『チョコボの不思議なダンジョン』、『ドラゴンクエストⅩ』に『ブレゲー』神運営へのヒントを得る!?
2015-07-25 12:00 投稿
“ローグ”開発者スペシャル対談
iPhone、Android向けに配信中の、スマホでお手軽にローグライクRPGを楽しめる『ブレイブリーゲート 時の妖精と不思議な迷宮』(以下『ブレゲー』)。
今回『ブレゲー』のプロデューサーである小針良太氏の願いで、
1997年に当時スクウェアからプレイステーションで発売されたローグライクRPG『チョコボの不思議なダンジョン』(以下『チョコボ』)のディレクターを務めていた青木和彦氏と、新旧の“ローグライクRPG”を作り上げた両者の対談を実現。
『チョコボ』開発秘話や開発・運営体制について、いろいろお互いに語ってもらった。
(写真右)
スクウェア・エニックス
第6ビジネス・ディビジョン
青木和彦氏
(写真左)
サイバーエージェント
『ブレイブリーゲート』プロデューサー
小針良太氏
※文中は敬称略
『チョコボ』が作られたきっかけ
小針 僕はサイバーエージェントに入社して7年になります。最初はデザイナーとしてゲームのイラストを描いていたんですが、徐々にディレクターやプロデューサーをやらせてもらうことになり、『ブレゲー』が3本目の立ち上げになりました。
今回の対談ですけども、『ブレゲー』と同じ“ローグライクRPG”ということで、僕自身も子どものころから大好きだった『チョコボの不思議なダンジョン』を作った人にお話しをお聞きしたいと思い、お願いした次第であります。
本日はよろしくお願いします!
青木 こちらこそよろしくお願いします。
小針 まずは簡単に青木さんの経歴を教えていただけますか?
青木 僕が当時のスクウェアに入社したのは1986年だから、もう30年近くになりますね。その前からアルバイトでやってまして、そのまま気が付いたらずっとここにいてゲームを作っているって感じです(笑)。
『半熟英雄』や『クロノトリガー』、『FFCCクロニクル』を経て、いまは『ドラゴンクエストX』に携わっています。
小針 僕の世代だとどのタイトルも遊んできたようなものばかりですね……。それでは、『チョコボ』を作ったきっかけは何でしょう?
青木 『チョコボ』を作ったきっかけは……、ぶっちゃけた話、当時副社長だった坂口さん(※1)が「“チョコボ”、“不思議なダンジョン”、“ATB(※2)”でゲームを作ってくれない?」というひと言が始まりです。
小針 そうなんですか!(笑) 青木さんはこの発言を受けて、チョコボとローグライクRPGを掛け合わせると決まったとき、どういった意識で制作に臨んだんでしょう?
青木 “チョコボ”が単体で切り離されて一本立ちするということになったので、チョコボのキャラクターをどう立たせようかなという部分はよく考えましたね。
あとはローグライクRPGなのでダンジョンの中を探索するのは当然なんですが、それだけじゃなくてもうちょっと広がった世界……村とか住人などの様子も表現したくて、ムービーとかを使ってゲーム上で表せないことを再現しました。本当は黒魔導士はいつもは部屋で研究してたりとか、ダンジョン内でモンスターがどう生活しているかなどをムービーに落とし込んで紹介したりしました。
小針 サンダーの本とかを売ると電灯がついて明るくなったり、ドレインの本で村の人が元気になったり、細かい要素もありましたね。
ローグライクRPGを制作するうえで、どんなところに苦労されましたか?
青木 苦労は覚えていないくらいありますよ(笑)。ただ、スタッフは基本的にローグライクRPGが好きな連中が集まっていました。本当にこのゲームが好きな人ってコアな人が多くて、こういうのがいいんじゃないか、というやり取りは頻繁にありましたね。これが完成系だと決めつけるより、あれやこれやと試行錯誤しながら進めていた感じです。
小針 『ブレゲー』のお客様もすごくコアな方が多くて、CBTでものすごい意見をいただきました。「こんなのローグじゃない!」って……賛否両論、いや実は否が多かったんですけど(笑)。そこから改善していくたび、ダイレクトに反応が早くて、この人たちはローグを愛してるんだなというのが伝わってきました。
ターン制のローグライクRPGにATBを入れるというのはいかがでしたか?
