『Shadowgun War Games』のクリエイターを直撃、gamescomで注目を集めたesportsに特化したFPSの開発意図に迫る【gamescom 2018】

2018-09-12 20:45 投稿

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Shadowgun War Games

『Shadowgun Legends』からesportsの要素を抽出したのが、『Shadowgun War Games』

ヨーロッパ最大規模のゲームイベントとうたわれるgamescom。記者がえっちらおっちら会場をふらふらしていると、日本の編集部から連絡が入った。「現地で話題の『Shadowgun War Games』を取材してきてほしい」というのだ。聞くと、この『Shadowgun War Games』というタイトル、どうやらgamescom 2018でベスト・モバイルゲーム賞を受賞した注目作らしい。“esportsに特化したスマートフォン向けタイトル”とのことで、esportsが脚光を浴びる昨今の流れを象徴するようなタイトルとも言えそうだ。

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というわけで、会場で直撃取材をすべく『Shadowgun War Games』のパブリッシャーを聞いてみたところ、MADFINGER Gamesとのこと。「なんか聞いたことのあるメーカーだな……」と思いきや、それもそのはず、ファミ通Appなどにも度々登場してきた、チェコに本社を構える気鋭のスタジオ。ゾンビシューターの『DEAD TRRIGER』や『UNKILLED』などの日本語版がリリースされていることもあり、ご存じの方も多いのではないかと思われる。

快く取材に応じてくれたのは、MADFINGER Games CEO&共同創業者のマレック・ラバス氏とクリエイティブディレクターのオスカル・ソレル・ファス氏。ファミ通の取材ではすっかり慣れっことも言えるマレック氏なので、リラックスして取材陣を出迎えてくれたのだが、まずは『Shadowgun War Games』の経緯をうかがおうとしたところ、大前提となるのは、同社からこの3月に配信された『Shadowgun Legends』であるときっぱり。つまり、『Shadowgun Legends』からesportsの部分を抽出したのが、『Shadowgun War Games』であるというのだ。

 
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▲左がMADFINGER Games CEO&共同創業者のマレック・ラバス氏。右がクリエイティブディレクターのオスカル・ソレル・ファス氏

そもそも『Shadowgun Legends』は、MADFINGER Gamesが社運を賭けて(おそらく)臨んだ大作。「MMO、FPS、RPGなどの要素が盛り込まれた全部入りのアプリです。大きなミッションが15、70のサイドミッション、小さなミッションが100、武器は300で、アーマーが1000で……(以下、略)」とマレック氏が怒涛のように語る通り、とにかく大ボリュームの1作なのだ。開発期間に3年を要しているということからも、いかに同作に注力しているかがうかがい知れる。

そんなわけで、この3月に満を持してリリースされた同作だが、多くのユーザーから想定していなかった意見が寄せられたのだという。「もっと軽めにして、対戦に特化したゲームとして遊びたい」という要望だ。実際のところ、マレック氏も試作の段階から『Shadowgun Legends』は少し重いかな……と思っていたのだという。これはゲームの構造上やむなしの一面もあるが、たとえば、PvPを楽しむときも、まずはソーシャルハブに行ってNPC(ノンプレイヤーキャラクター)と話して、アクティビティを経て、そしてPvPへ……という流れになる。それを省いてすぐに遊びたいというのが、ユーザーからのリクエストだ。

そんなフィードバックを受けて、マレック氏は即決。6月にはesportsの要素を抽出した、『Shadowgun War Games』の開発に着手する。それで、gamescom 2018の会場では試遊できるまでに持っていっているのだから、なかなかのスピード感だ。

対戦人数を『Shadowgun Legends』の4vs4から、5vs5にしたという『Shadowgun War Games』。クリエイティブディレクターのオスカル・ソレル・ファス氏によると、esports化にあたっては3つの柱があったという。「ひとつはFPSとして安定性があること。ふたつめがesportsとしてバランスが取れていること。武器やスキルなど、いろいろな要素でバランス調整に気を配っています。そして3つめがesportsはオーディエンスがいるものなので、見せることを考えてデザインのアプローチを変えることです」(オスカル氏)。

いずれもesportsコンテンツにあたっては、重要なポイントと言えるだろう。とくにデザインのアプローチが気になるところだが、疑問をぶつけてみると、マレック氏はちょっと申し訳なさそうな顔をして、「それは秘密です」とひと言。「実際のスポーツを考えていただければわかると思うのですが、観衆がいるのといないのとではやることが違う。ゲームが進行しているのに、何が起こっているのかわからないと話にならないので……。いま起こっていることをわかりやすく伝えるようにしています」(マレック氏)という。

さらに、『Shadowgun Legends』は画面に情報量をたくさん盛り込んでいるが、『Shadowgun War Games』では画面のクオリティーは維持しつつも、シンプルなインターフェースにしてわかりやすくしているのだという。

