『シャドバ』プロリーグ公式テーマソング『ダイバー』のMV制作秘話にクローズアップ!ポルカドットスティングレイ Vo.&Gt.雫さんインタビュー

2021-09-15 21:00 投稿

ゲームクリエイターの経験からeスポーツの魅力を語る!

現在、『Shadowverse』(以下、『シャドバ』)のプロリーグ“RAGE Shadowverse Pro League 21-22”が開催中。本大会はプロ選手たちが年間王者をかけてしのぎを削る国内最高峰の一大リーグ戦だ。

そんな“RAGE Shadowverse Pro League 21-22”では、ポルカドットスティングレイによる楽曲『ダイバー』が公式テーマソングとして起用されており、大会を盛り上げる一因となっている。

そんなプロリーグのテーマソングを担当したポルカドットスティングレイは、楽曲MVをバンドメンバーみずからが制作。さらに楽曲そのものも、eスポーツプレイヤーへの思いが込められた内容になっているそうだ。

そこでファミ通Appでは、SNSプロモーション、グッズ制作など“徹底的なマーケティング戦略”でバンドを牽引するボーカルの雫さん(文中、)にインタビューを実施した。

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▲インタビューにご対応いただいた雫さん。

ゲームディレクターという経歴を持ち、バンドのボーカルを務めながらゲームを作り続ける雫さんが語った、楽曲にかけるeスポーツへの思いなどを本記事でお届けしよう。

【ポルカドットスティングレイ】

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福岡出身、4人組ギターロックバンド。2015年活動開始。メンバーの交代を経て、2015年8月、現体制になる。2021年10月から、約2年3ヶ月振りの全国ツアーを実施。

 “徹底的なマーケティング戦略”でターゲットのニーズに合わせた楽曲を制作

──“RAGE Shadowverse Pro League 21-22”の大会公式テーマソング『ダイバー』は、どのような思いを込めて制作されたのでしょうか?

 平たく言えば応援ソングなのですが、eスポーツイベントの“RAGE”全体を含めたeスポーツそのものを盛り上げていこうという思いも強く込めた楽曲になっています。選手としてeスポーツに参加している人はもちろん、選手を志している人もターゲットとして制作しています。

eスポーツ選手になりたい、ゲームイベントで1位になりたいという夢のためにもがく人たちを応援することが、この曲のテーマです。

海の底から水面を見上げたときにキラキラとした光が差し、その光を目指して上に向かって泳いでいく様子が、eスポーツで夢に向かっている人たちに似ていると思い、それになぞらえて作詞をしています。タイトルを『ダイバー』にしたのも、そういった理由からです。

──雫さんが“徹底的なマーケティング戦略”と“ニーズ至上主義”を掲げていらっしゃることをお聞きしました。今回はどのようにして、ターゲットのニーズを調査されたのでしょうか?

 楽曲を制作するにあたって、クライアント様とミーティングを重ねたのですが、そこでRAGEファン、そして『Shadowverse』ユーザーの方たちがどのような人たちなのかをお聞きしました。そのときに曲のイメージを作れる答えが返ってきたので、今回はその返答をもとに制作しています。

ときにはTwitterでアンケートを取り、そこで得られたデータを楽曲制作に活かすこともありますが、今回はクライアント様のデータが完璧だったので、すぐに曲作りへとシフトできました。

──今回に限っていえば、マーケティングをご自身で調査される必要がなかったということですね。

 そうですね。そもそも自分自身がゲーマーなので、すでにニーズがわかっているような感覚を持っていました。たとえば女子高生向けの恋愛ソングを作ってほしいという依頼を受けた場合であれば、自分がもう女子高生じゃないので、女子高生にアンケートを取ったり、いろいろな調査が必要になってきますが、今回はそういう必要がありませんでしたね(笑)。

──つまり、雫さんはRAGEがターゲットとして設定しているユーザー層に入っていたと。

 はい、しっかり被っていたので、ありがたかったです(笑)。

──そういった点からも、今回の楽曲制作で難航した部分は少なかったのでしょうか?