青木 この試みはもちろん世界初だったので、そのあたりのチューニングはたいへんでしたね。
小針 僕は初めてのローグライクRPGが『チョコボ』だったので、こういうものが当たり前なんだとばかり思ってました……。『チョコボ』をやったあとに、別のローグライクRPGをやってみたときに「全然違う!」と驚きましたね。
当時の開発秘話なんかありますか?
青木 当時、開発完了目前に、みんなに「自分の想い(ネタ)を1個ずつ入れていいよ」と指示したんですよ。そこで各々ゲームの中に考えていたネタを仕込んであったりします。そういうこともあって、いままでたいへんだった制作を楽しい気持ちで最後に終わらせることができました。ひとりひとりが全力で作ってくれて、信頼できるスタッフと仕事をしてこれたからこそ、いまこういう話をできるのかなという感じがします。
小針 発売後に印象に残っていることはありますか?
青木 僕は発売したあとに一切自分の作ったゲームをやらないんですよ(笑)。発売後はプレイヤーのみんなのものという考えかたがありまして、すべてを忘れて、つぎに何を作るかにすべてを賭けています。
小針 それはかっこいいですね!
青木 ただ『ドラゴンクエストX』だけは例外で、やっぱり運営のゲームは自分もプレイしながら積み重なったものを見ていかないといけないですよね。
よりよい運営体制へのヒント?
青木 月額課金の『ドラゴンクエストX』は、不具合のとき以外は日々にプログラムをいじることはなくて、いつもはある程度の期間があってコンテンツを新しくしていきます。
でも、基本プレイ無料の『ブレゲー』はそれよりもかなりペースが速いんじゃないですか?
小針 そうですね。手を変え品を変えて、タイプの違うダンジョンを毎日リリースしています。あとはリアルタイムで数字を全部確認していて、数字の動きがあれば、いい反応なのか、それともバグなのかをすぐ検知して、すぐ動けるようにしています。
青木 そんな運営は……とても僕には真似できない。本当にシンドイ世界になってきましたね(笑)。
小針 ですね(笑)。
青木 いまはお客様の反応が本当にダイレクトでわかりますから、意見としてよいものも悪いものもあって当然で、そういうアクションが起きるのは非常にいいことだと思います。
それと僕は内部の専門の部署の人に「(いいところは)ほめてよ」って言うんです。どうしても内部には「ここがバグってる」とか悪い部分の指摘することが多いですから。そうなると日本人ってマイナス要素を平均点まで上げようとするじゃないですか。それも大切なんですけど、悪いほうばかり見ているとおもしろさの頂上は変わらないと思うんです。だからうちでは、悪いところだけじゃなくてよいところもしっかりほめて、善悪両方の情報を運営に活かせるように心がけています。
小針 それはチームのメンタルとしても大切ですね。ぶっちゃけていただきたいのですが、スマホとローグライクRPGの相性についてはどうお考えですか?
