『イングレス』5周年を迎え新たなステップへと踏み出す開発陣の想い

2017-11-10 21:43 投稿

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Ingress Prime(イングレス プライム)

XMアノマリー“EXO5”真っ只中の大阪で直撃インタビュー

世界各地のプレイヤーがAR(仮想現実)の世界で陣取りを行う『イングレス』といえば、『ポケモンGO』の基盤にもなっているナイアンティック社を代表する位置情報ゲームである。

そのアジア特活本部長 川島優志氏とアジア統括マーケティングマネージャー 須賀健人氏に、今年の11月15日で5周年を迎える『イングレス』という拡張現実を通じて学んだこと、通称2.0と呼ばれてきた最新版について、フリーライターの深津庵が直接伺ってきた。

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なお、このインタビューが行われたのは2017年11月4日。XMアノマリー“EXO5”大阪で全国のエージェントが戦っていた真っ只中、16時30分から17時30分のことである。

当日のアフターパーティーで告知された須賀氏の転勤、会場では語らなかったその真相と想いも語ってくれたぞ!!

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突然明かされた須賀氏の海外勤務とその真相

──いままさに、ここ大阪ではたくさんのエージェントが戦っています。運営としてお忙しい中、インタビューに応じていただきありがとうございます。さっそくですが『Ingress 2.0』につ……

川島優志(以下、川島) あ、そうだ!!

──はい!?

川島 今夜のアフターパーティーでお知らせすることだし、先にお伝えしちゃっていいかな。

須賀健人(以下、須賀) そうですね、じつは来年から海外勤務になるんですよ。とはいえ、XMアノマリーがあれば日本に帰ってくると思います。

──えぇ!? まさか、たとえ嵐であろうとも快晴にしてしまう須賀さんがいるにも関わらず、今回のXMアノマリーで雨が降ってしまったからですか?

須賀 丁度いいですよね、雨が降ったから引退します、ってw

──っということは、アフターパーティーでステージにマイクを置くんですね。

川島 あはは

須賀 何のショーですかw

──スポンサーである伊藤園のマーケティング担当 大楽さんも今回のXMアノマリーを最後に担当が代わると聞いています。何だか、おふたりが急にいなくなってしまうのは悲しいですね。

川島 そうなんですよ。大楽さんの件はビックリしましたが、担当が代わったり海外勤務になるだけで驚いてくれるって幸せなことですね。

須賀 私の業務は『イングレス』から若干距離は離れてしまいますが、『イングレス』は我々ナイアンティック社の基礎、始まりであり終わりであると考えています。おそらく全社員が関わり続けるプロダクトであると本音で感じているんですよ。アメリカでは『ポケモンGO』の仕事が多くなりますが、それでも『イングレス』は見ていますし、XMアノマリーや大きなイベントがあれば帰ってきたいですね。

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▲衝撃の発表から始まった今回のインタビューだが、海外とはいってもスキャナを介してエージェントとはつながっているのだと須賀氏。

川島 須賀が具体的に何をするためにアメリカへ行くか、深津さんにならお話してもいいんじゃない?

須賀 そうですね。アメリカで『ポケモンGO』のマーケティングに関してグローバルに関わっていくことになります。ナイアンティック社に入るきっかけになったのは、もともと『イングレス』をプレイしていたこともありますが、当時から『ポケモンGO』に関する案件に関わっていたことが大きな理由でした。

──2014年にGoogleが発表したエイプリルフールの“ポケモンチャレンジ”も、須賀さんは携わっていたんですよね。

川島 その通りです。あれももう、3年前のことなんだと考えると、5年って本当にあっという間ですね。

須賀 私自身はコミュニティという場が苦手なタイプで、ひとりで遊ぶことが好きな人間でしたが、『イングレス』を通じて徐々に克服することができたんです。また、同じように悩んでいたエージェントが、同様の手応えを感じていることを身近で見てきた。私が体験してきたエージェントとの関わり、思い出は財産なんです。信頼し合い本音で話せる深津さんのような方とも出会うことができた。そうした空気を作れたのも『イングレス』だったからだと思うんですよね。運営と記者、運営とユーザー、そして記者とユーザー。すべての人が身近に感じられる世界で唯一のもの、私にはそれが『イングレス』なんです。

