【BitSummit2015】VRとミステリーアドベンチャーが奇跡の融合! 『Dead Secret』がゲームの常識を覆す
2015-07-13 19:46 投稿
未出展の新作を先行体験!
ファミ通App記者団が会場で取材をしていたところ、過去にファミ通Appでもインタビューを掲載したRobot Invaderのクリス・プルエット氏(代表作:『ねじ巻きナイト』、『ぷにぷにパニック』ほか)に偶然再会。
聞く所によると、同氏は現在Oculusにも籍を置いており、VRゲームの開発を行っているのだという。
さらに「今回のBitSummitには出展していないのですが、いま開発中のゲームがあるので、ぜひ遊んでみてください!」と言っていただけたので、まさかのBitSummit未出展のSamsung Gear VR Innovator Edition(以下、Gear VR)向け新作ゲーム『Dead Secret』を先行体験させていただくことになった。
※Samsung Gear VR Innovator Editionについてはこちらの記事で
『Dead Secret』とは、VRと一人称視点のミステリーアドベンチャーが融合した新感覚のタイトル。
じつは今年のGDC 2015(Game Developers Conference 2015)でも披露されているので、既知の人もいることだろう。
物語の舞台はとある一軒家。家主であるハリス・ブラードという男が、自宅で5日前に死亡していた。彼の死には4人の人間が関係しており、その誰かがハリスを殺めたのだという。プレイヤーはハリスの家を調査することで、彼を殺した真犯人を暴き出すことになる。
調査、殺人、推理といったキーワードから”探偵もの”のような印象を受けるかもしれないが、公開されているトレイラーを見てもらえれば分かるように、本作はホラーゲーム的な側面も併せ持った作風になっている。
▼最新トレイラ-
一人称視点で家屋を探索するといったゲームは、これまでにも数多く発売されてきた。正直なところ、上のトレイラーを見ただけでは、既存タイトルと比較して劣っているようにすら感じる人もいることだろう。
だが、実際にヘッドマウントディスプレイを装着して本作をプレイすると、そんな考えは一瞬で吹き飛ばされることになる。
今回記者はオープニング~冒頭少しを体験プレイしたのだが、自分自身が物語の世界に取り込まれたような感覚に陥った。
Oculusブースリポートで触れた『Answer Wars』は、宇宙空間という非現実な環境に加え、三人称視点で機体を捉えている作品だ。そのためゲームの世界に没入した感覚は体験できたものの、”バーチャルリアリティ”という観点で考えると、想像していたものとは少し違うようにも感じられた。
だが『Dead Secret』の舞台は、アメリカの片田舎にありそうな一軒家。さらに主人公である少女の一人称視点でゲームは進行していく。自分たちが生活する上で取る日常的な行動のそれに近しい感覚を味わう事が可能となる。それによって3Dグラフィックで作られた世界にいるはずなのに、あたかも自分がその世界の住人になったような錯覚に陥るのだ。
加えて本作はGear VRでのプレイを想定して作られていることもあり、ヘッドマウントディスプレイだけで操作が完結する仕様になっているのもポイント。
ゲームプレイ中は、プレイヤーの視線の先にポインターのような白い点が表示され、調査可能な家具には専用のアイコンが表示される。ポインターをアイコンに合わせてGear VRの側面にあるタッチパッドをタップすると対象を調べることができる、といった仕組みだ。
昨今では、直感的なタップ操作ができるという点で考えると、アドベンチャーゲームとスマートフォンやタブレットといった端末の相性はよいのではないかとも言われている。
そんな最中に誕生した本作は、タップの感覚こそ違えど、視覚的、聴覚的にプレイヤーをゲームの世界へと完全に埋没させた状態で、”触れるだけ”の操作で事件の糸口を捜していくものになっている。このアイディアには脱帽した。