青木 僕自身は据え置き型のゲームよりはぜんぜん遊びやすいと思っています。いつでもプレイできるし、終わろうと思ったらすぐ終われる。
僕も今回の対談のために『ブレゲー』をプレイさせていただいたんですが、スタミナもないし、課金アイテムのクリスタルも手に入れやすい。「これで本当に大丈夫なんですか?」って心配になるくらい無料で遊べちゃうじゃないですか(笑)。
小針 スタミナがあるだけでプレイのハードルが上がってしまうんですよね。ローグライクRPGってダンジョンに潜るってだけでハードルが高いのに。
なので、ローグライクRPGが初めてのお客様がファンになっていただけるように、最初のほうからクリスタルを配っています。だからほかのゲームよりも課金アイテムの配布数はかなり多いと思いますし、チュートリアルなどもしっかり入れてあります。
青木 なるほど。確かにアイテム入手時に説明が入ったりしたのはやりやすかったです。それと操作性もよかったですよ。僕のスマホはiPhone6 Plusで大きいんですけど。
小針 大きいほうがおすすめです。大きいほうがやっぱり操作しやすいですから。青木さんに褒めていただいたことを開発陣に聞かせます(笑)。
マルチプレイにみる新しい遊びの提供
小針 じつは『ブレゲー』は夏くらいにマルチプレイモードを実装しようと思っています。内容はまだ検討中ですが、たとえば僕がアイテムを青木さんに投げて回復させたりしながら、敵を全員で倒すとか、そんないっしょに遊べる仕様を考えています。
青木 それはおもしろそうですね! じつは『チョコボ』でもマルチプレイを導入しようという話があったんですよ。そのときはチョコボともうひとりNPCみたいのがくっついてきて、そこを協力プレイにできないかなというのがあったんです。でもそのあと、うまい落としどころが見つからなくて立ち消えてしまったんですよね……。
小針 マッチングに待ち時間ができてしまったり、技術的な障壁もあるんですけど……待ち時間中にチャットができたりとか。ボス戦は部位破壊じゃないですけど、頭と手があれば、手を先に倒すと頭が弱体化して倒しやすくなるとか、いろいろ案を考えています。実現するかは……別ですが(笑)。
青木 なかなか難しいですよねぇ。ちなみにローグとは別ですが『ドラゴンクエストX』では、2015年7月16日から“不思議の魔塔”というコンテンツが入ったんですよ。そのダンジョンでは全員がレベル1からスタートする、ローグっぽい仕様になっています。
小針 それは大きなアップデートですね!
青木 レベルの高い人と低い人がいるとなかなかいっしょに遊べなかったりするじゃないですか。それを“不思議の魔塔”では、顔見知りの4人で組んでもいいし、誰かとマッチングして挑めたりもしていままでの『ドラゴンクエストX』とは違う雰囲気で遊べるんですよ。
こんな感じで、多人数で遊べるようなローグライクRPGが今後増えてくれるといいですね。
小針 ローグライクRPGというものをもっといろんな人に知ってもらって、触ってもらいたいですね。初めてやったローグが『ブレゲー』だという人もいますので、今後もがんばってプレイヤーを楽しませていけたらと思います。
青木 何人かでいっしょに協力して遊ぶというところは、ゲームのおもしろさを強く感じる部分だと思いますので、なるべく自分が作るゲームも多人数で協力して遊べて楽しめるものを届けていけたらと考えています。
※1……『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親であり、『テラバトル』を配信するミストウォーカーの設立者でもある坂口博信氏のこと。
※2……ATB(アクティブタイムバトル)システムのこと。敵味方関係なく、すばやさを表現化してゲージが溜まったキャラクターから行動ができるシステム。
※3……ひとつの部屋に大量のモンスターが出現するフロア。モンスターを倒せば、アイテムも大量に獲得できるというメリットもある。
ブレイブリーゲート~時の妖精と不思議な迷宮~
- ジャンル
- ローグライクRPG
- メーカー
- サイバーエージェント
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iOS 6.0 以降/ Android 4.0 以上
- コピーライト
- (C) CyberAgent, Inc. All Rights Reserved.
最新記事
この記事と同じカテゴリの最新記事一覧
かわいい見た目と裏腹に中身は生意気⁉NCSOFT新作『護縁(ごえん)』で“ウゲン”を演じる堀江瞬さんに独占インタビュー
2024-07-22 12:00『白猫NW』はなぜバトルシステムを大規模アップデートしたのか|開発ディレクターインタビュー
2024-04-13 09:00【黒ウィズ】なぜこのタイミングで新属性を実装?クリエイターコラボの意図は?11周年を迎えた「黒猫開発室」インタビュー
2024-03-22 17:00