スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第十三回 「『ケイオスリングスII』発売に思う」
2012-03-19 11:22 投稿
●第十三回 「『ケイオスリングスII』発売に思う」
去る2012年3月15日(木)、ついに『ケイオスリングスII』が発売されました! App Storeで販売OKの承認が下り、発売日を設定したあと、具体的に何時にアップされるのか。実は我々もわからないんですよね。毎回ドキドキします。実際は前日の23時くらいからストアに出ていたみたいです。実はちょうど、その時間はグリーの土田(俊郎)さんと、「これからどんなスマゲを創ったらおもしろいか?」というお話で盛り上がっていました。幸運なことに、この連載きっかけでお話しする機会が持てましたから“スマゲ☆革命”、いろんなところで着々と進行しています。土田さんと考える面白いことが、いつか商品として皆様に届けられたらいいなあと、今は楽しく夢想中です。
さて、この記事。本来は『ケイオスリングスII』発売記念の“臨時スマゲ☆革命”として先週中にアップする予定でした。担当編集の方とは当初“スクリーンショットに開発秘話やコメントを添えていく”といくコンセプトで進めていました。僕も“お祭り”としてワイワイ行こうと思ったのですが、スクショの内容は、もはや皆様に遊んでいただいている映像がすべてだし、開発秘話も超ロングインタビューでお話したし……。と思ったので、急遽路線変更をして、通常の“スマゲ☆革命”にすることにしました。理由は後述しますね。
その前に、『ケイオスリングスII』の公式サイトと発売直前に公開するや一気に 18万PV を記録したトレイラーのロングバージョンが出来上がっていますので是非ご覧ください。
ショートバージョンと違い、豪華声優陣による迫真の演技がご覧いただけます。使用されているゲーム画像は、そのまま一切加工などはしていません。掛け値なしにスマホアプリの常識を超えた内容になっていると思いますので、まだの方は是非ご覧くださいね。余談ですがトレイラーの再生数に、ある“係数”をかけると、その作品が今後どのくらいの売り上げになるのか? スマホアプリの場合のみですが、だいたいの行く末を推測することができます。今回は前作の『ケイオスリングス オメガ』以上、初代『ケイオスリングス』と同じくらいの皆様にご覧いただきました。末永く愛していただけるような作品になるといいなと思っております。
というわけで、今回は“作品リリース後のゲームプロデューサーが、発売直後に何を感じているのか?”を中心に書いてみたいと思います。昨今、短いつぶやきなどでは目にすることがありますが、意外と記事になった長文かつ主観視点の読み物としてはなかったかもしれません。それにいま『ケイオスII』を出して、本当に“いろいろ思うところ”があります。あまりに多くて、僕の頭の中がケイオス(混沌)となっています。正直、発売直後に浮かれてお祭り騒ぎをしている気分では無く、このタイミングでしっかり今後のスマゲについて、どう舵を切っていくのかを決めないといけない。むしろ悩みは深くなる一方です。この感情を記事にすることで整頓し、今後さらにおもしろいものを皆様に届けられるきっかけにできればと考えています。
まずは、なによりうれしかったこと。2000円というアプリとしては高額な設定にも関わらず、トップセールスの2位までご支持をいただいたこと。僕たちは『ケイオスリングスII』を“アプリ”ではなく、完全な“ゲームソフト”として創りました。なによりそれを実現できたのは、関係スタッフの努力と才能の“たまもの”です。彼らがいなければ、不肖安藤自身はなにもできませんから、胸を張って“2000円に値する”内容になっています。とはいえ、お客様からすれば僕たちが“ゲームソフト”として創ろうが、他の商品よりも高い“アプリ”であることには変わりがないですから、多くの皆さんが、この価格でも本作を選んでくださったことに改めて感動しています。本当にありがとうございます。
つぎにもうひとつ、うれしかったこと。App Store有料アプリトップランキングにおいて、『ケイオスリングス』全3作品がTop3を独占しました! 本作のリリースに合わせて期間限定で過去作のセールを実施させていたただいており、新作と合わせて皆様に支持していただいた結果で感激しています。1年前と2年前にリリースしたゲームが、再びランキングのTOPに顔を出すというのは、コンシューマーゲームではまずありえないことです。いわゆる“ロングテール”というのはこういったことで、これがダウンロードビジネスの最もエキサイティングな一面ともいえます。
前作、前々作から上記のような長い年月がたちましたので、感謝の気持ちを込めて期間限定セール(『I』が1100円→350円。『オメガ』が1300円→450円)をしています。iPhone版の場合、最新作が2000円ですので、3000円のiTunes Apps Cardが必要です。1枚購入された場合、それで全シリーズ購入できるような価格設定にしました。こういったセールは頻繁には行いませんので、この機会に是非『ケイオス』シリーズを遊んでいただければ幸いです。今週の金曜日(日本時間で2012年3月23日お昼12時)までセールします。
