日本アプリ市場は世界から見ると魅力的!? 日本にアプローチする中国メーカーの狙いとは?【TGS 2017】

2017-09-26 18:56 投稿

中国メーカーから見る日本アプリ市場

東京ゲームショウ2日目、スマートフォンコーナーの一画kongzhongブースにて“躍進する中国産タイトルの日本市場進出を語る 中国ゲーム市場 解体新書”と題されたセッションが行われた。

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日々巨大化を続ける中国スマホ市場で生まれたコンテンツを日本向けに展開している各社が集まり、中国メーカー製品を取り扱う人たちから見た日本のスマートフォンゲーム市場について語られた。

こちらのセッションで話者を務めてくれたのは、App Annie Japanの上村洋範氏、Kunlun Japanの北阪幹生氏、Snail Games Japanの後藤智子氏、そしてKongZhong JPの小林崇氏の計4名。

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▲写真左より順に、App Annie Japan 上村洋範氏、Kunlun Japan 北阪幹生氏、Snail Games Japan 後藤智子氏、KongZhong JP 小林崇氏

セッションの内容をお届けする前に、まずは各企業の特徴から確認していこう。

App Annieは業界では知らない人がいない、スマートフォン市場の分析、データ収集サービスを行っている企業。検索性の高さや指標ごとにデータを閲覧できることから、多くのスマホゲームメーカーがこちらのサービスを利用している。

Kunlun Japanは、中国北京に本部を置き、スマホゲームの開発・運営を行っている企業の日本支社。オンラインゲーム製作を得意としているKunlunは、自社開発タイトル及び他社パブリッシングタイトルの中から日本市場を開拓できるコンテンツを吟味し、日本市場攻略を行っている。

Snail Games Japanも同じく中国に本部を置くコンテンツプロバイダ。本部はPCゲームなども取り扱い幅広く事業展開をしているが、その日本支社となるSnail Games Japanは現時点ではスマートフォンコンテンツの日本展開に注力した動きを見せている。

KongZhongも、もはや言わずと知れた巨大企業。その日本支社であるKongZhong JPは、自社開発タイトルや中国開発タイトルを日本展開させる事業のほか、グローバルなライセンス事業やアライアンス事業も手掛けている。

つまり本セッションは、分析のプロであるApp Annieと、中国産コンテンツを日本で展開しているメーカーが、それぞれの目線から日本展開への道を語ってくれたセッションである。

まずは日本市場の現状を確認

セッションはまず、App Annie上村氏による日本市場の分析から始まった。

氏によると日本市場は現在成熟期を迎えており、新規タイトルのダウンロード数自体は減っているものの、収益そのものは年率20%ほどの勢いで成長を続ける大きな市場となっているという。

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また、ひとりあたりが1日にスマホゲームに費やす時間も約75分と、世界的に見ても大きくなっているのも特徴的だそうだ。

しかし、収益こそ順調に伸びてはいるものの、その収益の半分近くは売り上げトップ10のコンテンツたちによるものらしく、寡占が起きている状況とも言える。

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また、国産アプリのほとんどは、その収益を日本国内から生み出しているというのも注目すべき点であり、そういった点から見ても、日本市場は海外コンテンツが活躍しにくい場と言えるだろう。

だが、その動きは徐々に変化を見せているという。App Annieの調べによると、2016年における収益トップ100は、そのほとんどが日本製であったにも関わらず、2017年には25%近くのコンテンツが海外産となっており、中でも中国産アプリの伸びが大きいことも指摘された。

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少しずつではあるが、確実に中国パブリッシャーは日本での収益を伸ばしているのだ。では、こうした成功の背景にはいったいどのような動きがあるのだろうか?

中国産アプリはなぜ日本でヒットし始めたのか?

ここまでの確認を終えて始まったパネルトークひとつ目のテーマは、やはり“近年ヒット続出の中国産ゲーム! その要因は!?”というもの。

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中国産ゲームで今年成功したものとして記憶にあるのは、やはりmiHoYoの『崩壊3rd』。まずはこのタイトルに焦点を当てた話が交わされた。

後藤氏「開発陣が、自分たちが好きなものを作ってそれが世界に受け入れられて成功したという点もすごいところですが、『崩壊3rd』のすごいところは、中国国内ではそれ程大規模な広告露出をしていないにも関わらず、ここまでの成功を収めている点ですよね」

また後藤氏は「ほかの中国産アプリにおける大規模な広告戦略との比較で言えば、『崩壊3rd』は日本においては、適切な予算感でPRが行われていると感じる」ともコメント。

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『崩壊3rd』に関しては、中国産タイトルとしてはかなり珍しい形でヒットを遂げた例となる。そのため、このタイトルを基軸に話を進めても結果は難しいものとなるだろう。

そこで、話は各メーカーが日本市場に展開させたコンテンツについての話に移る。

北阪氏「私たちが展開した『Goddess』というアプリは、もともとPCのオンラインゲームを、そのままスマホに持ってきたとも思えるボリュームで日本のスッキリしたスマホゲームのUIと比べると窮屈なUIのタイトルでしたので、日本で成功するのは難しいのではと思っていました。しかし、ゲームが持つポテンシャルを信じて日本市場に持ってきたところ、しっかりと成功を収めることができてよかったです」

