プロゲーマーと大会を国がサポート!台湾のゲーム市場とesports事業を聞く
2018-05-23 10:00 投稿
ゲーム好きな若者を暖かく見守る施策を実施
2018年5月12日、台湾のゲームショウ“Taipei Game Show”を主催するTCA(台北市電脳商業同業公会)の副総幹事を務める黄鋆鋇(チャールズ・ファン)氏に、台湾ゲーム市場とesports事業、そして台湾版『モンスト』をテーマにインタビューを敢行。本記事では、その模様をお伝えする。
■TCA(台北市電脳商業同業公会)副総幹事の黄鋆鋇氏
Taipei Game Showとは?
Taipei Game Showは台湾の台北で開催されている国内最大級のゲームショウ。2018年は1月25日~1月29日に開催。PCゲームを中心に、スマホゲーム、家庭用ゲームのほか、インディーゲームにも力を入れるなど、出展タイトルは年々増加している。
台湾には、esportsなどを手軽に学べる施設や体験ができるエリアも充実。台北市にある三創生活園區(さんそうせいかつえんく)のショッピングセンターには、PC販売の展示場やesportsの完備が整ったブース、VR体験ができるエリア、700名ほどを収容できるイベントホールなどを館内に設置。仕事や買い物がてらにゲームに振れることができるなど、より身近な存在になっている。
台湾ゲームの傾向やesports事情
──台湾のプレイヤーは、世界中のゲームを楽しんでいるようですが、そこにはどういった国民性や文化の背景があるのでしょうか?
黄鋆鋇氏(以下、黄) 文化の背景のひとつとして、台湾の産業発展との関わりがあると思います。台湾ではPCのハードウェアを中心に生産して輸出していますが、その割合は世界中の70%ほどです。そのこともあり、台湾のゲーマーは世界中のゲームと触れる機会があり、それを楽しんでいるといえます。
ちなみに、台湾の人口は2300万人ほどですが、世界中のゲーマーの割合で見ると、台湾は上位にいます。そのため、ゲーム制作者たちも、まずは台湾市場でゲーマーたちの反応を見て、ゲームの修正やデバック作業をしています。そういったことで、台湾のゲーム市場が賑やかになっていると思います。
──台湾ではゲームに対する社会の目やゲームの位置づけはどのように考えられていますか?
黄 ゲームに対する考えは日本と同じです。やはり、親たちは子どもをいい学校に進学させようとする“進学主義”が強いですからね。これは中国や韓国も含め、世界各国でも同様のはずです。
ただし、台北でのゲームショウは今年で15回目の開催となりました。つまり、15年前の子どもたちがいまでは親になっています。そのこともあり、“進学主義”の考えが少しずつ薄れていると感じています。
──その間、台湾で人気ゲームのジャンルの移り変わりや、ゲームショウに足を運ぶユーザーの変化などがありましたらお聞かせください。
TCA広報 ゲームの人気ジャンルはとくに偏ったことはないです。強いて言えば、PCゲーム、スマホゲーム、家庭用ゲームの順に人気です。ただし、その差はそれほどありません。
台北のゲームショウに来場されるユーザーの特徴は、18歳~29歳ぐらいの学生やサラリーマンがメインで、性別はやはり男性が多いですね。ただし、今年のゲームショウでは、恋愛をテーマにしたゲームが登場したことで女性ユーザーを700名ほどを集めることができました。
──台北のゲームショウでとくにこだわっている要素はなんでしょうか?
黄 台北のゲームショウで重視していることはふたつあります。
ひとつ目は発表の場です。毎年多くの海外メーカーが台湾で発表を行います。そこで台湾のゲーマーたちに試してもらう機会を設け、その声を各自がしっかりとフィードバックしています。
また、インディーチームの交流の場にもなっています。そこでは27ヵ国120チームぐらいの海外チームが参加し、台湾チームも含めれば257チームが交流しています。これは東南アジアでは最大級の交流の場といえます。
ふたつ目は“親子でいっしょに楽しめる場”の提供です。たとえば、会場には親子でボードゲームが楽しめるエリアを設けています。将来的には、このボードゲームもデジタル化しようという話もありますね。
──台湾ではesportsの大会はどれぐらいのペースで開催されているのでしょうか? また、プロ選手として活躍されている人数などもお聞かせください。
黄 政府主催のesports大会はまだ開催されていません。いまは各ゲームメーカーが自主的に大会を行い、月に1回か2回の割合でなにかしらの大会が開かれています。
プロ選手に関してのライセンスや認証の制度はまだありませんが、プロに近いゲーマーの人数は150名ほどです。また、各学校にはesportsチームを設けているところが多く、そういったアマチュア選手を含めれば、かなりの人数になると思います。
──esportsの発展やゲーム大会に国が力を入れるといった動きはあるのでしょうか?
