『キャンディークラッシュ』仕掛け人、King Japan枝廣氏が語る今年の展望
2015-05-04 11:00 投稿
設立1周年を迎えたKing Japanのこれからとは?
大人気のパズルゲーム『キャンディークラッシュ』を開発したKing。その日本法人であるKing Japanの代表取締役・枝廣 憲(えだひろ けん)氏にインタビュー! 日本オフィス設立1周年を迎えたKingの、気になる今後の展望を聞いた。あの話題のCMの秘話も飛び出す!?
枝廣 憲氏
――King Japan設立1周年おめでとうございます! 2014年は“キャンディー色”に染まった1年となりましたが、振り返られていかがでしょうか?
枝廣 憲氏(以下、枝廣) 2014年は、Kingにとっては、日本を含めたアジアでひとつの大きな成果を成し得た年だったと思っています。僕としては昨年の1月からKingに入り、4月にKing Japanのオフィスを立ち上げたのですが、ほぼ時を同じくして岡田准一さんと、遠藤憲一さんが出演する最初のテレビCMがスタートしました。その後、新しいゲームをどんどん出していくというステージを一歩一歩進んでいく中で、日本でのユーザーさんの数が増えて、僕自身、周りでプレイしている人が増えたと感じました。そういう環境の変化を真の当たりにできた成長の1年でした。
――たしかに、いろいろなところで『キャンディークラッシュ』をプレイしている人を見かけます。
枝廣 『キャンディークラッシュ』のファンは増えたなと思います。「岡田くんと遠藤さんのCMおもしろいよね」とか、「遊んでみたらおもしろかった」という声もいただけて。作品のおもしろさをユーザーさんにお届けできたのかなと思っています。そういえば先日、弊社のカスタマーサポートに連絡がありまして。『キャンディークラッシュソーダ』のCMで、岡田さんの持つスマホにオリジナルのケースをつけていたんですが、ユーザーさんから「これはどうやったら買えるのか?」という内容のお問い合わせだったんです。じつはこのケースは僕たちがノベルティーとして作っていたものなので、販売はしていないんです。そうしたら、そのユーザーさんは(ケースに対する)想いのあまり、ケースを手作りされていたんです(笑)。そういったファンの方たちからの支持をいただけたのも、昨年1年間を通してがんばった成果かなと思っています。
――カジュアルなパズルゲームで、そこまで熱いファンがいるのはめずらしいですよね。
枝廣 コンテンツの想いが少しずつ浸透してきたのはうれしく思いますね。たいへんなこともいっぱいありましたけど(笑)。この業界はさまざまな動きがあって、いろいろなメーカーさんがいろいろなことを実践されていますから。自分たちもその中での“違い”を作り続けなければいけないという、生みの苦しみが常につきまといますよね。
――そもそも、日本でブレイクする前の『キャンディークラッシュ』の認知度というのは、どのくらいあったのでしょうか。
枝廣 僕がKingに入る直前に、いちばん最初のTVCMが放映されました。そのときは、無料ダウンロードランキングで1位になりましたし、ユーザーさんの数も増えつつありました。ただ、『キャンディークラッシュ』を日本向けにどうローカライズするか? そのクオリティー部分を工夫し始めたのが、まさに昨年の4月くらいでした。1月から4月のあいだは、その準備に追われていましたね。
――そこから、大胆に展開されたわけですね。
枝廣 僕自身、Kingの大ファンだったので、Kingに入ると決まった瞬間から、まずテレビCMは絶対やったほうがいいという思いがありました。当然、岡田さんや遠藤さんという、人気のある俳優さんに最初に出ていただくというのはものすごくハードルが高かったですが、そこはスタッフにも恵まれ、制作が実現しました。
――では、今後もインパクトのあるCMを打っていかれるのでしょうか?
枝廣 つぎのCMもかなりイイですよ。僕は自信がある作品に関して、なぜか大きめに展開したがる性格なので(笑)。CMもコンテンツのひとつの顔になってくると思います。CMでも僕らにしか出せない色があると思うので、そこは押し出していくことが大事なのかなと。
枝廣氏が「かなりイイ」と話してくれたCMがコレ!⇒※関ジャニ∞がキュートなガールズユニット“キャンジャニ∞”に!? 『キャンディークラッシュソーダ』新CM放映開始
――CMで注目されるために意識されている部分や、演出などはありますか?