さて、一方で悔しかったこと。トップセールスランキング1位の『パズル&ドラゴンズ』強し! その牙城は崩せませんでした。『パズドラ』は今年のアプリを語る上で外せない作品ですし、僕もすごく遊んでいるタイトルです。ですが、そもそものゲームの性質が違うとは言え『ケイオスII』の内容には自信を持っていますから、“基本無料+都度課金(いわゆるF2P)”の流れは止められないにせよ、一瞬でも1位は取れると思っていました。この一件は、“ものの売り方”について、今まで以上に考えさせられる良い機会となりました。今、いちばん気になる『パズドラ』開発チーム。実は今日これから会ってお話をする機会をいただきました。「面白かった」「悔しかった」……。時代を切り取った彼らと直接、前向きなお話をしたいなと思っています。楽しみです。
各メディアでもお話している通り、『ケイオスII』は僕のプロデュース作品として、“集大成にして最後の”売り切り作品です。ですので、この究極の売り切りアプリが、どのようにF2Pと対峙していくのか、しっかり見届けたいと思っていました。2年前の『ケイオスリングス』リリースのときには、ほとんどが売り切りアプリでしたから、あっという間に世界中でトップセールを記録したので、じっくり考える暇もなかったのですが、今回はリリース直後20位くらいから、じわじわっとひとつずつランキングを上げていきました。対峙するアプリに思いを馳せながら、特に感じたのは10位以内にランクインしているタイトルの強さでした。『釣りスタ』、『マジモン』、『カイブツクロニクル』、『探検ドリランド』、『Kingdom Conquest』、『関ヶ原演義』、『真・戦国バスター』、『不良道~ギャングロード~』、『パズル&ドラゴンズ』。そう、お気づきですか? 全部“F2P”形式の“オリジナルタイトル”なんですね。
『ケイオスII』のランキングが、じわじわ上がるということは、それぞれの作品がきちんと売上を立てているということ。つまり、ネイティブアプリの市場がしっかり作られていっている証左になっています。『ケイオスII』は、ゲーム以外すべてを含めたダウンロードの“数”でも10位前後まで行っていますから、売り切りでもなかなかの売上規模があります。ですので、ほんとにそうなってきていますね。マーケットがしっかりあるというのは、今後も思いきりゲームが創れるということですので、うれしい限りです。
それにしてもApp Storeのランキングはまったくリアルで、僕はそこが好きです。『ケイオスII』が発売されてから今日まで、ずっと有料アプリのダウンロード数トップは『いただきセックス!』ですからね。実に生々しい。射幸心、出世欲、金銭欲、性欲、利便性、向学心、ワクワク、ドキドキしたい気持ちetc、そういったものが正直にランキングとレビューに裏表なく出ている。これが書籍、ユーティリティー、ゲーム関係なく存在しているのがスマホの市場。ゲームの中身だけでなく、サービスとしてもきちんと考えなければお客様の心にとどかない、総合的なエンターテインメントになっていますね。このランキングを凝視し深く考えた結果、僕なりの“今後のスマゲのあり方”が、何か見えたような気がします。
一つ。“売り方”は変えなければいけない。僕が手がけるもので“売り切り”は『ケイオスII』で一旦おしまい(あるとすればリメイク作品だけかな)。皆様にもっと“近い”方式にします。すでに1年前からしかけていますが、今後はF2Pを中心に、違うやりかたでグッと近づけていきたいと思います。
一つ。“おもしろさ”は変えず、さらに追及します。基本無料になるからといって、タダなりの内容になったり、やたらと射幸心ばかりを煽るようなことはしません。『ケイオスII』の続きも必ず創りますし、おもしろさへの挑戦も揺るぐことなく、かつ、今よりもさらに皆さんに身近にお届けしたいと思っています。
総合すると今回の『ケイオスリングスII』のリリースは、いままで通りの“おもしろさ”を継続発展しながら、“売り方”を変えれば、圧倒的なスマゲが創れるという確信をもつのに十分だったともいえます。まずF2Pの先兵としてまもなく、新ブランド“SiSiLaLa OVERDRIVE(シシララ オーバードライブ)(※)”第2弾『拡散性ミリオンアーサー』をリリースします。無料でありながら、突然J.C. STAFFの美麗アニメが流れる瞬間は、きっと皆さんをドキドキさせるはずです。そして第3弾の『星葬ドラグニル』。『ワイルドアームズ』シリーズ、そして最近ではアニメ『神姫絶唱シンフォギア』を手掛けた金子彰史氏ひきいるウィッチクラフトとしかける、スマホ独占のオリジナル新作RPGです。『ケイオス』シリーズと同等、一部は、もはやそれ以上ともいえる内容ですが、前述の通り皆様に“近い”形式でのリリースになりますので、これも楽しみに待っていてくださいね。次の『ケイオスリングス』に関しても、最高のクリエイターたちと着々と話を進めています。これも“ものすごい”ことになるはずです。(※“SiSiLaLa OVERDRIVE”についてはこちらをご覧ください)
音楽からもワクワクを仕掛けていきたいと思っています。このあたりは、ニコニコ生放送でやっている番組『シシララ!』でお話しします。毎週豪華ゲストを呼んでやっていますので是非ご覧ください。
とにかく、僕はこれからも“アプリ”ではなく、“ゲーム”を創っていきますよ!
