【独占スクープ】『Pokémon GO』の基盤となる位置ゲー『イングレス』の今後を開発陣に直撃
2015-12-04 17:00 投稿
今後の可能性に迫る
Googleの社内スタートアップから始まり、2015年8月に独立したNiantic, Inc.。
同社が開発、運営するスマートフォン向けの拡張現実型、位置情報ゲーム『Ingress』は世界多くのプレイヤーに支持され、今年でリリースから3年目を迎えた。
本作の技術を基盤に開発が進む『Pokémon GO』の続報も待たれるなか、12月12日には沖縄を舞台に『Ingress』を使った大規模バトルも開催される。
そこで、本記事では『Ingress』を手掛けるNiantic, Inc.を直撃。
アジア統括本部長の川島優志氏に、今後の『Ingress』と『Pokémon GO』につながるヒントを、現役のエージェントである深津庵が聞いてきたぞ。
Niantic, Inc.のコアは『Ingress』である
――まず、Googleから独立して今後の運営方針はいかがでしょう?
川島 Googleの社内ベンチャーとしてやっていた時代から独立を考え、それに近い形で運営していたので、独立はしましたが体制は変わってはいません。
もちろん、最初から独立してやっていたら、ここまでうまくはいかなかったですし、Google Mapの活用を含め、いまの我々はGoogleに育ててもらったと考えています。
また、今回の独立に関してもGoogleから手厚いサポートを受けていて、株主としての投資など、これまでと変わらずとてもよい関係ですよ。
――『Pokémon GO』の開発は順調ですか?
川島 内部的にもエンジニアをどんどんハイアリング(採用)しているところで、投資の面では任天堂さんやポケモンさんのサポートもいただきながら、『Pokémon GO』の開発に力を入れています。
この開発の土台であり、コア・プラットホームとなるのが『Ingress』で、それに関連する『Pokémon GO』でも、本作のポータル情報などの技術が活かされています。
これまでの世界を壊さない物づくり
――つぎに『Ingress』の話になるのですが、ストア導入(課金要素)の経緯を教えてください。
川島 さまざまなリクエストがあったなかで、ポータルキーを保管するロッカーがほしい、目印になるようなものを設置したいなどの声が多く、それらを実現するための方法をずっと探していたんです。その答えがストア導入でした。
ストア導入に当たってまず、大前提になったのがゲームの世界観、バランスを崩さないこと。そして、お金をいっぱいかけたユーザーが強くなるシステムには絶対にしないことと、広告も世界観を壊すような形では入ってこないようにすること。
その一方で、プラットホーム自体もさまざまなシステムを提供できるようにしないと、デベロッパーの要求にも答えられないので、いろいろなことにトライする必要もあるんですよね。
――その条件に合うものが、今回ストアに投入されたというわけですね。
川島 はい、リクエストにあったたくさんの機能のなかから、条件に合うものを抽出し、何度も話し合いを重ねて、構想がまとまったのでストアを導入しました。
『Ingress』に引き続き、大きな投資をしていくために必要なプラットホームの充実化を実現させる道筋として、今回の独立やストアの導入があるんです。
ポータル申請再開と『Pokémon GO』のつながり
――現在中断しているポータル申請の再開はいつでしょう?
川島 現在アクティブになっているものが、おそらく世界で500万程度。待機状態にあるのも同じく500万件くらい、もしかするともっとあるかもしれません。
いま、それを順次処理している状態で、我々としてはポータルの質を重視していかないといけない時期に来ていると感じています。
また、ポータルの密度が薄い地域もありますので、そうした場所を優先的に処理を進めつつ、その間に、ポータル申請を効率よく処理できる仕組みを作っていこうと考えています。
――密度の薄い地域を優先していくことで、『Ingress』の遊びやすさが向上していくと?
川島 そうなるためにも、各地域にちゃんとポータルを増やしていきたいと思っています。
かっこいいシーサー像が……!?