枝廣 例えば、出演してくださっている岡田さんや遠藤さんが、ほかのCMで演じているキャラクターとは違う脚本にしたいなと思っています。「ほかのCMで見たことがある」と思われるのはすごく損ですから。もうひとつは、モバイルゲームのCMの中でもあまり見たことのない類のものにしたいんです。ゲーム画面も出さないというのも、おそらくモバイルゲームで初めてチャレンジしたのではないかなと。
――たしかに、初めて観たとき「このCMは何だろう?」と気になりました。
枝廣 白黒ですからね。最初、定着するまではしばらく缶コーヒーのCMだと思われていたみたいです(笑)。たしかに岡田さんの後ろから遠藤さんが話しかけているところで、コーヒーの話をしてもおかしくないですよね(笑)。でもシリーズ化していくにつれ理解も深まって、ファンもついたというのはうれしいですね。
――そういえば、Kingというメーカーロゴも出ませんよね。
枝廣 最初はまったく出しませんでしたね。コンテンツの世界観を伝えることをもっとも大事にした結果なので、出す、出さないという部分のこだわりより、CMそのもののクオリティーを優先したらそうなりました。最近の『キャンディークラッシュソーダ』になって、初めてKingのロゴだけ申し訳程度に出ているんですけど。ゲームを立ち上げると最初にKingのロゴが出ますので、そこでわかっていただければいいかなという思いもあるんです。CMであまりコンテンツ名を連呼しないとか、押しつけないスタンスがKingとしていいなと思っています。Kingには“Bite size Brilliance”という合言葉があるんですが、空き時間をそっと埋める存在でありたいという意味です。CMとしても、ユーザーさんを大事にした、ちょっとおもしろいものにしたいなという想いを込めています。また、ゲームをプレイされた方ならKingを認知していただけると思うので、この知名度をKingという看板に集約していけば、つぎのタイトルが生きてくると信じています。
人気のヒミツは……?
――『キャンディークラッシュ』はひとりでコツコツやるタイプのゲームですが、これだけ幅広くコミュニティーが広がっているのもめずらしいですよね。
枝廣 相手を選ばないゲームですし、CMが後押しになったのではないでしょうか。ウチの母親もやっていますからね(笑)。母の友だちにも広めてくれているようです(笑)。
――お母さんたちも! たしかに誰でもスッとプレイできますもんね。
枝廣 ええ、すごくユーザーさんのことを考えた設計になっています。通信接続が何回も求められるゲームは、インフラの環境によっては難しかったりしますが『キャンディークラッシュ』は、1度ダウンロードしていただければ、その後はあまり通信を求められないというのもポイントだと思います。
――ちなみにユーザー層としてはどんな方が多いのでしょうか?
枝廣 女性が多いという肌感はありますが、ユーザーさんのボリューム自体が大きいので、男性も相当数いらっしゃいますね。コミュニティーに関しては、海外では普及しているプラットホームも異なっていたりするので、KingはFacebookさんの力を借りて大きく成長した部分があります。日本のユーザーさんはFacebookに対して、独自の見方をしていると思うんです。「会社の先輩に見られるからFacebookとはつなげない」って(笑)。その代替手段として、Kingdomというサービスを作りました。Facebookにつないでないユーザーさんは、Kingdomという仮想空間につなぐことによって、見ず知らずの誰かを手伝ってあげたり、助けてもらえりというのができるようになっています。Facebookにつなぐのが抵抗のある方は、ぜひ、こちらをトライしていただけるとうれしいですね。
姉妹作『キャンディークラッシュソーダ』の手応え
――2015年は『キャンディークラッシュソーダ』のリリースからの幕開けとなりました。手応えはいかがですか?
