コロプラ馬場功淳氏、バンナム原田勝弘氏、レゾネア水口哲也氏が語る“VRで生まれるヒットゲーム”
2016-05-11 13:56 投稿
ハードの垣根を越えて語られたVRのコンテンツ作り
グリーは2016年5月10日、日本のVR(バーチャルリアリティー)市場の拡大を目的とした、国内初の大型VRカンファレンス“Japan VR Summit”を、一般社団法人VRコンソーシアムと共同で開催した。本記事では、その中で行われたセッション“VRで生まれるヒットゲーム”のリポートをお届けする。
各社で異なるVRへの取り組み
本イベントは、Mogura VR共同代表・編集長の久保田瞬氏をモデレーターに、パネリストとして、コロプラ代表取締役社長の馬場功淳氏、バンダイナムコエンターテインメント・鉄拳プロジェクトリーダーの原田勝弘氏、レゾネアCEOの水口哲也氏が登壇。
セッションの導入として、各人がVRへの取り組みについて、それぞれ説明を行った。
まず最初はコロプラの馬場氏。同社は『白猫プロジェクト』をはじめとするスマートフォン向けのゲームアプリを作っている会社だが、VRへの取り組みにも積極的で、Oculus Riftローンチタイトル『Fly to KUMA』、『VR Tennis Online』をはじめ、計5つのVR作品をリリースしている。
「社内に仮想現実(VR専門)チームを立ち上げ、本格的にVRゲームを作っている」と話す馬場氏。また、ゲーム以外のVRへの取り組みとして、VR専門ファンドや360°動画コンテンツに関わる映像分野の会社も設立していることから、その力の入れようが伝わってくる。
続いては、バンダイナムコエンターテインメントの原田氏。
原田氏のVR開発最大の動機は、「キャラクターをもっと好きになってもらう手段」だったという。それがコンセプトとなり、仮想世界とのキャラクターコミュニケーションを通じて、“実在感”、“緊張感”、そして“また会いたいと思えるか”ということを軸にしたコンテンツ作りをしていると語った。
また同社は、現在VRのゲームセンターとも言うべき“VR ZONE Project i Can”(以下、“VR ZONE”)をお台場のダイバーシティで展開している。これは世界的にも珍しいVRエンターテインメントで、集客状況も上々。
■“VR ZONE”で体験できるVR作品
『スキーロデオ』
『リアルドライブ』
『高所恐怖SHOW』
『脱出病棟Ω』
『トレインマスター』
『アーガイルシフト』
現時点でのVR開発の難点として、個人個人にはVRコンテンツのすごさを十分に伝えることができるものの、集団へのプレゼン力の弱さを挙げていた。ここ数年はそのプレゼンへの挑戦でもあったという。
そして、アメリカにVR専門の事業会社エンハンス・ゲームズを設立した水口氏にバトンタッチ。同氏のVR開発においては、事業とスタジオでのクリエイティブ(開発)を完全に分けるという考えがベースにあるそうだ。
アメリカに会社を設立した理由は明確で、日本よりも情報が早いこと、イベントなどでプレイヤーと直接話ができる環境にあること、契約がスムーズであることなど、VR市場の規模と文化的な背景によるものだという。
水口氏が現在開発しているのは、全身で“音”を体感できる音楽シューティングゲーム『Rez Infinite』。15年前の2001年にセガからPlayStation2 で発売された『Rez』の世界を仮想空間で楽しめる作品で、全身バイブレーションのスーツを着用すれば、音楽を全身で体感できる、まさに夢のようなゲーム。こちらは、PS VRのローンチで出す予定で進められている。
また、VRについて、個人の体験としては新感覚なものの、それ自体はまわりの人には伝わらない。「その体験を他人と共有できないか?」という視点から、メディアアートをはじめとした各種イベントを実験的に実施していることにも言及した。
VRゲームはどう作る?
各社でそれぞれ開発のアプローチや捉えかたが異なるVR開発。議題にのぼったのは、VRゲームと、これまでのゲームとの作りかたの違いについて。
「いまは、いかにもVRだとわかりやすいものを提供する必要があると思うが、いずれ普通のゲームを移植することも受け入れられるときが来る」と馬場氏は語る。それはたとえば、VR世界にモニターとコントローラーを置いておき、そこで普通にゲームをプレイしてもらうことを指す。
「キャラクターを通じて、VR空間ならではのリアルを体験してもらいたい」というのが、原田氏の考え。また、「技術のイノベーションが生まれたときに新しいIPが生まれるのは間違いない」とし、VRはまさにイノベーションだが、価値の見出しかた、お金の生み出しかたはいままでと違って難しく、もどかしさを感じているという。
「これまでゲームというコンテンツを四角い画面に押し込んできたが、それが取っ払われる。勘がいい人がVRのゲームを作って、VRにおける“ルール”を見出していかなければならない」とは、水口氏。
3名ともVRで追求する部分は異なっていたものの、共通していたのは“VRらしさ”という観点。そもそも真新しいVRというデバイスが用いられるため、たとえどんなゲームを作っても新しいゲーム体験が得られることは間違いない。ただ、「ゲームがいくらおもしろくても、2Dでよくない? と思わせないことが重要」という馬場氏の意見には全員が賛同した。
現状のVRは、デバイスはもちろんコンテンツもまだまだ未成熟で、どういう風に普及が進むかわからない。裏を返せば、開拓ルートはいくつもあるということになる。実際、欧米ではVRに対して動いているお金や人の量が突出していることから、インターネットやスマートフォンの普及のように、コアゲーマーからふだんゲームをしない女性まで、あらゆる層へと普及していく可能性は高い。
馬場氏は、「VRというデバイスは、スマホのように、いずれすべての人が使うようになる」とまで言い切るほどだ。
そして最後に3名は、VRで作りたいものについて語った。
「アクションや格闘など、新作VRゲームを4、5本作っている。VR市場で何が受け入れられるのか、今後の戦略を立てるためにも、どんどん開発していきます」(馬場氏)、「『ウォーキング・デッド』のような体験ができる作品はおもしろそうですよね。現実とゲームがシームレスにつながるサバイバルものが作れれば」(原田氏)、「いま3つほど企画があるが、それをどう最速で作ろうか悩んでいます。共感覚的な、みんながすごいと思えるものを生み出したい」(水口氏)と語り、拍手に包まれながら壇上を後にした。
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