よりおもしろいものを、より近く。
つづく
【ケイオスリングスII】
メーカー:スクウェア・エニックス
配信日:配信中
価格:iPhone/iPod touch版 2000円[税込])、iPad版 2200円[税込]
対応機種:iPhone 3GS、iPhone 4、iPhone 4S、iPod touch(第3世代)、iPod touch(第4世代)、およびiPadに対応。iOS 4.0以降が必要
著作権:(C)2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. ILLUSTRATION: Yusuke Naora Developed by Media.Vision Inc.
※iPhone/iPod touch版
※iPad版
『ケイオスリングス オメガ』
※iOS版
価格:1300円[税込]⇒450円[税込]※セール中(3月23日 正午まで)
対応機種:iPhone/iPod touch、iPad互換 iOS 3.0以降が必要
※Android版
価格:1300ポイント(1375円[税込]相当)
備考:月額制コース300ポイント~1,500ポイントコース、従量制コース 100~1,500ポイント
・アクセス方法
ドコモ:「dメニュー」→「メニューリスト」→「ゲーム」→「ゲームパック」→「SQUARE ENIX MARKET」
KDDI:「au one」→「メニューリスト」→「ゲーム」→「総合」→「SQUARE ENIX MARKET」
・対応機種
ドコモ:ARROWS kiss F-03D、F-03D Girls、ARROWS X LTE F-05D、LUMIX Phone P-02D、GALAXY S II LTE SC-03D、GALAXY NEXUS SC-04D、Xperia PLAY SO-01D、Xperia NX SO-02D、Optimus LTE L-01D、MEDIAS WP N-06C、P-07C、GALAXY S II SC-02C、Xperia arc SO-01C、GALAXY S SC-02B
KDDI:ARROWS Z ISW11F、ARROWS ES IS12F、htc EVO 3D ISW12HT、DIGNO ISW11K、MOTOROLA PHOTON ISW11M、MOTOROLA RAZR IS12M、GALAXY S II WiMAX ISW11SC、AQUOS PHONE IS13SH、AQUOS PHONE IS14SH、G’zOne IS11CA、REGZA Phone IS11T、AQUOS PHONE IS11SH、AQUOS PHONE IS12SH、INFOBAR A01、MIRACH IS11PT
『ケイオスリングス』
※iOS版
価格:1100円[税込]⇒350円[税込]※セール中(3月23日 正午まで)
対応機種:iPhone/iPod touch、iPad互換 iOS 3.0以降が必要
※Android版
価格:1100ポイント
備考:月額制コース300ポイント~1,500ポイントコース、従量制コース 100~1,500ポイント
・アクセス方法
ドコモ:「dメニュー」→「メニューリスト」→「ゲーム」→「ゲームパック」→「SQUARE ENIX MARKET」
KDDI:「au one」→「メニューリスト」→「ゲーム」→「総合」→「SQUARE ENIX MARKET」
・対応機種
ドコモ:ARROWS kiss F-03D、F-03D Girls’、ARROWS X LTE F-05D、MEDIAS PP N-01D、P-01D、LUMIX Phone P-02D、GALAXY S II LTE SC-03D、GALAXY NEXUS SC-04D、AQUOS PHONE SH-01D、AQUOS PHONE slider SH-02D、Xperia PLAY SO-01D、Optimus LTE L-01D、F-12C、MEDIAS WP N-06C、GALAXY S II SC-02C、AQUOS PHONE SH-12C、Xperia ray SO-03C
KDDI:ARROWS Z ISW11F、htc EVO 3D ISW12HT、DIGNO ISW11K、MOTOROLA PHOTON ISW11M、AQUOS PHONE IS13SH、AQUOS PHONE IS14SH、MEDIAS BR IS11N、G’zOne IS11CA、Xperia acro IS11S、REGZA Phone IS11T、AQUOS PHONE IS11SH、AQUOS PHONE IS12SH、INFOBAR A01、MIRACH IS11PT、EIS01PT
安藤武博 スクウェア・エニックスのゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。 |
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