 作詞では、それほど困ることはなかったのですが、作曲面では難しい部分がありました。サビで前向きな要素を表現し、それ以外の部分で夢に対する不安も表現しようとしたのですが、それを曲にするのが難しかったです。転調やBPMの変更、楽器構成でも試行錯誤をし、聞く人への応援がより届くように、こだわって制作しています。

また曲の途中に英語で歌っているところがあるのですが、じつはそこを日本語訳するとなかなか暗い内容になっています。ただ、それをそのまま日本語で伝えてしまうと、応援メッセージというものがブレて伝わってしまう可能性があったので英語にしました。

でもその暗さという部分も大事な箇所ではあるので、それを表現するためにテンポを遅くしています。ちなみにこのテンポを変えるアイデアは、メンバーの中でもっともガチで『シャドバ』をプレイしているウエムラユウキから出たものです。ウエムラユウキは、『シャドバ』ファンとしての目線で、この曲にかなりの熱量とこだわりを持って臨んでくれたので、『シャドバ』ファンの方にその熱意が伝わるとうれしいですね。

しかし、曲の途中でテンポを変えると曲全体の雰囲気も変わってしまいますし、何より曲の演奏難度が上がるのでライブにも影響が出る可能性があります。私たちは、こうしたチャレンジをあまりやる機会がなかったので、メンバーからは反対意見もありました。ギター担当が「やだ、やだ変えたくない~」とゴネたり(笑)。

それくらいテンポを変えるのは難しかったのですが、全員ウエムラユウキの熱意に負けましたね(笑)。ふだんは、曲作りであそこまで主張することはないメンバーだったので。

私もいい案だと思いましたし、何より『シャドバ』プレイヤーであるウエムラユウキの熱意は大事にしたいと思ったので、BPMは変えることにしました。その結果、テンポの変更がサビを映えさせる効果も生み、潜ってから水面に上がる気分の高揚を表現できたと思います。

──歌詞の中に暗い詞があり、そこを英語で表現しているとのことですが、よければそこが日本語でどのような意味だったのかを教えていただけますか?

 その部分へ入る直前、日本語のAメロが「この曲、聞いていたら無敵になった気がするんだ。勘違いさせてくれて僕はうれしかったよ」と歌っていて、少し気持ちが上がるようになっていますが、英語パートでは数秒前のポジティブだった自分に対して「いやいやいや、だから何?」とネガティブな自問自答をしています。

そして「いっぱい悩んでがんばるのは、もうたくさんです」というような言葉につながるのですが……。クライアント様と最初に話したときに「eスポーツはほかのスポーツ競技と違って新しいスポーツなので、家族や周囲の理解がない状態で選手を目指してがんばっている人たちも応援したい」という話を聞いていたので、部分的に捉えた際、努力を否定するようにも聞こえるこうした箇所はハッキリと伝わらないように英語にしました。

──MVもご自身で制作されるとのことですが、そちらはどのような映像になっているのでしょうか?

 簡潔に述べると、私たちが3分半襲われ続け、戦う内容になっています。MVは、プロモーション的な意味合いと楽曲の中身を表現する意図の2軸があって制作されることが多いと思うのですが、私たちもそこは同様です。ちなみにアクション、バトルの部分では殺陣師さんをお招きして、真剣に取り組んでいるので、ぜひ見てほしいです!

プロモーション的には、MV公開時に“ポルカドットスティングレイが3分半襲われ続けるMV”と打ち出し、インパクトを与えることで「3分半も襲われ続けるんだったら、見てやろうかな」という印象を持ってもらう狙いがあります。YouTubeで公開する際には、サムネイルも殴り合いの場面にしたうえで、顔もメイクで汚したものを出すので、ぜひそこにも注目してほしいですね!