川島 須賀が関わり始めたのは、まだ『イングレス』が盛り上がり出した時代で、私自身もエージェントから学ぶことばかりでした。須賀はもともと戦略的に物事を考えるのが得意な男で、“何でこうなってしまうんだ”と、理屈ではない何かを突き詰めるタイプなんです。そこで、みずからエージェントに会いに行き、直接現地の声を聞こうとがむしゃらにがんばっていた。私から見ていても、日に日に頼もしく、それこそたくましくなっていったよね。

須賀 物事を爆発的に広げていくって世の中のマーケターが誰しも考えることです。『イングレス』をここまで広げたのは川島の力が大きかったと考えているのですが、では何をしていたのかと川島の行動を振り返ったとき、ユーザーと真摯に向き合い直接会うという活動を続けていたことに気づきました。しかし、私からすればとても効率の悪いことだと思ったんです。たとえばイベントを開催した場合、それを楽しんでもらえるのはせいぜい5000~6000人。インターネット広告であれば、いっしゅんで数十万人に届けることができる。効率論で考えれば、イベントとは何なのかと自問自答した時期があったんですね。

──効率では図れない大切なものがあった?

須賀 はい、共感と共有が大切なメッセージになっていると思ったんです。ユーザーといっしょにそれらを感じることで爆発的に広がっていく。これはトラッキングもできませんし数値化することも難しいですが、確実に価値のあるものなんですよね。これは、私が10年のあいだ経験してきたマーケティングの中でも大きな学びだったと思います。

──マーケティングのありかたを大きく変えるきっかけにもなったわけですね。

須賀 私は物事をロジックで考える人間で、掛け算と割り算、引き算で生きていたんですが、そんな考えかたでは出せなかった答えがあった。それが、“ひとの気持ち”だったんです。

──XMアノマリーやミッションデイは、まさにその具体例ですよね。

須賀 イベントを開催し参加するには、大きく分けてふたつの意味があると思います。ひとつは、自分と同じ趣味を持っている人がこんなにいるんだという安心と興奮。もうひとつは、新しい仲間と出会うことができるという欲求です。どんな人でも誰かとつながりたいと感じているはずなんですよね。それをもっとたくさんの人に味わってもらうにはどうするべきか。それこそ、私がいまもっとも考えているテーマであり、『イングレス』でのそうした体験を『ポケモンGO』の規模でどう伝えるか、それが成功すればたくさんの人が幸せになれるのではと、ナイアンティックのスタッフ一同が本気で考えているのです。

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▲これまで多くを語らなかったナイアンティック社への想い、『イングレス』での経験を『ポケモンGO』に活かしていく未来予想図をふたりは楽しそうに語ってくれた。

エージェントと歩む新たなチャレンジ

──この5年のあいだに身近で起こった最大の変化を教えてください。

川島 『イングレス』以前は目的地での要件を中心に動いていましたが、いまでは遠くまで足を伸ばしてみようと行動的になりました。どこに行っても困ったときはエージェントが助けてくれる、そんな気がするんですよね。

須賀 私も同じですね。行動範囲がとても広がりました。Google時代も出張が多かったのですが、決まった場所で決まった人に会っておしまいという日々が、『イングレス』とナイアンティック社に関わるようになってから、当時では考えられないくらい多くの場所に目を向け、実際いくようになりましたね。Googleのタイムラインを見ると、日本はほぼ行き尽くしたってくらい旅をしましたよ。

──ポータルという存在が現実世界の距離感を大幅に縮めてくれたと感じます。その原動力のひとつが今回のEXO5大阪を含む、これまでのXMアノマリーやミッションデイでもあると思います。

須賀 その通りですね。しかし、エージェントの皆さんがすごいと思うのは、XMアノマリー“ダルサナ”から3年、何もゲームが変わっていないのにイベントに参加してくれる人数が増えているってことです。これ(進化していない点)、我々の情けないところじゃないですか。

川島 そうだよね。

須賀 それでも皆さんが『イングレス』を愛してくれている。そこには『イングレス』というゲームに魅力があるのはもちろん、エージェントたちが築き上げたコミュニティの力が大きいんだと思っています。スキャナを開いていなくても『イングレス』をしていると感じられる状態が、世界中でたくさん生まれているんですよね。

