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VR酔い対策は?今後の展望は? VR開発経験者が語るVRゲーム開発の極意に迫る

2016-08-11 17:41 投稿

VRゲーム作りの知見共有

8月10日、“作って分かった、よりよいVRゲーム開発の極意 ~第一線企業の開発者に聞いてみよう~”というトークセッションイベントが開催された。本稿では、そのイベントリポートをお届けしていく。

このイベントでは、セッション名の通り、VRゲーム開発を通してわかったことを共有するためのパネルトークが行われた。

登壇者は株式会社コロプラでVRヘッドマウントディスプレイ(以下、VR HMD)向けコンテンツ開発グループでマネージャーを務める小林傑氏

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グリー株式会社でGear VR向けゲーム『Tomb of Golems』の開発を指揮した渡邊匡志氏

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株式会社バンダイナムコエンターテインメントで『サマーレッスン(仮)』の立案・設定・シナリオ・ディレクションを行った玉置絢氏

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韓国のゲーム開発会社SkonecでFPSゲームを始め、多くのVRコンテンツを手掛ける崔正煥氏の4名。

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VRコンテンツ開発を経験した4名の意見

各人の紹介を終えた後、さっそくパネルトークがスタート。まずは“どのぐらいプロトタイピングしたのか?”というテーマでトークが行われた。

まず解答を求められた小林氏は「本日Steamのグリーンライトに登録したパズルゲーム『Fly to Kuma Maker』では、プロトタイプ作成までに3~4ヵ月くらいを要しました。VR空間で、何をどう動かすと都合がいいかというところから慎重に始めたので、時間がかかってしまいました」と返答。

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▲ブロックを使った簡単なパズルゲーム『Fly to Kuma Maker』

コンテンツによっては、こういった準備・研究・検討期間を設ける必要があるとしつつも、すでに骨子のあるものに関してはそこは省略できるという。事実、同社タイトルである『VR Tennis Online』は、平面とVRという差こそあれど、『白猫テニス』によってテニスに関するリソースを持っていたため、比較的あっさりとプロトタイプまでこぎ着けられたという。

続けて、渡邊氏は「弊社初のVRタイトル『Tomb of the Golems』は、じつはちゃんとしたプロトタイプを作成しませんでした。急いで作らないといけない事情があったので……。しかし、実際にVRコンテンツ制作にいたるまでにはたくさんの企画がありました」と語る。

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▲本格的なVRアクションアドベンチャー『Tomb of the Golems』

しかし、しっかりとしたプロトタイプでなく、簡素なプロトタイプでも、それを作って見ると、コンテンツを実際に作り上げるまでに必要な開発工数がわかるので、それを目的とした簡素なプロトタイプはたくさん作ってきたとも言う。

VRの話題となると引っ張りだこの『サマーレッスン(仮)』。それを作り上げた玉置氏はプロトタイピングについて「『サマーレッスン(仮)』は、出来上がるまでにいろいろなステップを踏んでいるので、どこからがプロトタイプなのか、自分たちでもよくわからない状態です」としながらも、たくさんのプロトタイピングを経ているとのこと。

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▲女子高校生の家庭教師となりコミュニケーションを図る『サマーレッスン(仮)』

また、崔氏も「FPSはVRを作るのが非常に難しいコンテンツ。まずプロトタイプの段階でVR酔いが発生してしまうかどうか、またVR酔い自体をどうするか考えるのがいちばんの課題となります」と述べ、早い段階からの酔い対策の重要性を説いた。

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▲超本格VR FPS『Mortal Blitz Ep2』。前作はGear VRで展開。

移動する?しない?酔い対策

その後話題は、崔氏の発言に引っかけてVR酔い対策についてへと移行。

これについてまず口を開いたのは小林氏。

「弊社はトップの馬場がVRコンテンツに意欲的なので、酔いに関しても人一倍きびしいんです。プロトタイプをレビューしてもらうときに、VR酔いをさせてしまったら、その瞬間にVR HMDを外してレビューすらしてもらえません(笑)」

これを受けて崔氏は「VR酔いは年齢を重ねるごとにしやすくなるんですよね。40代を越えるとVR酔いを感じる確率が非常に高くなるという傾向を感じています」と気になる一言を投下。

これを口火に、VR酔いに関する興味深い話が続々と登場する。

玉置氏はVR酔いに関して「昔は、視覚情報と三半規管への情報のズレこそがVR酔いの原因だと思っていたが、それとは別に習慣も関係していることがわかった」とのこと。

これに気付いたのは、バンダイナムコエンターテインメントが、現在お台場に設営しているVRアミューズメント施設“VR ZONE Project iCan”のアクティビティ『アーガイルシフト』の企画立案に、『サマーレッスン(仮)』チームが関わったことがきっかけだという。

