新会社設立の真相や新作について訊く!『にゃんこ大戦争』を生んだ元ポノス・升田貴文氏独占インタビュー
2016-08-17 09:00 投稿
升田氏の新たな挑戦はヒットタイトルの種作り役(シードプランナー)
全世界累計2600万ダウンロードを突破するポノスの『にゃんこ大戦争』。
本作を生み出した升田貴文氏が、この度ポノスから独立。新会社”イグニッション・エム”を設立し、第1弾アプリ『ゲス野郎と拳』の配信をスタートさせた。
そこで今回、イグニッション・エムの升田氏への独占インタビューを実施。イグニッション・エムを立ち上げることになった経緯や新作『ゲス野郎と拳』のこと、さらに今後の展望などを聞いた。
株式会社イグニッション・エム
代表取締役 シードプランナー
升田貴文氏
独立、そして新たな挑戦
――創業期からポノスに携わってきた升田さんが、新会社設立ということで驚きました(笑) まず設立までの経緯を聞かせてください。
升田貴文氏(以下、升田) 前職で『にゃんこ大戦争』というタイトルを作らせていただいて、世界中でヒットする成功体験をさせていただきました。また、スタッフを教育する中で自分自身も成長できた。そろそろ「つぎのステップアップに挑戦してもいい時期が来たのかな?」という思いがキッカケですね。
――ほかの会社でチャレンジするという選択肢もあったんですか?
升田 別の会社で働くという方法もあったとは思います。でも、せっかくのチャンスなので、新たに会社を立ち上げて、自分がやりたいようにやれる環境でゲーム作りに挑戦してみたいと思い、イグニッション・エムを立ち上げたんです。
――答えにくいかもしれませんが……円満退社ですか?
升田 最終的には円満です(笑)。僕自身、ポノスがまだ2名ぐらいの創業期からやってきました。その中で序列ができたり組織としての形ができていく中で、自分自身はそのままの状態で好き勝手やっていました。そこが、僕自身あまり成長できなかったのかなという思いがあって。いま思えば反省点でしたね。
ずっとポノスで好きなことを続けられるのであれば残ってもよかったと思うんですが、組織として大きくなってくるといろいろな理由から、そう好き勝手にはできなくなってきて(笑)。僕自身、そういう環境の中でいいモノを作れるかと言われると自信がない。これまで通り好き勝手動ける環境のほうが、きっといいモノを提供できると思っています。
――そういう考えもあって新会社を立ち上げられたと。実際にはいつごろ前職を辞められて、いつ新会社を立ち上げたんですか?
升田 役員の任期というのが2016年6月末だったので、書面上辞めたのはそのタイミングです。新会社の登記はもっと早くて今年の2月12日……ちょうど僕の誕生日です(笑)。
――それは自分の中で覚えやすい(笑)。新会社は大阪に事務所があるようですが、やはり関西に思い入れが?
升田 場所は正直どこでもよかったんです(笑)。東京に来るという選択肢もあったんですけど、ゲームって”人が作る”ものですから、いまから気心知れた仲間を東京で探すというのも厳しい。大阪には仲間がいたので、まずは大阪を拠点にしました。いずれは東京進出という手もあると思うんですけど、挑戦するためには作品をしっかり作って、ちゃんと収益を上げて、地盤固めをしてからですね。
――新会社”イグニッション・エム”の社名にはどのような由来が?
升田 イグニッションというのは、エンジンや内燃機関の点火装置のことです。エンジンってガソリンに火を点けて、爆発させて動くような仕組みなんですけど、会社としていろいろなところでその着火点になればいいなと思っています。エム(M)については、いろいろな解釈ができると思うんです……升田のMでもあるし(笑)、Make(作る)のMでもある。作ることの着火点だったり、作り手魂に火を点けることだったり、商品を出して遊び心に火を点けたり。なにかしらの起爆剤になるようなことを、この会社でつねに提供していきたいという思いを込めて、イグニッション・エムという社名を付けました。
――升田さんはイグニッション・エムでは代表取締役社長に加え、シードプランナーという肩書きがありますね。
升田 僕自身が得意とするところはなんだろう? と改めて考えたときに、マネジメントや経営部分に関しては、もっとできる人に任せられたらと思っています。じゃあ僕は何をするのかと言うと、企画のもととなる種作りを支援する立場になろうと思ったんです。それができると、すごくいい組織が作れるんじゃないかと思っていて、そこに特化した役割を“シードプランナー”という肩書としてやっていこうかなと。僕がヒットするタイトルの種を与えて、それをみんなで膨らませていって、より大きな規模の作品を会社として作っていくのが理想ですね。
――新会社立ち上げた時の、コアメンバーは何名程度ですか?