枝廣 正直、『キャンディークラッシュ』以上の力を持っているかもしれないなと思っています。じつは『キャンディークラッシュ』と『キャンディークラッシュソーダ』を両方プレイされている方がかなりいらっしゃるんですよ。このふたつは少しゲームシステムが異なることが、両方を並行してプレイするきっかけになっているのかなと思います。僕の友だちに『キャンディークラッシュ』と『キャンディークラッシュソーダ』と『ファームヒーロー』を回しながらプレイしている強者もいるんですよ。ひとつをプレイしているあいだに、ほかのタイトルのハートが回復するのでプレイして……と(笑)。
――プロですね! では、『キャンディークラッシュソーダ』のほうも手ごたえは十分といったところでしょうか。
枝廣 そうですね、札幌の雪まつりでも皆さんに取り上げていただきましたし。“雪まつりとモバイルアプリの融合”というのは、もしかしたらうまくいかないかもという不安もあったんですが、プロジェクションマッピング自体も評判が良くて。僕たちの期待以上に注目度も高く、多くのお客さんに楽しんでいただけました。行列の最後尾の方たちにはお見せできなくて申し訳なかったのですが、この雪まつりでグッと手応えを感じました。
話題に挙がった雪まつりの模様が気になる人は⇒※『キャンディークラッシュソーダ』雪まつりでプロジェクションマッピング!
――ちなみに、なぜ雪まつりに参加されようと思われたのですか?
枝廣 あれはリリースの1ヵ月前くらいのタイミングでしたね。『キャンディークラッシュソーダ』は欧米でユーザーさんからいいリアクションをいただいていたので、せっかくの新作タイトルだから、これは日本でリリースするときも大きくイベントをやりたいなと考えました。すでにニューヨークやロンドンでもイベントをやっていたので、日本で何もやらないというのもちょっと悔しくて(笑)。じゃあ、日本らしさが出せる場所や、日本の技術力を活かせる場所はどこかと考えたときに、雪まつりでプロジェクションマッピングっていいんじゃないかという考えに至りました。
――なるほど、そういう経緯だったんですね。
枝廣 ええ、『キャンディークラッシュソーダ』の世界を大きな雪像に映したら、さぞかし素晴らしいのではないかと。でも、イベントは何が起こるかわからないですし、雪まつりは天候のリスクもありますから、正直不安もありました。ですので、足を運んでいただくきっかけを作ろうと、本国のスタッフの協力も得ながら、音や映像のクオリティーを上げていきました。人が集まらないところには、人は寄ってこないものですから。フタを開けてみたら多くのメディアに報じていただけて、お客さんはパンパンになるくらいの大入りとなり、本当にうれしかったです。
――雪まつりがこれだけうまくいくと、つぎのイベントの期待もさらに高まりそうですね。
枝廣 そうですね(笑)。何かやったことのないことをやろう、というキーワードを掲げていますので、その苦しさはずっとついて回るとは思います。いまも何かないかなと探している最中です。
――方向性としては“日本らしさ”にこだわられていくのでしょうか?
枝廣 ヘンな話ですけど、日本のユーザーさんに海外のゲームだと思われるとちょっと損かなと思っているんです。逆にKingのグローバルな戦略の中では、日本でこういった展開ができていること自体、非常にポジティブに働くと思っています。その両方のバランスを取っていきたいですね。
2015年は豊作の予感!?
――2015年のリリース本数はどのくらいを予定されているのでしょうか?