ダイバーサムネイル

 これだけ聞くと、プロモーション偏重のMVと捉えられるかもしれませんが、“楽曲のメッセージを表現する”という意図も多く込めています。

そもそも“RAGE”がeスポーツ(対戦)のイベントなので、私たちも本当に戦ったらおもしろいだろうなと。そこから着想を得て、戦いをMVのテーマに選びました。さらに、戦っている相手が自分自身の影から出てきた存在という裏設定を持たせているのですが、これは『Shadowverse(シャドウバース)』の“シャドウ”という単語にかけたものです。

また曲の中でも「対戦相手との戦いでありながら自分自身との戦いでもある」ということ歌っているのですが、そことのダブルミーニングでもありますね。

──撮影用のアクションを演じてみての感想をお聞かせください。

 大変でしたね(笑)。アクションをしたことがないというのもあるのですが、今回戦うにあたって心の中にある、かっこよくない部分も含めて表現したいと思い、撮影に臨みました。殺陣師の方にも「汚いストリートファイトの殺陣を作ってください」とお伝えして、フリを作っていただいています。

そういった背景もあり、アクションの内容はなかなか泥臭い内容になっています。相手がつかみかかってきたときに、きれいに応戦するのではなく、メリケンサックで相手のヒジを破壊してから反撃したりとか。それに迫真の映像を作るために相手の方にも本気で殴ってもらっていたので、ガードが遅れてふつうに殴られることもあり、とにかく大変でした(笑)。

──えええ! ケガとか大丈夫でした?

 幸い大きな怪我はなく撮影は終わりました。

──でも、かなりハードな撮影だったようですね。やはり、MV制作時にいちばん苦労した部分はアクションですか?

 アクションにも苦労しましたが、表現でも同じく苦労しましたね。敵が自分自身の影から生まれたという裏設定は先程お伝えした通りですが、それを映像として見せるにあたり説明的になりすぎないように、しかし視聴者の方にはちゃんとわかってもらえるような演出を入れています。見たときの気持ちよさを阻害しないぐらいのストーリー性を込めようとしたので、その表現は素直にたいへんでした。

でも、いま思い返してみれば……いちばんたいへんだったのは後日の筋肉痛ですね(笑)。MVの撮影では毎回24時間をフルに使うので、簡単ではありません。撮影翌日はいつもキツイ筋肉痛や疲労感に襲われます。ですが今回は、それ以上でしたね。起きたときに体が1ミリも動かなくって、力が入らないとか痛いとかのレベルではありませんでした(笑)。

飼っている猫も心配して寄ってくるほどでしたよ(笑)。

──ちなみに、今回のMVは『夜明けのオレンジ』や『テレキャスター・ストライプ』のように雫さんが監督をされたのでしょうか?

 企画やシナリオは私が作りましたが、今回はNHK『みんなのうた』の『トゲめくスピカ』の、我々のYouTubeチャンネルのMVなどで監督をしてもらった井上強さんにお願いしています。井上さんは、撮影当日に気合と緊張で目が血走っている私を包み込んでくれる、やさしいお父さんのような方です(笑)。

バンドボーカルとゲームクリエイターを両立させた雫さんが語るeスポーツの魅力とは

──“RAGE Shadowverse 2021 Autumn”に、ウエムラユウキさんがエントリーされていましたが、雫さんは『シャドバ』をプレイされた経験はありますか?

 あります。プレイすると楽しい気持ちになるのですが、私はターン制の戦略性が高いゲームが下手なので、戦績とかはあまり……(笑)。

──雫さんが感じる『シャドバ』や“RAGE Shadowverse Pro League 21-22”の魅力を、ぜひお聞かせください。

 私はゲームクリエイターでもあるので、今回は開発者として『シャドバ』の印象を語らせてください。

『シャドバ』は、カードゲームとしておもしろいということはもちろんなのですが、離脱ポイントが少ないという点が、長くたくさんの人に愛されている理由だと思っています。

──離脱ポイントの少なさ、ですか?