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▲あっという間の出来ごとだったと5年を振り返る川島氏。その中でもエージェントたちとの交流はいずれも大切な思い出だと語ってくれた。

──10月20日に締め切られたセージメダルのデザインプロモーション(5周年を記念して付与されるゲーム内メダルのデザイン応募企画)。なぜ、一般的から募ることになったのか。その経緯を教えてください。

川島 エージェントをもっと巻きこむような試みを考えているところなんです。たとえば、ポータルの審査をエージェント自身が行うOperation Portal Reconなどもそうですが、『イングレス』のつぎなるバージョンや『ポケモンGO』といったさまざまなところにリソースを注いでいく中で、エージェントの皆さんにどう楽しんでもらおうかと日々考えています。そのひとつが、5周年のメダルデザイン企画でした。

──すでに募集は締め切られていますが、どのくらい集まったのでしょうか?

須賀 数百はあったと記憶しています。

川島 皆さんクオリティがとても高く、ひとつに選びきれない質の高いものばかりが集まったんですよ。

須賀 発表が11月15日、『イングレス』5周年の日になるので、ぜひ期待していてください

川島 それにしても、5年って本当にあっという間ですよね。昨年、我々が『イングレス』ともに歩んだ4年間を振り返る対談を企画して頂きましたが、あそこで用意してもらった年表をみたとき、たくさんの出来ごとがあったなとしみじみ感じました。

──あの企画からすでに1年以上が過ぎているということに驚きですよね。

須賀 2015年3月のXMアノマリー、日本では京都で開催された“ショウニン”の1ヵ月前に私が入ったのですが、もう、本当にあっという間でしたね。

川島 どうですか、その当時からのXMアノマリーなどを振り返ってみて感じるものはある?

須賀 我々も成長してきたかな、と思いますね。

川島 おっ。

須賀 XMアノマリー“ショウニン”はたいへんだったじゃないですか。そのひとつ前のXMアノマリー“ダルサナ”あたりから人気がでてきて、“ショウニン”でそれが確固たるものになった。いまだから話せますが、あのイベント中に、Intelマップ(全世界の陣取り状況を確認できる公式ツール)が落ちたんです。そのタイミングでエンライテンドによる巨大なコントロールフィールドが形成されたにも関わらず、肝心のIntelマップが開けないので起点になっているポータルが判別できない。そうなればレジスタンスは破壊することが困難であることは明確で、我々が起点を示すかどうかで大激論が起こったんです。

川島 そうだ、たいへんだったよね。

須賀 あれはいつ復活したんでしたっけ?

川島 当日、現地時間が深夜だったアメリカのスタッフが迅速に対応してくれたんだよね。それらの経験はもちろん、皆さんがいまなお『イングレス』に関わってくれているからこそ、須賀のいう通り我々は成長できたんだと実感しますね。

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▲現実世界を使って多数のエージェントが戦う『イングレス』では、少なからず何かしらのトラブルが発生する。須賀氏のいう通り、数々の困難を乗り越えてきたからこそ、5周年を迎えたいまも変わらず多くのエージェントがイベントに参加しているというわけだ。

『イングレス』を支える日本独自の文化

──これまでの5年を振り返り、エージェントの起こしたアクションで印象的的なもの。『イングレス』でこんなことをする人が出てくるとはと驚かされたものは?

川島 驚かされてばかりですよ。台南や広島でコントロールフィールドを使って描いた折り鶴など、メッセージ性の強いものは印象深いですね。考えるだけでなく実行すること、さらにそれを成功させるパワーには驚かされます。また、日本では離島に情熱を燃やすエージェントが多く、巨大なコントロールフィールドを作るのに役立てたりしますよね。

須賀 私の中では、これまで各地で開催されてきたミッションデイが印象的です。みずからイベントを起こそうと考えてくれるエージェントが、こんなにたくさんいるなんて想像もしていませんでした。

──日本人=ステレオタイプなイメージもありますもんね。

須賀 そうですね、偏見もありますがみずから動かないとか、人任せなどと言われることも多いですが、蓋を開けてみたら世界でもっともミッションデイを開催しているのが日本だった。積極的に自治体と話しをして場所を確保し、数千人のエージェントを集めている。しかも、それが月に1~2くらいのペースで行われているということは、本当にすばらしいですよね。これは、それだけ地元を愛しているという証拠であり、その魅力を伝えるツールとして『イングレス』を使ってくれていることに感謝しています。