枝廣 Kingが去年行った大きな出来事のひとつに、シンガポールの“Nonstop Games”(※1)など、外部スタジオの買収がありました。世界各地の新しいスタジオから出てくるタイトルは、かなりの数が期待できますが、“どのタイトルを日本に持って来るのか?”も分かりませんし、世界でもどのくらいの数が出るのか、まだはっきりと数はわかりません。作っている段階で日本向けにカスタマイズできる可能性もありますしね。この春、Kingのヨーロッパに出張しまして、そこで見定めて今年の戦略を決めたいと思っています。
※1.……2011年にシンガポールに設立。CEOのJuha Paananen氏は『クラッシュ オブ クラン』などを手掛けるSupercellのCEO、Ilkka Paananen氏の実弟。同社はiPhone向けストラテジーゲーム『Heroes of Honor』の開発、運営を手掛けていて、買収後も同タイトルを提供している。
――去年よりもさらにたくさんのタイトルが揃いそうですね。
枝廣 国と地域が広がったことで、ゲームのタイプも増えていくと思います。例えば、シアトルのスタジオ“Z2”がいままで出してきたタイトルは、Kingが得意とするパズルカジュアルゲームとはまた違ったジャンルですし。各スタジオのテクノロジーと、元々Kingが持つ財産を掛け合わせて新しい体験をお届けできたらうれしいですね。
――そうなると我々もすごく楽しみですが、プロモーション・運営する立場からすると難しくなってくるのでは? 日本でのKingのイメージは、やはり『キャンディー』が強いと思うのですが。
枝廣 やはりひとつの軸は、カジュアルなエンターテインメントですので、そこから大きく逸脱するものはすぐには難しいかもしれませんね。とにかく私たちの目標は今までもそしてこれからもずっと素晴らしいゲームを作り続けていくことです。
もっと知りたいKingのこと
――そういえば、関連グッズも増えてきましたね。
枝廣 そうですね。さきほどのケースなどは、お店で食事をしていて見かけられた方からも欲しいって言われたりします。このケースも、何か日本らしいところを出したいなと思いまして、スライドすると内側にICカードが入るようになっているんです。iPhoneが、おサイフケータイ代わりにもなりますから、お渡しした方には評判がよかったんです。その話が、Kingの本社のほうに逆流して、ヨーロッパでもPR用に使いたいからこのケースを送ってほしいと。「モノ作りの国、日本だね」なんて言われたりして(笑)。ヨーロッパから日本に来ている会社ですが、逆に日本から発信できたのはうれしかったですね。
――そこまで人気があるのに、なぜグッズ販売されないのですか?
枝廣 よくお話はいただくんですけど、本当に売れるのかなって思っちゃうんです(笑)。ユーザーさんにどんな形でお届けするのがベストなのか、引き続き検討中ですね。グローバルでは『キャンディークラッシュ』のグッズもできていまして、専用のショッピングサイトもあるんです。アイテムも充実してきているので、タイミング次第では日本での展開を考えてもいいかなと思っています。
――世界各地の支社やスタジオとコミュニケーションを活発にされているんですね。
枝廣 ええ、ちょうど昨日までバルセロナのチームが来日していました。僕らもよく向こうへ行きますしね。日本のユーザーさんはこういうことが好ましいと思っているとか、こういうゲームが流行っているという話を伝えながら、もっといろいろできないか調整しています。日本のゲームは、運用モデルがすばらしいと本国のスタッフも思っていて、そういう部分からインスパイアされたり。彼らはおもしろいですよ、タイトルに対する想いが溢れていて。たまにユーザーさんからバグなどのご指摘いただくことがあるのですが、レビューなどでよくないコメントが書かれていると、本当に涙目になって「おもしろいゲームを作りたいんだ。ただ。それだけなのに」と。情熱というか、熱量がすごいんです。
2015年、Kingはどうなる!?
――2015年に、King Japanとしてやってみたいこと、夢などはありますか?
枝廣 Kingのゲームをスマホのプリインストール状態にしたいですね。日本中のスマホ1台に1本、Kingのコンテンツが入っているという。そして、ゲームを通じた僕らのネットワーク作りをしたいですね。そのためには、ある程度年齢を重ねられた方でもプレイできるように、また、友だちどうしで紹介しあえるような設計するなど、いろいろと強化していきたいなと思っています。それと僕としては、ファンの皆さんと接点を持ちたいですね。
――オフイベントのようなものでしょうか?
枝廣 そうですね。海外では『キャンディークラッシュソーダ』のリリースイベントをやったりしているのですが、日本でもどんなユーザーさんがプレイしてくださっているのか、お会いしてみたいという気持ちはあります。
――では最後に、Kingのゲームを楽しみにしているユーザーへメッセージをお願いします。
枝廣 ひとつお約束できることは、ゲームは進化しますから、いままでやっていただいているゲームもよりおもしろくなります。また、新しいゲームも出させていただくつもりでおりますので、次回作も楽しみにしていてください。
キャンディークラッシュソーダ
- メーカー
- King.com Limited
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iPhone、Android
- コピーライト
- © King.com Limited 2015. All rights reserved.
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