黄 政府主催の大会はまだないとお伝えしましたが、2017年には政府の教育部にesportsに関わる部署を設立し、esports産業を認め、これからサポートしていこうと動いています。
政府主催で学生を対象にしたアマチュア大会がすでに開催されていたり、台湾では選手が獲得した賞金は税金の控除の対象になりますので、今後は産業の発展は急スピードで成功していくことでしょう。
──それらの施策を打った経緯をお聞かせください。
黄 ゲームは若者の好きなものなのでムリに禁じるのではなく、若者を暖かく見守って、いい方向に導きたいという思いからです。
国がesports産業を認めることで、親たちがゲーム産業やゲーマーに対して、やさしい目で見守ることになります。その施策によってゲーム市場にも影響がでてきます。
また、ゲーマーたちはゲームをプレイすることでムダな時間を浪費しているのではなく、脳の発達やチームワークの精神を育てるなど、有意義な職業であることを親たちに認知してほしい狙いもあります。
そして今回の政策では、学校のesportsチームで活動しているトッププレイヤーの学生たちが、学校を卒業した後にどうすればいいのかなども考えられています。
その例として、ハードウェア会社に入社してテスト要員として招いたり、次世代の人たちにesportsはどういったものなのかを教える先生など、いろいろな就職口を考えています。
──台湾でもゲーム実況の人気が高く、盛んですね。
TCA広報 現状の台湾では、ゲーム実況者といった役割をタレントが行うケースが多いです。ゲームメーカーも宣伝や広告塔として活用するのは、プロに近しい選手ではなく、そういったタレントが行っています。そのことでも知名度は高いです。
──プロの選手やタレントを野球などのスポーツ選手と比べるた場合は、どちらが知名度は高いのでしょうか?
黄 台湾では、スポーツ選手は国民的なスターの位置付けになっています。一方、esportsの選手やタレントはインターネットを通じて視聴者に影響を与える“インフルエンサー”としての役割です。そのふたつを比べるのは難しいですが、インタネット上でいえば間違いなくタレントたちも知名度は高いです。
──台湾でも配信されている繁体字版『モンスト』の『怪物弾珠』(以下、『モンスト』)が4周年イベントで盛り上がりを見せていますが、『モンスト』が台湾で受け入れられている理由はなんだと思われますか?
黄 『モンスト』は、動画や映画の展開があったり、他メーカーとのコラボ展開、台湾版オリジナルのキャラクターなども盛り込んでいることが成功した理由のひとつと言えます。
──台湾のesports競技の中に、『モンスト』などを加えるといった考えはあるのでしょうか?
黄 台北ゲームショウの中には、esportsエリアがあり、そこで多くのタイトルが発表されています。『モンスト』もそれに参加していただき、ユーザーの話題になれば、発展する可能性は秘めています。
⇒【モンスト】『怪物弾珠』4周年イベントで台湾代表チームが決定!XFLAG PARK2018にも参戦 |
──台湾製のゲームが中国で人気を博すケースもありましたが、中国進出の足がかりとしての台湾市場はどのように考えられていますか?
黄 たしかに台湾でのゲーム市場は中国や東南アジアへの足がかりのひとつだと思います。台北のゲームショウでは、海外のメーカーが新作を出展し、それを台湾でローカライズして中国などに展開します。
そのときに台湾のゲーマーの意見や感想をしっかり取り入れているため、台湾で成功したゲームは、中国に進出してもそのほとんどが人気タイトルとなります。海外のメーカーも台湾のゲーマーたちを活かしてもらいたいですね。
──では最後に、現状の日本esports産業はどのように感じているか、お聞かせください。
黄 中国や韓国と比べると日本は遅れていると思います。ただし、市場は大きく、チャンスはあります。日本はゲーム人口も多いですから、今後のesportsがアジアで大きく展開すれば、競技が支流になって海外への展開も考えられます。
日本のPC市場はそこまで大きくないと感じています。esportsを発展させるのであれば、海外のトレンドをソフト開発に活かしたり、競争面などもそれに近寄っていかないと、取り残されるのではないかと心配しています。とはいえ、今後の日本のゲーム産業の考え方次第だと思います。
ちなみに、次回の台北ゲームショウは2019年1月24日~1月28日の期間に行う予定で、24~25日がビジネスデイで、26日~28日が一般の方も入場が可能ですので、多くの方の参加をお待ちしています。
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