グリー青柳直樹氏、コロプラネクスト山上愼太郎氏など、投資家の視点から見たVR戦略とは?
2016-05-12 01:08 投稿
投資家たちが語る、VRマーケット
グリーは2016年5月10日、日本のVR(バーチャルリアリティー)市場の拡大を目的とした、国内初の大型VRカンファレンス“Japan VR Summit”を、一般社団法人VRコンソーシアムと共同で開催した。
本記事では、同カンファレンスの最終セッションとして行われた“投資家から見たVR”の模様をお届けする。
モデレーターにgumiの國光宏尚氏、そしてパネリストにグリーの青柳直樹氏、コロプラネクストの山上愼太郎氏、そしてアメリカのベンチャーキャピタル”Presence Capital”のAmitt Mahajan氏を迎えた本セッション。
「(本セッションは)生々しいビジネスの話になります(笑)」とは、冒頭の國光氏。VR市場のイニシアチブを取る意味でも、技術的な意味でも、総じて世界に遅れをとらないように「日本のVRを盛り上げていきたい」と、その思いを語った。
続いて青柳氏は、グリーのVR領域での取り組みを紹介。2016年5月10日に発表となった、フジテレビとの業務提携の経緯にも触れ、「これからのVRにおける主要ポジションに立っていきたい」とした。
グリーは、VRの開発に取り組む北米のスタートアップ企業を支援するVRファンド“GVR Fund”を設立している。それについて青柳氏は、「VRの領域に特化するいいタイミング。投資という意味ではまだライバルが少ないので、成功するチャンスがある」とコメントした。
つぎに、コロプラグループとして「ゲームと360度動画は自社でできるので、(開発ツールや入力デバイスなど)自社でカバーできない部分への投資」というVRの取り組みかたを紹介した山上氏。
同セッションの前に行われたセッション”VRで生まれるヒットゲーム”に登壇したコロプラ代表取締役社長の馬場功淳氏が先陣を切ってVRに取り組んでいることにも触れつつ、グループとして開発と投資の両輪でVRに取り組んでいると話した。
最後は、日本在住経験もあるというAmitt氏。同氏曰く、「VR分野には問題とチャンスがある」。チャンスという面では、まだコンテンツが不足しているため、作ること自体がチャンスになるという。もちろん、VRは発展途中の段階。だからこそ起こりうる問題も出てくるが、それをクリアーしたあとのメリットは大いにあるとのこと。また、スタートアップへの投資を行うことについては、「パーフェクトなタイミングでの投資になった」と明かした。
VRは”第3の波”になる
自己紹介が終わったところでパネルディスカッションへ。これからVRはどういう形でビジネスになっていくか? どう注目されていくのか? そして日本はどこを目指せばいいか? これらのテーマについて語られていった。
まず、「VRが市場として確立されるのは、世界的企業のお金や人の動きを見ても間違いない。アメリカでは“the Third Wave”と呼ばれている」と國光氏。インターネット、スマートフォンの普及に続く第3の波として、VRやAR(拡張現実)、そしてVRとARを合わせたMR(Mixed Reality=複合現実)の波がやってくるという。
しかし裏を返せば、AR、そしてMRにたどり着くにはVRの普及が前提になってくる。そこで議題となったのが、モバイルVRとハイエンドVRではどちらが大きくなるのか? Amitt氏は「モバイル。(スマートフォンのように)持ち歩けるというのは強み」、山上氏は「(頭につけたりできるような)ハイクオリティなモバイル」と回答。これに対し、青柳氏は「最終的にはモバイルだと思うが」と前置きしつつ、「ハイエンドでの成功ありき」と話した。
この議題は、従来のゲーム開発における、モバイルとハイエンドで生じるハードウェア間の開発の違いにも似ている。大きな流れとしては、やはり”ハイエンドからモバイルへ”という流れになりそうだが、Amitt氏は「2017年にはクロスプラットフォームができるかもしれない」と予測していた。
また、「もしVRゲームで起業するとしたら?」という質問には、「ポーカーだね(笑) カードゲームからはじめる」(Amitt)、「“VR ZONE”のようなVR体験型のアトラクションはおもしろいと思う」(青柳)、「“体験”そのものがVRだと思うので、クリアーするだけでなく(プレイヤーが何か)失敗しても“体験”になるようなもの」(山上)と答えていた。
VRが普及していくために
イベント終盤のテーマは、VRが普及していくために乗り越えなければいけない課題について。VRのみならず、新たなハードの普及にとって「コンテンツの存在は重要」というのが4者の共通認識だった。
では、どんな企業がVR業界におけるユニコーン(※1)になり、絶対的なヒットコンテンツを生むのか?
※1.評価額10億ドル以上の非上場企業、投資家にとって大きな利益をもたらす可能性がある。神話の生物”ユニコーン”のように目にする機会があまりないことからユニコーンと呼ばれる。
これについて4者は、「VR Adobe」(Amitt)、「ゲームのプラットフォーム」(山上)、「普遍的に需要のある、VR版のソーシャル」(青柳)、そして「リアルな体験にVRが合わさったショービジネス」(國光)と、それぞれ意見を上げたが、果たしてどこがユニコーンになるのかはわからない。しかし、「かつてファミコンで登場した『スーパーマリオブラザーズ』のように、”ハードウェアを含めて買ってやりたい!”と思わせるようなヒットコンテンツ」(山上)が必要不可欠なようだ。
また、まだ成長過程にあるVRに対して企業が投資を行ううえで壁となるのが役員クラスのGoサイン。彼らにVRに可能性があると思わせるために、「キーパーソンに納得してもらうために、VRを体験する場を設けること」が重要だと青柳氏。多くの大手企業の役員たちにVRに対する可能性を示すことで業界全体がさらに活性化し、国内におけるVRは急速に動き出すかもしれない。
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