升田 僕を入れて4名です。自分はグラフィックや企画、プランニングを担当していて、あとはエンジニアがふたりと、庶務関係のスタッフがひとりという構成です。もちろんこれから徐々に増やしていこうと思っています。
――アプリを作ろうと思ったら、そこで完結できる環境にはあるということですね。
升田 そうですね、あとは僕がすべてまかなえばいけるかな、と(笑)。前職のいろいろな経験もあるので、ほぼまかなえてしまうところもあるし、小規模なものであればいけるという自信はあります。もちろん大きな規模になってくると、人数という力は必要になってくるのですが、そのあたりはムダが発生しないよう徐々に、あるいはスタッフのモチベーションが下がらないよう気を遣いながらやっていきたいと思っています。
――どこかの会社の受託という形は考えていないのですか?
升田 いまのところは考えていないですね。自由にやれるかどうかが大事だと思っているので、自由にやれない環境になってしまうと、やっていける自信はないです。
新会社第一弾アプリはかなりおバカ!?
――ちなみに新作ゲームの開発には着手されているんですか?
升田 会社としてスタートダッシュを切るために、「どういったタイトルがいいのかな?」といろいろ悩んだ末、まずは「バカなことやってるな」、「こんなふざけたことを必死でやってるんだ」と笑ってもらえるようなタイトルを作ることにしました(笑)。それが『ゲス野郎と拳』という、ふざけたタイトル名のアプリゲームです。すでに配信中ですが、プレイしていただいて「こいつふざけてるな」と言ってもらえるとうれしいですね(笑)。無課金で十分に遊んでもらえるようなゲームになっています。
――1発目からパンチの利いたタイトル名と世界観ですね(笑)。
升田 最近、ゲス野郎がチラホラ出てくる芸能ニュースもいっぱいあるし(笑)、何か世間を賑わすことができればいいなという思いも込めて『ゲス野郎と拳』というタイトルを付けました。インパクトを持たせたほうが会社としても勢いが付くんじゃないかと思いまして(笑)。まずはイグニッション・エムを皆さんに知っていただいて、「この会社、これからどういうタイトルを作っていくんだろう?」と気にかけてもらいたいと思って、まずは「バカだなぁ」と思ってもらえるようなゲームを作りました。
――ちなみに『ゲス野郎と拳』の開発期間は?
升田 いまのメンバーと仕事を始めたのが、2016年4月7日からなので約3ヵ月程度ですね。開発メンバーも技術はあったのですが、初めてスマホゲームを作るメンバーだったので、ノウハウを習得しながらの開発でしたね。それでも7月末ぐらいにはほぼ完成している感じでした。このあとも2作目を作っていきたいという計画はあるのですが、まだ手が空いていないので、手が空き次第とりかかっていきたいと思います。
――升田さんは、おバカな雰囲気のゲームがお好きなんですか?(笑)
升田 バカなノリというか、ふざけたことことが、けっこう好きですね。性格はいたって真面目なんですけど(笑)。その反動で、作品でバカなことを表現しちゃう(笑)。ストレス発散じゃないですけど、そういったところをゲームに乗せてやっているのかもしれないです。
――『にゃんこ大戦争』もすごくヒットしていますけど、言われてみればキャラクターは……。
升田 相当ふざけていますよね(笑)。バカなことを考えるのが大好きなので、そういったバカなことをいっしょに考えられる仲間をこれからどんどん増やしていきたいです。
――具体的にはどのような人材を求めているんですか?
升田 夢を持った人がいいですね。立ち上げたばかりの会社なので、ほかの会社のような保障もなく、チャレンジ精神を持った人でないと、いまの会社でやっていくことは難しいと思っています。そうなると、やはり夢であったり野望であったり、そういうものを持った方じゃないともたない。あとは想いを持っている方だったら、きっと僕と気が合うし、同じビジョンを共有しながらともに仕事ができると思っています。
――大きな夢や想い、そして野望(笑)を持っている人を求めている、と。
升田 具体的な職種でいうとグラフィッカーやエンジニアになってくるんですけど。あとは企画ですね。大きな規模になってくると、どうしても僕ひとりの企画では回らなくなりますし、大きなタイトルになれば運営のフェーズも生まれるわけで。そうなると、そこにガッツリと入っていって、つねに企画を考えてもらう人材も必要になってきます。そういった人員はこれから増やしていきたいところですね。
イグニッション・エム、そして升田氏の今後について
――第1弾の作品はアプリでしたが、イグニッション・エムとして将来的に家庭用ゲームを作る可能性は?
