
モンスターたちの{起源/オリジン}第12回:世界蛇ヨルムンガンドは想像を超えるほどデカかった
2018-08-16 18:00 投稿
でかいモンスター選手権優勝?
今回紹介するのは、北欧神話に登場する世界蛇ヨルムンガンド。
本連載ではたびたびデカいモンスターを登場させているが、今回紹介するヨルムンガンドも相当にデカイ。っていうか、その中でも優勝候補のひとつだ。
とはいえ、“ヨルムンガンド”と言われても、パッとそれを想像出来る人はあまりいないと思う。アニメ化されたコミックのタイトルにもあるが、英語でもないし、よく分からないと思う人が多いだろう。
ヨルムンガンドというのは、ズバリ、北欧神話に登場するデカい蛇である! 身も蓋もない言いかただが、そのデカさが違う。
ヨルムンガンドは、別名、世界蛇。そう、世界と同じくらい大きくい毒蛇の怪物なのだ!
体長4万キロのヘビ?
ヨルムンガンドは、邪神ロキが巨人の娘アングルボザとのあいだに作った3人の子どものひとりであり、巨大な狼フェンリルと冥府の女王ヘルを兄弟に持つ存在である。
この兄弟たちからもわかる通り、もうスタート地点から魔物だったヨルムンガンド。その存在感は神々のあいだからしてみてもやはり大きかったようで、オーディンは予言の女神であるノルンから送られた「この3兄弟は神々の終末に立ち会う存在」という進言に従い、ヨルムンガンドを海に投げ捨てたそうだ。
神々の終末、これはもはやゲーム好きならば説明するまでもないだろう。そう、ラグナロク、神々の黄昏である。
ヨルムンガンドを含む3兄弟は、魔物としてこれに大きく関わるという予言があり、オーディンはそれを恐れたというのだ。
いやしかし、海に投げ捨てるって雑だなぁ。なんかこう、嫌々ミミズを手にとって、それを遠くに放り投げる、週末農業体験をしにきた丸の内OLのような姿が目に浮かぶ。筋骨隆々のヒゲのおっさんが「キャーキャー」言いながら、蛇を海に投げ捨てる……。どうなのそれ、全知全能の神として。
まぁそんな雑な対応だったため、案の定ヨルムンガンドは、それくらいでは死ななかった。むしろそのまま成長を遂げてしまい、なんと体が世界をぐるりと回り、自分で自分の尻尾を咥えられるほど成長したという。
ここで言う世界は“ミッドガルド”と呼ばれている北欧神話における人間界ということなので、それを地球と考えるならば、つまり、体長は4万キロメートル超ということになる。分かっちゃいたけど、デカい!
スケールデカ過ぎ問題
北欧神話は、最後に、神々と魔物たちが戦って世界が終わりを迎える最終決戦、ラグナロク(神々の黄昏)という独特の展開を持つ。先に少し語った、オーディンが恐れた“神々の終末”こそが、まさにこれである。
このラグナロクにおいて、ヨルムンガンドは北欧神話の神々の中でも最強と語られることの多い存在、雷神トールと対峙。ヨルムンガンドはトールの投げたミョルニルに討たれ、トールはヨルムンガンドの毒を受け、共倒れとなった。
そんな関係性の両者だが、じつは対峙するのはこれが初めてではなかった。
ヨルムンガンドとトールの最初の対決は、トールが大きな鍋を借りようと巨人ヒュミルのところへ行ったときの話だ。ちなみにこの鍋、深さが5マイル(約8キロメートル)もあるという。何やら単位がおかしい……。
ともあれトールはヒュミルと会い、夕食のために海釣りにでかけたのだが、ここでトールはヨルムンガンドとはじめての邂逅を果たしたのだ。
ちなみにこのときの釣果。ヒュミル:クジラ2匹。トール:ヨルムンガンド。やっぱりデカさの単位が違う! 世界蛇そのものを釣り上げてしまうとは、さすがはトールといったところなのだろうか。
ちなみに当然だが、このときも両者は激しい戦いをくり広げており、そのときの衝撃は世界を揺るがすほどのものだったそうだ。夕食を用意しようとしてラグナロク級の戦闘を巻き起こす、両者の凄さを思い知らされる。
結果として、あまりに激しい戦いだったので、ビビったヒュミルがトールの釣り糸を切り、この時の戦いは引き分けに終わった。
こうしてヨルムンガンドを振り返ってみると再確認させられるが、やはり神話はサイズのスケールが違う。そんなやつらと戦ってる神様や英雄たちはホントすごい。
うーん、どんな武器を装備してもダメージを与えられる気がしないぞ……。
おまけの4コマ
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4コマ作:海野なまこ
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文:朱鷺田祐介
【朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)】
TRPGデザイナー。代表作『深淵第二版』、『クトゥルフ神話TRPG比叡山炎上』。翻訳に『エクリプス・フェイズ』、『シャドウラン20th AnniversaryEdition』。2004年『クトゥルフ神話ガイドブック』より『クトゥルフ神話』の紹介を始め、『クトゥルフ神話超入門』などを担当し、ここ数年は毎年、ラヴクラフト聖誕祭(8月20日)および邪神忌(3月15日)に合わせたイベントを森瀬繚氏と共同開催している。
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