあったのか?」と聞かれるけど、ないよね(笑)」と堀井氏。

このコメントには会場からも笑いがこぼれた。

・『ドラゴンクエストIV』の思い出

「3作目が社会現象になっちゃったから、4作目を作るときは本当にプレッシャーでした」と、空前の『ドラクエ』ブームを生み出した『ドラクエIII』に触れて、4作目への思い出が語られた。

「3作目はストーリーが長くなったので、あれ以上長くしてもしょうがない。それならば、ルイーダの酒場に預けられる人たちにも人生があるということを描こうと、ああいった形になりました」

そう語る堀井氏は続けて、

「だからこそ、『ドラクエIV』からはキャラクターたちにしっかり名前を付けたんですよ」と、『ドラクエIV』は『ドラクエIII』が生んだ社会現象に大きく影響されていることを明らかにした。

・『ドラゴンクエストV』の思い出

「5作目は、とにかくゲームで本気で悩ませたかった」と、いまでもゲーマーたちの話題に上る結婚イベントの制作秘話をこぼす。

また、「最初は親子3代かけて魔王を倒すというエピソードを書こうと思ったが、そうすると途中で主人公が親から子へと変わってしまう。それが嫌で、主人公を子供時代と青年時代、親になった時代とわけて描いたんです」と、描かれなかったストーリーの存在も明らかにしてくれた。

・『ドラゴンクエストVI』の思い出

「6作目は、悩みましたね。どんな遊びをしようかってね」と、絶えない遊び心を示しながら過去を振り返る。

「シナリオを進めるにつれ他世界に行くという物語はあったけど、いきなり他世界に行くという話はないなと思って、あのような作りにしました。それも、主人公が最初にいた世界が幻だったというオチを付けてね」

盛大なネタバレを挟みつつ、世界観設定に付いて語ってくれた堀井氏。やはりレジェンドクリエイター、いままでにないものを作ろうという気概があったようだ。

また、VIの印象的な乗り物“空飛ぶじゅうたん”に触れ、

「あれは難しかったんだよね。これまでにも乗り物はあったけど、じゅうたんのように持ち運びが出来てしまう乗り物は初めてだったから。じゅうたんのせいでシナリオ進行が壊れないように、地形を作るのはたいへんでした」

と、意外な苦労話を聞かせてくれた。

・『ドラゴンクエストVII』の思い出

「プレイステーションになって、容量が格段に増えた」そう切り出した堀井氏は、続けて「容量が増えたから、シナリオスタッフも一気に増やしたんだよね」と、合わせて開発規模も大きくなったことを明かした。

齊藤氏も「そのせいかわかりませんけど、7作目ではテストプレイの部屋で人が倒れているのをよく目にするくらいの長編になりました」と振り返っていた。

システム面でも「『ドラクエVII』ではじめて、仲間のセリフを採用した。それで女の子の仲間(マリベル)も作ったけど、ただカワイイだけじゃつまらないからって、ボロクソに言ってくるような設定にしたんだよ」と堀井氏。

齊藤氏もその当時を思い返し「まだツンデレなんていう言葉がなかった時代にアレは、インパクトありましたね(笑)」と微笑んでいた。

・『ドラゴンクエストVIII』の思い出

「8作目は、これまででいちばん悩んだんです。7作目まで作っちゃうとさすがにアイデアベースで出尽くしちゃってるから」

大作として語られる『ドラクエVIII』は、企画から難航していたことが明らかに。

「そんなときに、たまたまレベルファイブさんと出会ってね、スゴイものを見せてくれたんですよ。まんま鳥山さんの絵だし、ものすごくキレイだし。ならもう、このキレイさが売りじゃないか!」と、『ドラクエVIII』については、レベルファイブの技術力について熱弁した。

・『ドラゴンクエストIX』の思い出

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「あのときはニンテンドーDSそのものに興味があって。持ち運べるし、すれ違い通信っていう通信機能もあるし。当時はまだゲームでのネットワークの敷居が高くてね。でもすれ違い通信ならその敷居を無視できるから、これを使っておもしろいことができないかと考えて『ドラクエIX』が生まれたんですよ」

開発秘話から、話は社会現象にまでなった“まさゆきの地図”に。

「もともとは、育てた地図を自慢しあえる要素として地図のシステムとすれ違い通信のシステムを作ったんだけど、“まさゆきの地図”の登場には驚いたね。理論上そういった地図は生まれるかもねという話はしていたけれど、まさか本当に出てくるとは(笑)」。

齊藤氏も「それもありますけど、都心で発見された地図が、あっという間に日本中に広まったのに僕は驚きましたね」

“まさゆきの地図”の登場、すれ違い通信という奇跡が、ふたりには強く印象に残っているようだ。

・『ドラゴンクエストX』の思い出

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「じつは、構想から10年くらいかかってるんだよね」

いきなりの爆弾発言から振り返りがスタートしたが「いろいろ話したいこともあるけれど、まだ運営中だから言えないこともあってね(笑)」と、『ドラクエX』の話題はその言及に留まった。

そして大団円へ

その後、ユーザーからのQ&Aをこなした後、話題はいきなり現在開発中の『ドラゴンクエストXI』に。

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「昨日も5時間くらい打ち合わせをして、システムを決めたりロムチェックを行ったりしていたんだけれど」

堀井氏はいきなりそう切り出し、すでに『ドラクエXI』は動かせる段階に来ていることが判明。

そして齊藤氏もそこを掘り下げるように「いまはニンテンドー3DSをベースに、ディティールチェックをしている段階です。3DSは修正を反映してまたチェックしてという作業がやりやすいので」と、現段階では3DSベースの開発となっていることも明かしてくれた。

もちろん、プレイステーション4での開発も行っているが、あくまでも開発ベースは3DSということだ。

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そして講演は終わりを向かえ、最後に堀井氏は「クリエイターに必要なのは、新しいものを作る想像力と、それを地道にデータという形に起こしていくための忍耐、そして完成したものがダメだった場合サッパリ切り捨てられる勇気が大事」とクリエイターにとって必要な3つの要素をまとめて大団円となった。

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