――ポータルと言えば、登録されている写真の編集もおもしろいですよね。投稿されている候補から、自分好みの1枚にイイネをするのが密かな生き甲斐になっています。
川島 わかります! 先日、香川県のファーストサタデー(以下、FS)に参加したんです。
そのとき、スキャナーを見ていたらかっこいいシーサー像のポータルがあって、それを見たくて探したんですけど見当たらない。「スキャナー上では確かにあるのになんでだ!?」と足元を見たら、とっても小さくてボロボロのシーサー像があったんですよ。
それを見た瞬間、申請したエージェントがどんな体勢で撮影したのか、たいへんだったろうなぁと想像してしまいましたね。
――ポータル情報のイメージが実物と異なるものって多いですよね。ガーデニング用のオブジェがポータルになっちゃっていたりもしますが……。
川島 申請されたポータルはスタッフがストリートビューを使い、いろいろな方向からチェックしているのですが、なかにはきちんと確認しきれていないこともあるので、今後は審査をしっかりしていきたいと考えています。
こうした現状からも、ポータルを承認する処理能力の向上を進めていかないと、というところですね。
陣営の垣根を超えた一体感に感動
――香川のお話がでましたが、今回のFSで印象深かったのはなんですか?
川島 12時間弱の滞在だったのですが、しっぽくうどんは美味しかったですね。FSのスケジュールにうどんを食べることが含まれていまして(笑)。地元の議員さんやゆるキャラも参加してくださいまして、とっても賑やかな内容でしたよ。
また、レジスタンスとエンライテンドの仲がよかったのも印象でした。FSのミーティングなどを通じて仲よくなっていくようで、直接顔を合わせて話し合っていくことでエージェントの輪が広がっていくんですよね。
――戦っているのはスキャナーのなかであって、お互い同じゲームをこよなく愛するものどうしだと考えています。
川島 そうですね。これまでは違っても、地域主催のミッションディやFSを通じて、それに気づいてもらえればうれしいですし、陣営の枠を超えてみんなに楽しんでもらえるのがいちばんですよね。
XMアノマリーに続き新たな戦いの構想
――12月12日には、沖縄で大規模イベント、ABADOON XMアノマリーが開催されます。これは従来のルールに則ったものになると思いますが、海外では“ゴーラック(※)”と呼ばれる新たな試みが行われましたよね。今後、国内でも行う予定はありますか?
※実際に体を使ったチャレンジに挑むブートキャンプ的なイベント。
川島 いまはアメリカでしか開催されていませんが、国内でもできないか、チャンスを作れないかと思っていました。
ゴーラックでは独自のメダルが入手できるので、それもいいモチベーションになりますよね。
あ、ちなみに、ゴーラック以外にもやってみたいですよね?
――ぜひやりたいですね!
川島 しっかり聞き届けました!
日本では脱出ゲームや謎解きが流行っているので、それらの要素を組み合わせて国内向けのイベントも考えていきたいですね。
外に出て遊ぶからこそ得られる体験
――先日、葛飾北斎のメダルアートに関する全24個のミッションに挑戦したのですが、そのミッションごとに必ず北斎に関する3択のクイズがありまして。これまでは、ただポータルを巡るシンプルなミッションしか経験がなかったので、クイズに挑戦することで北斎の足跡、歴史に触れながらその地を巡ることができたのは、うれしかったですね。
川島 それはとてもいいですね! ミッションを通じて歴史を学ぶことができる。
しかも、自分の足で巡りながら実際その場に立って答えを知るって、とても独特な体験ですよね。そうしたものを私たちも大切にしていきたいです。
新たな交流につながる新アイテムを模索していた
――ここからはおもに新機能などについてお聞かせください。キーロッカーの購入上限を5個に設定した理由はなんですか?
川島 そこは議論になるとは思うのですが、あえて制限をしたというところです。我々としては、これですごく儲けたいとか、そうした方向に持っていきたくはないと考えています。
――キーロッカーはドロップしない、購入したエージェントだけのものです。私の場合、活動地域別にキーロッカーを使い分けているのですが、それらに名前を入力できれば管理しやすくなると思うんですよね!
川島 あ、それはおもしろいですね!
その機能が実装できるよう必ずエンジニアにも伝えます。
――ポータルフラッカー(※)の機能設定の狙いはなんでしょう?
※ポータルハック時のアイテム出力を倍増させるもの。150ハックor10分間が使用上限。
川島 おもな目的はコミュニケーションの活性化です。
ストアを導入するときに懸念されていたのは、単純にXMPやバースターなどをお金で買えるようなったら、人は外に出なくなってしまうだろうという点でした。
そうならないためにも、目的のポータルまで行く必要があるものにしたかったんです。
また、ポータルフラッカーの効果は、対象のポータルをハックするみんなにあるので、「ここは俺のおごりだ」って感じで、敵味方問わず、たくさんの人が集まればいいな、と。
フラッシュファーミング(以下、FF)で、せっかくみんなが集まってもグリフハックに没頭しすぎて会話ない。それじゃもったいないですよね。
出力を2倍、最大効果を10分にすれば、従来よりも短時間でアイテム補給が終わるので、時間に余裕ができる。そうなれば、会話も増えるかなという見込みもありました。
――実際、私もポータルフラッカーを使ったFFに参加したとき、いつもは終電ギリギリだったFFに余裕ができて、会話が増えるのはもちろん、軽く飲みに行ったり、その場での世間話が多くなりましたね。
川島 それは素晴らしいことですね!