『サマーレッスン(仮)』では空間内を移動するような要素がほぼ無かったが、『アーガイルシフト』ではロボットに乗ったプレイヤーが空間内を大きく移動するため、酔いにくい演出を考える必要があった。そういった事情から考察が進行していったようだ。そのころに体験した、海外メーカー製のとある”VRで車を運転するデモ”が、発見のヒントとなったのだという。

玉置氏は「私は、そのデモでまったく酔わなかったのですが、私の上司にあたる原田(『サマーレッスン(仮)』プロデューサー)は、ちょっと酔ったらしくて。よくドライブをする原田は、実際のドライブから得られる体感と、その車を運転するデモから得られる体感の差に違和感があって、それが酔いに繋がったようなんです」と、当時の経験を明かした。

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玉置氏はそう語り、現在体感しているものと記憶との差が違和感を生み、そこからVR酔いが発生するという説を挙げている。

しかしここで、もっともVR酔いに警戒していると思われた崔氏から意外な発言も。

「VR酔いには個人差があるので、制作段階から完全にゼロにするのは難しいです。しかし、人は慣れます。昔はFPS酔いという言葉をよく耳にしましたが、FPSゲームがたくさん増えて、人々がそれに慣れてきたいま、FPS酔いという言葉を耳にする機会は減りました」

つまり、“人は慣れる生き物なので、VR酔いは時間が解決してくれるという側面もある”ということだ。いまだに「FPS酔いするんだよね」という話を耳にすることはあるが、たしかに一時期よりも減ったことは事実だ。

ただ、崔氏は「だからといって、その慣れに甘えて作り手側が手を抜いていいわけではありません。VR酔いにはしっかり対処していかなくては」と警告もしている。

話はVR空間を移動させるか否かというところに戻る。

渡邊氏はこれに関して「今後、VR空間内を移動するようなコンテンツは作らないと思います。非常にゆっくりとした等速直線運動ですら、ふと横を見たら酔ってしまいます」とし、やはりVR酔いに対しての警戒心をにじませた。

また、続けて渡邊氏は「ワープという表現手法で移動という行動を代替できますが、それは実在感、没入感を損なう技法でもあるので、安易に取り入れるのは危険」と、昨今増えつつあるワープ移動に対しての警鐘も鳴らしている。

実在感アップのための工夫

パネルトークは、VR空間にどうやって実在感を持たせるかという話題に。

渡邊氏はオンラインVRコンテンツにおける実在感に言及。

「マルチプレイ空間では、相手のアバターがただの棒と球から出来た簡素なものでも、それが人の動きをしているだけで実在感が得られるという、意外な結果が出ています」

そこに他者がいるかどうかという実在感は、グラフィック以上に、人らしい動きが重要との知見を披露してくれた。

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これに関して玉置氏は「単純なモデルで実在感が生まれるのはスゴイ。ただ、その実在感を覚えさせるほどの人の動きをプログラムで再現するのは難しそうですね」と、人の動きとプログラムが作る動きの差を確認していた。

また、こういった人が生み出す実在感があることを踏まえたうえで、渡邊氏は、マルチプレイ空間の実在感が生み出す課題もあると語る。

「人はそこに実在感を感じると、手を伸ばして触れられるかを試したくなります。これが、マルチプレイVR空間でハラスメントを起こす可能性があります。この問題については、これからしっかりと考えていかないといけません」

仮想空間で体を触られるという状況が、どういった感覚を生み出すのかは想像もできないが、たしかにハラスメントの可能性は拭えない。今後の大きな課題となるだろう。

ゲームコントローラとモーションコントローラ

ゲームにおいて切っても切り離せないもの、それがコントローラの存在だ。

ハンドトラッキングを行えるモーションコントローラとゲームコントローラ(ゲームパッド)。この選択肢について各人はどのように考えているのだろうか。

崔氏「人間にとっての最適なインターフェースは手です。目と耳という感覚はVR空間に入っているのに、そこに手がなく、ゲームパッドでプレイをするような形になってしまうと、家庭用ゲーム機で普通に遊ぶのと変わりがなくなってしまいます」

玉置氏「『サマーレッスン(仮)』は、首を振るという動作により、VR HMDそのものがコントローラの役目も果たしています。ハンドトラッキングが行えるコントローラもいいのですが、ほかのデバイスとVRを組み合わせて得られる結果もあると思います」