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Kunlun Japanではこの4年間のあいだにタイトルに合わせてもちろん、その中で日本向けにマネタイズを調整したり、人気声優を採用したりといったカルチャライズを行ったという。その中で成功も失敗もあり、そういった経験を活かし、今回はゲームシステムなど根本的なところは中国のものから大きく変えることはなかったという。

ゲームそのものが持つポテンシャルを信じるというのは、大きなキーになるのだろう。それを肯定するように後藤氏も自社コンテンツについて語る。

「私たちの自社開発タイトル『戦乱アルカディア』は、中国では成功しなかったタイトルで、日本展開をするときも本社からは期待されていないタイトルでした。リリース当初にトラブルこそあったものの、ゲーム本来のポテンシャルはあったので、それが受け入れられ、成功を収めています」

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中国産アプリ特有のVIP課金システム(月額課金で定期的に優遇措置が得られる課金システム)を排したりといった工夫はされたものの、やはりゲームそのものが秘めているポテンシャルを信じて展開させたところ、成功に至ったのだそうだ。

ここで、中国産アプリではよく見られるVIP課金についても言及される。

小林氏「最近では、日本でもVIP課金はいけるのではないかと考えています。日本人が中国産アプリに慣れてきたという印象があるので、額面の設定さえうまく調整すれば、マネタイズとして機能する可能性はあると思います」

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たしかに、例こそ少ないが月額課金システムを採用する国産アプリというのも増えてきている。『モンスターストライク』が月額課金システムを採用したのがいい例だろう。

これまで日本のアプリ市場ではあまり例が見られなかった課金形態ではあるが、市場の成熟とともにさまざまなシステムが試され、その結果ユーザーもそこに慣れてきているのかもしれない。

日本人が中国産のマネタイズシステムに慣れてきたという点を見ても、中国産アプリが日本市場に徐々にではあるが浸透してきていることを感じる。

中国から見る日本市場は、なぜ魅力的に見えるのか

続いてのトークテーマは“中国企業にとっての日本市場とは? 今後も進出タイトルは増える?”というもの。

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このトークテーマにまず反応を示してくれたのは、上村氏。氏はデータを例に挙げ、具体的な話を披露してくれた。

上村氏「日本市場の特異性は、個人個人の課金額の高さにあります。こちらのデータ(下の写真を参考)を見ていただいてもわかる通り、日本市場はゲームのダウンロード数のランキングに名前すら連ねていませんが、ゲーム内課金の額は世界で2位です」

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これはつまり、日本人ユーザーがゲームに支払う単価は、世界的に見ても高い、もしくは課金ユーザーの比率が非常に高いということ。

ダウンロード数が伸びなくても、それを受け入れてくれるユーザーがいれば、ある程度の資金は回収できる、あわよくば収益を出せるということなのだ。これは世界中どの国からしてみても、日本市場は魅力的な市場に見えることだろう。

この推察は正しいようで、北阪氏、小林氏もそれを肯定している。

「中国産アプリの日本進出が増えることはあれ、減ることはないでしょう」(北阪氏談)

「日本市場は、質の高いユーザーに支えられている市場です。大きなDL数を獲得せずともセールスが見込め、他国ですでに配信されているアプリであるが故にグロスで2000~3000万円あれば運営が成立するケースも多いので、日本進出を選択しない理由はありません」(小林氏)

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これはもちろん、ちゃんとゲームが日本でも受け入れられ、運営ができるかどうかというふるいに掛けられた上での話。しかし裏を返せば、そのハードルさえクリアーすれば収益を上げられる可能性が高く、魅力的な市場なのだそうだ。

一方後藤氏は、慎重な姿勢は見せながらも概ね同意といった具合のコメントを残している。

後藤氏「粗製濫造がくり返された時期はありました。しかし、まだゼロになったというわけではないものの、デリケートな日本市場に適応する様にデベロッパーのモラルも育ってきています。」

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この粗製濫造については、日本国内メーカーにおいても問題となったことがある。流行ったもののガワだけを変えて出すという流れは黎明期には確実に存在し、それに警鐘を鳴らすクリエイターも多く存在した。

日本市場は収益が上げやすいからといって、粗製濫造をくり返してしまえば、せっかく成熟した市場も先細ってしまうことだってあり得るのだ。

しかし、そういったことをしっかりと把握しているからこそ、この場に登壇している各社は、しっかりと日本市場に卸すコンテンツを吟味し、しっかりと戦略を練って対処しているのだ。

まだまだ中国産アプリを敬遠している人は多いかもしれない、得意不得意で言えば不得意だと思っている人もいるかもしれない。しかし、現在凄まじい勢いで成長を続ける中国のデベロッパーたちが日本に本格的に焦点を当てているいま、中国産で記録的なヒットを飛ばすタイトルが出てくる可能性はある。

こういった点に注目して市場の動向を見守ってみるのもおもしろいだろう。個人的には、それがおもしろければドコ産のコンテンツだろうがかまいはしないのだが。

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