ちなみに記者が実際に本作をプレイしてまず驚き、感動したのが、ゲームのスタート画面。これはVRの他タイトルでも同様のことかもしれないが、ゲームが起動すると、下の写真のような一軒家の外に立っている状態となり、映像の中心部にゲームのロゴとゲームスタートの文字が表示される形となる。
このときにプレイヤーが上を向くと、そこには視界いっぱいに広がる空があり、後ろを向くと家主のものと思われる車が止められているのだ。
この”見上げたら空がある”という事象は、一見ふつうのことのように感じられるだろう。だが、自分の目線の動きに合わせて視線を動かすとその先に空が存在し、それを人間の視野(180〜200度)で認識する事ができるのだ。
ハイクオリティの3Dグラフィックで描かれた家庭用ゲームと比較した場合、風景のリアルさでは劣るかもしれない。だがモニターのサイズで制限された状態のもと本作のそれとでは、感じられるリアルさが比にならない。
さらに曇天模様の空からはしとしとと雨が降っており、上を見上げると日常でも体験するような天から降ってくる雨をゲーム内で認識することも可能。また、スタート画面だとプレイヤーはおそらく正面しか向かないはずなのに、背面に車やポストを設置するなどの細かな気配りがされているのにも感動した。
長文となってしまったが、もう一点感動したポイントを挙げておきたい。それはプレイヤーが視線を下げると、胸元や腕などもしっかり描かれているところだ。
主人公はもちろん人間なので、自分たちと同じような視線の高さでゲーム内でも物を見ることになる。一般的なFPSなどでもそうした細部は勿論描かれているのだが、プレイヤーの任意で視線変更を行えるヘッドマウントディスプレイで”目線を下げた先に胸や腕がある”となると、自分自身が主人公になった感覚がより一層深まるように感じられた。
さらにゲームスタート直後は一軒家の一室からスタートするのだが、このとき部屋には大きな鏡が存在する(上の写真を参照)。鏡に映っているのはもちろん主人公の女の子(=プレイヤー)で、プレイヤーが頭を左右に振ると鏡に映る主人公も同じように頭を振り、目線を動かすと同じ方向を向く。ゲーム開始早々から、キャラクターとの同調がより強固なものになる演出が用意されているのだ。
また今回はヘッドマウントディスプレイのみでのプレイとなったが、「本当はヘッドフォンも合わせて装着してほしい」とクリス氏。先ほどホラーゲーム的な側面も併せ持つと書いたが、サラウンドでゲーム内の音を感じられるため”背後から足音がする”→”振り向いたらそこに人がいる”といったように、サウンドで恐怖の演出もなされるようなのだ。
Gear VRでのプレイを想定して作られている本作だが、タブレット、PC向けでの配信も予定されているとのこと。クリス氏によれば、「VR版は、Oculus Share(VRアプリ専用のストア)で2015年内配信を目標にしています。そのほかはまだ未定ですね」とのこと。
価格も悩みどころなようで、フリートゥープレイにするか、売り切りにするか、いまも検討を続けているようだ。
それにしても過去のインタビューで「いつかホラーゲームを作ってみたい」とクリス氏は話していたが、VRゲームという予想外な形での発表には驚かされた。
かなりディープな内容の作品ではあるが、そのことについてクリス氏に聞くと「ス マートフォンのゲームだととくにそうですが、いまは簡単なゲームが世の中にあふれかえっています。私たち自身が好きというのありますが、難しいゲームを 作っていくように心がけています。難しいゲームをクリアーしたときの喜びに、ゲーム本来の楽しさがあると思うんです」とコメント。
同氏の代表作でもある『ぷにぷにパニック』をプレイした身としては、たしかにシンプルそうに見えて難しい部分もあったが、それを乗り越えてハイスコアを出したときの高揚感は何物にも変えがたいものであった。
今後日本でプレイアブル体験ができるか定かではないが、もしGear VRで『Dead Secret』を遊べる機会があるなら、ぜひプレイしてみてもらいたい。
辛い現実を前にしたときに、空想の世界へ逃げ込みたい。そんな夢みたいな体験を、『Dead Secret』とGear VRは可能にしてしまったのだ!
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