升田 夢はあります。家庭用ゲームって、ゲーム作る人の憧れのようなところもあると思いますし。もちろん需要があればですが、提供していきたいと思っています。
――とくにアプリにこだわっているわけではなく、おもしろいことだったらなんでも、ということでしょうか。
升田 そうですね。じつはゲームへのこだわりもあまりなくて、エンターテインメントなものであれば、何でも提供していきたいと思います。我々が作れるものってゲームしかないのですけど、思いとしてはいろいろなエンタメのコンテンツを提供していきたいですね。
――極端に言うとカードゲームやボードゲームといったものも対象になると?
升田 チャレンジはしていきたいですね。考えかたをゲームに絞っちゃうと、俳句みたいになっちゃうんです。形があって、「それに当てはめてこうすればゲームでしょ?」みたいな。そこの発想をもっと広いところで考えていくと、「これをこうするとゲームになるよね」という発想に行きつくと思う。ゲームにこだわらないというのは、そこがいちばん大きいかもしれないですね。最終的に製品として作り出すのはゲームなのですが。
――入り口からゲームとして入らない、という。
升田 それが大切かな、と思っています。そうじゃないとムダに丁寧に作っちゃうというか、必要ないところまでゲームゲームしちゃって、他社さんと同じようなものが出来上がっていく。尖るところは尖らせて、「ここがこのコンテンツのいちばんの売りだよ」という部分を全面に押し出す。「それってゲームじゃないよね? でも楽しいよね? ならOK」みたいな流れを作れたらいいなと思っています。
――1発目のタイトルからすごくおバカな内容だったので、イグニッション・エムの今後がすごく楽しみです(笑)。
升田 今回の作品は本当に“バカ”という部分に絞りました(笑)。ふざけた部分に注力したので、ぜひそこをディスっていただければうれしいですね(笑)。
――(笑)。升田さん個人の、そして新会社の今後の目標、「この会社でこんなことを実現できたらいいな」という夢があれば教えてください。
升田 僕はできれば縁の下の力持ちとして、サポート役に回りたいと思っています。うちの会社でどういった人に活躍してほしいかというと、やはり夢を持った人。彼らが第一線で活躍していける、そのサポート役に僕がいる。もちろん活躍するからにはヒットを出して、ユーザーに遊んでもらって、ユーザーから支持を得て、クリエイターとしての自信をつけて、結果として会社からのフィードバックも経て、という状況を作る。そういったクリエイターを何人も排出できるような会社にしていきたいと思っています。上から言われて「あれ作れ」、「これ作れ」じゃなく、自由にやって引っ張っていける人間を育てていく会社にしたいですね。
――まさにプロのクリエイター集団のような。
升田 そうです。各々が会社の看板を背負ってどんどん前に進んでいき、僕はそのサポート役に回る。「こうすればユーザーに指示されるよ」、「こうするとキャッチーだよ」というノウハウはいっぱい持っているので、そういったところでアドバイスやサポートをしていく。すごくいい発想を持った方っていっぱいいるんですけど、コツがつかめなくて惜しいタイトルを作られている方も大勢います。それをユーザーに受け入れられやすい形に加工するだけでも、大ヒットやプチヒットは可能だと思うんです。そういうヒットタイトルを作れるクリエイター集団、というものを目指しています。
――最後にイグニッション・エムとして新たに船出する意気込みとメッセージをお願いします。
升田 『にゃんこ大戦争』でも、キモカワなキャラデザインなど、それまでのアプリゲームの形にはないような尖ったことをいっぱいやってきました。それを継続して、いまの会社でもやっていき、いい意味でユーザーの期待を裏切るような新鮮な体験ができる楽しい作品をどんどん作っていきたいと思っています。我々もつねに挑戦していくので、ハズすこともあるかもしれないんですけど、それはそれで愛嬌と思っていただいて(笑)。「ほかと違うことをやっているな」と感じてもらえたらうれしいと思っているので、ぜひこれから期待して応援していただければと思います。それから、スタッフもあらゆる職種を募集していますので、まずはご連絡ください(笑)。
ゲス野郎と拳
- メーカー
- イグニッション・エム
- 公式サイト
- http://www.ign-m.com/#!blank-20/liiu6
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iOS / Android
- コピーライト
- ©2016 ignition M
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