 ゲームディレクターとしてゲームを作るときに、私が開発チームによく伝えている言葉に「ユーザーが何かを達成したときに派手な演出を入れるのは、ほめてあげていることになる。ほめることは大事!」というものがあります。ゲームで強くなったときに、誰もがほめてほしいという思いがあると考えているので、そこからの言葉ですね。

その視点で見ると、『シャドバ』の演出の入れかたは絶妙で、ほしいところにすばらしい演出が入っています。これも『シャドバ』が気持ちよくプレイできるひとつの要素でしょう。

またワンプレイが短いという部分も非常に重要だと思っています。私が短気だからかもしれないのですが、ワンゲームが長いと負けたときにやめたくなってしまうんです。その点『シャドバ』はワンゲームの長さがちょうどよく、負けたときの悔しさがちょうどいいと感じました。

──たしかに、1プレイの時間が長いと負けたときに「これまでの努力、時間がムダになった」と思うこともありますね。

 その通りですね。しかしなんと言っても私個人が推している『シャドバ』のスゴイところは、UIです。

UIが優れていても、ユーザーの方にとって、そこはうれしさを覚えるポイントではないと思います。ですが、これもユーザーを離脱させないという面で長期的に影響している部分なんです。『シャドバ』は、私のようなカードゲームをあまり遊ばない人でも、そのUIを見るだけで操作方法やシステムを理解させてくれるUIになっていると思います。

──現在のゲームクリエイターとしての活動は、どのようになっているのでしょうか。

 私は、2017年のデビューまで会社員としてゲームクリエイターをしていました。バンドのデビューとともに退職をしたので、いまはアーティストであり、フリーランスのゲームディレクターでもある状態です。と言っても、会社をやめてからゲームを作った際のチームメンバーは、ふたりほどでしたし、意欲的に活動ができているわけではありません。

──フリーになってからは、どのようなゲームを制作されたのでしょう?

 制作の規模が小さいため、あまりリッチなコンテンツは難しく、ドット絵のランゲームを制作しました。飼っている猫の“ビビ”を題材にした『ビビばしり』というゲームなのですが、猫の音声も実際に録音したものを使っています。フリーで制約がないので、ゲーム作りそのものを楽しんでいます(笑)。

⇒【雫さんがディレクターを担当したゲーム『ビビばしり』はこちら】

ぜひみなさんにも楽しくプレイしてもらえるとうれしいですね! もしバグを見つけた方がいたら、私のTwitterアカウントに教えてください(笑)。

──さまざまな面で深くゲームに携わってきた雫さんから見て、eスポーツの魅力とはどのような部分にあるとお考えですか?

 一般的なスポーツは、対戦するのに他者と実際に会う必要がありますが、eスポーツはその限りではありません。現在の社会情勢になってみて痛感したのですが、プレイするのに状況を選ばないというのはすごいことです。これまでゲームを作っていても、まだわかっていなかったゲームの底力のようなものを、感じています。これが第一の魅力だと思います。

それとスポーツの場合は、身体的なポテンシャルが成績に影響してきますが、多くのeスポーツは身体的な能力と成績との関係が比較的薄いので、より多くの人にチャンスがあると思っています。この間口の広さと、夢のあるところはeスポーツならではの魅力ではないかなと。

──最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

 ひとりでも多くの方にMVを見てほしいです! 私のバンドでは、ほかのバンドやアーティストよりも、魂を込めてMVを作っています。いろいろなMVをYouTube上に出しているので、“RAGE Shadowverse Pro League 21-22”を見て私たちの曲に関心を持っていただけたら、ぜひ見てください。よろしくお願いします。

また時間があるときはいつでもゲームを作りたいなと思っているので、私のTwitterアカウントに「こんなゲームを作ってほしい」などのメッセージを寄せていただけるとうれしいですね!(笑) 作るときの参考にさせてもらいます!

──本日はありがとうございました。

⇒雫さんのTwitterアカウントはこちら!

⇒“RAGE Shadowverse Pro League 21-22”公式サイトはこちら!

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