コミュニケーションを活性化させるために考えたものなので、そうした交流が生まれたってことは、開発した我々にとっては最高の喜びですよ。
――スキャナーだけで終わらないコミュニティができました。
川島 いやぁ、とてもいいことです。ビーコンもみんなの待ち合わせ場所をスキャナーを介して行ったり、自由な発想で活用してもらえれば最高です。
新たに導入されるメダルに迫る
――新しい実績メダルの予定はありますか?
川島 実績メダルに関するものはまだお伝えできませんが、キャラクター的なもので言えば、沖縄で開催されるXMアノマリーで世界初となるエイダのメダルが登場します。また、『Ingress』3周年に合わせたメダルも用意しています。
――これは提案ですが、たとえば、MU値の高い巨大なCFを破壊したときにカウントされるような実績メダルはどうでしょう? 郊外のほうが狙いやすくなると思うので、遠方でも足を伸ばすエージェントが増えれば、地域活性にもつながるのかな、と。
川島 なるほど、それはおもしろいですね! その案もぜひ、フィードバックさせてもらいます。
クリエイティブな新展開も提案してみた
――それから、捨ててしまいがちな低レベルアイテムを組み合わせて、上位レベルのものにクラフトできるようになるとおもしいですよね。これができれば、低レベルポータルもハックしたくなるんじゃないかなと思います。
川島 たしかにそうですよね。
低レベルだからと無視するのではなく、そこにも価値があれば足を運びたくなる。さらに、いまあるリサイクルとは別のクリエイティブなものがあると楽しみも増しそうです。
――キーロッカーも導入されたので、遠ければ遠いほど効果が増すとか、ポータルキーもクラフトに活かせれば集めたくなりますね。
川島 距離が影響するなら自分の活動範囲外、遠方のポータルキーが落ちていたら拾いたくなりますね。
ジョンの秘密にも迫る!
――『Ingress』の距離表記はkmですが、英語圏ではマイルのほうが自然だと思います。あえてKmにしているのは、ジョン・ハンケ氏が『スターウォーズ』好きで、作中でもKmだからじゃないか? という噂を聞いたのですが……。
川島 Kmの理由のひとつはゲームの設定にあります。
皆さんが使っているスキャナーは、スイスのセルンと呼ばれる研究施設で働いていたものが開発した装置です。それにちなんで、ヨーロッパ表記のKmで距離を表しているんです。
もうひとつの理由は、Kmがグローバルな単位でもあることから採用しています。
ちなみに、Niantic, Inc.のマイクロキッチン(休憩所)には、いろいろなお菓子が用意されているんですが、そこにはチョコレートがないんですよ。
どこに入っているかというと、近くにあるダースベイダーの容器の頭のなかに隠されているんです。
――わざわざ隠しているんですか!?
川島 そうなんですよ。
しかもそこには、「チョコレートの闇の部分を知ったうえでこのなかから取るのか?」って書かれているんです(笑)。
スキャナーを通じて見る世界はさらに広がっていく!!
――それでは最後に、ユーザーへメッセージをお願いします。
川島 『Ingress』を通じて自分の世界が広がった人って、たくさんいると思います。
家のなかでゲームをしていた人が外に出る、それが気づいたら京都や仙台、台湾や沖縄にまで行くようになって、これまでにない体験をすることで新たな発見も増える。
そして、いずれは世界って小さいなと感じてもらえるようになってほしいですね。
――須賀さんも、あらためていかがでしょう?
須賀 まずは、人と人のつながりを今後も強めてほしい。
そのためにも、我々運営側がもっと充実したコンテンツを考え、スキャナーの外でも楽しめるような仕掛けを提供していきたいですね。
P.N.深津庵
(イングレス)Ingress
- メーカー
- Niantic, Inc.
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料
- 対応機種
- iOS 7.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。 この App は iPhone 5、iPhone 6 および iPhone 6 Plus に最適化されています。Android 2.3 以上
- コピーライト
- ⓒNiantic,Inc.
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