渡邊氏「モーションコントローラは長時間遊ぶと腕が疲れます。ゲーム慣れしていない人がゲームパッドを使うと、ボタンの位置がわからなくなってしまいます。一長一短ですね。基本的にはゲームパッドだけでも遊べるように作り、モーションコントローラで遊ぶと、もっと楽しくなるという作りがベストでは?」

小林氏「渡邊さんの仰るとおり、どちらも一長一短です。私たちも、VRゲームのデバッグをするとき、最初こそモーションコントローラでやりますが、疲れてくるとゲームパッドを使ったデバッグに切り換えたりしますから(笑)。やはり、コンテンツに合わせて変えていくのがいいと思います」

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と、このようにそれぞれが作るゲームジャンルに根ざした考えが垣間見え、おもしろい結果となった。

また、コントローラについての話題の中で、玉置氏が「コロプラさんは、ぷにコンを開発したりと、インターフェースにはかなり注力しているような印象ですが、VR向けでも何か新しいインターフェースを考えているんじゃないですか?」と、面白い質問が飛び出す場面も。

これに関してコロプラの小林氏は「バーチャルぷにコンみたいなものというわけではありませんが、いろいろなインターフェースを試していけるといいですね」と濁しての解答。

今後、コロプラが作る新しいVRインターフェースに思わず期待を寄せてしまう展開になったところで、このテーマは終わりとなった。

技術開発者向けに盛り上がるパネルトーク

その後、パネルトークは処理負荷軽減やゲームエンジン、開発環境といった開発者向けのコアなトークへと進展。

処理負荷軽減の話の中では「グラフィックがどうとかよりも、とりあえず楽しいかどうかが重要。そのうえでハイエンドなグラフィックが必要となるのなら、モバイルからPC/コンシューマーへとハードを変えればいい」(渡邊氏談)との意見が。

グラフィックの処理負荷軽減に関しては、オブジェクト数を減らしたり、要求スペックを上げたりといった解決策があるため、誰もあまり大きな問題としては見ていないようだった。

ゲームエンジンについての話では崔氏の「モバイルはUnityのほうが作りやすいが、やはりPCやコンシューマー、アーケードなどのリッチなコンテンツをとなるとアンリアルエンジンで作ったほうがメリットを得られる。環境に合わせた選択が必要です」という意見にすべてが集約されているようだった。

それぞれの一長一短をよく把握し、コンテンツや求められるものに対して選択肢を持つ重要性があるようだ。

開発環境については、おもにHTC Viveのトラッキングセンサーの干渉問題が取り上げられ、「ガラス張りの部屋でViveを使おうと思ったら、赤外線がガラスで乱反射をして大変なことになりました。いまは暗幕を引くことで干渉を防いでいます」という、小林氏のコメントが印象に残る。

一般家庭ではあまり意識されることではないが、モーショントラッキングに使われる赤外線は、ガラスに吸収されやすく反射もされやすい特性があるようだ。設置のときには気をつけたい。

そうしてパネルトークは“今後作っていきたいコンテンツや、今後の展望について”というテーマに移り、終わりへと近づく。

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崔氏「VRのコンシューマー市場はどんどん大きくなっていくと思います。ただ、VRはやってみないとその魅力がわからず、魅力がわからないと購買意欲も刺激されません。なので、まずはVR HMDを持っていなくてもVRを体験できる環境をどんどん作って、みんながVR HMDを欲しいと思ってくれるようにしていきたいです」

玉置氏「VRは多岐に渡っていろいろなものが出てくると思いますが、私たちはその流れに沿って進んでいくことになると思います。ただ、個人的には、キャラクターを使ったVRコンテンツを増やしていきたいです。“このキャラとあんなことができるようになったら楽しいよね”というものを作りたいと思っています」

渡邊氏「まずは、VRに関わる人を増やすというのが目下の目標です。これは、VRユーザーを増やすという意味はもちろんのことですが、作る側を増やしたいという思いもあります。大小問わず、いろいろな会社といろいろなことをしていきたいです」

小林氏「“つぎにくるジャンルはVR!”というのが私たちコロプラの意見です。いまはスマホゲームが弊社の柱になっていますが、数年後にはそこをVRに移し替えられるようにしたいと思っています。なので、特許に関しても力を注いでいるところです。VRネイティブな人材も揃えたいと思っていますので、興味のある人はぜひお声をかけていただけたら」

と、それぞれが今後の展望を述べたところで今回のトークイベントは終了を迎えた。

昨今では「VR熱は冷めつつある」という意見も出始めているが、作り手側は今がもっともアツい時期。さまざまな研究を重ねている段階だ。そうして生まれるコンテンツが我々の手元に届く日を想って、VR技術の進歩を見届けていきたい。

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