川島 それも公式が行うよりも質、量ともに情熱が溢れたイベントになっている。福岡で開催されたミッションデイでは商店街をうまく巻き込んでいて、BIOカードをどう使えばエージェントが喜ぶかなどを徹底的に考えていた。それをみたときはビックリしましたね。

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▲BIOカードとは『イングレス』の物語に登場するキャラクターのカードであり、それをモチーフにエージェントたちが自身を描いたカードを自作するまでに発展。通称“不審者カード”と呼ばれ、それを名刺交換をするように使われるようになった。上段にあるのが川島氏や須賀氏などナイアンティック社メンバーのもの。下段にあるのがキャラクターカードと深津の不審者カードである

──ミッションという遊びを使った町おこしですよね。

須賀 言葉は悪いですが、イベント運営に関してはビギナーな方が多いと思います。しかし、エージェントの気持ちは誰よりも知っている。だからこそスムーズな運営が実現し、その結果、満足度の高いイベントになっているんですよね。こうしたエンターテイメントのものには、公式といわゆる同人と呼ばれるものが存在しますが、どんなひとでもそのバランスを取るのに苦労している。しかし、『イングレス』のミッションデイはそのスイートスポットをつき、最高のバランスで成り立っているんです。

川島 先ほども話題に出ましたが、BIOカードの文化もすごいですよね。『イングレス』というのはエージェント全員が主人公になっている物語で、それを示すリアルアイテムのひとつがBIOカードですが、とくに日本のエージェントが自作しているカードのクオリティはとても高い。金箔を貼ったりホログラムになっていたり、そもそも素材が紙じゃなかったりと創造性が豊かなんです。絵が描ける人、ディスクリプションが書ける人、それそれ得意な人が集まり、仲間のためにBIOカードを作っている。

──そうしたアクションが誰からともなく、当たり前のように起こっていることがすごいですよね。

川島 さらに、そのクオリティを求め、海外のエージェントからも依頼が入ってくるというワールドワイドな展開に驚かされています。

須賀 『イングレス』ユーザーだけで国が作れるんじゃないか、ってくらい幅広い職業のかたが揃っていますよね。農家のかたから美術家、ミュージシャンやタレント、XM工業のような集団まで存在する。先日、LAWSONチャレンジの勝者に会うため、岩手県の北上市と長野県の駒ヶ根市に行ったのですが、そこでいただいたお土産の量が凄まじく、3週間くらいそれだけで生きていけるくらいだったんです。

川島 たくましく持ち帰ってきたもんねぇ。

須賀 たくさんのお米を持ち帰るのは本当にたいへんだったんですよw

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▲特定のポータルを巡りながら地域を探索するミッション。その機能を使った地域イベントをミッションデイと呼んでいる。エージェントであればレベルに関係なく誰でも参加できるので、観光を楽しむ感覚でチャレンジしてほしいと両氏。

──それでは最後に、年内にリリースされると噂されていた『イングレス2.0』ですが、その後の展開を教えてください。

川島 こちらは順調に進んでいますが、ここで正確なリリース日をお伝えすることは難しいですね。ただ、まもなくであるということだけは間違いないです。後もう1点、『イングレス2.0』と呼称されてきましたが、これはコードネームみたいなもので、正しくは『イングレス◯◯◯◯』となる予定です。

──その◯◯◯◯な部分が気になりますが……

須賀 内緒ですw

川島 いずれ、別の機会に!!

インタビュー終了後、エージェントが待ち望んでいる『イングレス』の最新モデルに関して、現在ナイアンティック社はスタッフを増員して1日も早いリリースを目指していると教えてくれた。

これからの動きがとても気になる『イングレス』と、伝説のポケモンや第3世代の登場で活気づいている『ポケモンGO』。さらに先日、AR技術を利用した新作モバイルゲーム『Harry Potter: Wizards Unite』(邦題未定)の存在を明かしたナイアンティック社が、どのような新体験を与えてくれるのか、今後も注目していきたい!!

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P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら

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ジャンルその他
メーカーナイアンティック
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