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さて、『Shadowgun War Games』では、技術面において特筆すべことがある、90fpsへの対応だ(端末によるらしいが……)。これは、『Shadowgun Legends』から実現していたことだが、90fpsにこだわった理由については、「キレイだからです(笑)」とマレック氏。「コンソールだと60fpsはふつうになっているので、何か違うことをやりたかったんです」とのこと。素人考えながら、スマホで90fpsを出すのはたいへんなことだと思われるが、マレック氏は、「ほかのスタジオは苦労しているようですが、自分たちにとってはラクでしたね」とケロリとしたもの。同作の開発環境はUnityとなるが、スタッフの中にはコンソールゲームの開発経験がある人も多く、トリプルAのゲームを作れるような技術を持っている人材を多数起用しているという。

思えば、全部盛りの『Shadowgun Legends』も、確とした技術力があってこそ実現可能だったわけで、MADFINGER Gamesの実力恐るべし(!)なのだ。「私たちのミッションは、コンソール向けのトリプルAタイトルに引けを取らないスマートフォン用ゲームを作ることです。大きなスクリーンでも、すばらしいゲームに見えるものを作りたい」と、マレック氏は語るが、『Shadowgun Legends』および『Shadowgun War Games』は、そんな同社の方針を担った注力タイトルだと言える。

さて、記者がどうしても気になってしまうのは、『Shadowgun Legends』と『Shadowgun War Games』が食い合ってしまうのではないかということ。もともとMADFINGER Gamesが総力を結集して制作した『Shadowgun Legends』であるが、そのエッセンスを抽出した『Shadowgun War Games』をリリースすることで、おいしいところだけを取られてしまうのではないかと危惧するのだ。これに対してマレック氏は、「そんなことはありませんよ」と首を横に振る。『Shadowgun War Games』は“より競争的な要素を強化してほしい”というユーザーのニーズに応えて開発を開始したPvPに特化したコンテンツであり、『Shadowgun Legends』とはゲーム性も異なるというのだ。「まあ、『Shadowgun Legends』と『Shadowgun War Games』は兄弟のようなものです。ときには競合もするかもしれませんが、お互いが助け合うのでないでしょうか。兄弟ってそういうものですよね?」とマレック氏。

ちなみに、両タイトルが“助け合う”要素のひとつとしてあるのが、ある程度のステータスの共有。『Shadowgun Legends』で育成したキャラクターの経験値は『Shadowgun War Games』には持ち込めないが、“フェイム”というパラメーターは移行できるという。

ここで、大急ぎで説明しておくと、“フェイム”とは、『Shadowgun』シリーズにおける“名声ポイント”のようなもの。本作では、主人公は“地球を救うロックスター”という設定で、自身を強くするとともに有名になっていく必要がある(ロックスターなので)。そのためには“フェイム”を高めていく必要があるのだ。“フェイム”を獲得するには、目立つ行為をしないといけないらしい。“フェイム“は、『Shadowgun Legends』における独特のシステムなのだが、これを導入した理由に関してマレック氏は、「やりたかった」とシンプルにその意図を語る。「ゲームで強い人はいっぱいいるので、何かクレイジーなことをすることで目立てるようにしたかったんです。裸で街を走り回るとか……」。

“フェイム”とは、『Shadowgun War Games』でもっとも重視している“競争要素”には、直接的には関係してこないような気もするが、どう連携してくるかに関しては、「“フェイム”を持っているといろいろな道が開けます。詳細はまだ明らかにしていませんが、お話したいことはたくさんあります」とのことで、いろいろとユニークな仕掛けを考えているようだ。

 
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Gamescom 2018の会場でも大盛況。最終日にはゲーム大会なども開催された。

『Shadowgun Legends』は基本プレイ無料でアイテム課金制。『Shadowgun War Games』でもそれは踏襲しており、esports化に際しての賞金をどうするかといったことに対しては、ただいま検討中だという。

『Shadowgun War Games』はこの11月にベータテストを予定、2019年第一四半期には正式リリースを予定しているという。日本展開に関しては「ただいまパートナーを募集中」とのこと。現在配信中の『Shadowgun Legends』に関しては、彼らが自力でローカライズをしたようだが、さすがに運営面が大きな比重を占める『Shadowgun War Games』に関しては、「とくに日本と韓国では自分たちではできないので、いっしょに組んでくれるところを探している」(マレック氏)状態だという。「日本は大好きなので、なんとかしたいです」とマレック氏は熱く語るが、その熱意が通じることを期待したい。

最後に、オスカル・ソレル・ファス氏みずからがプレイしてくれた『Shadowgun War Games』のプレイ動画をお届けする。

 

Shadowgun War Games

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
このゲームの詳細を見る
ジャンルFPS/TPS
メーカーMADFINGER Games, a.s.
公式サイトhttps://www.shadowgunwargames.com/
配信日配信中
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